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競争地位別戦略とは?リーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャーの戦略定石の違いを解説!/企業経営理論/中小企業診断士試験

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はい、どうも中小企業診断士のたかぴーです!

今回は競争地位別戦略について解説していきたいと思います。
ここ最近出題されていなかった論点ですが、昨年の試験で出題がありました。

有名な論点なので、今後もいつ出題されてもおかしくありません。今回もポイントを絞って解説していきますので、一緒に勉強していきましょう。

YouTube動画でも解説中!

4つの競争地位の類型

まずは4つの競争地位の類型について説明します。
アメリカの経営学者のフィリップ・コトラーさんは業界の企業をそのポジションに応じて、リーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャーという4つに分類しました。

4つの競争地位の類型
  • リーダー
    最大市場シェアを獲得している企業
  • チャレンジャー
    リーダーに挑戦し、シェアNo.1を目指す企業
  • フォロワー
    リーダーに挑戦はせず、現状維持を目指す企業
  • ニッチャー
    リーダーが扱わない分野に経営資源を集中させる企業

次のページで具体的な企業例を挙げてみようと思います。

競争地位の例

今回は理解を深めるために、ビール市場の競争地位を確認してみましょう。

2017年度と、少し古いデータではありますが、国内ビール市場のデータを入手しましたので紹介したいと思います。

国内ビール市場企業の競争地位の例

2017年時点ではアサヒビールの市場シェアが48%、キリンが24%、サッポロが15%、サントリーが10%と続いています。最後にオリオンビールが0.9%獲得していたようですね。

単純に市場シェアだけで競争地位を分類すると、以下の通りとなります。

  • リーダー:アサヒビール
  • チャレンジャー:キリン
  • フォロワー:サントリー、サッポロ
  • ニッチャー:オリオンビール

サントリーとサッポロは、この後説明するフォロワーの戦略と照らし合わせるとチャレンジャーでも良いような気もするのですが、今回はフォロワーとしました。

オリオンビールをフォロワーではなくて、ニッチャーに分類している理由ですが、オリオンビールは、沖縄県内での市場シェアが2020年度時点で44%あるということで、特定のマーケットにおいて、非常に大きなシェアを占めているためです。

沖縄に行ったことある方だと分かると思いますが、どの小売店や飲食店に行っても、オリオンビールが必ずと言っていいほど置いてあります。

地元密着によってリーダーと渡り合っている姿は、ニッチャー企業の特徴をよく表している事例と思ってご紹介しました。

それではここからは、それぞれの企業が採用する戦略について詳しく見ていきましょう。

リーダーの戦略定石

まずリーダー企業ですね。

リーダーの戦略定石

リーダー企業の市場ターゲットはフルカバレッジと呼ばれ、市場に存在している全ての顧客を対象としていきます。

リーダー企業の目標は最大市場シェアを維持することです。

そんなリーダー企業の戦略定石は4つあります。
周辺需要の拡大、非価格対応、同質化、最適シェアの維持の4つですね。

こちらについては一つ一つ詳しく見ていこうと思います。

周辺需要の拡大

まず周辺需要の拡大とは、市場そのものの拡大を図ることを言います。

先ほどお見せしたグラフでは、アサヒビールは48%の市場シェアを獲得していました。
このビール市場そのものが拡大すると、リーダー企業であるアサヒビールは、その拡大した市場のうち48%が獲得できるので、他の企業と比べてもメリットが大きいですよね。

このような理由から、リーダー企業はそのものの拡大を図っていくような施策を採用していくこととなります。

非価格対応

続いての非価格対応は、むやみに値下げをしないということです。

先ほどの円グラフで、もう一度考えてみますと、例えばキリンや、サッポロなどの企業が値下げをして、それに追随するようにアサヒビールも値下げをした場合、金額ベースの市場シェアそのものが縮小していくことになりますよね。

