はい、どうも中小企業診断士のたかぴーです!
今回はリーダーシップ論からフィードラー理論とパス・ゴール理論について解説していきたいと思います。
どちらもリーダーシップ論の中ではそこそこ出題頻度の高い理論となっていますので、この機会にしっかりと内容を押さえていきましょう。
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コンティンジェンシー理論とは?
前回の記事で説明したアイオワ研究・ミシガン研究などの理論は、行動類型論と呼ばれる理論です。
その内容は独裁的なリーダーと民主的なリーダーのどちらが良いのかということを様々なアプローチで検証する理論でしたね。
まだ記事を読んでいないという方は、以下リンクよりご覧ください。
さて、この行動類型論では民主的なリーダーが優れているとされましたが、現実ではどちらか一方だけが常に正しいわけではないことが言われていました。
そこで登場したのが、コンティンジェンシー理論です。
この理論はリーダーの状況に応じて求められるリーダーシップのスタイルが変化すると主張する理論となっています。
その代表例として、フィードラーの理論とパス・ゴール理論がありますので、詳しく内容を見ていきましょう。
フィードラー理論とは?
まずはフィードラー理論ですね。
フィードラーのコンティンジェンシー理論とも呼ばれています。
この理論はリーダーのスタイルに合った状況を示した理論となっています。
フィードラーは、リーダーのスタイルをLPC尺度というもので評価しました。
その具体的な方法は、リーダーに対して最も苦手とする仕事仲間に、どんな印象を抱いているかアンケート形式で回答させました。
そして、苦手な仲間について肯定的な印象を持っているか、それとも否定的かをアンケート結果から採点してリーダーのタイプを分類します。
こうして採点した結果、低LPCで苦手な仲間に否定的な印象を抱いているリーダーは仕事中心のリーダーとしています。
このリーダーは課題を効率的かつ効果的に解決する能力が高いとされています。
そして、高LPCで苦手な仲間に対して肯定的な印象を持っているリーダーは従業員中心のリーダーとされています。
このリーダーはチーム内の衝突を解決して、チームメンバーとの相乗効果を生み出すことができるとされています。
リーダーのタイプの分け方は前回学習したリーダーシップの分類と近いですね。
低LPCが独裁的なリーダー、高LPCが民主的なリーダーに近いイメージです。
フィードラー理論におけるリーダーの状況
フィードラーの理論では先ほど説明した2つのタイプのリーダーにそれぞれ適した環境があると主張しています。
具体的には、リーダーの状況を以下の3つの基準で評価しました。
- 人間関係の良さ
- 仕事の明確さ
- 権限の強さ
当然、人間関係が良くてやるべき仕事が明確で、リーダーの権限が強いほどリーダーにとっては仕事がしやすい環境ですよね。
フィードラー理論の結論
それではリーダーのタイプと状況を踏まえて、フィードラー理論の結論を見ていきましょう。
まず横軸にリーダーの状況を、縦軸に仕事の成果を取って説明しています。
右に行くことをリーダーの状況が良くて、上に行くことを仕事に成果が高いと読み取ってください。
まず、低LPCで仕事中心のリーダーは、青色グラフで描くことができます。
リーダーの状況が良い時か悪い時について、高い成果を出していることがわかりますね。
一方で、高LPCで従業員中心のリーダーは、紫色グラフで描くことができます。
状況が良い時も悪い時も高い成果を出すことはできなくて、状況が中程度の時に高い成果が出せることが読み取れますね。
このようにフィードラーはリーダーの状況に応じて求められるリーダーシップのタイプが異なるため、リーダーのタイプに応じて状況を変化させるか、状況が変化しないのであれば違うタイプのリーダーに置き換えるべきだと主張しています。
パス・ゴール理論とは?
