破壊的イノベーションにより大企業が滅びる理由

破壊的イノベーションにより大企業が滅びる理由

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前回の記事
クリステンセンの破壊的イノベーションの意味を理解する
で解説したように、破壊的イノベーションは製品・サービスの価値要素を低下させる変わりに、
他の価値要素を向上させるタイプのイノベーションです。

イノベーションジレンマの著者クレイトン・クリステンセンは、
破壊的イノベーションが原因で、大企業は築き上げた業界の地位を失うと述べています。

なぜ大企業は破壊的イノベーションへの対応に失敗してしまうのでしょうか。
今回はその理由を探っていきましょう。

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大企業が業界の地位を失う瞬間

たかぴー
今回は破壊的イノベーションが大企業を追い込む理由について説明していくよ

つかさ
先輩!よろしくお願いします!

たかぴー
破壊的イノベーションはこれまで市場で重要視されていた価値水準を低下させるタイプのイノベーションだったね。
デジタルカメラにとっての携帯電話のカメラ機能は、取るにならない性能であったはずだ。
しかし、携帯電話は通話機能やメール機能など、様々な機能を備えた製品として拡大していったよね。

つかさ
もともと携帯電話とデジタルカメラは全く別の製品でしたよね。

たかぴー
そうなんだ。携帯電話が発売された当初はそもそもカメラ機能なんてなかったしね。
携帯電話にカメラ機能が付いたのは1999年からなんだけど、その時の画質なんてデジタルカメラと比較すると、
まさにおもちゃのようなものだったんだ。

つかさ
はい!あの頃はケータイで写真が撮れるだけで感動していました笑

たかぴー
そこでちょっとこのグラフを見て欲しいんだ。

参考1:平賀督基「画素数競争とケータイカメラの進化」
参考2:コンパクトデジカメ高画素化競争の終焉

たかぴー
これはデジタルカメラ・携帯電話ごとの画素数の推移を年別に表したグラフだよ。
これを見て何か気づくことはあるかな?

つかさ
うーんと、携帯電話の画素数は2001年時点では本当に小さいですね。
でも、2010年の頃にはデジタルカメラとほとんど変わらないくらいになっています!

たかぴー
そうなんだ。この10年で携帯電話の画素数はなんと約100倍以上向上しているんだね!
単純に画素数の大きさ=画像のキレイさというわけではないけれど、2010年時点で人間の目ではデジタルカメラと携帯電話の画像のキレイさの違いがわからないほどになっているんだ。

つかさ
改めてグラフで見てみると、物凄い勢いですね。
確かに2010年の頃にはケータイにカメラが付いているのは当たり前だったように思います。

たかぴー
じゃあここで質問だけど、ほとんど画質に差がなかったら、デジタルカメラと携帯電話、どっちを買いたいかな?

つかさ
なんだか誘導尋問みたいですね笑
まぁ値段にもよりますが、携帯電話で十分と思う人が多いと思います!

たかぴー
確かに答えのわかりきった質問だったね笑
でも実際に数字で見るとその様子がよく分かると思うよ。
このグラフを見て欲しいんだ。

※一般社団法人カメラ映像機器工業会の統計データをもとに管理人が作成

たかぴー
これはデジタルカメラの出荷台数を年別に表したグラフだよ。
これを見てわかることは何かな?

つかさ
えーっと、1999年から徐々に出荷台数が増えていますね。
デジタルカメラが爆発的に普及していったことがわかります。
でも、2010年をピークに出荷台数が右肩下がりですね。

たかぴー
うん、この2010年付近は携帯電話の画素数がデジタルカメラの画素数に追い付いた時期と重なるね。
これだけでデジタルカメラ市場縮小の理由は説明できないけど、因果関係はありそうだね。

つかさ
はい!私もスマホがあるからデジカメはいらないかなって思っちゃってます。

たかぴー
実際にそう思ってデジカメを購入しない読者も多いはずだよ。
じゃあ破壊的イノベーションの特徴に合わせて、ここまでをおさらいしてみようか。

つかさ
まとめですね!できるだけわかりやすくお願いします!

