はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は、外国為替レートの決定要因について解説していこうと思います。
本業で金融機関に務めている方や、投資に興味のある方にとっては難しくない論点ですが、円安・円高と聞くだけで頭がこんがらがるという方とっては取っつきにくい論点かと思います。
最近は円安が進行しているので、ニュースでもこの話題に触れることが増えてきました。
今年の本試験でも出題される可能性が高いと思いますので、この機会にマスターしておきましょう。
変動相場制とは?
まずは円安・円高について認識を合わせるために、変動相場制について復習しておきましょう。
変動相場制では、為替レートは通貨の需要と供給のバランスによって決定されます。
例えば今、円が欲しい人とドルが欲しい人の人数が釣り合っていて、1ドル=100円で取引されていたとしましょう。

こちらのシーソーが釣り合っている状態が、お互いの需要量が釣り合ってることを表しているわけですね。
ここで、円が欲しい人が減って、ドルが欲しい人が増えたとしましょう。
そうするとシーソーの傾きが変わり、円が下がって、ドルが上がりました。

この状態が、円安ドル高というわけですね。
変動相場制では、円の需要量が減れば、円安になります。
今度は反対に、円が欲しい人が増えて、ドルが欲しい人が減ったとしましょう。

そうすると、円が上がって、ドルが下がりましたね。
この状態が、円高ドル安というわけです。
円の需要量が増えた結果、円高になっています。
このように、その通貨への需要量が増えれば、その通貨の価値が上がるわけです。
具体的には、円の需要が増えれば円高、円の需要が減れば円安となるわけですね。
反対に、ドルの需要が増えれば円安、ドルの需要が減れば円高になります。
ここが直感的に理解できると、次に説明する内容が理解しやすくなると思いますので、先に解説しておきました。
アセットアプローチとは?
それではアセットアプローチから内容を確認していきましょう。
アセットアプローチでは、為替レートは各国の資産に対する需要と供給によって決まると考えます。
アセットは英語で資産を表す英単語なので、覚えやすいですね。
例えばアメリカには現在、高い期待リターンの投資先が多数存在します。
米国企業の株式や債券、投資対象としての不動産などですね。
こうったものが日本の投資家にとって魅力的なのだとしたら、円をドルに換えて購入する必要があります。

このとき、ドルの需要量が増加するので、ドルの価値が上がり、円の価値が下がるわけですね。
ですので、海外アセットの購入は円安要因になるというわけです。
最近では新NISAが始まり、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)や、同じくeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)といった金融商品が人気を集めていますが、こういった投資信託に資金が集まることは円安の一因となるということが、アセットアプローチから説明できるわけです。
フローアプローチとは?
続いてフローアプローチです。
フローアプローチでは、輸出量と輸入量の差が為替に影響すると考えます。
例えば、アメリカから牛肉を輸入することを考えてみましょう。
購入する時は当然、円をドルに換えて購入する必要がありますね。

ですので、輸入量が増えれば増えるほど、ドルの需要量が増加することになりますので、円の価値が下がり、ドルの価値が上がります。
輸入した分だけ輸出もあれば、円の価値は変わらずに済みますが、輸出量が少ないと円安になってしまうわけですね。
フローアプローチの考え方に従うと、日本の貿易赤字は円安要因になるということを覚えておきましょう。
アセットアプローチでも、フローアプローチでも、結局は海外の財やサービス・資産への需要が増えれば、それだけ海外通貨の需要が増え、円安に繋がるということが、ご理解いただけたかと思います。
購買力平価説とは?
続いて購買力平価説です。
購買力平価説では、異なる国でも同じモノは同じ値段で買えるように為替レートが決定すると考えます。
有名なのは、ビッグマック指数と言われるものですね。
マクドナルドでは、全世界共通で「ビッグマック」というメニューが販売されています。
2023年時点では、日本でビックマックは450円なのに対し、アメリカでは5.58ドルで販売されていたようです。
現在の為替レートは1ドル=160円程度なので、アメリカでは約892円で購入できる計算ですね。

