中小企業診断士のたかぴーです。
今回は差異分析について解説していきたいと思います。
初学者の方にとって、最初はとっつきにくいかもしれませんが、一度理解してしまえばそこまで難しいものではありません。
本試験で出題されたら確実に正答しておきたい論点となりますね。
この機会にしっかりと内容を理解しましょう。
↓YouTube動画でも解説中!
差異分析とは?
差異分析とは、計画した売上や費用と実績との差分を分析する手法のことをいいます。
分析には売上高差異分析と費用差異分析の2種類があって、どちらも数量と価格に分解して、予算と実績の差分を分析するという内容となっています。
実際に分析をお見せした方がイメージしやすいと思うので、ここからは具体的なやり方を確認していきましょう。
売上高差異分析のやり方
まず売上高差異分析ですね。具体的なケースで考えてみます。
今、ある商品の売上計画として、1個300円の商品を100個販売し、売上高30,000円を目指していたとしましょう。
計画としてはこの通りだったのですが、実際に販売してみたところ、平均価格は250円、数量は80個しか売れずに、20,000円の売上高で着地したとしましょう。
このもともと計画していた30,000円と、最終的な売上高20,000円の差分の要因を価格変化と数量変化に分解して分析するのが差異分析となります。
具体的なやり方を確認してみましょう。
まず分析は、ボックス図を使って考えていきます。
ボックス図の横軸は数量、縦軸には価格を取りますので、計画売上は数量が100個、価格は300円で、30,000円と表すことができますね。
ところが、実際の数量は100個ではなく80個でしたので、計画よりも販売数量が20個少なかったと言うわけですね。
数量差異を計算する際は、販売数量-20個×販売価格300円=-6,000円と計算できます。
計画よりも販売数量が少なかったことで、6,000円のギャップが生まれてしまったと言うわけですね。
一方、価格面では本来300円で売りたかったものが250円で販売されましたので、-50円のギャップがあります。
ですので、価格差異は販売数量-50円×実際の販売数量80個=-4,000円と計算できます。
価格を下げることで、計画売上から-4,000円分のギャップが生まれたと読み取ることができるわけですね。
この2つの差異見比べてみると、数量差異の方がより大きかったので、売上目標に到達できなかった要因としてより大きかったのは、販売数量が足りなかったためだと分析することができますね。
このように、差異分析を行うことで、目標売上が届かなかった原因が、より詳細に分析できるようになります。
ボックス図を描くときは、グラフを描くと異なり、必ずしも右側に行くほど数量が大きくなり、上側に行くほど価格が高くなるわけではありません。
最初は違和感があるかもしれませんが、問題を解きながら慣れるようにしましょう。
ここで1つ用語解説です。
数量差異・価格差異ともに、利益にプラスの影響があれば有利差異、利益にマイナスの影響があれば不利差異と言います。
今回は価格・数量ともに利益にとってはマイナスの影響があったので、どちらも不利差異であったと読み取れますね。
費用差異分析のやり方
続いて費用分析のやり方を説明します。
今度はある商品の原材料を200円で100個仕入れて、総費用としては20,000円かかると、計画していたとしましょう。
実際に仕入れてみると、原材料は150円で仕入れることができたので、少し多めに120個購入したとします。
この時の総費用は18,000円と言うことになりますね。
この時の総費用は、当初予算よりも2,000円少なく仕入れることができました。
この要因を数量と価格に分けて分析してみたいと思います。
やり方は売上分析の時と一緒ですね。
横軸に数量100個、縦軸に価格200円を取り、計画費用は20,000円と表すことができます。
数量に関しては、実際は120個と20個多く仕入れたので、数量差異は数量20個×計画価格200円=+4,000円と計算ができます。
価格に関しては、もともと計画していた200円より50円安く、150円で仕入れることができました。
価格差異は、価格-50円×数量80個=-6,000円と計算できますね。
先程説明した通り、利益にプラスの影響があれば有利差異、利益にマイナスの影響があれば不利差異と言うのでした。
費用は金額が少なく済むほど利益に対してはプラスとなりますので、価格差異−1,000円は有利差異で、数量の+4000は不利差異と読み取ることができます。
差異の結果がマイナスなら有利差異なのか、不利差異なのかというのは、売上高差異分析と費用差異分析では、有利不利が逆転してしまいます。
単にマイナスの値が出てきたから不利差異だと判断してしまわないように、注意していただければと思います。
参考:混合差異とは?