たかぴー
まとめ

Ⅰ.携帯電話はカメラ画質を著しく低下させる代わりに、様々な機能を備えた製品として独自の市場を築いた。
Ⅱ.携帯電話市場が拡大されるにつれ、カメラ機能の性能も向上していった。
Ⅲ.携帯電話とデジタルカメラの性能の差がほとんど変わらなくなると、デジタルカメラ市場が縮小した。

当初は低下させた画質という価値を、再び向上させることで、デジタルカメラ市場を駆逐していったんだね。


つかさ
最初はおもちゃだと油断していたカメラメーカーもビックリしたでしょうね。

たかぴー
そうだと思うよ。さらに問題なのは、今からカメラメーカーが携帯電話市場に参入することができないんだ。

つかさ
今はアップルやソニーみたいに、携帯電話市場でしのぎの削ってきたメーカーしか生き残っていないですもんね。
いかにカメラ機能に優れたノウハウを持っていても、新規参入は難しいと思います。

たかぴー
そうなんだ。こうしてカメラメーカーはただ指を加えて見ているしかなくなってしまう。
今はカメラが趣味のヘビーユーザー層をターゲットにして、一眼レフカメラ等のハイクオリティ製品を売るしかなくなっているんだね。

つかさ
その市場もこの後の携帯電話のカメラ機能の向上によっては、食い潰されてしまうんですかね?

たかぴー
そこまでは断言できないけど、可能性はあるかもしれないね。
そういった意味で、今後のデジタルカメラ市場の動向は注目していきたいね。

いかがでしょうか。
デジタルカメラ市場と携帯電話市場を例に、破壊的イノベーションが従来の市場を駆逐する瞬間を見てきました。
これは決してデジタルカメラ市場と携帯電話市場に限った話ではありません。
破壊的イノベーションが起こる全ての市場に言えることです。

より一般的に、破壊的イノベーションによって従来市場の大手企業が業界の地位を失う瞬間をまとめてみましょう。

Ⅰ.従来の市場で求められているある価値を低下させる代わりに、他のある価値を向上させる製品が、新たな市場を作る
Ⅱ.新市場が拡大されるにつれ、従来の市場で求められていた価値が向する。
Ⅲ.従来市場で求められている価値基準を、新市場の価値で満たされると同時に、従来市場のユーザーが新市場に移行する。
Ⅳ.従来市場の企業は、新市場での成功するノウハウを持っておらず、最悪の場合市場から撤退する。

 

なぜ大手企業は破壊的イノベーションにより生まれた新市場に参入しないのか

たかぴー
大手企業が破壊的イノベーションによって市場から追い出されてしまう理由はわかったね。
ほとんど例外なく、破壊的イノベーションが起こると従来の優良企業は、大きなダメージを負ってしまうんだ。

つかさ
なんだかこわい話ですね。
大手企業はこうなる前に手を打てなかったものでしょうか?

たかぴー
新市場が市場としてしっかりと確立される前から大手企業が参入していれば、この危機を回避できたかもしれないね。
でも実際にはそうはならないんだ。

つかさ
えー!でも大手企業は資金も人材も豊富だから、早い段階で参入さえしちゃえば、成功すると思うんですけど!

たかぴー
感覚的にはそう思っても無理はないよね。
でも大手企業は新規市場に参入したくない、あるいは参入しても失敗する理由があるんだ。

つかさ
ぜひ詳しく聞かせてください!

たかぴー
うん、じゃあまずは理由を3つにまとめて、ひとつひとつ説明していくよ。

Ⅰ.新市場の製品を既存ユーザーは求めていないため。
Ⅱ.新市場のユーザーは従来市場の価値基準を求めていないため。
Ⅲ.新市場は利益率が低いため。

じゃあまずは1番目の理由からだね。
またデジタルカメラの話に戻すけど、デジタルカメラ市場で求められていた価値って覚えてる?


つかさ
はい!画質の向上でした!

たかぴー
そうだね。もう一度グラフを見直してほしいんだけど、デジタルカメラの画質が向上するごとに、出荷台数も増加しているよね。

 

つかさ
確かに面白いくらい比例していますね!

たかぴー
大手企業は、ユーザーの求めていた画質の向上という要望を見事に応えることで、規模を拡大していったんだ。

つかさ
お客様の声にしっかり耳を傾けて実現する!これは企業の鉄則ですね!