購買力平価説では、同じモノは同じ値段で買えるように為替レートが決定されるのでしたね。
アメリカでは5.58ドルでビッグマックが販売されていたので、これが日本と同じ450円で買えるようになるには、1ドル≒80.6円で取引される必要があります。
ですので、現在の1ドル=160円というのは、かなり円が安く評価されている、ということになります。
購買力平価説に従うと、長期的には円高に向かうというわけですね。
ただし、そもそも日本とアメリカでは人件費を始めとした各種費用が異なり、そういった要因が価格に転嫁されています。
ですので、購買力平価説の前提としている同じモノであるからといって同じ価格になる、というのは少々乱暴な理論かと思います。
この理論を現実世界にそのまま適用するときには、注意しましょう。
金利平価説とは?
最後に金利平価説です。
金利平価説では、各国間の金利差によって為替が変動すると考えます。
例えば、日本の2024年時点の政策金利は0.1%、アメリカは約5%程度で推移しています。
政策金利に基づいて銀行の金利も決定されますので、基本的には政策金利が高くなれば、その分だけ銀行の利息も高くなります。
つまり、日本とアメリカを比べると、アメリカの方が利息が高くなるわけですね。

ですので、今持っている円をドルに換えて、アメリカの銀行に預けてしまった方が、お金は増えやすくなるわけです。
ドルの需要が増えることになりますので、これが円安の要因になるということですね。
経済ニュースを見ていると、アメリカの中央銀行のFRBが金利を上げる・下げるといったことが注目されていますが、日本にもこういった影響があるため報道されているわけですね。
過去問を解いてみよう (令和元年度 第7問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
為替レートの決定に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 金利平価説によると、日本の利子率の上昇は円高の要因になる。
b 金利平価説によると、日本の利子率の上昇は円安の要因になる。
c 購買力平価説によると、日本の物価の上昇は円高の要因になる。
d 購買力平価説によると、日本の物価の上昇は円安の要因になる。〔解答群〕
中小企業診断士試験 経済学・経済政策 令和元年度 第7問
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
金利平価説と購買力平価説に関する問題ですね。
まずは金利平価説から見ていきましょう。
日本の利子率の上昇が円安・円高どちらの要因になるか、ということですが、先ほどの説明と反対に、日本の政策金利が5%、アメリカが0.1%になったと考えてみましょう。
こうなると、円で銀行に預けた方がお得となりますので、円の需要が増えますよね。
円の需要が高まると、円高になると予測できますので、選択肢aが正しいということになります。
続いて、購買力平価説によると、日本の物価上昇は円高・円安どちらの要因になるか、ということですが、こちらはビッグマックのケースで考えてみましょう。
例えば今、ビッグマックが日本では500円、アメリカでは5ドルで販売されていたとしましょう。

購買力平価説は、異なる国では同じモノは同じ値段で買えることを前提にしていましたので、アメリカでも500円で買うには、1ドル100円である必要があります。
ここで、日本の物価が上がり、日本のビッグマックは1000円、アメリカはそのまま5ドルだったとしましょう。
同じようにアメリカでも同じ値段で買うには、1ドル200円である必要があります。
日本の物価が上がることによって、1ドル100円から200円に円安となりましたね。
購買力平価説に従うと、日本の物価高は円安の要因になるというわけです。
ですので、選択肢dが正しい記述で、この問題の答えは選択肢イとなります。
以上のように、与えられた条件に基づいて順序立てて考えれば、正しい選択肢を選べるかと思います。
単に丸暗記するのではなく、各理論をきちんと理解できているかが重要となる論点ですね。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は為替レートの決定要因について、4つの理論を学習しました。

まずはアセットアプローチですね。
こちらは、各国の資産に対する需要と供給で為替レートが決定するのでした。
次のフローアプローチは、貿易による輸出と輸入の差で為替レートが決まるのでしたね。
3つ目に学習した購買力平価説は、同じモノであれば同じ価格になるという前提のもと、為替レートが決まると考えます。
最後の金利平価説は、各国の金利差で為替レートが決まるとされています。
この論点では、各理論において、どのような状態になれば円安になるかを理解しておくことが重要です。
アセットアプローチでは、海外資産が買われたら円安になりますし、フローアプローチなら、輸入量が多くなれば円安、購買力平価説では、日本が物価高なら円安、金利平価説では、日本の金利が低ければ円安になるのでした。
なぜ円安になるのかも合わせて理解しておくと、本試験でどのような問題が来ても対応できると思います。
ポイントは、ドルの需要が増えれば円安、円の需要が増えれば円高になるという点で、このことがわかっていれば、理解はしやすいかと思います。
はい、というわけで、今回は為替レートの決定要因を学習しました。
こうして見てみると、米国企業の株価は好調ですし、日本は貿易赤字の状態で、日米の金利差はアメリカの方が高い状態が続いてるので、今の日本で円安が進行しているのも納得です。
投資をしている方は、このような理論を押さえておくと、完璧ではないにしても今後のレートの見通しが立つので、参考になるかと思います。
診断士の勉強は、普段の生活にも役立つ知識が学べるので面白いですね。
