はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回はアサエルの購買行動類型をテーマに解説しようと思います。
理論自体は難しいものではないですが、いい加減に覚えていると、足元をすくわれてしまう論点ですので、この機会に正しく理解するようにしましょう。
関与とは?
アサエルの購買行動類型を学習する上で、関与という概念を押さえておく必要があります。
関与とは、製品・サービスに対するこだわりの大きさを表します。
製品ごとの関与の大きさは人によって異なりますが、一般的に関与が大きくなる要因を確認してみましょう。
関与が高くなる要因としては、価格が高い、購入頻度が低い、購入・所有することで社会的地位が上がるような製品・サービスとされています。
例えば、一戸建ての家や、自動車といったものは、多くの人にとって関与が高い製品であると言えますね。
試験対策上、関与の特徴も押さえておく必要があります。
- 価格が高い
- 購入頻度が低い
- 所有すると社会的地位が上がる
また、関与の特徴は以下の通りです。
こちらも合わせて押さえておきましょう。
- 関与の水準は人によって異なるし、同じ人でも状況や時期によって異なる
- 関与が高くなるほど購入に慎重になる
- 製品カテゴリーとブランドの関与は別
製品カテゴリーとブランドの関与は全くの別物です。
例えば、スマートフォンという製品カテゴリーに対して皆さんはこだわりは強いでしょうか?
Sony、SHARP、Samsungの機能的な違いはよくわからなくても、Apple社のiPhoneだけは最新モデルの情報を毎回必ずキャッチアップする方が多いかと思います。
このように、製品カテゴリー自体への関与は低くても、特定のブランドだけには関与が高い、つまり強いこだわりを持つというのは起こり得るというわけですね。
以上のように、関与はこだわりの強さを表していて、この関与の大きさによって消費者の行動パターンは変わってくるということを、覚えておくようにしましょう。
アサエルの購買行動類型
それでは、今回の本題であるアサエルの購買行動類型を確認してみましょう。
アサエルの購買行動類型とは、「関与」と「ブランド間の知覚差異」によって購買行動を分類したもののことを言います。
縦軸に関与、横軸にブランド間の知覚差異をとったグラフで考えてみましょう。
ブランド間の知覚差異とは、製品同士の違いがわかりやすいかということを表しています。

アサエルは、関与とブランド間の知覚差異によって、消費者行動を以下のように分類しました。
- 情報処理型:関与が高く、ブランド間の知覚差異も大きい
- 不協和解消型:関与は高いが、ブランド間の知覚差異は小さい
- バラエティ・シーキング型:関与は低く、知覚差異が大きい
- 習慣型:両方とも低い
アサエルは、この分類ごとに、消費者の購買行動は変わると主張しているわけですね。
情報処理型とは?
それぞれの分類の具体的な内容を見ていきたいと思います。
まずは情報処理型ですね。
情報処理型は、関与が高く、ブランド間の知覚差異が大きいのでした。
こだわりが強く、製品の違いもわかりやすいというわけですね。
例えば自動車がこの分類に当てはまるかと思います。

車は決して安い買い物ではありませんし、例えば軽自動車とSUVでは明らかにデザイン・機能面で違いがありますからね。
このような製品では、消費者はよく調べてから購入し、購入後も納得感が得られやすいのが特徴です。
動画をご覧の方の中には、価格・機能・デザインを総合的に検討して、納得の一台を持たれている方が多いのではないでしょうか。
不協和解消型とは?
続いて不協和解消型です。
不協和解消型は、関与が高く、ブランド間の知覚差異は小さいのでした。
こだわりは強いけど、製品ごとの違いはよく分からないというわけですね。
不協和解消型の例としては、結婚式会場が個人的にはわかりやすい例だと思います。

人生に一度しかないので関与は高くなりますが、実際に式を挙げてみないと式場の良さがわからないですからね。
こういった不協和解消型に分類される製品・サービスは、関与が高いので色々と調べようとしますが、結局しらべたところで違いがよく分からず、結局、単純に価格や人気ランキング、クチコミなどで選んでしまう傾向にあります。
そして最大の特徴が、購入後に本当に正しい選択だったのか不安になってしまうことがあります。
このように、その時は正しい選択と思ったのに、後で不安になることを、認知的不協和と言います。
不協和解消型では、この認知的不協和を解消するために、購入後にも関わらず、その商品について好意的なクチコミを探したり、逆に他の商品で失敗したという評判を聞いて安心しようとする行動をするようになります。
ここが試験に出やすいところなので、よく覚えておきましょう。
バラエティ・シーキング型とは?
続いてバラエティ・シーキング型です。
バラエティ・シーキング型は、関与が高く、ブランド間の知覚差異は小さいのでした。
こだわりはないけど、製品ごとの違いはわかりやすいわけですね。
具体例としては、カップラーメンがわかりやすいと思います。

皆さんにもお気に入りの商品はあると思いますが、毎回カップヌードルのシーフードではなく、たまにはカレーにしたりトマトチリにしたり、まったく別ブランドの新商品に手を出したりしますよね。
こういった製品の場合は、関与が低いので事前に調べたりせずに店頭で商品を選んだり、違いがわかりやすいので、様々な商品を買って試したりという購買行動を起こします。
特に飲食系の商品はバラエティ・シーキング型に含まれやすいと言えますね。
習慣型とは?
最後に習慣型です。
習慣型は、関与もブランド間の知覚差異も小さいのでした。
特にこだわりもなく、製品ごとの違いはわかりにくいわけですね。
こちらはミネラルウォーターがわかりやすい例かと思います。

