はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回はリバース・イノベーションとリバース・エンジニアリング、リエンジニアリングをテーマに解説していきたいと思います。
それぞれは全く異なる概念ですが名称がよく似ているので、本試験では用語の意味の違いがよく問われます。
本記事では用語の意味の違いから、覚え方までをコンパクトにまとめてみましたので、ぜひ最後までご覧ください。
リバース・イノベーションとは?
最初にリバース・イノベーションとは、新興国や発展途上国で開発した製品やサービスをグローバルに普及させることを言います。
例えば、アメリカのような先進国で最先端の技術が使われた製品を開発されて、インドなどといった新興国に輸出するのは、通常のイノベーションの普及パターンです。
リバースイノベーションはこれとは反対に、新興国のニーズに合わせた製品やサービスを
先進国に普及させるようなイノベーションのタイプを言います。
通常のイノベーションとは逆方向を向いているので、リバース・イノベーションと言うわけですね。
今回はより具体的な事例として、株式会社LIXILをご紹介したいと思います。
- 場所:ケニア郊外
- ニーズ:水の確保が難しい
- 製品:循環型の無水トイレ
- 先進国:災害設備として利用
LIXILでは、ケニアの郊外向けに、水の確保が難しいという課題を解決するため、循環型の無水トイレというものを開発しているそうです。
無水トイレという名称からわかるように、全く水を使わないで用を足せるという製品です。
こちらは新興国向けに開発された製品ではありますが、こちらを先進国の災害用設備として利用するという動きがあるそうです。
まさに新興国のニーズに合わせた製品を、先進国に輸出しているというわかりやすい例となっていますね。
リバース・エンジニアリングとは?
リバース・エンジニアリングとは既存の製品を分解・解析して、自社製品の開発に生かすことを言います。
こちらも具体的な例を見ていきましょう。
例えばデスクトップパソコンを分解して、どのような部品が使用されていて、どのように組み立てられているのかを分析したり、LINEといったアプリケーションについて、そのプログラムのソースコードを解析することで、どのようなプログラム言語を使用して、どのようにアプリケーション動かしているのかということを分析するイメージです。
このようにを製品を分解・解析することによって、自社製品の開発に活かしていきます。
こうすることで、自社でゼロベースで製品を開発するときに比べて開発コストが削減できたり、自社より優れている製品を参考にすることによって製品品質が向上したりとメリットがあります。
ちなみに、業務用ソフトウェアを購入する際の契約書や約款には、リバース・エンジニアリングを禁止する条項が盛り込まれていたりします。
やはり作り手側からすると、製品を模倣して販売されると売上毀損に繋がりますので、リバース・エンジニアリングを禁止する契約を結ぶ事は非常に重要な観点かもしれませんね。
リエンジニアリングとは?
リエンジニアリングとは、業務プロセスを抜本的に見直し、再構築することを言います。
ここでも具体的な例を見ていきましょう。
例えば、これまで出社必須の勤務形態で、長時間かけて毎日出社していたところを、フルリモートワークを導入することで、基本的に出社しないで勤務するような形態に変えるようなイメージですね。
これに伴い、リアルでやっていた各種業務をオンライン化する必要があるので、様々な業務のやり方に変更が生じることになるでしょう。
このようにリエンジニアリングは、個別の業務改善にとどまらず、業務プロセス全体を抜本的に見直して改革するような取り組みを言いいます。
このような取り組みをすることで、労働生産性や従業員満足度を上げるようなことを目指すわけですね。
各用語の覚え方
最後にここまで解説していた各用語の覚え方を説明したいと思います。
今回解説した用語は、単語で分解してみると理解がしやすいです。
- リバース(Reverse):逆戻り
- リ(Re):再び・もう一度
- イノベーション(Innovation):技術革新
- エンジニアリング(Engineering):災害設備として利用
例えば各用語の先頭についている「リバース」であれば「逆戻り」を表していて、リエンジニアリングの「リ」については、「再び」「もう一度」という意味です。
また、イノベーションは「技術革新」、エンジニアリングは直訳では「工学」ではありますが、こちらは「開発」という意味で理解しておくとよいでしょう。
このように分解した単語の意味を確認した上で、各用語の中身を改めて見てみましょう。
リバース・イノベーションは、リバースが逆戻りで、イノベーションが技術革新ということになります。