続いて、パスゴール理論を見ていきましょう。
パス・ゴール理論は、部下の環境や能力に応じてリーダーシップの取り方を変えるべきだと主張している理論です。
まずリーダーシップの取り方は4種類あるとしました。
まずは指示型のリーダーシップですね。
こちらは部下に対して具体的な指示出しをするリーダーです。
部下が仕事の進め方がわからず悩んでいる時に、
率先してやるべきことを指示することで、部下が働きやすくなるようなイメージです。
次に支援型のリーダーシップです。
これは部下に対する共感や配慮を重視するリーダーです。
しっかりと部下の相談を受けたり、部下が働きやすい環境を構築して、部下が仕事を楽しめるように働きかけるタイプのリーダーですね。
続いて参加型のリーダーシップです。
こちらは部下に相談して、意見を取り入れながら意思決定を行うリーダーです。
こうすることで、部下は自己肯定感が向上して仕事に対して責任感が持てるようになります。
最後は達成型のリーダーシップですね。
こちらはあえて困難な目標設定をするリーダーです。
こうすることで、部下は自身の課題解決能力を存分に発揮して、仕事に対してやりがいを持って働くことができるようになります。
パス・ゴール理論では部下の能力と仕事の環境に応じて、これら4つの中から取るべきリーダーシップが異なると主張しています。
パス・ゴール理論の結論
それではパス・ゴール理論の結論を見ていきましょう。
パス・ゴール理論の主張はこのように4象限に分けたマトリックスで描いてみるとわかりやすいです。
横軸には仕事が単純か複雑か、縦軸には部下の能力が高いか低いかを表しました。
まず右下の仕事が複雑で部下の能力が低い状況は、新人社員が陥っている状況に当てはまりますね。
まだ仕事に慣れていないため、どのように仕事を進めていけば良いか分からない状況です。
このような状況には、指示型のリーダーシップが適切とされています。
手取り足取り教えてあげることで、仕事を進めてもらうようなイメージです。
続いて、左下の仕事が単純で部下の能力が低い状況は、単純作業の繰り返しをしているような状況が当てはまります。
同じルーティンワークを繰り返しているので、部下のモチベーションが上がらないような状況ですね。
このような状況では支援型のリーダーシップが適切とされています。
部下とのコミュニケーションを丁寧にとって、モチベーションを上げていくようなイメージですね。
次に、左上の仕事が単純で部下の能力が高い状況は、仕事に慣れた管理職が陥っている状況が当てはまります。
能力が高いので仕事も難なくこなせるために、仕事に対して物足りなさを感じている状況ですね。
このような状況には、参加型のリーダーシップが適切とされています。
部下に信頼を置いて、意思決定にも参加してもらうことで、仕事へのモチベーションを高めてもらうイメージですね。
最後に右上の部下の能力が高く、仕事が複雑な状況は、新規事業の立ち上げが当てはまります。
何をすればよいかわからない上に、求められる能力は高い状況ですね。
このような状況では達成型のリーダーシップが望ましいとされています。
困難な状況でも、部下の高い能力を発揮してもらうことで、部下にやりがいを持って働いてもらい、会社の業績向上も目指すイメージですね。
パス・ゴール理論では、このような部下の能力や環境に応じて、取るべきリーダーシップは、同じリーダーでも変化させるべきだと主張しています。
過去問を解いてみよう (令和元年度 第17問)
状況に即したリーダーシップに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア F.フィードラーの研究によると、組織が未成熟で管理体制が厳しい場合と、組織が成熟しており管理体制が緩やかな場合においては、人間関係志向型のリーダーシップ行動が集団の業績を高める。
イ SL (Situational Leadership) 理論によると、フォロワーの成熟度が高く、自律的な行動が可能な状態では、リーダーの参加型リーダーシップにより、フォロワーの行動が自然と集団目標に沿うようになる。
ウ パス・ゴール理論によると、「困難な目標を設定し、部下に全力を尽くすように求める」 という達成志向型のリーダーシップは、タスクが構造化されていないときに、努力すれば好業績につながるというフォロワーの期待を高める。