たかぴー
うん、競合ひしめく中で勝ち残るのは容易なことじゃないよね。
生き残るためには、ユーザーの期待に応え続けるしかないんだ。
でもこのような業界の伸び盛りに、カメラ機能の画質の低い、携帯電話市場が生まれた。
もしこのような中で、既存ユーザー向けに携帯電話の開発を発表したらどうなるだろう?

つかさ
えー!?既存ユーザーはとにかくキレイに映るカメラが欲しいんですよね?
そんな人たちにいかに便利だからって画質の低い携帯電話を売ろうとしても、反感を買ってしまうと思います!

たかぴー
そうだね。それに携帯電話の開発資金も必要だ。
下手したらユーザーのニーズに応えられないどころか、競争力が落ちてしまって、既存市場からも撤退させられるかもしれないね。

つかさ
お客さんが求めてない製品を、あえて開発することはとてもリスクが高いんですね。

たかぴー
そうなんだ。これが大手企業が新市場に参入できないひとつ目の理由なんだ。

つかさ
なるほど~!

たかぴー
2つ目の理由は、『新市場のユーザーは従来市場の価値基準を求めていないため』だったね。
もし大手企業がリスクを負って新市場に参入したとしよう。
カメラメーカーが携帯電話市場に参入した場合、どんな携帯電話を作ると思う?

つかさ
カメラメーカーにとっての強みは、これまで育ててきたカメラ技術だと思います!
やっぱりカメラ機能に特化した携帯電話を作るんじゃないですかね?

たかぴー
自社の強みを生かした市場参入は鉄則だよね。
でも携帯電話市場にデジタルカメラ市場の価値観を持ち込むのはナンセンスなんだ。

つかさ
えー自信があったのに…。どうしてですか?

たかぴー
携帯電話市場のユーザーが欲しいのは、やっぱり携帯電話なんだ。カメラじゃない。
つまり、本来に求められている、電話機能・メール機能が充実した携帯電話が欲しいんだ。
いずれカメラ機能の充実が求められるけど、市場誕生当初では時期尚早というわけだね。

つかさ
郷に入らば郷に従えってことですかね?

たかぴー
そうだね。新市場ではハイクオリティ・高価格製品より、コスパの良い商品が求められることが多いんだ。

つかさ
従来市場の強みを生かそうとしても、新市場ユーザーとしては性能が高すぎると感じてしまうんですね~。
そこまではいらないから、そのぶん価格下げて~!って思ってしまうんですね。

たかぴー
ん、まさにそういうことだね。
それで、カメラの画質向上が本格的に始まった頃には、大手企業は参入不可能なほど新市場が成熟してしまうんだ。
これが2つ目の理由だね。

つかさ
最後は3つ目の理由ですかー?

たかぴー
うん、3つ目の理由は、『新市場は利益率が低いため』だったね。
一般的に新市場は既存市場と比較して、利益率が低いんだ。
それに市場規模も小さく、大手企業が期待するほどのリターンが見込めないんだよね。

つかさ
儲からない市場に参入するってなかなか考えにくいですよね。

たかぴー
そうだね。以上のように、大手企業は合理的に考ると新市場に参入する理由が全くないんだ。

つかさ
う~ん、確かに大手企業が新市場に参入することは百害あって一利なしな気がします!
でも後になって取り返しがつなかくなってしまうんですよね。
破壊的イノベーションは恐ろしいですね…。


いかがでしたか?
大手企業はあくまで合理的判断のもと新市場に参入しないか、あるいは参入したとしても失敗するのです。
繰り返しになりますが、最後にもう一度大手企業が新市場に参入しない理由をまとめましょう。

Ⅰ.新市場の製品を既存ユーザーは求めていないため。
Ⅱ.新市場のユーザーは従来市場の価値基準を求めていないため。
Ⅲ.新市場は利益率が低いため。

破壊的イノベーションが引き起こされると、大手企業はなす術がありません。
しかし、企業は永続する使命があります。本書の著者は大手企業が破壊的イノベーションに対抗する手段を提唱していますが、それはまた次の機会にしたいと思います。

それではここまで読んで頂き、ありがとうございました!

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