近年、企業戦略のひとつとしてアライアンスが注目されています。
Tポイントで有名なCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)社もアライアンスによって、Tポイントが貯まる・使える店舗を増やし続けています。
企業間で協力しているイメージがあっても、詳しくアライアンスの意味を正確に説明できる方は意外と少ないかもしれません。
そこで今回はアライアンスの意味を説明した上で、事例や効果などを深堀りしていこうと思います。
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1.アライアンスとは?
アライアンスとは、戦略的提携や業務提携とも呼ばれており、複数の企業が契約に基づいて実現する協力関係のことを言います。
平たく言うと、“契約を結んで会社同士で協力体制を築くこと”という意味合い捉えておけば、実務上の理解は問題ありません。
ポイントは企業の所有権・経営権が移転せず、経営の独立性を維持したまま協力体制を築く点にあります。
この点が、後で触れるM&Aとの大きな違いとなります。
2.アライアンスの事例
アライアンスの事例としては、Tポイントが有名です。
日本人の2人に1人は持っているといわれるTポイントカードですが、複数企業とのアライアンス契約によって成立しています。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ社の子会社であるTポイント・ジャパン社がTポイント事業を運営しており、ファミリーマートやENEOS、ソフトバンク等とアライアンス契約を結ぶことで、それぞれのお店でTポイントが貯まる・使えるようになります。
このアライアンス契約では、ファミリーマート等のアライアンス企業は、Tポイントを付与するたびにTポイント・ジャパン社に一定量の手数料を支払っています。これがTポイント・ジャパン社の収入源となるわけですね。
一方で、アライアンス企業がこのアライアンス契約に期待していることは集客力です。
“Tポイントが貯まるお得なお店”だと認知されることで、Tポイントカード所有者からの来店を見込むことができます。2021年1月時点でTポイントカード所有者は7,000万人以上いると言われているので、そのポテンシャルの高さが分かるかと思います。
さらにアライアンス企業同士の相互送客支援もTポイント・ジャパン社が担っています。皆さんもファミリーマートで買い物をすると、他のお店使えるクーポン券が発券された経験があるかと思います。この仕組みを提供しているのがTポイント・ジャパン社なのです。
以上のようにTポイントについてアライアンス契約を結ぶことは、Tポイント・ジャパン社とアライアンス企業の双方にとって大きなメリットがあることが分かります。
3.アライアンスの効果
アライアンスを組むことによって、パートナーとなる企業同士がお互いに経営資源を補完し合うことで、スピーディーな事業展開を図ることが可能となります。
先ほど説明したTポイントの事例を取ってみても、自社でポイントカードを作ってTポイントと匹敵するほどの効果を上げるようになるには、相当な時間とコストを要することは容易に想像できるでしょう。
なお、アライアンスはあくまで契約による企業同士の緩やかな結びつきなので、契約解消も比較的容易であることに注意が必要です。
また、協力関係を取りながらも相手の技術やノウハウを吸収しようという競争が繰り広げられるため、協力と競争が併存した状況になることも多いことが特徴のひとつです。
4.アライアンスとカルテルの違い
アライアンスと意味が似た言葉に、カルテルというものがあります。
カルテルは直訳すると企業連合となり、アライアンスと同じように思えます。
しかし、カルテルとアライアンスでは、目的が違うのです。
アライアンスはお互いの利益を向上させるために業務提携を行うのに対し、カルテルでは自由競争をさけるために、販売価格を維持したり、販売地域を限定したり、生産量を制限したりするのです。
例えばコカ・コーラとペプシコーラが協議して、コカ・コーラは東日本のみ、ペプシコーラは西日本のみで販売されるというのは、カルテルにあたります。
また、auとドコモとソフトバンクが協議して、携帯料金は月額最低1万円とすることも、カルテルにあたります。
これらの協力体制では、企業側は余計な競争をせずに利益を享受できるというメリットがある反面、消費者は全く得をしないというデメリットがあります。
このような消費者の不利益になるような企業連合(=カルテル)は法律で禁止されています。
アライアンスを組むときは、企業の利益向上を目的とすることはもちろん、消費者にとってもメリットがなければいけないわけですね。
5.アライアンスとM&Aの違い
最後に、アライアンスとM&Aとの違いについても確認しておきましょう。
M&Aは直訳すると買収と合併であり、アライアンスと同じ効果があるように思えます。
しかし、M&Aとアライアンスでは、会社の所有権が違うのです。
アライアンスはお互いが別々の会社として業務提携を行うのに対し、M&Aでは一方の会社がもう一方の会社に吸収された上で、業務連携を行います。
例えばコンビニのローソンのATMではみずほ銀行の引き落としが出来ますが、これはアライアンスによるものです。
仮にローソンがみずほ銀行の全株式の50%以上を買い入れ、みずほ銀行の所有権を取得した場合、みずほ銀行はローソンのものになります。
アライアンス契約では企業同士はあくまで対等な関係でしたが、M&Aでは親会社・子会社という関係になるため、買収した側の権限が大きくなります。
M&Aを実施することで、買収先企業の経営資源を自由に使うことで、短時間でスピーディな戦略展開を図り、自社の弱みの補強を行うことができるようになります。
この相手企業の経営資源に対する自由度の高さがアライアンス契約との大きな違いとなります。
もちろんM&Aにもデメリットはあります。
買収には多額な資金が必要になる上に、人事労務面で合併がスムーズにいかないケースがあります。
強引な買収を進めてしまうと、買収先の従業員から激しい抵抗に遭ってしまいます。
買収先の従業員の協力無くして、経営資源の活用はあり得ないので、M&Aの実施には慎重さとスピーディさの両方が求められます。
これらの点を踏まえて、M&Aを実施するかアライアンス契約を結ぶかの判断が必要となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
アライアンスによって、企業同士がお互いの経営資源を補完してWin-Winの関係を築いている様子がご覧頂けたかと思います。
また、一口に協力体制といってもお互いの企業にとってはもちろんのこと、消費者にとってもメリットがなければなりません。
消費者の不利益になるような協力体制はカルテルと呼ばれ、法律で禁じられています。
また、協力体制をさらに強化するために、M&Aという手段がとられる場合もあります。
これは他の企業を買収して完全な所有権を得ることで、自社が思う通りの業務提携を可能に出来ます。
M&Aには様々な問題がつきまとう場合が多く、実施には慎重な判断が必要となります。
その点アライアンスはしがらみが少なく、取り組みやすい企業連合であるといえます。
アライアンスを組む時は、自社の利益、提携先企業の利益、そして消費者の利益が最大限になるような協力体制を築けるといいですね。
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ではっ!