はい、どうも中小企業診断士のたかぴーです!
今回は保全活動について解説していきたいと思います。予知保全や予防保全、保全予防などよく似た名称が多く並ぶ論点です。
とはいえ、この論点の試験問題は、そこまで難しいことを聞かれないので、この機会にしっかりと理解をしていきましょう。
↓YouTube動画でも解説中!
設備保全とは?
まず今回学習する設備保全なのですが、これは設備の性能を維持するために、故障回復や故障防止を行うことを言います。
その保全活動の全体像を見てみますと、次のように分類することができます。
維持活動は設備を故障から回復したり、故障を防止するための活動のことで、改善活動は、保全活動そのものを減らす活動のことを言います。
初見では覚えることが多くて大変に感じるかもしれませんが、内容を理解すればそこまで難しくありませんので、一緒にひとつひとつ確認していきましょう。
まずは維持活動の中身を見ていきたいと思います。
維持活動:予防保全と事後保全とは?
維持活動は予防保全と事後保全の2つに分けられます。
予防保全とは、未然に故障を防止するための活動のことを言いますね。
故障を防止することで生産ラインが止まることを防いで、工場の安定化でを目指していきます。ただし、点検作業に時間をかけすぎると、その分生産ができなくなりますので、やり過ぎには注意したいところですね。
続いて、事後保全とは、設備が故障したときに故障箇所を復旧するための活動のことを言いますね。
設備の故障を防ぐ予防保全と違って、事後保全は故障してしまっている点がポイントですね。設備故障に生産が止まると、それだけ企業の利益が減少してしまうので、できれば発生してほしくない保全活動の一つとなります。
また、復旧作業はできるだけ迅速に行って、被害を最小限に食い止めたいですね。
維持活動:定期保全・予知保全とは?
ここで、予防保全はさらに定期保全と予知保全の2つに分けられるのでした。
定期保全はあらかじめ決めた保全計画に従って定期的に点検を行うことを言いますね。
この計画は、部品の耐用年数や生産状況に基づいて作成されて、点検の結果、消耗の激しい部品については早めに交換することで、故障を未然に防いでいきます。
続いて予知保全です。
予知保全は設備の異常を検知してから点検を行う保全活動となります。
定期保全と違って不定期に行われるのが特徴ですね。
例えば、設備から普段から聞こえないような大きな音が鳴り始めたら点検したり、センサーを取り付けて、一定の閾値を超えたら、その時に初めて点検するようなイメージですね。
この予知保全は定期保全と比べて活動を行う回数が削減できるので、その分費用を削減できるのがメリットとなっています。
改善活動:改良保全と保全予防とは?
改善活動は、保全活動そのものを減らすための取り組みなのでした。
その内容としては、改良保全と保存予防の2つがあります。
まず改良保全ですが、こちらは故障が発生しないように設備のグレードを上げることを言います。
例えば、今までプラスチック製のネジを使っていて、これが頻繁に破損してしまうので、さらに強度の高いチタン合金に変えるようなイメージですね。
こうすることで、設備の故障頻度が減るので、事後保全の回数を減らすことができます。また、定期保全の間隔大幅に伸ばすことで、点検回数を減らすことも期待できますね。
続いて保全予防です。
保全活動は設備の導入段階で保全しやすい設計を行うことを言います。
例えば、サッカー場の芝が、天然芝だったものを人工芝にするようなイメージですね。
天然芝だと芝の長さを均一に揃えるために、毎日芝刈りをする必要があったものを、人工芝にすることによって、こういった手間が省くことができます。
保全予防をすることによって、メンテナンスそのもの無くしたり、点検作業の作業工数を減らす効果があります。このように改善活動では改良保全や保全予防を行うことで、保全活動そのものが楽になるわけですね。
バスタブ曲線と保全活動の関係
続いてバスタブ曲線について見ていきましょう。
バスタブ曲線とは、設備の使用期間と故障率を表したグラフのことを言います。
横軸に使用期間、縦軸に故障率を取ってみると、一般的に使用期間と故障率の関係は、次のようなグラフで表されると言われています。
グラフ前半の初期故障期は、比較的故障率が高く、一定期間が過ぎると故障率が下がっていきます。いわゆる初期不良と呼ばれるものが発生する期間ですね。
その後、故障率は低い値で安定して、偶発故障期と呼ばれる期間に入ります。
さらに使用期間が経過すると摩耗故障期と呼ばれる期間に入って、設備部品の摩耗による故障が頻繁に発生するため、故障率が増加します。
グラフの形状がお風呂のバスタブのような形をしていることから、バスタブ曲線と呼ばれているようですね。
このバスタブ曲線の各期間に対応する最適な保全活動が決められています。
初期故障期には、予知保全・改良保全・保全予防が適切であるとされています。
初期不良が発生しないように、様々な手を尽くしていくイメージですね。
偶発故障期には事後保全が最適とされています。
そもそも故障率が低い時期なので、故障を防ぐ活動をしても余計なコストがかかってしまうと考えます。この時期は故障したときに初めて直してしまう方が、むしろコスト効率が良いわけですね。
