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【業界分析】5フォースモデル(5フォース分析)とは?事例付きで分かりやすく解説!/企業経理論/中小企業診断士試験対策

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中小企業診断士のたかぴーです。

今回は5フォースモデルをテーマに解説しようと思います。

この理論は実務でも役立つので、試験対策のためだけでなく、日ごろから使いこなせるようにしたいフレームワークですね。

試験対策上、重要なポイントも押さえて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

YouTube動画でも解説中!

5フォースモデルとは?

5フォースモデルとは、収益性に影響する5つの要因を分析する、業界分析のフレームワークです。

このフレームワークを使うことで、分析対象の業界が、どれだけ儲かりやすいかを分析できるわけですね。

具体的には、ある業界を競争業者、新規参入企業、代替品、売り手、買い手の5つの観点から分析します。

5フォースモデルとは?

分析する際は、新規参入と代替品の脅威がどれだけあるか、売り手・買い手の交渉力はどれだけ強いか、既存企業間の敵対関係はどれだけ激しいかを分析します。

そして、脅威が大きい、交渉力が強い、敵対関係が激しいといった状況が読み取れるほど、
その業界は儲かりにくい業界だと判断できるわけですね。

5フォースモデルを使うと、その業界が好調な要因が分かったり、逆に不調なのであれば、どの項目が原因なのかが読み取りやすくなります

試しにご自身の所属されている業界を分析して見ると、今まで見えていなかった観点が浮き彫りになったりしますのでトライしてみてください。

ここからは、この5つの要因について、詳しく説明したいと思います。

新規参入企業・代替品とは?

新規参入企業とは、これから特定業界に参入しようとする企業のことです。

具体例としては、スポーツジム業界の24時間ジムがイメージしやすいですね。

従来のスポーツジムは、プールやお風呂などの設備が付いていて、営業時間は9時から23時頃まで、といったものが一般的でしたが、昨今のフィットネスブームを受けて、ANYTIME FITNESSやchocoZAPのような24時間営業のジムが増えてきましたね。

従来のジムにあったようなプールやお風呂といった設備はなく、スタッフも最小限にすることでコストカットし、低価格・手軽さを売りにしているのが特徴的です。

新規参入企業・代替品とは?

一方で、代替品とは、ある製品と同じ機能を持つ製品・サービスを言います。

具体例としては、自動車業界における電気自動車がこれに当たりますね。
従来のガソリン自動車からは多少性能が落ちるかもしれませんが、同じ役割を果たしてくれる製品です。
最近では、アメリカのテスラ社、中国のBYD社などがこの分野でシェアを伸ばしているようです。

このような新規参入企業や代替品が増えるほど、市場の需要は分散しますので、既存企業の収益性は悪化してしまうということになります。

逆に言うと、新規参入企業や代替品が生まれる可能性が低い業界ほど、儲かりやすい業界であると読み取ることができるわけですね。

売り手・買い手とは?

続いて売り手とは、分析対象の業界に対して部品や原材料を提供する企業のこと言います。

具体例としては、PCやスマホ業界におけるOSがこれに当たりますね。
現在、パソコン用のOSとしてはMicrosoft社のWindows、スマホはGoogle社のAndroidが良く使われています。

売り手とは?

もし、MicrosoftやGoogleが機器メーカーに対してOSの提供を拒否すると、他から仕入れることができないので、メーカーは自社でOSを開発する必要があるだけでなく、そもそも製品が売れなくなるリスクも発生してしまいます。

このように、その業界で使われている部品・原材料の希少性が高いと、売り手側の交渉力が強くなる傾向にあります。

ですので、供給業者に対して気軽に値下げ交渉はできなくなるわけですね。
結果として、業界の収益性の悪化に繋がってしまいます。

続いて、買い手とは、分析対象の業界の製品を購入する顧客のことを言います。

具体例としては、放送業界における広告代理店が、これに当たりますね。

買い手とは?

