はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです!
今回は効率的フロンティアと資本市場線について解説していきたいと思います。
この論点は突然わけのわからないグラフが出てくるので、戸惑ってしまっている方も多いのではないでしょうか?
今回は効率的フロンティアと資本市場線がどのように導かれるかというところから、丁寧に解説していきたいと思います。
この記事でバッチリと内容を理解できると思いますので、是非最後までご覧ください。
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効率的フロンティアとは?
効率的フロンティアとは、同じリスクで最大のリターンを得るための証券の組み合わせです。
文字だけでは分かりにくいので、具体的な数字を使いながら説明していきたいと思います。
今回はmyINDEXというサイトで、各資産の投資配分比率を入力すると、自動で期待リターンとリスクを計算してくれるツールがありましたので、こちらを使いながら効率的フロンティアを考えていきたいと思います。
2つの証券の組み合わせごとのリターンとリスクの計算方法
先ほどのサイトによると、日本株のリターンは6.9%で、リスクが16.9%、米国株のリターンは10.7%、リスクが18%だとされていました。
なお、グラフの横軸がリスク、縦軸がリターンを表しています。
ここで考えたいのは、日本株と米国株の投資配分をどのようにすれば、リスクを抑えてリターンを最大化できるのかということです。
米国株に一括投資すると、リスクが高すぎますし、日本株だけだとリターンが少なくなりますので、ちょうどいい配分を見つけたいわけですね。
これを考えるために先ほどのツールを使って、日本株の比率を100%から90%・80%というように10%ずつ投資比率を下げていって、投資配分ごとのリスクとリターンを集計してみました。
直感的には、米国株の投資配分を増やすごとにリスクとリターンが一直線で増加するような気がしますね。
効率的フロンティアの導出方法
実際に集計した結果をグラフにまとめると、以下画像の左側のグラフになりました。
リスクとリターンの関係は「く」の字型の曲線を描きましたね。
直線にならない理由の詳しい説明は割愛しますが、2つの資産の値動きが完全に一致しないためとされています。数学的に言うと、2つの資産の相関係数が1より小さい値を取るためですね。
ここでは2つ以上の資産に投資すると、リスクが下げられるということだけ、知ってもらえたら十分です。
ここで注目してほしいのが、日本株に100%投資した状態から、日本株の投資配分を減らすほどリスクが減っていき、その分リターンが増えているという点です。
つまり、日本株100%に投資するよりも日本株に60%、米国株に40%投資する方がリスクを抑えられて、リターンも増やせるということになりますね。ですので、日本株を60%よりも大きくするのは、投資配分として合理的ではないと言えます。
以上から、右側のグラフの点線で描いた部分に投資するのではなくて、赤色の曲線の中から投資配分を決めた方が良いということがわかります。
この赤色の曲線のことを「効率的フロンティア」と呼んでいるわけですね。
この効率的フロンティアの曲線上の投資配分は、同じリスクの中でも最大のリターンを得るための組み合わせだと言えます。
以上の理由から、合理的な投資家は効率的フロンティア上の組み合わせで投資配分を決定するのです。
資本市場線とは?