最後の摩耗故障期には予知保全が行われます。
例えば10年以上使っているエアコンで、普段聞こえないような音が鳴ってきたりとか、エアコンから異臭が発生した時に点検するようなイメージですね。
このバスタブ曲線の各時期に対応する保全活動は試験で問われますので、しっかりと覚えておきましょう。
集中保全と部門保全の違い
続いて少し細かい論点ですが、集中保全と部門保全についても確認しておきましょう。
例えば、家電メーカーの製造部において、テレビ・洗濯機・冷蔵庫が製造されているとしましょう。
このそれぞれの製品・部門ごとに保全活動が行われている場合は、部門保全と呼ばれています。
一方で、各製品部門とは別に保全部門を設けて、保全活動を専門として、全製品の保全を実施するような組織形態をとった場合は、集中保全と呼ばれています。
部門保全の方が保全活動が分散して行われていて、集中保全はその名の通り、一つの部門で集中的に保全活動が行われているイメージを持っていただければと思います。
先ほどまでの論点より優先度は落ちますが、用語だけは頭の片隅に入れておいてください。
過去問を解いてみよう (平成27年度 第18問)
保全活動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 改良保全は、設備故障の発生から修復までの時間を短縮する活動である。イ 保全活動は、予防保全、改良保全、保全予防の3つに分けられる
ウ 保全予防は、設備の計画・設計段階から、過去の保全実績等の情報を用いて不良や故障に関する事項を予測し、これらを排除するための対策を織り込む活動である。
エ 予防保全は、定期保全と集中保全の2つに分けられる。
中小企業診断士試験 運営管理 平成27年度 第18問
それでは過去問を解いて復習をしてみましょう。
✅選択肢ア
改良保全は、設備の故障発生から修復までの時間を短縮する活動であるとありますが、改良保全は設備が故障しないように、設備グレードを上げるための活動でしたので、選択肢アは誤りとなります。
✅選択肢イ
保全活動は予防保全・改良保全・保全予防の3つに分けられるとありますが、保全活動は維持活動と改善活動の2つに分けられるのでしたね。
✅選択肢ウ
保全予防は不良や故障に関する事項を予測して、これらを排除するための対策を織り込む活動とあります。保全活動は過去の資料等を用いて、保全活動そのものを無くしていく活動でしたので、この選択肢ウが正解となりますね。
✅選択肢エ
保全予防は定期保全と集中保全の2つに分けられるとあります。保全予防は定期保全と予知保全の2つに分けられるのでしたね。
というわけで、この問題の答えは選択肢ウとなります。
冒頭でお見せした保全活動の全体像と、各保全活動の内容がしっかり理解できているかどうかが問われる問題でした。
まとめ
それでは最後にまとめです。
保全活動の全体像は、次のような形で表されるのでした。
維持活動が故障の回復・防止を行う活動で、改善活動が保全活動そのものを減らす活動でしたね。維持活動のうち、予防保全は故障を減らす活動のことで、事後保全は故障してから治す活動です。
また、予防保全のうち、定期保全は定期的に実施して、予知保全はセンサーを取り付けるなどして、故障の予兆を検知してから点検を行うので、不定期なのでした。
それから改善活動のうち、改良保全は設備のグレードアップをして、保全予防は保全活動の工数削減を目指すための活動でした。
保全活動の問題が出題されたときは、この全体像を頭の中で描ける状態がが望ましいので、各活動の内容と一緒にしっかりと覚えておきましょう。
ちなみに、維持活動の保全予防と改善活動の保全予防は、同じ文字が使われているので紛らわしいですよね。どちらかというと、保全予防の方が覚えやすいです。
覚え方はシンプルで、「保全を予防」 すると覚えておきましょう。
保全を予防するわけですから、保全活動そのものを防ぐ活動のことを言っているわけですね。保全予防が改善活動だとしっかりと覚えておけば、残りの予防保全は自然と覚え出せると思います。
それからバスタブ曲線と対応する保全活動も重要なのでした。
初期故障期と摩耗故障期は、どちらも予知保全が最適とされていて、真ん中の偶発故障期には事後保全が最適なのでしたね。
初期故障期における改良保全と保全予防については改善活動なのでした。
少し覚えることが多くて大変かと思いますが、この対応関係は頭に入れつつ、何度も問題を解いて定着させるようにしていきましょう。
余談ですが、初期故障期は一般的に1年間と言われています。家電製品の保証期間で1年間が多いのは、このような理由からですね。
量販店で家電を買うと、1年以上のオプション保証をお勧めされますが、偶発故障期の故障率が下がることを知っている皆さんは、きっと正しい判断ができることと思います。
いかがでしたでしょうか?
今回は保全活動について出題可能性のある全ての論点を解説してみました。
今回ご紹介した内容で、保全活動の論点が出てきたら、確実に得点ができるかと思いますので、不安な方は是非もう一度記事を見直して復習をしてみてくださいね。