PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)という経営学で使われる理論をご存知でしょうか?
もともとはボストン・コンサルティング・グループというコンサル会社が編み出したフレームワークなだけあって、実社会にも応用のきく、とても実践的な理論のひとつです。
しかし、このPPM分析を実際にやろうとすると、初心者には難易度が高く、なかなか敷居の高いフレームワークとなっています。
理論的にはわかりやすく、実用性があるのに、とてももったいなく感じます。
そこで今回は、だれでも簡単にPPM分析ができるように、そのやり方を徹底公開します!
PPM分析で使えるツールも紹介していくので、ご自分で試されてみてはいかがでしょうか?
1.PPM分析(プロダクトポートフォリオマネジメント)ってなに?
PPM分析とは、企業の事業展開を検討するためのフレームワークの一つです。
市場の成長率と相対的マーケットシェアの2つの基準から各事業を4つのタイプに分類します。
4つの分類とは
- 問題児
- 花形
- 金のなる木
- 負け犬
のことで、それぞれ特徴があります。
この記事では詳しく説明しませんが、事業分類をすることで自社が資金投入するべき事業と、撤退すべき事業が明らかになるのです。
もしPPM分析(プロダクトポートフォリオマネジメント)について詳しく知りたい方は、僕の過去の記事を参照してください。
関連記事⇒プロダクトポートフォリオマネジメントをわかりやすく解説
2.市場成長率と市場占有率(シェア)ってどうやって出すの?
そう思って取り組んでみると、すぐに手が止まってしまいます。
その理由は、PPM分析には市場成長率と市場占有率の2つのデータが必要だからです。
この2つのデータを市場分析の初心者が見つけるのは骨の折れる作業なのです。
僕もいざPPM分析をやってみようとしたときは、市場規模が算出できずに投げ出してしまいました。
めげずに色々とやり方を調べた結果、次にご紹介するやり方で進めると、初心者でも簡単にPPM分析ができると思います!
2-1.市場成長率の求め方
まずは市場成長率の計算方法から確認してみましょう。
市場成長率 = 今年の市場規模 ÷ 昨年の市場規模
式としてはとても簡単ですね。問題は、市場規模をどうやって求めるのかということです。
市場規模を求める方法は、実際に調べる方法と、自分の手で計算する方法があります。
2-2.市場規模の調べ方
市場規模は簡単にインターネットで調べることができます。まずは公的な機関からデータを入手する方法をご紹介しましょう。
以上のサイトから、市場規模のデータを入手できるはずです。
そんな方が多いと思います。公的な機関の資料で市場調査なんてできる人は、そもそもこんな記事にたどり着きませんよね。笑
次におススメするサイトが、僕の一番のおススメです!
ほとんどの市場規模がある程度信頼できるデータをもとに掲載されていますし、次の画面のように年ごと市場規模をグラフで表示させることもできるので、とても便利ですよね!
市場規模マップの使い方については次の記事を参照してください。
関連記事⇒市場規模算出方法
2-3.市場規模を算出する方法
そんな時は市場規模を推定する方法があります。フェルミ推定と呼ばれる手法で、現時点でわかっている情報から市場規模を導き出すことができます。
例えばある会社の売上高と市場シェアがわかっているのなら、売上高を市場シェアで割ることで、市場規模が計算で求まるのです。
フェルミ推定の詳しいやり方は次のサイトがわかりやすくおススメです。
外部サイト⇒フェルミ推定のやり方
3.市場占有率(シェア)ってどうやって出すの?
市場規模がわかったら、次は市場占有率(シェア)を求めましょう。
このようにたじろいでしまいそうですが、そんな心配は必要ありません!
PPM分析では相対シェアを調べればよいので、市場シェアNo.1と分析対象の市場シェアの2つを調べるだけでいいのです!
※ただし、分析対象が市場シェアNo.1だった場合は、No.2の市場シェアを調べる必要があります。
あなたは既に市場規模を金額ベースでわかっているので、市場シェアを導くのはとても簡単です。
3-1.市場シェアの求め方
市場シェアは市場規模の内訳です。
市場シェアの計算式は、事業部の売上高÷市場規模で求められます。
各会社の売り上げは、HPで公開されている場合が多いです。会社のHPにアクセスし、株主・投資家情報、決算情報とすすんでいけば、各事業部の売上高を見つけることができるでしょう。
その気持ち、よーくわかります。そんな方は次のサイトがおススメです。むしろ次に紹介するサイトでほとんどの業界の市場シェアがわかってしまうので、こちらを使うと作業がスムーズに進むでしょう。
市場シェア一覧(外部サイト)⇒業界動向 SEARCH.COM
ご覧のように、業界ごとの市場シェアトップ10までの企業が一覧でわかってしまいます。これを利用しない手はありません!
