はい、どうも中小企業診断士のたかぴーです!
今回は物価指数の計算方法であるラスパイレス式とパーシェ式について解説していきたいと思います。
この論点は計算式が複雑なので、毛嫌いしている方も多いかと思います。
この記事で、そんなに難しくないことが分かると思いますので、一緒に勉強していきましょう。
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物価と物価指数
まずは物価と物価指数について説明していきます。
物価とは、世の中にある製品やサービス価格の平均値を表します。
世の中には生鮮食品や自動車・飲食店、はたまた診断士受験生向けの予備校など、様々な製品やサービスであふれています。
その製品やサービスごとに価格が決まっていますが、この製品・サービスの平均値が物価であるというわけですね。
続いて、物価指数についても確認してみましょう。
物価指数は、先ほど確認した物価の変化量を表す指標となっています。
例えば1個100円だったリンゴが150円になったとしましょう。
この時どれぐらい金額が上がったかというと、150円を100円で割って150%値段が上がったと計算できるわけですね。
この150%の部分が物価指数を表しています。
リンゴの価格変動は今のようにすぐ計算できますが、実際の物価指数は、世の中全ての製品・サービスの物価がどれくらい変わったのかということを考えていきます。
そこで次に、物価指数の計算方法を確認してきたいと思います。
物価指数の計算方法
物価指数は比較時点での製品・サービスの総額を、基準地点の総額で割り返すことによって求められます。
ちなみに、比較時点は今年、基準時点は去年であることが多いですね。
物価指数 = 比較時点の総額 ÷ 基準時点の総額
例えば、リンゴが100円から150円に、車が100万円から120万円に値上がったケースを考えてみましょう。
リンゴは基準時点も比較時も1万個売れて、車はそれぞれ一台ずつ売れたとします。
基準時点の総額を計算してみますと、リンゴが100円で1万個売れて、車は100万円で1台売れたので、これを足した値が総額になりますね。
同じように比較時点の総額も計算できます。
これを計算すると135%となり、物価指数が求めることができました。
さて、このケースでは基準時点と比較時点でそれぞれ同じ販売数量だとしましたが、現実にはあり得ないですよね。
そこで次に、販売数量が変化するケースを考えてみましょう。
販売数量も変わるときは?
ここではリンゴの販売数量だけが変わったケースを考えてみます。
先ほどのケースを利用して、比較時点である今年はリンゴの金額が上がったので、0.5万個しか売れなかったとしましょう。
これを先ほどの計算式に当てはめると、比較時点の総額の計算式について、リンゴが150円×0.5万個と変わっていますね。
これを計算すると97.5%となってしまいます。
リンゴも自動車も確実に今年の方が値段が上がっているにもかかわらず、計算結果では物価が下がったように見えてしまいます。
これは明らかに正しくないですよね。
ですので、物価指数を計算する際は、販売数量はどちらかの年の数量に統一する必要があるのです。
ラスパイレス式とパーシェ式とは?
販売数量の統一方法は、ラスパイレス式とパーシェ式の2つに分けられます。
ラスパイレス式は数量を基準時点で統一する計算方式ですね。
先ほどまでの例で言うと、リンゴの販売数量を基準時点の1万個に統一して、物価指数を計算します。
一方で、パーシェ式は数量を比較時点で統一します。
先ほどの例で言うと、リンゴの販売数量を今年の販売数量である0.5万個で
統一して計算するわけですね。
計算方法の覚え方としては、ラスパイレス式が「ラッキー!」、パーシェ式は「パパと比較」と覚えていただければと思います。
ラッキーの”ラ”は、ラスパイレス式の”ラ”、
ラッキーの”キ”は、基準時点の”基”ですね。
一方、パパと比較の”パ”は、パーシェ式の”パ”、
“比較”はそのまま”比較時点”と覚えていただければと思います。
お好きな方のどちらか一方を覚えておくだけで充分です。
ちなみに僕自身、受験時代はラスパイレス式が出てきたら 「ラッキー!」 と覚えていました。
ラスパイレス式・パーシェ式で計算される重要指標
続いてラスパイレス式とパーシェ式で計算される重要指標を確認していきましょう。
まずはラスパイレス式です。
ラスパイレス式で計算される指標の代表例は、消費者物価指数と企業物価指数があります。
消費者物価指数は消費者が購入する製品・サービスについての物価指数で、企業物価指数は企業間取引によるおける物価指数ですね。
どうしてこれら2つの指標はラスパイレス式で計算するかというと、実務上はラスパイレス式の方が簡単に計算できるためです。
消費者物価指数も企業物価指数も政府によって毎月公表される指数となっています。
もし仮にパーシェ式で物価指数を計算するとしたら、比較時点である今年の販売数量でまで調査しないと、物価指数が計算できないので、かなり大変な作業となります。
一方で、ラスパイレス式は手元に去年の販売数量データを使って、今年の販売金額さえ調査すれば良いので、比較的に簡単に計算できますね。
以上の理由から、この2つの指標はラスパイレス式で計算しているわけですね。
一方、パーシェ式の代表指標としてはGDPデフレータがあります。
