一次試験対策

【余剰分析】自由貿易(輸入・輸出)と関税政策による余剰の変化をわかりやすく解説します!/経済学/中小企業診断士試験対策

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はいどうも、たかぴーです。

今回は自由貿易と関税の効果をテーマに解説していこうと思います。
前回の余剰分析の応用編ですね。

この辺りから過去問を上手く解けないという方も増えてくるかと思いますが、内容をバッチリ理解できれば、そう難しいものでもありません。

わかりやすく丁寧に解説していこうと思いますので、是非最後までご覧ください。

YouTube動画でも解説中!

消費者余剰と生産者余剰

まずは前回の復習です。

余剰とは取引による利益のことで、横軸に取引量、縦軸に価格を取ると、需要曲線は右肩下がりの直線、供給曲線は右肩上がりの直線で表せるのでした。

消費者余剰と生産者余剰

そして、需要曲線と供給曲線の交わったところで価格が決まり、需要曲線と価格の間の領域を消費者余剰、供給曲線と価格の間の領域を生産者余剰と呼ぶのでしたね。

この価格と各曲線の間の領域が余剰だという考え方は、この後も使っていきますので、改めて確認しておいてください。

この辺りがよくわからないという方は、前回の記事を見てからこの記事に戻ってきていただければと思います。

余剰分析_サムネイル
【余剰分析】消費者余剰と生産者余剰の読み取り方、政府余剰と死荷重の関係を解説します!/経済学/中小企業診断士試験対策 はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は余剰分析をテーマに解説していこうと思います。本試験では様々なパターンの問題が出題されま...

輸入による余剰の変化

それでは、輸入したときの余剰の変化を確認してみましょう。

国内価格より安く輸入すると、消費者余剰は増えて、生産者余剰は減ります
図を使いながら確認してみましょう。

先ほどと同じ需要曲線と供給曲線を描いてみました。
今、この財は1個あたり200円で取引されていることが読み取れますね。
ここで、この財を1個あたり100円で輸入したとしましょう。

輸入による余剰の変化

価格が下がったので、取引価格は200円から100円に下がります。
こうなると消費者としてはより多く購入したくなる一方で、生産者は価格を100円に合わせると利益が少なくなりますので、あまり生産したくなくなりますね。
このあたりを図から読み取ってみましょう。

価格が下がったことで、需要曲線と供給曲線との交点は2個、6個の2つとなりました。
このうち、2個は1個100円でも生産しても良いと考える国内企業による供給量で、残りの4個分については、輸入に頼るということになります。

輸入を行うことで、国内全体の需要量は4個から6個にまで増えて、そのうち2個は国内生産、4個は輸入となるわけですね。

余剰は価格と各曲線の間の領域なので、ですので、消費者余剰は需要曲線と新しい価格100円の間の領域、生産者余剰は供給曲線と価格の間の領域となります。

輸入前と比べると、消費者余剰が増えて、生産者余剰は減っていることが読み取れます。

また、消費者余剰のうち、緑の領域については、輸入前の余剰には含まれない領域でした。
これが、輸入によって増加した社会的余剰ということになります。

輸出による余剰の変化

輸入をしたことによって、国内生産者の利益は減りますが、国内全体の余剰は増えるというわけですね。

輸出による余剰の変化

続いて、輸出した場合を見ていきましょう。

国際価格が国内より高いと、消費者余剰は減って、生産者余剰は増えます
こちらも図を使いながら確認してみましょう。

先ほどと同じような需要曲線・供給曲線を描きました。
今度はこの財が国際価格で300円で取引されていることを考えてみましょう。
この場合、国内価格も200円から300円に引き上がります。

輸出による余剰の変化

需要曲線との交点は2個、供給曲線との交点は6個となります。

価格が高くなると、消費者の需要量は減る一方で、生産者はより多くの利益が見込めますので、生産量を増やしたくなりますよね。
ですので、国内消費者の需要量は2個で、残りの4個分については海外へ輸出することになります。

