はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです!
今回は予算制約線をテーマに解説していきたいと思います。
本試験でも出題頻度の高い、重要論点となっていますので、この論点を学習済みを方にも、是非改めてご覧いただき、理解を深めてもらいたい論点となっています。
また、予算制約線と無差別曲線の関係にも触れていきますので、前回の記事をまだ見てないという方は、是非、そちらもご覧ください。
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消費量はどのように決まる?
まずは無差別曲線と効用に関して簡単に復習しましょう。
横軸にビールの消費量、縦軸に焼き鳥の消費量をした時、無差別曲線は原点に向かって凸のU字型の曲線として描けるのでした。
そして、差別曲線はグラフの右上の方向に行くほど効用、つまり消費者の満足度は増加するのでしたね。
これだけの条件ですと、焼鳥やビールの消費量を増やすほど効用が増えるので、消費者は永遠に消費を続けそうに思えます。
では実際、効用が増加する限り、消費者は消費行動を続けるのでしょうか?
この問題に対する答えを考えるために、今回解説する予算制約線という概念があります。
予算制約線とは?
まず予算制約線とは、予算をすべて使った場合に購入できる2財の消費量を表した直線のことを言います。
なお、正確には予算ではなく所得とされていますが、予算とした方が理解がしやすいので、この記事では所得を予算と置き換えて説明をしたいと思います。
それでは具体例を用いながら詳しく説明したいと思います。
今、予算が3,000円で、ビール一杯500円、焼き鳥一本100円の居酒屋で食事をしたいと思います。この時、予算をすべて使い切る際の、ビールと焼き鳥の消費量について考えてみます。
数式で表現するために、ビールの消費量をX杯、焼き鳥の消費量をy本として考えてみましょう。
そうすると、500円のビールをX杯消費して、100円の焼き鳥をy本消費した合計が、予算3,000円であるという数式として表すことができますね。
この式を変形すると100y=-500x+3,000円と変形できます。
両辺を100で割るとy=-5X+30となりますね。
y=ax+bという式に変形ができましたので、この数式をグラフで表現できそうです。
横軸にビールの消費量、縦軸に焼鳥の消費量を取ると、左の数式は次のような直線で表すことができます。
この緑色の直線が予算制約線となるわけですね。
予算制約線上の点は、どの点でも予算を全て使いきっていると読み取ることができます。
例えば、焼き鳥の消費量を30本の点については、予算をすべて焼き鳥に全振りしていると読み取ることができますし、予算制約線の真ん中の点は、ビール2杯・焼鳥20本消費して
予算をすべて使い果たしたと読み取ることができます。
また、ビールの消費量は6杯の点は、予算すべてビールに使い込んだと読み取ることができますね。
ご覧の通り、予算の使い方は様々考えられます。
では、消費者はどのようにして実際の消費量を決めるのでしょうか?
それを考えるために、無差別曲線と組み合わせて考える必要があります。
無差別曲線と予算制約線の関係
経済学では、実際の消費量は無差別曲線と予算制約線が接する点で決まると考えます。
図で表してみますと、先ほどの予算制約線と無差別曲線の接点が実際の消費量になると考えるわけですね。
どうしてこのようになるのか、もう少し詳しく考えてみましょう。
無差別曲線は右上の領域に行くほど効用が増加するのでしたね。
そこで、青色の無差別曲線を描いてみました。
この無差別曲線は確かに黄色の差別曲線よりも効用が高いのですが、予算制約線と交わる点がありませんので、青の無差別曲線上のどの点を選んでも予算オーバーということになります。
ですので、実際の消費量は青の無差別曲線より下の領域で決まるということになります。
また、赤色の無差別曲線についても考えてみましょう。
今度は予算制約線と交わる点が2つあります。
このどちらも効用水準は同じですが、もっと効用を高くする組み合わせがありそうです。
ですので、実際の消費量は赤の無差別曲線より上の領域で決まるということになります。
結果的に、赤と青の矢印がちょうど釣り合う、黄色の無差別曲線との接点で実際の消費量が決まるということになります。
実際にグラフを読み取ると、ビールは3杯、焼き鳥が15本という消費量となっていますので、確かに妥当性のある消費量の組み合わせに感じますね。