通常は先進国で起こして新興国に普及させるイノベーションを、逆に新興国で起こして、先進国で普及させる取り組みなのでしたね。
イノベーションがリバースされているイメージを持っておくと良いかと思います。
続いて、リバース・エンジニアリングです。リバースが逆戻り、エンジニアリングが開発となりますね。
一度開発・製造された製品を、逆に分解して使われている部品や構造を解析する取り組みでしたので、製品が逆に分解されているというイメージを持っておくと覚えやすいと思います。
最後にリエンジニアリングです。
「リ」が「再び」、エンジニアリングが開発となりますので、
業務プロセスを再び作り直すという意味で理解していくと、いざと言うときに忘れにくいかと思います。
ゴロ合わせて覚えるのも良いですが、このように単語の要素から類推できた方がいざという時に思い出しやすいので、今回はこのような内容をご紹介しました。
ここまで見てきたように、用語の意味は全く異なるものではありますが、名称が似ていて紛らわしいので、このような覚え方も参考にしていただけると嬉しいです。
過去問を解いてみよう (令和2年度 第8問)
それでは過去問を解いて、復習してみましょう。
以下のA欄の①~④に示す新製品開発やイノベーションを推進するための取り組みと、B欄のa~dに示すこれらの取り組みに当てはまる名称の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【A 取り組みの内容】
① 新興国で開発された製品や技術を先進国に導入すること
② 新製品に関わる各部門が、外部環境における関連する領域と卓越した連携を持つこと
③ 製品の構造を分析し、動作原理、製造方法、設計図の仕様、ソースコードを調査し、学習すること
④ 職務よりもプロセスを重視した、事業プロセスの大きな設計変更を伴う職務横断的な取り組み【B 取り組みの名称】
中小企業診断士試験 企業経営理論 令和2年度 第8問
a リバース・エンジニアリング
b リエンジニアリング
c バウンダリー・スパンニング
d リバース・イノベーション
〔解答群〕
ア ①-a ②-b ③-c ④-d
イ ①-a ②-d ③-c ④-b
ウ ①-b ②-d ③-a ④-c
エ ①-d ②-c ③-a ④-b
オ ①-d ②-c ③-b ④-a
Aの取り組み内容と、Bの名称を紐づける問題ですね。
①から順番に見ていきましょう。
①の新興国で開発された製品や技術を先進国に導入するのは、リバース・イノベーションでしたね。
イノベーションを逆輸入しているイメージを持っておくとよいのでした。
②の新製品に関わる各部門が、外部環境における関連する領域と連携を持つことは、バウンダリー・スパニングと言います。
新製品を開発する際に顧客ニーズを収集するなどして、外部とかかわりを持つことを、バウンダリー・スパニングだと言うのだと理解しておく程度で充分です。
この用語を覚えておくことの優先度はそこまで高くありません。
③の製品構造を分析し、学習することは、リバース・エンジニアリングと言うのでしたね。
一度組みあがった製品を分解して調査するイメージを持っておくと良いかと思います。
④のプロセスを重視した、事業プロセスの大きな設計変更を伴う職務横断的な取り組みは、リエンジリアンリングと言うのでした。
リエンジニアリングは、業務プロセスを抜本的に再構築するのでしたね。
というわけで、以上の内容と名称の組み合わせを示しているのは選択肢エですので、こちらが正解となりますね。
こちらの問題は、バウンダリー・スパニングがわからなくても、他の用語さえしっかりと覚えていれば消去法で正解が選べる問題となっています。
最低限、今回解説した用語の意味は理解しておくようにしましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
- リバース・イノベーション:
新興国・途上国で開発した製品・サービスをグローバルに普及させること - リバース・エンジニアリング:
既存の製品を分解・解析し、自社製品の開発に生かすこと - リエンジニアリング:
業務プロセスを抜本的に見直し、再構築すること
覚えるときは、「リバース」や再びを表す「リ」の意味と紐づけておくと良いのでしたね。
特にリバース・エンジニアリングとリエンジニアリングが間違いやすいので、ご注意いただければと思います。
というわけで、今回はリバース・エンジニアリングを始め、紛らわしい用語を解説してみました。
市販のテキストでは用語の解説が全く別の章でされていると思いますが、本試験ではこれらの違いが問われるので、今回はこのようなテーマとしてみました。
用語の意味さえ知っていれば簡単に正答できる論点ですので、ぜひ本試験では得点源にしてくださいね。