GDPデフレータとは、名目GDPを実質GDPで割り返して求められる指標です。
どうしてこの指標はパーシェ式となっているかというと、名目GDPも実質GDPも今年、つまり比較時点のGDPとなっていますよね。
ですので、この計算式によって導かれるGDPデフレータも自ずと比較時点の数量で求められた物価指数となるわけです。
このように計算方式が使われている理由もセットで覚えておくと、忘れにくいかと思います。
過去問を解いてみよう (平成30年度 第4問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
経済を時系列で捉えるときには、名目値と実質値の区別が大切である。これらの関係を理解するために、次のような設例を考える。この設例では、商品Aと商品Bの2つがあり、それぞれの価格と生産量は下表のようになる。基準年を2015年とするとき、この設例に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
商品A 商品A 商品B 商品B 価格 生産量 価格 生産量 2015年 100円 10個 100円 10個 2017年 110円 9個 90円 11個 ア 2017年の実質GDPは、1,980円である。
イ 2017年の物価指数 (パーシェ型) は、100になる。
ウ 2017年の物価指数 (ラスパイレス型) は、100になる。
エ 2017年の名目GDPは、2,000円である。
中小企業診断士試験 経済学 平成30年度 第4問
物価指数を実際に計算させる問題ですね。
選択肢を見てみると、選択肢イとウは①物価指数を計算させる問題と読み取れますね。
続いて選択肢エは②2017年の名目GDPを計算させる問題です。
最後に選択アは③物価指数を加味して実質GDPを計算させる問題ですね。
ですので、①~③の順番で各指標を計算する必要がありそうです。
実際にやってみましょう。
✅選択肢ウ
まずはラスパイレス式の物価指数を計算してみます。
ラスパイレス式は数量を基準時点で統一するのでしたね。
この点に注意しながら、比較年と基準年の総額を計算式にしますと、以下のような計算式で表されています。
$\frac{商品A 110円×10個 + 商品B 90円×10個}{商品A 100円×10個 + 商品B 100円×10個}$
=100%
掛け算する数量がすべて基準時点で統一されていますね。物価は比較年と基準年で変わっていないことが分かります。
✅選択肢イ
パーシェ式についても確認してみます。
パーシェ式は数量を比較時点で統一するのでした。
計算式を表すと、以下のようになります。
$\frac{商品A 110円×9個 + 商品B 90円×11個}{商品A 110円×9個 + 商品B 100円×11個}$
=99%
パーシェ式では数量がすべて比較年になっていることを改めて確認してください。
これを計算すると99%となりますね。
✅選択肢エ
2017年の名目GDPですね。
名目GDPは単純に数量×生産量の総額として計算できますので、以下のように計算できます。
商品A 110円×9個 +商品B 90円+11個
=1,980円
✅選択肢ア
続いて、2017年の実質GDPを計算してみましょう。
先ほどGDPデフレーターの定義は名目GDP÷実質GDPと紹介しました。
この式を変形すると、実質GDPは名目GDP÷GDPデフレーターとすることができます。
つまり名目GDPを物価指数で割り返して、物価変動を加味したGDPが実質GDPとなるわけですね。
ここで思い出していただきたいのが、GDPデフレータはパーシ式の物価指数なのでした。
ですので、名目GDPもGDPデフレータも先ほど計算した数値が使えます。
実質GDP=1,980円÷0.99=2,000円 となります。
以上の結果から、選択肢ウが正解とわかるかと思います。
この平成30年度第4問は物価指数に関連する知識をしっかりと理解していなければ、解くことができない非常に良い問題となっています。
この論点を復習する際は、是非繰り返し解いてみてくださいね。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回解説した物価指数は、物価の変化量を表す指標なのでした。
具体的な計算方法は、比較時点の総額を基準時点の総額で割り返すことで求められるのでしたね。
そして、実際に物価指数を計算する際は、数量を比較時点か基準時点で統一する必要があるのでした。
数量を基準時点で統一するのがラスパイレス式で、比較時点で統一するのがパーシェ式なのでしたね。
覚え方はラスパイレス式が”ラッキー”、パーシェ式が”パパと比較”なのでした。
ラスパイレス式の物価指数の代表例としては、消費者物価指数や企業物価指数があって、パーシェ式ではGDPデフレータがあるのでしたね。
以上の内容を押さえておけば、試験対策はバッチリかと思います。
物価指数の計算は頭でわかっていても、実際に計算してみると意外と手こずるかと思います。
この手の計算問題は何度も実際に解いてみて、体で覚えることををお勧めします。本試験で出てきたら確実に解けるように、今から練習しておきましょう。
それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
それではまた次回の解説記事でお会いしましょう。勉強頑張ってください!応援しています。さようなら!!