資本市場線についても学習していきましょう。
資本市場線とは、安全資産も考慮した場合の最適な投資配分の組み合わせのことを言います。
ちなみに、安全資産とはリスクゼロでリターンが得られる資産のことを言います。
具体的には短期国債などを用いられることが多いですね。
先ほどの利用したサイトでは、現金がリスクゼロでリターンが0.1%の安全資産として利用することができました。現金という名称ですが、要は定期預金だと思ってください。
では、この安全資産である現金も組み合わせた時の、現金・日本株・米国株の最適な投資配分はどのようになるのか考えてみたいと思います。
ここでも現金・日本株・米国株の投資配分を10%ずつ変えて、全ての組み合わせのリターンとリスクを確認して、集計しました。
利用したのは先ほどと同じで、myINDEXの計算ツールです。
安全資産を組み入れた際の投資機会集合
集計した結果をグラフ化すると、以下画像のようになりました。
「く」の字型の曲線が複数並んでいるグラフとなりましたね。
グラフの一番左下が現金を100%保有した時のリスクとリターンの関係です。
左から三番目の「く」の字型の集合は現金80%、真ん中が現金50%、そして一番右側が現金を全く保有せずに日本株と米国株だけを保有した際のリスクとリターンの関係を表しています。
ここで気づくのが、例えば現金50%の集合を見た場合、一番下の点は投資配分としては合理的ではないと言うことがわかりますね。
なぜなら、同じ現金50%の保有率の中で比較しても、同じリスクでより高いリターンが見込める投資配分があるためです。これは他の集合にも同じことが言えそうです。
どうやら、現金保有率に応じて日本株・米国株の最適な投資配分がありそうですね。
資本市場線の導出
その最適な組み合わせを描いたのが、以下画像の青色の直線となります。
この青色の直線が「資本市場線」と呼ばれているわけですね。
この資本市場線が、安全資産も考慮した場合の最適な投資配分の組み合わせを表しています。
合理的な投資家は、資本市場線上の組み合わせで投資配分を決定していくわけですね。
効率的フロンティアと資本市場線の関係
それでは、ここまでの内容を一般化してまとめてみましょう。
投資対象が株式などのリスク資産のみの場合、投資配分の組み合わせによるリスクとリターンの関係は、「く」の字型の曲線で表されるのでした。
点線で表している部分は、同じリスクでもより高いリターンが見込める組み合わせがありますので、投資配分として適切ではありません。
合理的な投資家は、赤色で示した効率的フロンティアから投資配分を決めていくことになります。
一方で、安全資産も考慮した場合、合理的な投資配分をした際のリスクとリターンの組み合わせは、青色の直線で表されます。この青い直線を資本市場線と呼ぶのでした。
資本市場線は点Aを通り、効率的フロンティア上の接点Bで接する接線となっています。
点Aは安全資産のみに投資した際のリスクとリターン、点Bはリスク資産のみに投資した際のリスクとリターン、点Aと点Bの間は、安全資産・リスク資産両方に投資した際のリスクとリターンを表しています。
ですので、合理的な投資家は自身の持っている資金から、線分AB上で投資配分を決定していることになります。
ここで資本市場線について、もう一つ重要なポイントを解説したいと思います。
資本市場線上に、新たに点Cを打ってみました。
安全資産の利子率で無制限に借り入れて、そのお金を投資に回すことができた場合、線分BC上で投資配分を決定するとされています。
借り入れができる場合は、より高リスク高リターンな投資配分するということを覚えておくと良いでしょう。
リスク回避的投資家とは?
最後に、リスク回避的投資家について解説しようと思います。
リスク回避的投資家とは、同じリターンならリスクが低い方を選ぶ投資家とされています。
横軸にリスク、縦軸にリターン取ったグラフで考えていきましょう。
まず2つの点ABを考えてみます。
これらは2つの点はリスクが同じで、リターンは点Bの方が高いです。
この2つの投資案件があった時に、皆さんはどちらを選ぶでしょうか?
当然、リスクが同じであれば、リターンが大きい点Bを選びますよね。
それでは点Bとリターンが同じで、リスクだけが高い点Cがあった場合はどうでしょうか?
リターンが同じなのであれば、よりリスクの低い点Bを選びますよね。
リスク回避的投資家は、リスクが同じならリターンが大きい方を選び、リターンが同じならよりリスクの低い方を選ぶという特徴があります。
決して無条件に低リスクな方を選ぶとわけではないという点を覚えておきましょう。
リターンもリスクも違う場合の意思決定
もう1点、リスク回避的投資家で押さえておきたいポイントがあります。
点Aと点Cを比べると、どちらに投資するでしょうか?
