はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回はモチベーション理論をテーマに解説していきたいと思います。
今回学習するのは、モチベーション理論の中でも内容理論と言われるもので、この記事だけで本試験で出題されるモチベーション理論の全てをカバーできるわけではありませんが、この論点に苦手意識を持つ方のために、少しでも苦手意識を払拭する助けにできればと考えています。
ぜひ最後までご覧いただければと思います。
マズローの欲求段階説とは?
まずはマズローの欲求段階説です。
欲求段階説では、人間の持つ欲求を5段階で表しています。
最も低次的な欲求は、生理的欲求ですね。
こちらは生きるために必要なものを求める欲求で、例えば水や食料が欲しいといった欲求が当てはまります。
このような欲求が満たされると、今度は安全欲求を求めるようになります。
こちらは安心・安全を求めて、危機を回避するような欲求ですね。
例えば、治安の良い地域に住みたいといった欲求が当てはまります。
安全・欲求も満たされるようになると、今度は社会的欲求を求めるようになります。
こちらは集団に所属をして、他者との愛情・友情を求めるような欲求です。
例えば、会社や学校で同僚や同級生と繋がりたいといった欲求ですね。
社会的欲求まで満たされると、今度は承認欲求を求めるようになります。
こちらは他者から認められたいという欲求ですね。
例えば会社から良い評価をもらいたいといった欲求が当てはまります。
これら全ての欲求が満たされると、最終的には自己実現欲求を求めるようになります。
こちらは理想の自分に近づきたいという欲求で、自分のスキル・経験を生かした仕事をしたいといった欲求などが当てはまりますね。
マズローは、人間の欲求をこのような5段階に分けて、最も低次的な欲求である生理的欲求から、最も高次的な欲求である自己実現欲求まで、ひとつずつ段階的に求められていくと主張しました。
今回学習する各モチベーション理論は、このマズローの欲求段階説をベースとして考えられていると言われていますね。
アルダファーのERG理論
続いてアルダファーのERG理論です。
ERG理論では、人間の持つ欲求を存在・関係・成長欲求の3つに分類しています。
先ほどのマズローの欲求段階説では、このように人間の欲求を5つに分類しましたが、ERG理論では、完全欲求と生理的欲求を存在欲求としてまとめ、承認欲求と社会的欲求は関係欲求としてまとめ、最後の自己実現欲求は、成長欲求と置き換えました。
存在欲求は生きるために必要なものを求める欲求、関係欲求は他者との良い人間を求める欲求、成長欲求は自己実現に向けた成長を求める欲求としたわけですね。
マズローの欲求段階説に比べると、だいぶスッキリした印象があります。
ERG理論で試験対策上重要なのは、これら3つの要求が同時に存在することもあり得ると主張した点です。
マズローは低次欲求から高次欲求に向けて、段階的にひとつずつ満たされるとしましたが、アルダファーは成長欲求や関係欲求を同時に満たしたいと考えることもあると主張したわけですね。
ERG理論は、欲求段階説の影響を色濃く受けた理論と言えるので、以上のような流れで覚えておくと良いでしょう。
マクレランドの三欲求理論
続いてマクレランドの三欲求理論です。
三欲求理論は、人間が行動する動機を親和・権力・達成欲求の3つに分類した理論です。
親和欲求とは、良い人間を築きたいという欲求で、競争よりも協力を望むような考え方で、権力欲求は他者をコントロールしたいという欲求で、競争や地位・責任を好むような考え方です。
最後の達成欲求は、目標を達成したいという欲求で、自分の力での成功を好むといった考え方をします。
試験対策上、特に重要なのは、達成欲求については成功確率50%の仕事のときに最大の成果を出せると主張した点です。
誰にでもできるような簡単な仕事だとモチベーションは上がりませんし、自分の力だけでは到底達成できないような難しい仕事でもモチベーションは下がるので、成功するかどうか半々くらいのときに最もやる気が起きるというわけですね。
これは自分自身に置き換えて考えてみると、納得感があるかと思います。
さて、ここまで3つの理論を紹介しましたが、既に誰がどんな内容を提唱したのしたか、わからなくなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここで一度、3つの理論について内容を整理していきたいと思います。
マズロー・アルダファー・マクレランドの理論整理
まずマズローの欲求段階解説は、人間の欲求を5つの段階で整理したのですね。
これがベースとなりますので、まずはここから覚えていただければと思います。
そして、マクレランドの三欲求理論は、マズローの欲求段階説のうち、上位3つに着目した理論だと理解すると良いかと思います。
自己実現欲求は達成欲求、承認欲求は権力欲求、社会的欲求は親和欲求とほぼ同じ内容を主張しています。
最後にアルダファーのERG理論は、マグローの欲求段階説を成長欲求・関係欲求・存在欲求の3つに分類し直したのですね。
もちろんマズローの各欲求が、他の理論の欲求と完全に一致するわけではないですが、頭の中ではこのような整理をした上で、各理論の具体的な内容を確認すると理解もしやすいかと思います。
アージリス・ハーズバーグ・マクレガーの理論
続いて、アージリス・ハーズバーグ・マクレガーの理論については、まとめて解説したいと思います。
それぞれの理論は、ネガティブな要素とポジティブな要素に分けられるので、この整理で覚えてしまった方が良いです。
まず、アージリスの未成熟・成熟理論は、人間は未成熟な状態、つまり受け身の姿勢から成熟した状態、つまり能動的に行動する姿勢に向かおうとする欲求があると主張しました。
その上で、未成熟な状態から成熟した状態にするには、職務拡大と感受性訓練が必要であるとしたのですね。
職務拡大とは複数の仕事を与えることで、これによって自己実現欲求を満たしてもらえるように働きかけます。