余剰についてみてみると、消費者余剰は需要曲線と新しい価格300円の間の領域、生産者余剰は供給曲線と価格の間の領域となります。

輸出前と比べると、今度は生産者余剰が増えて、消費者余剰は減っていることが読み取れますね。
ここで生産者余剰のうち、緑の領域については、輸出前の余剰には含まれない領域でした。

輸出による社会的余剰の増加

これが、輸出によって増加した社会的余剰ということになります。
輸出をしたことによって、国内消費者の余剰は減りますが、輸入と同じように国内全体の余剰は増えるというわけですね。

関税政策の効果

続いて、輸入に対して関税を課した場合の余剰の変化を見てみましょう。

関税を課すと生産者余剰は増えますが、社会的余剰は減少することとなります。

先ほどまでと同じケースで、輸入価格が100円の場合は、国内生産量は2個、輸入量は残りの4個となり、消費者余剰と生産者余剰は、それぞれこの領域で表させるのでした。
ここで、政府がこの輸入品1個あたり50円の関税を課したケースを考えてみましょう。

政府による関税

価格が150円に変わることで、供給曲線との交点は3個、需要曲線との交点は5個となりました。

価格が上がったことで、国内生産者の生産量は増えた代わりに、全体の需要量は減っていることが読み取れますね。

余剰についても見てみましょう。
消費者余剰は需要曲線と新しい価格150円の間の領域、生産者余剰は供給曲線と価格の間の領域となります。

また、今回は課税を行った政府も利益を得ていますよね。
全体の需要量5個と国内生産量3個の差分が輸入量となりますので、この輸入量1個あたり50円の課税ということで、この緑の領域が政府の余剰となります。

関税政策の効果

さらに、この黒三角で塗りつぶした部分は関税前には消費者余剰に含まれていましたが、これが余剰に含まれなくなってしまいました。
つまりこの部分が死荷重となり、関税により減少した社会的余剰と読み取れるわけですね。

以上のような流れで、関税による余剰変化を読み取ります。
ひとつひとつ順番に理解していくことで、多少の応用問題にも対応できると思いますので、ここまでの流れを繰り返し視聴して理解を深めていただければと思います。

貿易創出効果と貿易転換効果

最後に、本試験で用語として登場する、貿易創出効果と貿易転換効果の内容を確認しておきましょう。

貿易創出効果とは、自由貿易によって生み出される余剰のことを言い、貿易転換効果とは反対に、自由貿易によって失われる余剰のことを言います。

図で確認してみましょう。
今、A国から100円で輸入できる財について、200円の関税を課して、300円で取引されていたとします。

A国に対する課税

このとき、国内生産量は3個、輸入量は全体の需要量5個との差分となりますね。
ここで、B国と1個200円で自由貿易を締結したとしましょう。

B国との貿易

自由貿易なので、この輸入には関税がかかりません。
当然、価格は300円より低いので、市場での取引価格は200円となります。
このとき、国内生産量は2個、輸入量は全体の需要量6個との差分となりますね。

さて、ここで余剰について見てみると、A国に関税をかけていた頃の政府余剰は緑色の領域、死荷重はグレーの三角形の領域となりますね。

貿易創出効果と貿易転換効果

一方で、B国との自由貿易締結後は、消費者余剰は赤、生産者余剰は青の領域となります。
ここまで整理した上で、貿易創出効果と貿易転換効果を見ていきましょう。

まず、図に黄色の三角形で表した領域は、もともと死荷重でしたが、B国との取引開始により、消費者余剰となっています。
これが自由貿易締結により増加した余剰となりますので、貿易創出効果となるわけですね。

一方、図の紫で表した領域は、もともと政府の余剰でしたが、関税がなくなったことで余剰に含まれなくなってしまいました

その他の消費者・生産者にも含まれず、完全に失われてしまった余剰となりますので、これが貿易転換効果となります。

以上のように、創出効果・転換効果を読み取るには、関税による政府余剰を正しく読み取った上で、自由貿易締結による余剰の変化まで正確に読み取る必要があるので、難易度は高めです。