このように経済学では、皆さんが無意識で決定している消費行動を数学的に考えます。
こうすることで、ある程度消費者の消費行動を予測することができ、企業のマーケティング施策や政府の政策を検討することができるようになるわけですね。
予算制約線のシフト
続いて、予算制約線のシフトについて考えていきたいと思います。
一方の価格が変化する場合
まず、予算制約線のシフトの法則の1つ目として、一方の価格が変化する際、その財の最大消費可能数だけが変化するという法則があります。
先ほどこのような予算とビールと焼き鳥の条件を考えましたが、今度はビール一杯が500円から600円に値上がりしたことを考えてみましょう。
この時、予算を使い切るビールと焼き鳥の消費量を数式で表してみると、ビールの価格が600円に上がったので、このような数式で表すことができます。
式を変形するとy=-6x+30と表すことができますね。
ビール一杯500円の時の予算制約線は、緑色の直線で描くことができましたが、ビール一杯600円予算制約線を描いてみると、青色の直線のように描くことができます。
焼き鳥の最大消費可能数に変化はありませんが、ビールの最大消費可能数が6本から5本に減っていることがわかりますね。
考えてみれば当たり前のことですが、同じ予算でビールの価格が上がっているため、その分、MAXで買える本数が少なくなっていることを表しています。
このように、予算制約線のシフトは、その予算で買うことのできる最大消費量がどのように変わるかを考えると、理解がしやすいです。
続いて、ビールの価格が500円から430円に値下がりしたことを考えてみましょう。
同じように数式で表してみると、y=-2.5x+15と表すことができます。
こちらもグラフで描いてみると、今度は次のようなピンクのグラフで表すことができますね。
今度は値下がりによって、ビールの最大消費可能数が増加していることを表しています。
ここまで見てきた通り、ビールの価格変化した際は、ビールの最大可能数にだけ影響するということを覚えておいてください。
逆に言うと、ビールの価格変化によって焼き鳥の最大消費可能数は変化しないわけですね。
それでは、焼き鳥の価格が一本100円から200円に変化するとどうでしょうか?
勘のいい皆さんはもうわかっていると思いますが、念のため確認してましょう。
この時の数式はy=-2.5X+15と変形することができます。
グラフで表してみると、このような青色のグラフで表すことができますね。
今度はビールの最大消費可能数は変わらず、焼き鳥の最大消費可能数が30本から15本に減少していることがわかります。
先ほどとは違って、焼き鳥の価格の変化量変化は、焼鳥の最大可能数に影響していると言えますね。
繰返しになりますが、価格が変化することによって、その財の最大消費可能数だけが変化するということを覚えておきましょう。
また、値上がり・値下がりによって、最大消費可能数がどちらの方向に移動するのかということも、合わせて覚えていただければと思います。
予算が変化する場合
続いて、予算制約線のシフトの法則2つ目として、予算が変われば両財の最大消費可能数が変化するというものがあります。
ここでは予算が3,000円だったものが、1,500円に変わることを考えてみましょう。
この時の数式はy=-5X+15と変形することができます。
こちらもグラフで表してみると、次のグラフに表すことができますね。
ビールの消費最大消費可能数は6本から3本に、焼き鳥も30本から15本にそれぞれ半減しています。
これも考えてみたら当たり前で、予算が半分になっているので、ビールと焼き鳥の最大消費可能数も半分になっているということを表していますね。
もちろん使える予算が倍になれば、最大消費可能数は倍になります。
いずれの場合においても、予算の変化は予算制約線を平行移動させるという点を覚えていただければと思います。
一方の財の価格変化ではグラフの傾きが変わりましたが、予算が変わるとグラフの傾きは変わらずにグラフが平行移動するわけですね。
この点も本試験で問われやすい部分なので、しっかりと理解して覚えておきましょう。
過去問を解いてみよう (平成28年度 第15問)
それでは、ここまでの内容を、過去問を解いて復習してみたいと思います。