テレビ局がCMを販売する際、多くの場合は広告代理店である電通や博報堂といった会社を通じて販売しています。
この時、テレビ局にとって電通や博報堂が直接の顧客に当たるわけですね。
放送業界では、特に電通社への売上依存度が高いと言われています。

特定顧客への売上依存度が高いと、買い手の交渉力は強くなる傾向にあります。
電通の出した条件で取引しないと「他のテレビ局にCMをお願いしようかしら」といったことが言いやすくなるわけですね。
広告主のこともありますし、実際に電通社がこのような交渉をしているわけではないと思いますが、自社の売上に強い影響力を持つ顧客は、それだけ強い影響力を持つわけですね。

試験問題を解くときは、売り手にとっての買い手は自社、買い手にとっての売り手は自社もなります。
この辺りが問題文を読むと混乱してしまいがちなので、落ち着いて問題を読むように心がけましょう。

競争業者とは?

最後に、競争業者とは、分析対象の業界に既に参入している企業です。

この点は問題ないかと思いますが、試験でよく問われるのは、どのようなときに競争が激化するのか、という観点です。
いくつかのパターンがありますが、ここでは主要な3つを確認していきたいと思います。

競争業者とは?

まずは競争業者が多いというパターンですね。

例えば不動産テック業界のカオスマップで検索していると、たくさんの企業が見つかります。
このように競争する企業が多いほど、当然売上は買う者に分散しますので、収益性も低くなりますね。

続いて、市場成長が遅い、または衰退しているという状況です。

例えばスマホ業界がこれに当たると考えられます。
スマホが出始めた2010年代はイケイケな業界でしたが、今となっては一人一台スマホを持っているのは当たり前で、市場自体が成長するは難しくなってきましたね。
代表的な企業としては、Apple、Google、SONY、SHARPなどがいますが、気づいたらどの企業でも、下位モデル・上位モデルのスマホを販売するようになっています。
限られた市場のパイを少しでも奪い取るために、ユーザーの細かいニーズに応えるために機能面・価格面を細分化して競争していることが分かりますね。

このように、市場自体の成長が緩やかになると、既存企業内での競争は激しくなる傾向にあります。

最後に、固定費が高いという状況です。

具体例としては、モバイル通信業界で説明したいと思います。
代表的な企業には、DOCOMO、au、SoftBank、楽天モバイルがいますが、このうち楽天モバイルがイメージしやすいかもしれません。
モバイル通信業界は全国どこでもスマホが繋がるように、専用の基地局と言うものを全国隅々に設置する必要があります。
この基地局の設置に莫大な費用がかかるわけですね。この投資費用は、当然減価償却費として毎年固定的に計上されます。
最近この業界に新規参入した楽天モバイルは、この固定費を回収するためにも、少しでも契約数を伸ばす必要があるため、低価格を打ち出しているという側面があると考えられます。
もちろん楽天の低価格は、基地局そのものを安く作り、低コストで保全する技術を開発したからこその低価格ではありますが、固定費分の収益は上げたいという思いは必ずあるはずです。

このように、事業を始めるにあたって莫大な固定費がかかる業界は、固定費を回収しない限り赤字が続きますので、価格競争が激しくなる傾向にあります。

過去問を解いてみよう (平成22年度 第10問 改題)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

 マイケル・ポーターは、競争戦略を策定する際に考慮すべき産業の利益率や競争に影響を与える要因として、5つの項目を指摘している。この5つの競争要因に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。

ア 買い手への対応は、消費者のクレームや消費者行動の変化に対処しつつ、高いマージンに結びつく市場との良好な関係を構築することが重要である。

イ 供給業者については、資金や原材料の供給先や労働市場との交渉力の保持が重要であるので、そのためには特定の資源の供給者に強く依存することなく、常に代替的な資源の開発に取り組むなど外部への依存性が強くならないようにしておくことが重要である。

ウ 競争業者との戦いは、マージンの高いドメインに自社を位置づけて、そこでの防衛的な地位を保つために、徹底した差別化戦略を展開することが第一に重要である。

エ 新規参入については、その可能性や参入を受けた場合の競争の変化を分析して、自社の市場への参入障壁をどのように築くことができるか、日ごろから注意しておかなければならない。