エ リーダー・メンバー交換理論によると、リーダーとフォロワーの関係は、①他人的関係、②知人的関係、③成熟した関係、という順序で深まっていく。関係の深まりに応じて、敬意や信頼に根差したものになり、取引的・公式的な相互作用が失われていく。
中小企業診断士試験 企業経営理論 令和元年度 第17問
それでは2つのリーダーシップ論を学んだところで、過去問を解いて復習をしてみましょう。
まずは今回学習したフィードラー理論とパス・ゴール理論が述べられている、選択肢アとウを見てみましょう。
✅選択肢ア
組織が未成熟で管理体制が厳しい場合と、組織が成熟していて管理体制が緩やかな場合と記載されいていますが、これはリーダーに取って良い状況と悪い状況について聞いていますね。
この2つの状況で望ましいリーダーシップは人間関係志向型ではなく、仕事中心型のリーダーシップでしたので、選択肢アは誤りとなります。
✅選択肢ウ
達成志向型のリーダーシップは、タスクが構造化されていない時に望ましいと記述されています。
達成型のリーダーシップは、仕事が複雑で部下の能力が高い時に望ましいとされるのでした。
選択肢の「タスクが構造化されていない」というのは、仕事が複雑であるということを意味しています。
仕事が複雑な時は達成型が望ましいので、選択肢ウが正解となりますね。
ちなみに仕事が複雑なことを「タスクが構造化されていない」、仕事が単純なことを「タスクが構造化されている」とする表現は、本試験で何度か出題された表現なので、この言い回しも合わせて覚えておきましょう。
ちなみに、まだ学習してないですが、選択肢イとエの内容も見ていきます。
✅選択肢イ
SL理論によるとフォロワーの成熟度が高く、自律的な行動が可能な状況ではリーダーの参加型リーダーシップが望ましいとされていますが、これは委任型のリーダーシップが正しいので誤りです。
✅選択肢エ
リーダーとフォロワーの関係が他人的関係、知人的関係、成熟した関係という順序で深まっていくという記述は正しいです。
一方で、関係の深まりに応じて取引的・公式的な相互作用が失われているとありますが、
こちらは逆に強まっていくので、この記載が誤りとなります。
リーダーと部下の関係が深まっていくにつれて、部下はリーダーに敬意を表していることへの見返りを求めてくるようになるわけですね。
この問題は選択肢エの内容がやや細かい論点ですが、パス・ゴール理論やその他の内容をしっかりと押さえることで、正解選択肢を選ぶ問題でした。
本試験では市販のテキストの言い回しを巧みに変えてきますので、しっかりと内容を理解して、自信をもって答えられるようにしましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
フィードラー理論はリーダーの状況と仕事の成果を2軸で表し、低LPCで仕事中心のリーダーは、リーダーの状況が悪い時と良い時の2つで高い成果を発揮するとしています。
逆に高LPCで従業員中心型のリーダーは、リーダーの状況が中程度であれば、高い成果が出せるのでした。
ちなみに、リーダーの状況は人間関係の良さ、仕事の明確さ、権限の強さの3つで評価するのでしたね。
続いてパス・ゴール理論では、部下の能力と環境によって、適切なリーダーシップの取り方が変わると主張していました。
上の図で示した、この分類を覚えていただければ、本試験でもある程度対応できるようになるかと思います。
ちなみにパス・ゴール理論の環境と部下の能力の分類は、本来もっと細かく定義されています。
今回ご紹介した覚え方は、診断士受験対策用に僕がオリジナルで作成したものですので、
その点はご承知いただければと思います。
今回はフィードラー理論とパス・ゴール理論を解説しました。
今働いている会社での上司・部下の関係を考えさせられる内容だったかと思います。
普段の仕事に生かせるのも、この試験の魅力の一つですね。
それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
それではまた次回の解説記事でお会いしましょう。勉強頑張ってください!応援しています。さようなら!!