はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は設備総合効率をテーマに解説していきたいと思います。
この論点はそこまで出題頻度が高くありませんが、3年から5年に一度のペースで出題されています。
計算式が複雑なので、毛嫌いしている方も多いかと思いますが、この機会にしっかりと内容を押さえていただければと思います。
設備総合効率とは?
今回が学習する設備総合効率とは、工場設備の使用効率を総合的に評価するための指標です。
下図のような生産ラインで、材料を流しながら製品を加工するような設備をイメージしておくと理解がしやすいかと思います。
設備総合効率の指標を見ることで、時間内に品質基準を満たした製品をどれだけ作れているか、というのが読み取ることができるわけですね。
具体的な計算式は、次の通りです。
設備総合効率= 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
このそれぞれの項目が理解できていないと、何のこっちゃわからないかと思いますので、この後詳しく解説していきたいと思います。
時間稼働率の計算式
まずは時間稼働率ですね。
時間稼働率とは、どれだけ実際に設備が動いていたかということを表す指標です。
時間稼働率の具体的な計算式は、次の通りです。
時間稼働率 = $\frac{負荷時間-停止時間}{負荷時間}$
この分母・分子の関係を図で表してみたいと思います。
分母側の時間は設備を動かそうとしている時間と考えてください。
このうち、どうしても故障や段取り替えなどによって機械が停止している時間があります。
これを差し引いた時間が、実際の稼働時間と言うわけですね。
ですので、時間稼働率の計算式は、次のように表すことができそうですね。
時間稼働率 = $\frac{稼働時間}{負荷時間}$
時間稼働率は設備を動かそうとしている時間に対して、実際に設備が動いた時間の割合であると考えられるわけですね。
ここまではそこまで難しくないかと思います。
性能稼働率の計算式
続いて性能稼働率です。
性能稼働率はどれだけ生産することができたかということを表す指標です。
具体的な計算式は、次の通りです。
性能稼働率 = $\frac{基準サイクルタイム×加工数量}{稼働時間}$
この計算式も図で表しながら中身を確認していきましょう。
分母側の稼働時間は実際に設備が動いている時間なのでしたね。
こちらが今、40分だったとしましょう。
一方、分子側の基準サイクルタイムは、材料を投入する時間間隔なのでした。
このサイクルタイムが10分間で、40分間のうち3個の製品を作ることができたとしましょう。
そうすると性能稼働率は、計算式に当てはめて計算すると、75%となります。
性能稼働率を計算することで、実際に設備が動いていた時間でどれだけ生産できたかを確認できるわけですね。
良品率の計算式
最後に良品率です。
良品率はどれだけ品質基準を守れているかということを表した指標です。
具体的な計算式は、次の通りです。
良品率 = $\frac{加工数量-不良品数量}{加工数量}$
図で表してみると、こちらも図で表してみましょう。
分母となる加工数量全体があって、このうちオレンジで表した部分が不良数量を指し、残った数量は良品数量となるわけですね。
ですので、次のように表すこともできます。
良品率 = $\frac{良品数量}{加工数量}$
良品率は名称から計算式が想像しやすいので、1番覚えやすい指標かと思います。
設備総合効率の計算式
それではここまでの内容踏まえて、設備総合効率の計算式を確認してみましょう。
冒頭で設備総合効率の計算式は、「時間稼働率×性能稼働率×良品率」と説明しました。
ここまでで、それぞれの項目の具体的な計算式を確認しましたね。
設備総合効率の計算式は、各項目を約分して整理すると、以下のように表すことができます。
設備総合効率 =時間稼働率×性能稼働率×良品率
=$\frac{稼働時間}{負荷時間}$×$\frac{基準サイクルタイム×加工数量}{稼働時間}$×$\frac{良品数量}{加工数量}$
=$\frac{基準サイクルタイム×良品数量}{負荷時間}$
これは何を表しているのか、図で確認してみましょう。
負荷時間は設備を動かそうとしている時間なので、こちらが60分あったとしましょう。
このうち10分間のサイクルタイムが3回行われましたが、そのうち1回は不良品だったので、良品数量は2個だったとします。
そうすると、設備総合効率は(10分×2個)÷60分となりますので、計算すると約33.3%となります。
以上のように、設備総合効率を計算することで、負荷時間内に品質基準を満たした製品をどれだけ作れているのかということが評価できるわけですね。
実務上は、設備総合効率を計算して、その設備の効率性を評価した上で、数値が低い場合は、具体的にどこに問題があるのかを、時間稼働率や性能稼働率に分解をして、ボトルネックとなっている箇所を詳しく分析していく必要があります。
工場設備を診断する際は、ぜひ一度は使ってみたい指標ですね。
過去問を解いてみよう (平成29年度 第18問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
基準サイクルタイムが2分/個に設定されている加工機械について、1,000時間の負荷時間内での設備データを収集したところ下表が得られた。この機械の設備総合効率の値を計算せよ。
中小企業診断士試験 運営管理 平成29年度第18問
設備データの内容 値 稼働時間 800時間 加工数量
(不適合品を含む)18,000個 不適合品率 20%
与えられたデータから設備総合効率を求める問題ですね。
まず表のデータに着目してみると、不適合率が20%と記載されていますので、反対に残りの80%が良品率であると読み取れます。
良品率が80%なわけですから、良品数量としては、加工数量18,000個の80%となりますので、これを計算すると14,400個となりますね。
ここまでわかれば、後は設備設備総合効率の計算式に当てはめるだけです。
計算式に当てはめて計算すると、以下のようになります。
以上の通り、設備総合効率は48%と求められます。
これがこの問題の答えですね。
設備総合効率の計算式が頭に入っていて、各項目が何を表しているのかを正しく理解していれば、難しい問題ではないかと思います。
また、この問題では稼働時間がダミーデータとして記載されていますので、こういったものに騙されないように注意いただければと思います。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回学習した設備総合効率は、工場設備の使用効率を総合的に評価するための指標なのでした。
もう少し噛み砕いて言えば、負荷時間内に品質基準を満たした製品をどれだけ作れているのかがわかる指標なのでしたね。
設備総合効率の計算式は以下のように表されるのでした。
まずは赤で示した最終的な計算式を優先的に覚えていただければと思います。
余裕がある方は時間稼働率から良品率の計算式も覚えていただいた上で、式変形して設備総合効率を導き出せる状態が理想的ですね。
はい、というわけで、今回は設備総合効率について解説してみました。
性能稼働率の計算式がやや複雑ではありますが、それ以外の項目は比較的単純です。
それぞれの項目で何を計算しているかということが理解できれば、そこまで難しい論点ではないので、動画はよく見直して復習いただければと思います。
それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。