ある個人が限られた所得を有しており、財X1と財X2を購入することができる。下図には、同一の所得にもとづいて、実線の予算制約線Aと破線の予算制約線Bとが描かれている。また、予算制約線Aと点Eで接する無差別曲線と、予算制約線Bと点Fで接する無差別曲線も描かれている。下図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
ア 等しい所得の下で予算制約線が描かれているので、点Eと点Fから得られる効用水準は等しい。
中小企業診断士試験 経済学 平成28年度 第15問
イ 予算制約線Aと予算制約線Bを比較すると、予算制約線Bの方が、財X2の価格が高いことを示している。
ウ 予算制約線Aと予算制約線Bを比較すると、予算制約線Bの方が、実質所得が高いことを示している。
エ 予算制約線Aと予算制約線Bを比較すると、両材の相対価格が異なることが示されている。
予算制約線と無差別曲線に関する問題ですね。
これまで所得を予算として解説してきましたが、本試験では所得として出題される点に注意しましょう。
とはいえ、考え方は全く変わりません。
✅選択肢ア
点Eと点Fから得られる効用水準は等しいとありますね。
無差別曲線は右上の領域に行くほど、効用水準が増加するのでした。
ですので、点Eと点Fは効用水準が異なるということから、選択アは誤りであると言えますね。
✅選択肢イ
予算制約線A,Bを比較するとBの方が、財X2の価格が高いことを示しているとあります。
グラフを見てみると、財X1の最大消費可能数が減少していることがわかりますね。
先ほど解説したとおり、最大消費可能数が減少するのは、その財の価格が増加した時でした。
今最大消費可能数が減少しているのは財X2ではなく財X1ですので、この選択肢も誤りであることがわかりますね。
✅選択肢ウ
予算制約線A,Bを比較するとBの方が実質所得が高いことを示しているとあります。
実質所得が高いと、それだけ多くの財を消費できると考えられますね。
ところが、先ほど説明した通り、予算制約線Bは財X1の値上がりによって、最大消費可能数が減少しています。
これは実質所得が低くなっていることを表していますので、選択肢ウも誤りであるとわかります。
✅選択肢エ
予算制約線A,Bを比較すると、両財の相対価格が異なることを示しているとあります。
相対価格とは財X2の価格に対する財X1の価格と捉えて良いかと思います。
こういう問題は、具体的に数字を当てはめると考えやすいですね。
2つの財がともに100円だったとしましょう。
これまで見てきた通り、財X1の価格が値上がりしたので、200円になったとします。
そうすると、財X2の価格に対する財X1の価格は100円から200円に変わっているので、
相対価格が変化していると読み取ることができますね。
ですので、選択肢エが正解であるとわかります。
ちなみに、2つの財の価格比は、予算制約線の傾きからも読み取ることができます。
予算制約線AとBでは、明らかにグラフの傾きが異なりますので、相対価格が異なると判断できますね。
この点も覚えておくと便利ですので、余裕のある方は覚えておきましょう。
まとめ
今回は予算制約線について学習しました。
予算制約線とは、予算を全て使った場合に購入できる2財の消費量を表した直線なのでしたね。
また、消費者の実際の消費量は、予算制約線と無差別曲線の接点で決まるのでした。
本試験では、予算制約線のシフトについてよく問われます。
一方の価格が変化する際、その財の最大消費可能数だけが変化するという点、予算が変われば、両財の最大消費可能数が変化して、予算制約線は平行移動するという点さえ覚えておけば、大抵の問題には対応できます。
どうしてこのようなシフト移動するのかという理由も合わせて理解しておくと、応用力が身に付きますので、ご自身でグラフを描きながら理解を深めてみてください。
というわけで、今回は予算制約線について解説してみました。
経済学では、ここからさらに応用論点が展開されていきますので、途中でつまずかないように、繰り返し動画を見て、しっかりと内容を理解いただければと思います。
また、今回解説した内容出来る問題が、過去の本試験で何度も出題されています。
理解を定着させるためには、問題演習が何より大切ですので、この動画を見終わったら、すぐにでも他の過去問にチャレンジしてみてくださいね。
それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
それではまた次回の解説記事でお会いしましょう。勉強頑張ってください!応援しています。さようなら!!