はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は経済的発注量について解説していきたいと思います。
この論点は苦手意識のある方が多いのではないでしょうか?
学習を始めたばかりの方でも、この記事でバッチリ理解できると思いますので、一緒に勉強していきましょう。
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経済的発注量とは?
まず経済的発注量は、発注費と在庫費の総額が最も小さくなる発注量のことを言います。
つまり、総費用を発注費用と在庫費用に分けて、この総額が最小になるときの発注量について考えていくわけですね。
これを考える前に、まずは発注費用と在庫費用がどのように求められるのかということを見ていきたいと思います。
やや細かい話になりますので、流れだけ抑えていただければ十分です。
肩の力を抜いてお読みください。
発注費用とは?
まずは発注費用ですね。
発注費用は発注に必要な年間の費用です。
具体的な例としては運送費用や梱包費、発注する際に必要な手数料などが含まれています。
この発注費用を計算式で表してみると、
発注費用=1回あたりの発注費用×年間の発注回数 で表されます。
Amazonで配送費300円の商品を10回頼んだら、年間で3,000円かかるようなイメージですね。
ここで、この年間の発注回数を発注量を使って表してみたいと思います。
そうしますと、
年間の発注回数=年間の需要量÷1回あたりの発注量 と表すことができます。
こうすることで年間の発注費用を、発注量を用いて表すことができました。
この計算式は後で使います。
在庫費用とは?
続いて在庫費用について見ていきましょう。
在庫費用は在庫保管に必要な年間費用を表します。
具体的な例を見てみますと、商品を保管するために必要な倉庫費用や、商品にかける保険料、在庫を管理するための人件費などが含まれますね。
年間在庫費用を計算式で表すと、
年間在庫費用=年間の平均在庫量×1個あたりの維持費用 として表されます。
年間100個の在庫に対して、維持費用が1個あたり20円かかるのであれば、100個×20円で、年間で2,000円かかるようなイメージですね。
ここで、1個あたりの維持費用は、
1個あたりの維持費用=在庫単価×在庫費用率 として表されます。
例えば、商品単価が100円で、その費用率が20%であれば、1個あたりの維持費用は20円と計算されるイメージですね。
また、年間の平均在庫量を発注量で表してみますと、
年間の平均在庫量=1回あたりの発注量÷2 で表すことができます。
ここがちょっと感覚的にわかりにくいと思いますので、次の章で解説したいと思います。
平均在庫量の求め方
年間平均在庫量は、1回あたりの発注量÷2で表されると言いました。
どうしてこのようになるのか、説明したいと思います。
まず、横軸に時間を縦軸に在庫量を取ったグラフを描いてみます。
1月に年間で必要な商品数の100個を発注して、12月には在庫が0になるようなケースを考えてみましょう。
この時、1年間の平均在庫量は、1月時点で100個、12月末で0個だったので、これを足して2で割ると平均が求められますね。
100÷2で50個と計算できます。
つまり、グラフで表すと、緑の点線が平均在庫として表すことができます。
続いて毎月1回、年間で12回発注するケースを考えてみましょう。
まず1月に50個発注をして、2月には在庫が0個になります。
この1月の平均在庫量を考えてみると、1月時点で50個、2月始めには0個になっているので、50個+0個を2で割って、平均は25個と求められますね。
在庫が0個になったので、2月にまた50個発注します。
経済的発注量では、年間の需要量が完璧にわかっていて、需要量が常に一定であることを前提にして考えますので、3月になると、また在庫が0個になるわけですね。
当然、2月の平均在庫量も25個と計算できるわけです。
これを1月から12月まで繰り返すと、上のような図で表されます。
どの月の平均在庫量を計算しても、毎月25個となりますよね。
ですので、年間の平均在庫量としても25個と求めることができるわけです。
つまり、どのようなケースで考えても、年間の平均在庫量は1回あたりの発注量を2で割ることで求められると考えることができるのです。
考え方は以上の通りですが、しっかり理解できなくても、全然問題ないので安心してください。
発注費用と在庫費用の発注量との関係
ここまで解説した内容を一度まとめたいと思います。
年間の発注費用は、
年間発注費用=1回あたりの発注費用×(年間の需要量÷1回あたりの発注量)
で求められるのでした。
それぞれの項目をアルファベットで表しますと、年間発注費用はS×(R/Q)とすることができます。
一方で、年間在庫費用について見てみると、
年間在庫費用=(1回あたりの発注量÷2)×在庫単価×在庫費用率で求められるのでした。
同じように、アルファベットで表してみると、Q×P×iですることができます。
ちなみにアルファベットの計算式は、この後の計算で使うだけですので、覚える必要はありません。
ここで発注費用と在庫費用の、発注量との関係について見てみたいと思います。
どちらの計算式でも発注量を表すQが含まれていますので、これをグラフで表してみます。
横軸に一回あたりの発注量Qを取って、縦軸に費用を取ったグラフですね。
まず年間の発注費用に関しては、発注量Qが分母側にありますので、グラフとしては、青線のように右肩下がりとなります。
発注量が増えれば増えるほど、年間の発注費用は減っていくわけですね。
Amazonで商品を頼む時も、小分けに商品を注文すれば、その分だけ配送費がかさみますが、一度に複数の商品をまとめて注文してしまえば配送費が少なくて済むことを考えると、1回あたりの発注量が大きいほど、年間の発注費用を抑えられるというのは、イメージできるかと思います。
一方で年間の在庫費用は、発注量Qに関する一次関数なので、緑線のように右肩上がりとなります。
発注量が増えれば増えるほど、在庫費用も増えるというような関係ですね。
改めて2本のグラフを見てみますと、発注量が増えれば増えるほど、青の発注費用は減りますが、緑の在庫費用は増えてますし、逆に発注量が減るほどに発注費用が増えて、在庫量は減るというトレードオフの関係になっていることがわかりますね。
さて、今考えたいのは、この年間の在庫費用と年間の発注費用の合計が最も小さくなるときの発注量Qを求めたいのでした。
発注費と在庫費のトレードオフの関係を考慮すると、総費用が最も小さくなるのは、発注費と在庫費のグラフが交差する上図の赤点で示した発注量となります。
つまり、年在庫費と発注費が等しくなる時の発注量が最も効率的であると考えることができるわけです。
総費用が最小となる発注量は?