多少パッケージの違いはありますが、水そのものの違いは一般人からするとほとんどわかりませんよね。
こういった商品の場合は、いつも購入しているものを継続的に購入したり、違いがわからないので、単純に一番安いものを購入したりされます。
確かに先ほどのバラエティ・シーキング型のように、ミネラルウォーターで新商品を色々試してしようとはなりにくいですよね。
アサエルの購買行動類型のポイント
ここまででアサエルの購買行動類型の中身をご理解いただけたと思いますが、改めて試験で問われやすいポイントを確認しておこうと思います。
購買行動類型で問われやすいのは、不協和解消型と、バラエティ・シーキング型の2つです。
ちょうどどちらが、どちらか分からなくなりやすいからですね。

改めて、不協和解消型は関与が高いため、選択の際に失敗はしたくないのですが、製品の違いはよくわからないので、認知的不協和が起こりやすいのでしたね。
関与とブランド間の知覚差異の高い・低いでどのような心理が働くかを理解しておけば、苦労せずに対応できるかと思います。
一方で、バラエティ・シーキング型は、英語の意味を理解すれば覚えやすいです。
バラエティは「様々な」、シーキングは「探す」という意味の英単語です。
バラエティ・シーキング型はカップラーメンのように、こだわりが少ないからこそ新商品を色々と試したくなるのでしたね。
まさに分類の名称が消費者行動を表しているので、こちらも意味が分かれば覚えやすいですね。
過去問を解いてみよう (平成27年度 第31問 設問2)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
人は、一般的に、自分にとって最良と思われる商品を購入する。しかし、購入後に「本当にこの選択でよかったのか」、「迷ったもうひとつの商品のほうがよかったのではないか」と思い悩むことは、決して珍しいことではない。購入した商品は最良と思う一方で、他の商品のほうがよかったのではないかとも考える。人は、こうした2つの認識の矛盾から、心理的な緊張を高める。
文中の下線部の「心理的な緊張」状態に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア この状態が生じると、好ましい情報を求めて、当該企業のホームページや広告を見る傾向がある。
イ この状態が生じると、当該購買行動が非常に重要な出来事であったかのように過大に感じる。
ウ この状態は関与が低くブランド間知覚差異が小さいと生じやすい。
エ この状態は信頼財よりも探索財や経験財において生じやすい。
中小企業診断士試験 企業経営理論 平成27年度 第31問 設問2
「本当にこの選択でよかったのか」という心理的な緊張、つまり認知的不協和について正しい記述を選ぶ問題ですね。
✅選択肢ア
この状態が生じると好ましい情報を求める、とありますが、これは正しい記述ですね。
認知的不協和が生じると、自分の選択が正しいと思いこませるために、自分にとって都合の良い情報を集めようとするのでした。
ですので、選択肢アが正解となります。
念のため、他の選択肢も見ていきましょう。
✅選択肢イ
この選択肢で悩んだ方もいるかもしれませんが、認知的不協和に陥ると、自分の選択を楽観的に考えて大したことないと思い込んで安心しようとするので、誤りとなります。
✅選択肢ウ
この状態は関与が低く、ブランド間知覚差異が小さいとありますが、不協和解消型は関与が高いので誤りですね。
✅選択肢エ
この状態は信頼財よりも探索財や経験財において生じやすいとありますが、信頼財は使っても品質評価できない商品、探索財は購入前に品質をある程度評価できる商品、経験財は使ってみて初めて品質評価できる商品と分類されています。
この説明を聞くと、認知的不協和は信頼財で起こりやすいとわかりますので、選択肢エも誤りと判断できますね。
企業経営理論のマーケティング関連の論点は、知識さえ持っておけば比較的対応しやすい問題が多いので、このくらいの難易度の問題はぜひ得点源にしていただければと思います。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は、関与とブランド間の知覚差異で購買行動を分類する、アサエルの購買行動類型を学習しました。
関与と知覚差異によって、このように4つに行動を分類できるのでしたね。

このうち、不協和解消型の商品では、本当に自分の選択が正しかったのかという認知的不協和が起こりやすいのでした。
今回の過去問では出てきませんでしたが、バラエティ・シーキング型もよく問われるので、バラエティが様々、シーキングが探すということで、関与が低いからこそ色々と試す様子を覚えていただければと思います。
ちなみに、市販のテキストでは、以下のような図解で説明されていることが多いのですが、関与が左側にいくほど高いという図になっていて、感覚とは逆で覚えにくいので、今回解説した形で内容を理解いただければと思います。
はい、というわけで、今期はアサエルの購買行動類型について解説してみました。
試験に問われやすいポイントは押さえていただきたいのですが、ビジネスの現場では、自社の製品・サービスがどの分類に当てはまり、それぞれの行動に合わせたマーケティング施策を打ち出すことがとても大切です。
皆さんの会社が提供してる製品・サービスがどの分類になるのか考えみるのも面白いかと思います。