まずは関税効果を読み取れるようになってから、余裕があればこの用語に対する関連問題にもチャレンジしてみると良いでしょう。

過去問を解いてみよう (平成26年度 第21問)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

関税撤廃の経済効果を、ある小国の立場から、ある財の市場のみに注目した部分均衡分析の枠組みで考える。下図は当該財の国内供給曲線と、当該財に対する国内需要曲線からなる。関税撤廃前には当該財の輸入に関税が課され、当該財の国内価格はP0であり、関税収入は消費者に分配されていた。関税が撤廃されると当該財の国内価格はP1となった。関税撤廃による変化に関する記述として最も適切なものを下記の解答群から選べ。

中小企業診断士試験_経済学_平成26年度第21問

[解答群]
ア 関税収入はeだけ減少する。

イ 消費者余剰と生産者余剰の合計はb+d+e+fだけ増加する。

ウ 消費者余剰はcだけ増加する。

エ 生産者余剰はd+e+fだけ減少する。

中小企業診断士試験 経済学 平成26年第


関税撤廃による余剰の変化を読み取る問題ですね。
まずは選択肢を見る前に、各余剰を確認してみましょう。

まず、関税を課していたときは、価格がP0となりますので、輸入量と関税額で表される緑の領域が政府余剰となり、グレーの三角形の部分が死荷重となります。

中小企業診断士試験_経済学_平成26年度第21問_解説

関税が撤廃されることで、消費者余剰が赤、生産者余剰が青の領域となります。
関税撤廃により、政府余剰も死荷重も無くなるわけですね。

それでは選択肢を見ていきましょう。

✅選択肢ア
関税収入はeだけ減少するとありますが、確かに関税収入である政府余剰はeだけで、
関税撤廃により全て消費者余剰となりましたので、正しい記述ですね。
選択肢アがこの問題の正解となります。

念のため、他の選択肢も見ていきましょう。

✅選択肢イ
は、消費者余剰と生産者余剰の合計はb+d+e+fだけ増加とありますが、増加する余剰は死荷重であったd+fだけとなります。
政府余剰だったeも消費者余剰に含まれるようになったように見えますが、問題文に関税収入は消費者に分配とありますので、正確にはeはもともと消費者余剰だったということになりますね。

✅選択肢ウ
消費者余剰はcだけ増加ありますが、もともと死荷重だったd+fとcが消費者余剰の増加分となりますので誤りです。
cは関税時には生産者余剰であった点に注意ですね。

✅選択肢エ
生産者余剰はd+e+fだけ減少とありますが、前の選択肢でも確認した通り、生産者余剰で減少するのはcだけとなりますので誤りです。

以上のように、余剰分析の問題は、まず何がどうなっているか、今回の場合は関税を課している状態から撤廃したという内容を読み取った上で、グラフからどの部分がどの余剰に当てはまるかを確認しましょう。

これさえできれば、選択肢の正誤判断は難しくないかと思います。

まとめ

それでは最後にまとめです。
今回は関税による効果を解説しました。

関税を課すと、自由貿易より生産者余剰は増えますが、社会的余剰は減少するのでしたね。
いつもどおり需要曲線と供給曲線を描き、自由貿易の時は100円で輸入できる財に50円の関税を課すと、国内生産量は3個、全体の需要量は5個となり、その差分が輸入量となるのでしたね。

関税政策の効果

余剰は価格と各曲線の間の領域でしたので、消費者余剰は赤、生産者余剰は青の領域で表されます。
また、関税収入は輸入量×関税額となりますので、政府余剰は緑の領域となりますね。

最後に、自由貿易時は消費者余剰であった黒三角形の部分が余剰として失われますので、死荷重となります。
関税により、国内生産者の保護には繋がりますが、社会全体の余剰は減少していることが読み取れます。

はい、というわけで、今回は自由貿易と関税をテーマに解説してみました。

余剰分析の基礎的な内容を理解していないと攻略が難しいですが、本試験においてはかなりの頻出論点です。

おすすめの勉強法は動画で紹介した通りの順序で、実際にご自身の手で自由貿易時、関税時の各余剰を描いてみることです。

自分で作図できるようにした上で過去問を解くと、一段と深い理解が得られるかと思います。

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ABOUT ME
たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

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