それでは総費用が最小となるときの発注量を、計算式で考えていきましょう。
先ほども記載した通り、発注費用と在庫費用が等しくなる時が、最も総費用が少なくなります。
これをアルファベットで表してみると、S×(R/Q)=Q×P×iとなりますね。
今求めたいのは発注量Qですので、Qに関して方程式を整理してみますと、
Q^2=2SR/Pi と表すことができます。
2乗を外すにはルートをつければよいので、Q=√2SR/Piと表すことができますね。
これが最も総費用が少なくなるときの発注量Qですので、こちらが経済的発注量を表しているということになります。
ここまでの考え方や計算過程は雰囲気だけ掴めていただければ充分だと思います。
重要なのは、この計算式ですね。
発注費用と在庫費用の計算式をそれぞれ書き出して、経済的発注量を自分で導くことができるのが理想的ですが、それはなかなか難易度が高いですよね。
そこでもう少しこの計算式を、簡単に覚える方法をご紹介したいと思います。
経済的発注量の覚え方
先ほど説明した通り、経済的発注量は、Q=√2SR/Piと表されます。
アルファベットで表してもイメージがつきにくいと思いますので、
日本語に変換してみますと、
経済的発注量=(2×1回あたりの発注費用×年間の需要量)÷(在庫単価×在庫費用率)
と表すことができます。
アルファベットよりは少しマシになりましたが、項目が多すぎるので、これを丸暗記するのも大変です。
そこで、上の画像のように経済的発注量は、
経済的発注量=√(発注費用×2年分の需要量)÷在庫維持費用
と覚えていただければ、だいぶ項目が絞られるので、先ほどと比べると覚えやすくなったかと思います。
少なくとも分母側に在庫費用があって、分子側には発注量と需要量があるということだけ覚えていただければ、最低限はクリアできてると思います。
過去問を解いてみよう (平成27年度 第11問)
それでは過去問を解いて、今までの内容を復習してみましょう。
1個当たりの在庫保管費 (円/個)、1回当たりの発注費 (円/回)、安全余裕および総需要量が経済発注量に及ぼす影響に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 安全余裕が増加すると経済的発注量は減少する。
イ 在庫保管費 (円/個) が増加すると経済的発注量は増加する。
ウ 総需要量が減少すると経済的発注量は増加する。
エ 発注費 (円/回) が減少すると経済的発注量は減少する。
中小企業診断士試験 運営管理 平成27年度 第11問
経済発注量に及ぼす影響として正しいものを選べという問題ですね。
まず、経済的発注量の計算式を改めて思い出してみると、(発注費用×2年分の需要量)÷在庫維持費用で表されるのでした。
この計算式を改めて見直してみますと、分子側である発注費や需要量が増えれば、経済的発注量も増えますし、逆に分母となっている在庫維持費用が増えれば、分母が大きくなりますので、経済的発注量は減ると言うような関係が見て取れますね。
これを前提に各設問を見てみますと、選択肢アでは安全余裕が増加すると経済発注量は減少するとありますが、安全余裕は経済的発注量の計算式に含まれていませんので、これはまったく関係のない話となります。
続いて選択肢イですね。
在庫保管費が増加すると経済的発注量は増加するとありますが、先ほども説明した通り、在庫費が増えると経済的発注量は減少するという関係になりますので、選択肢イも誤りとなります。
続いて選択肢ウでは、総需要量が減少すると経済的発注量が増加するとありますが、分子側の総需要量が減少すると、経済的発注量が減少するので、これも誤りですね。
最後に選択肢エです。
発注費が減少すると経済的発注量が減少するとありますが、これは合っていますね。
計算式を見ても、発注費が減れば経済的発注量は減りますし、逆に発注費が増えれば経済的発注量が増えるという関係が見て取れます。
経済的発注量はルートが含まれる計算式ですので、電卓が使えない一次試験では、経済的発注量を計算させる問題が出題される可能性は極めて低いと考えられます。
今回のように計算式さえ覚えておけば答えられる問題がほとんどですので、頑張って今回ご紹介した計算式を頭に入れておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
経済的発注量は発注費と在庫費の総額が最小になる発注量なのでした。
発注量最小化の条件は、年間発注費用と在庫費用が等しくなる時なのでしたね。この観点が問われる可能性は十分ありますので、念のため覚えておいてください。
経済的発注量は、(発注費用×2年分の需要量)÷在庫維持費用と覚えるのでしたね。
在庫維持費用は在庫単価×在庫費用率で表されますが、これはやや細かい論点ですので、まずはこれくらいのザックリとした覚え方をしていただけばと思います。
確かに経済的発注量を導く過程は少し難しいですが、このまとめに記載した内容さえ覚えておけば、試験対策上はバッチリかと思います。
この記事で少しでも経済的発注量に対する苦手意識を払しょくできましたら嬉しいです。
それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでごご覧いただき、ありがとうございました。
それではまた次回の解説記事でお会いしましょう。勉強頑張ってください!応援しています。さようなら!!