点Cの方がハイリスク・ハイリターンで、点Aの方がローリスク・ローリターンとなってますね。
このようにリスクもリターンも違う場合は、その投資家のリスク許容度に応じて、どちらに投資するかを決定することになります。
このような場合でも、リスク回避的投資家だからといって、無条件にリスクが低い方を選択するわけではないので、注意しましょう。
過去問を解いてみよう (平成28年度 第18問 設問2)
それでは、ここまでの内容を過去問を解いて復習しておきましょう。
以下のグラフは、ポートフォリオ理論の下での、すべてのリスク資産と無リスク資産の投資機会集合を示している。これに関して、下記の設問に答えよ。
(設問2) 無リスク資産が存在する場合の記述として最も適切なものはどれか。
ア 均衡状態においては、すべての投資家が所有する危険資産と無リスク資産の比率は同じである。
イ 資金の借り入れが、無リスク資産利子率において無制限に可能である場合、投資家はD-E間を選択せず、F-D間から各自のリスク回避度に応じてポートフォリオを選択する。
ウ すべてのリスク回避的な投資家は無リスク資産のみに投資する
エ 点Dを選択する投資家も存在する。
無リスク資産が存在する場合の投資の意思決定について問われている問題ですね。
無リスク資産が存在する場合は、資本市場線上で投資配分を決定するのでした。
これを前提に、各選択肢を見ていきましょう。
✅選択肢ア
全ての資本家が所有する危険資産と無リスク資産の比率は同じであるとありますが、均衡状態であっても危険資産と無リスク資産の比率は自由に決められるので、誤りとなります。
✅選択肢イ
無リスク資産利子率で無制限に借入ができる場合、F-D間からポートフォリオを選択するとあります。
無制限に借り入れができるの場合は、F-D間ではなくて、D-E間で投資配分を決定するのでした。
やや細かい点ではありますが、このように過去問で問われたことがありますので、しっかりと覚えておきましょう。
✅選択肢ウ
リスク回避的な投資家は、無リスク資産にのみ投資するとあります。
リスク回避的な投資家であっても、無条件で最も低リスクな投資配分をするわけではないので、誤りとなります。
リスク回避的な投資家も、資本市場線の中から自身のリスク許容度に応じて投資配分を決定しているのでしたね。
✅選択肢エ
点Dを選択する投資家も存在するとあります。
投資家は資本市場線上で投資配分を決定し、点Dも資本市場線の点であるため、適切となります。
というわけで、選択肢エが正解となりますね。
無リスク資産が存在する場合にどのように意思決定をするのか、リスク回避的投資家にどのような特徴があるのかが問われている問題でした。
間違えてしまった方はよく復習しておいてくださいね。
まとめ
それでは最後にまとめです。
横軸にリスク、縦軸にリターンを取ると、効率的フロンティアは赤色の曲線、資本市場線は青色の直線で描けるのでした。
この論点で重要なのは、次の5つです。
- リスク資産のみの場合、効率的フロンティア上の組み合わせで投資配分を決定
- 無リスク資産もある場合、資本市場線上の組み合わせで投資配分を決定
- 借入が無い場合、A-B間で投資配分を決定
- 借入がある場合、B-C間で投資配分を決定
- リスク回避的投資家は自身のリスク許容度に応じて投資配分を決定
リスク回避的投資家は、リスクが同じ場合によりリターンが高い方、リターンが同じ場合によりリスクが低い方を選好しますので、この点も覚えておくと良いでしょう。
というわけで、今回は効率的フロンティアと資本市場線について解説してみました。
個人的に面白かったのは、現実のデータで日本株と米国株の投資配分ごとのリスクとリターンを集計してみた結果、しっかりと市販のテキストで解説されているような効率的フロンティアや資本市場線が描けた点ですね。
いかに日本株がローリスクだからといって、日本株だけに投資しているという方は、ご自身の投資配分を見直してみても良いかもしれませんね。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
勉強頑張ってください!応援しています!!