そうなった場合、先ほどの周辺需要の拡大とは反対に、市場そのものの縮小による被害を最も大きく被るのは、市場シェアが最も大きいリーダー企業となります。

こういった理由からリーダー企業は、むやみに値下げをするわけにはいかないわけですね。

同質化

続いて同質化です。
同質化とは、他社の製品を模倣することを言います。

リーダーの座を狙っている他の企業たちは、市場シェア一位を獲得するために、様々な差別化製品を市場に投入してきます。
この差別化を無効化するためにリーダー企業も、同じような製品を市場に投入するわけですね。

例えば、ノンアルコールビール市場を例にしてみますと、2009年にキリンは世界初のアルコール度数0%のノンアルビールである「キリンフリー」を発売して、ノンアルビール市場を開拓したと言われています。

その後、サントリーがアルコール度数だけでなくカロリーや糖質も0とした「オールフリー」を市場へ投入して、キリンに対抗しました。

このような熾烈な競争が繰り広げられ、ノンアルコールビール市場が拡大したのを受けて、
アサヒビールが「ドライゼロ」を開発して対抗します。

シェアNo.1であるアサヒスーパードライが好きなユーザーを自社の顧客に囲い込むことで、アサヒビールはノンアル市場でも大きなシェアを獲得したと言われています。

このようにリーダー企業は他社の動向を常に目を配らせて、他者に差をつけられないような施策を打ってくるわけですね。

最適市場シェアの維持

最後に最適者の維持についてです。
これは市場を拡大しすぎないことを示しています。

少しビール市場からは離れますが、先日のニュースでAppleとGoogleのアプリストアが、公正取引委員会の調査によって「十分な競争圧力が働いていない」として報告されていましたね。
AppleやGoogleが独占禁止法に触れている可能性があるとしたわけです。

あまりにも大きな市場シェアを獲得してしまうと、このように独占禁止法に触れてしまう恐れがあるため、リーダー企業はシェアを獲得拡大しすぎないことにも留意していく必要があります。

市場シェアは大きければ大きいほど良いと思ってしまいますが、これは意外な落とし穴ですよね。

競争地位別の戦略

リーダーの戦略を理解したところで、その他の企業についても確認していきましょう。

リーダー企業は、フルカバレッジのターゲットで、目標は最大市場シェアの維持でした。
戦略定石は4つありまして、周辺需要の拡大、非価格対応、同質化、最適市場シェアの維持でしたね。

競争地位別の戦略定石

チャレンジャーの戦略

続いてチャレンジャーの戦略について確認してみます。

チャレンジャーのターゲットはセミフルカバレッジです。
つまり、全てとは言わないまでも、市場の大部分の顧客をターゲットにするわけですね。
市場目標は、リーダーの地位を奪い取ることです。

その戦略としては、とにかくリーダーとの差別化を図っていくことになりますね。
先ほども説明した通り、リーダー企業は差別化に対する同質化を図ってくるので、リーダーとチャレンジャーが市場でバチバチとやり合っているようなイメージですね。

フォロワーの戦略

そんな中、フォローワーはどんな戦略を採るのでしょうか?
フォロワーのターゲットは中価格から低価格志向の顧客で、市場目標は市場生存に必要な利潤を得ることです。

また、採用する戦略は低価格化です。
既に市場にある製品を模倣することで、開発費やプロモーション費を抑えて低価格化を実現していきます。

リーダーやチャレンジャーからは一歩引いたところにいて、低価格化によって効率的に顧客を獲得しているようなイメージですね。

このようなイメージからすると、先ほどのサッポロやサントリーのような企業をフォロワーに分類するのは少し外れているような気もしますね。

ニッチャーの戦略

最後のニッチャーは、市場の特定の顧客をターゲットにして事業を行います。
目標としては、その特定市場での利潤の最大化を目指します。

そして、採るべき戦略は集中・差別化です。
特定市場に経営資源を集中させて、その中のナンバーワンを目指すべく差別化を図っていくのがニッチャーの採る戦略と言えるわけですね。