オ 代替品は、大きな技術の変化や消費者のニーズの変化によってこれまでにない新商品として登場し、既存の商品に取って代わる脅威になることがあるので、技術や市場のマクロなトレンドを見失わないように注意しなければならない。

中小企業診断士試験 平成22年度 第10問 改題


5フォースモデルの問題ですが、選択肢の中から誤ったものを選ぶ問題なので、ご注意ください。

✅選択肢ア
買い手への対応は、クレームや消費行動の変化に対処しつつ、高いマージンに結び付く市場との良好な関係を構築することが重要である、とあります。
買い手は売上依存度が高くなると交渉力が強くなると説明しましたが、優良顧客を大切にしないと利益確保はできませんので、この選択肢は間違いとは言えませんね。

✅選択肢イ
まず前半部分の、供給業者について、資金や原材料の供給先や労働市場との交渉力を保持が重要、という記載は間違いないですね。
売り手は雇用している労働者も含まれるという点は、この機会に覚えておきましょう。
続いて、その対応策として、特定の資源の供給者に強く依存することなく、常に外部への依存が強くならないようにすることが重要となりますが、
売り手への依存度を下げて交渉力を維持することは収益確保のために、重要な取り組みなので、間違いではありません。

✅選択肢ウ
競争業者との戦いは、徹底した差別化戦略を展開することが第一に重要である、とあります。
競争を回避する戦略として、もちろん差別化戦略がありますが、それ以外にもコストリーダーシップ戦略もありますし、必ず差別化戦略が優先される、というわけではありません
ですので、この記述は誤りとなりますので、選択肢ウが正解となります。

✅選択肢エ・オ
それぞれ、新規参入と代替品について述べられていますが、
これらについて日ごろから注意深く観察しましょうということが記載されていますので、記述としては間違っていませんね。

あいかわらず企業経営理論の問題は文章が難解ですが、5つの要因の中身をしっかりと理解していれば、そこまで難しい問題ではなかったかと思います。
この論点の過去問は他にもありますので、この動画を見終わったら是非、トライしてみてください。

まとめ

それでは最後にまとめです。

今回学習した5フォースモデルとは、分析対象の業界の収益性に影響する5つの要因について分析する、業界分析のフレームワークです。

5フォースモデルとは?

5つの要因とは具体的に、新規参入企業、代替品、売り手・買い手、競争業者のことで、これらの脅威が大きい、交渉力が強い、敵対関係が激しいと、収益性が低く儲かりにくい業界だと判断できます。

試験対策上は、どのような状況だと交渉力が強くなったり、競争が激しくなるのかを把握しておく必要があります。

今回ご紹介した例をある程度インプットしておくで対応できますが、試験本番では見たことが無いケースが問われる可能性もありますので、その場で判断できることが望ましいです。
その際、逆のケースと比較して考えることがポイントとなります。

例えば、業界から撤退できない状況だと競争が激しくなる、と記載してあれば、業界からすぐ撤退できる場合と比べて、競争は激しくなるかどうか検討してみる、といった具合ですね。

また、交渉力を弱めたり、競争を回避するための具体的な施策を問われるケースもありますので、過去問を解きながら理解を深めるようにしてください。

というわけで、今回は5フォースモデルについて解説してみました。
冒頭で触れたように、このフレームワークは実務でもかなり役立ちます。

経営診断する際は自分が今まで所属したことが無い業界をコンサルすることもありますので、まずは5フォースに落とし込んで競争関係を把握したり、僕自身、法人営業する際に顧客の業界を5フォースで分析して顧客の課題がどこにありそうかを把握するのに使ったりしています。

業界構造を大まかに把握するのに大変役立つ理論ですので、是非ご自身でも使いこなせるようにしてくださいね。

それでは今回の解説記事はここまでとしたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
それではまた次回の解説記事でお会いしましょう。勉強頑張ってください!応援しています。さようなら!!

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