参考までに、混合差異という用語を確認しておきましょう。
先程の費用差異分析と全く同じケースを使ってご説明します。
費用差異分析の際、計画費用が20,000円で、数量差異は+4000円と計算しましたが、価格差異を計算する際は、-50円に対して実際の販売数量120個をかけることに、違和感を持った方がいるのではないでしょうか?
数量差異計算と、やり方を合わせるのであれば、予算と−50円にかけるべきは、計画数量である100個であるはずです。
こうすると、価格差異は-5,000円と計算できますね。
残りの余った領域である 数量20個×価格-50円=-1,000円 は混合差異と呼ばれています。
混合差異は、数量と価格の両方のギャップによって生まれた差分だと考えるわけですね。
もちろんこういった考え方もあるのですが、仕入れ価格は外部の仕入れ先に依存する要素が大きく、自社でコントロールできるのは、数量だけであるケースが多いため、混合差異は価格差異に含めて、数量差異だけを正確に把握するというやり方が一般的なようです。
混合差異を計算させる問題が出題される可能性は極めて低いのですが、自分自身が初めてこの論点を勉強した際に違和感を持ったところだったので、解説を加えてみました。
試験対応上は先ほど説明した売上高差異分析と費用差異分析の内容さえ知っていれば、充分対応かと思います。
過去問を解いてみよう (平成28年度 第7問 改題)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
当月の直接材料に関するデータは以下の通りであった。このとき価格差異として最も適切なものはどれか。
中小企業診断士試験 企業経営理論 平成28年度第7問 改題
消費数量 価格 実際 820kg 490円/kg 標準 800kg 500円/kg ア 10,000円の有利差異
イ 8,200円の有利差異
ウ 10,000円の不利差異
エ 8,200円の不利差異
費用差異分析で価格差異を求める問題ですね。
実際にボックス図を描いて数量差異と価格差異を確認してみましょう。
まずは当初予定にあたる標準費用を計算してみると、数量は800kg、価格は500円なので、
標準費用は400,000円と計算できますね。
数量に関しては、実際の消費数量が820kgだったので、+20kgのギャップがあります。
これに対して500円をかけると、数量差異は 10,000円と計算できますね。
価格差異は、実際の価格が490円で−10円のギャップがあり、これに対して実際の消費数量の820kgをかけて、−8,200円と計算できます。
選択肢を見てみると、8,200円と計算しているものは、選択肢のイとエの2つとなります。
違いは有利差異なのか、不利差異なのかということですね。
改めて思い出してみると、利益に対してプラスの影響なのが有利差異、マイナスの影響なのが不利差異なのでしたね。
今回は費用差異計算で、価格差異がマイナスであると計算しています。
費用が当初計画よりも少なくて済むと、利益に対してはプラスの影響がありますので、この価格差異は有利差異と読み取ることができますね。
以上から、選択肢イが正解となります。
問題は差異分析の中でもかなり基礎的な内容となっています。
数量差異・価格差異が正しく計算できたのかということと、有利差異・不利差異を正しく読み取ることができたか、改めて確認してみていただければと思います。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回学習した差異分析は、計画した売上・費用と、実績の差分を分析する手法なのでした。
実際のやり方としては、計画数量と計画価格を掛け合わせることで、計画売上と計画費用を把握します。
その上で、実際の数量との差分に計画価格を掛け合わせることで数量差異を計算し、実際価格と計画価格の差分に、実際の数量をかけることで、価格差異を計算します。
売上・費用ともに利益にプラスの影響があれば有利差異、マイナスの影響であれば不利差異と読み取るのでしたね。
この辺の内容が押さえられていれば、この論点はバッチリかと思います。
というわけで、今回は差異分析について解説してみました。
この手の論点は、とにかくご自身でボックスを描きながら、実際に問題を解いてみるのが記憶定着には一番と思いますので、ぜひ今回解説した以外の過去問にもトライしていただければと思います。
また、原価計算の観点では、さらに難しい論点もありますので、後日解説したいと思います。楽しみにお待ちください。
それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
それではまた次回の解説記事でお会いしましょう。勉強頑張ってください!応援しています。さようなら!!