日本の中小企業が目指すべき姿は、リーダーやチャレンジャーではなく、ニッチャーであると言われています。
少ない経営資源を特定市場での差別化のために投入して、生き残っていくわけですね。

過去問を解いてみよう (平成28年度 第7問)

それではここまでの内容を復習するために、過去問を解いてみましょう。

業界での競争地位によって、企業はリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーに分類できる。そのなかで、チャレンジャーとニッチャーに関する記述として最も適切なものはどれか。

ア チャレンジャーは、業界で生き残ることを目標に、購買の動機として価格を重視するセグメントをターゲットにし、 徹底的なコストダウンを行い、代替品を低価格で提供していく戦略を採る。

イ チャレンジャーは、市場全体をターゲットとするフル・カバレッジにより、リーダーの製品を模倣していく戦略を採る。

ウ チャレンジャーは、リーダーに対する価格・製品・プレイス・プロモーションという4Pの差別化よりも、ドメインの差別化を行う。

エ ニッチャーは、狭いターゲットに対して、業界の価格競争には巻き込まれないように閉鎖型の販売チャネルを採用して、媒体を絞り込んだプロモーションを展開する。

オ ニッチャーは自社が属する業界のライフサイクルの導入期に活動が活発になり、他社の行動を追随する同質化を推進し、市場全体の規模を広げる役割を担っている。

中小企業診断士試験 企業経営理論 平成28年度 第7問

それでは問題の解説です。

✅選択肢ア
チャレンジャーは業界で生き残ることを目標にして、代替品を低価格で提供していく戦略をとるとありますが、これはフォロワーの説明となっていますよね。

✅選択肢イ
チャレンジャーはフルカバレッジにより、リーダーの製品を模倣していく戦略を採るとありますが、フルカバレッジで同質化を図るのはリーダー企業ですので、選択肢イも誤りとなります。

✅選択肢ウ
チャレンジャーは4Pの差別化よりもドメインの差別化を行うとありますが、同じ業界に所属していますので、リーダーもチャレンジャーもドメインは基本的に類似したものとなります。
むしろチャレンジャーは、4Pの観点でリーダーとの差別化を図りますので、この選択肢も誤りとなります。

✅選択肢エ
ニッチャーは狭いターゲットに対して閉鎖型の販売チャネルを採用し、媒体を絞り込んだプロモーションを展開するとありますが、これはまさにピッチャーの特徴を言い表していますので、選択肢エが正解となります。

閉鎖型の販売チャネルを採用するという点は、やや細かい論点ではありますが、余裕があれば覚えておくと良いでしょう。
ちなみにリーダーは開放型の販売チャネルを採用することになります。

✅選択肢オ
ニッチャーは他者の行動を追随する同質化を推進し、市場全体の規模を広げる役割を担っているとした部分は、リーダーの説明となっておりますので、選択肢オも誤りということがわかりますね。

ここまで説明した競争地位ごとの特徴をしっかりと理解しておけば、そこまで難しい問題ではなかったかと思います。

まとめ

それでは最後にまとめです。

競争地位別の戦略定石

今回は競争地位ごとのターゲット、目標、戦略を表にまとめて説明しました。
リーダーだけは4つの戦略を書きましたが、その他の競争地位はそれぞれ一つずつに絞り込んだので、ポイントを押さえて覚えられるかと思います。
ここに書いてある戦略はあくまで戦略定石ですので、常にこの通りに行動するとは限らない点にはご注意ください。

優先して覚えるべきはリーダーとニッチャーです。
業界への影響力が大きいリーダー企業の行動原理を理解して、中小企業として生きる道であるニッチャー企業の採るべき戦略を理解するイメージですね。

僕もYouTubeの中では、診断士受験生向けの情報発信という、かなりニッチな市場で戦っているわけですね。
なんとかこの市場で生き残りたいと思っていますので、これからもご支援のほどよろしくお願いします。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
勉強頑張ってください!応援しています!!

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