また、市場シェアを調べているうちに、次のような問題が発生するかもしれないので、対処法をお教えします。
3-1-1.販売数量しかわからない場合
調べている中で、各企業の販売数量ベースでしかわからない場合があると思います。
そんな時には市場規模と市場シェアの単位を合わせてあげれば問題ありません。各企業の販売数量がわかるのであれば、市場規模を販売数量ベースで求めればいいのです。
どうしても売上高(金額ベース)で導きたいのであれば、販売数量に平均単価を掛け合わせる方法もあります。
例えば、自動車の販売台数が1000万台で、平均単価が300万円だった場合、
売上高 = 1000万台 × 300万円 = 30億円
というように販売台数と平均単価から売上を導き出すことができるのです。
3-1-2.セグメントとして売上がまとまっている場合
大企業になると、各製品の売上が具体的にわからない場合があります。
例えば富士フィルムの決算情報を見にいくと、各事業部の売上が
- イメージング事業
- インフォメーション事業
- ドキュメント事業
というような分類がされていて、具体的なカメラや化粧品などの製品ごとの売り上げが公開されていません。当然、このままでは市場シェアを求めることができないのです。
そのような場合は、業界団体のホームページを探してみましょう。
例えば出版業界であれば日本雑誌協会のサイトを見に行くと、各企業ごとのデータが公開されている場合があります。
参考サイト⇒日本雑誌協会
このように、製品・商品ごとに市場シェアを根気よく調べていきましょう。
4.実際にやってみよう!PPM分析実践編
それでは、これまで紹介したやり方に沿って、実際にPPM分析をしてみましょう。
今回はコンビニのセブン&アイ・ホールディングスを分析対象として選んでみました。
4-1.セブン&アイ・ホールディングスが取り組んでいる事業は?
セブン&アイ・ホールディングスが取り組んでいる事業は以下の通りです。
- コンビニエンスストア事業
- スーパーストア事業
- 百貨店事業
- フードサービス事業
- 金融関連事業
- 通信販売事業
- その他事業
非常に多くの事業に取り組んでいるようですね。今回分析するのは、比較的わたしたちに馴染みのある5つの事業に絞ろうと思います。
- セブン・イレブン(コンビニエンスストア)
- 西武(百貨店)
- セブン銀行(銀行)
- nanaco(電子マネー)
- オムニ7(通信販売)
以上の5つのサービスについて調べてみました。
4-2.事業部ごとの市場規模
それでは各事業部ごとの市場規模を調べていきましょう。基本的にはネットの情報をもとに調べます。
PPM分析では市場成長率を算出しなければいけないので、2年分の市場規模を調べるという点に注意が必要です。
一つ一つに調べていった結果、市場規模、市場成長率は次の表のようになりました。
市場規模が最も大きいのは銀行、市場成長率が最も高いのは電子マネーですね。
セブン&アイ・ホールディングスといえば、セブンイレブンの印象が強いですが、市場規模・市場成長率ともに中間くらいの位置にあります。
4-3.事業部ごとの市場シェア
次に市場ごとのNo.1企業の売上高を調べていきましょう。
セブン&アイホールディングスが唯一業界No.1の座を勝ち取っているのはコンビニエンスストア事業で、残りは全て業界No.2以下でした。
調べた結果を次の表にまとめます。
こうしてみるとコンビニの市場シェアは圧倒的に高いですね。銀行と通信販売はもう少し頑張りたいところでしょうか?
やはり表で見るだけではよくわかりません。そこでPPM分析マップが役に立つのですね。
4-4.PPM分析マップにまとめてみる
最後に、PPM分析でおなじみの分析マップにまとめてみましょう。
問題児の事業は電子マネー・通信販売事業で、負け犬の事業は百貨店・銀行の事業のようですね。
コンビニエンスストア事業はほとんど金のなる木になっていますね。コンビニが圧倒的な売上規模を誇っているので、会社の資金源になっていることは間違いなさそうです。
もしコンビニが業績不振に陥ったら、セブン&アイ・ホールディングスは窮地に立たされるでしょうね。そうなったら百貨店事業をいち早く撤退することが合理的な経営判断となりそうです。
このように現実の会社をPPMで分析してみると、経営側の意図がとてもよくわかって楽しいですね。
PPM分析で各事業部をマッピングできたら、次の2点を調べてみましょう!
①各事業のシナジー効果
②各事業部の営業利益率
これらを調べることで、よりよい分析結果が得られるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
PPM分析は理論としてはとてもわかりやすく、使いこなせれば本格的な企業分析ができるようになります。
しかし、実際にやろうとすると初心者ではなかなか難しいのが実情です。
初心者にとって課題となるのは市場規模の調べ方、市場シェアの求め方にあります。
今回ご紹介したやり方に沿って根気強く調べ、時にはフェルミ推定で市場規模を推測しながら分析を進めていくと、優れた分析結果が得られるでしょう。
是非、ご自身の企業研究にお役立て頂ければと思います。