また、感受性訓練は、あえて集団の中で孤独にさせるという訓練のことで、これによって集団への参加意欲を高めるという狙いがあるようです。
このようなマネジメントよって、成熟した状態へと成長させていくべきだと主張したわけですね。
続いて、ハーズバーグの二要因理論では、仕事には衛生要因と動機付け要因の2つがあると主張しました。
衛生要因は満たされないと不満の原因となるもので、例えば給料や労働条件、人間関係などが当てはまりますね。
これらが自分の希望水準に満たないと人は不満に感じますが、逆に言うと、これらが満たされたからといって、やる気がみなぎるわけではないとしています。
一方で、動機付け要因は、満たすことで満足の原因になるもので、仕事のに内容や達成感、会社からの評価等が当てはまります。
ハーズバーグは人にモチベーション高く仕事をしてもらうためには、衛生要因よりも動機付け要因を積極的に改善していくべきだと主張しました。
その具体的な方法としては、職務充実を挙げました。
職務充実は責任や権限が拡大していくような方法ですね。
職務拡大は仕事そのものを増やして、職務充実は権限が拡大していくようなイメージを持っておくと良いでしょう。
最後のマクレガーのX理論・Y理論については、人は怠け者な面と、働き者の面の2つの人間観が存在しているとしました。
マクレガーは人にモチベーション高く仕事をしてもらうためには、Y理論の人間観に基づいて、職務拡大や職務充実、目標管理制度を導入するべきだと主張しています。
目標管理制度とは、従業員が自分自身の仕事における目標を、主体的に設定させるような制度のことですね。
人から与えられた目標を達成させるのではなく、自分で立てた目標を達成させることで、モチベーション高く仕事ができるようになると言われています。
以上のように、これら3つの理論はネガティブな面とポジティブな面で、各内容を整理でき、ポジティブな要素を刺激するにはどうしたら良いのかといった観点で、各理論の内容を見ていくと良いでしょう。
極端な話、まずはポジティブな要素だけ記憶しておけば、覚えるべき内容は半分で済みますので、この論点が苦手な方は、まずはそこから着手していただければと思います。
過去問を解いてみよう (平成29年度 第16問 改題)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
モチベーション理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア A.マズローの欲求段階説は、多様な欲求が同時に満たされることによって、個人のモチベーションが階層的に強まっていくことを提唱した。
イ D.マクレガーのX理論とY理論は、個人は肯定的側面と否定的側面の両面を併せ持つことを示し、状況に応じてモチベーションを刺激する組み合わせを変化させる必要性があることを提唱した。
ウ D.マクレランドの三欲求理論によれば、報酬や社会的な成功よりも個人的な達成感を強く求める人は、自分の能力を超えたチャレンジングな仕事を好み、他者と親和的な関係を結ぶリーダーになろうとする傾向を持つことを提唱した。
エ F.ハーズバーグの二要因理論では、従業員が不満足を知覚する衛生要因と、満足を知覚する動機づけ要因を独立した要因として捉え、必ずしも不満足を解消せずとも、モチベーションを高めることができることを提唱した。
中小企業診断士試験 企業経営理論 平成29年度 第16問 改題
モチベーション理論にする記述として、正しいものを選ぶ問題ですね。
選択肢をひとつずつ見ていきましょう。
✅選択肢ア
マズローは低次の欲求から段階的に1つずつ満たされていくことを主張していましたので、この選択肢アは誤りですね。
✅選択肢イ
マクレガーはY理論の人間観に基づいて、動機付けを行うことが重要と主張していますので、選択肢イも誤りとなります。
✅選択肢ウ
マクレランドは成功確率50%の仕事を好むとしていましたので、誤りとなります。
✅選択肢エ
こちらはその通りでしたね。
ハーズバーグは動機付け要因を刺激することが、モチベーションを高めることに有効であると主張しましたので、選択肢エがこの問題の正解となります。
このように、モチベーション理論ではその理論がどのような内容で、どのように働きかけるとモチベーションが高められると主張していたかをしっかりと覚えておく必要がありますので、難易度が高い問題が多いです。
捨て問にされる方も多いかと思いますが、ここで点数が取れると、より安定して6割越えが目指せるようになりますので、今回解説した内容を参考に、理解を深めていただければと思います。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回の動画の前半では、マズローの欲求段階説、マクレランドの三欲求理論、アルダファーのERG理論を以下のような形で整理をしました。
この図を参考にしながら、名称を聞いたら、各理論でどのような欲求があったかを思い出せるようにしたいですね。
また、試験対策上重要なのは、マクドナルドの達成欲求に関しては、成功確率50%の仕事で最大の成果を上げられるということ、マズローは欲求が段階的に満たされるとした一方で、アルダファーのERG理論では、3つの欲求が同時に存在することもあり得るとしているとした点です。
動画の後半では、アージリス・ハーズバーグ・マクレガーの3つの理論を解説しました。
覚えるのが大変という方は、各理論のポジティブな要素と、そのポジティブな要素を刺激するためには、どのような取り組みが必要かということを、まずは整理して覚えてみてください。
また、前半の理論も含めて、理論を提唱した人物名を記憶しておくことの重要性は、そこまで高くないので、理論の名称と内容を紐付けて覚えることを優先いただければと思います。
はい、というわけで、今回はモチベーション理論をテーマに解説してみました。
モチベーション理論まわりは覚えることが非常に多く大変とは思いますが、この動画が試験対策の助けになると嬉しいです。
評判が良ければ、他のモチベーション理論の解説もしていきたいと思います。