はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は運搬分析をテーマに解説しようと思います。
この論点は無理に内容を暗記しようとするよりも、まずは各分析手法の内容を理解することが大切です。
この記事を見ればしっかりと理解して問題にも対応できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
IEとは?
前回も学習しましたが、IEとは作業研究のことで、作業工程や作業の方法を分析して、生産性を向上する手法全体のことを指します。
例えば属人的で非効率な作業があったときに、この内容を分析して、作業の効率化を図り、生産性を向上させるようなイメージですね。
IEとは、工場作業を効率化するための考え方というわけですね。
IEの体系図
そんなIEの体系図です。
IEには、方法研究と作業測定と分かれており、方法研究は工程分析と動作研究、作業測定は稼働分析と時間研究に分かれています。
工程分析は、上図のように細分化されていますが、このうち、単純工程分析、詳細工程分析、配置・流れ分析は前回解説しました。
興味があれば概要欄から以下記事を確認してみてください。
今回解説する運搬分析は、運搬工程分析、運搬活性分析、空運搬分析に分かれます。
体系図そのものを覚える必要はありませんが、IEでは広範囲の論点に触れているうちに、自分がどの部分を勉強しているのか見失いがちですので、整理してみました。
今回は無駄な運搬作業を見つけ、できるだけ排除する方法を学習するというわけですね。
運搬分析の目的
今回学習する運搬分析の目的は、付加価値を生まない運搬作業を分析して、効率化を図ることにあります。
例えば、材料が入荷して出荷するまでの間に、材料を倉庫から出して加工し、製品倉庫に移動させていたとします。
このとき、製品に加工する工程は付加価値を生む作業と見なすことができますが、運搬作業自体は付加価値を生んでいるとは言えません。
もちろん必要不可欠な作業ではありますが、これ自体が製品の価値を高めるわけではありませんからね。
ですので、運搬作業は可能な限り効率化して、時間や人を割かずに行いたいわけです。
その運搬作業の分析手法を、これからいくつか紹介したいと思います。
運搬工程分析とは?
まずは運搬工程分析です。
専用の記号を用いて、モノが流れる様子を分析する手法です。
具体的には、以下のようなイメージですね。
記号の中身が分からないと、分析のしようがありませんので、中身を説明したいと思います。
運搬工程分析に用いられる記号には、基本記号と台記号があります。
基本記号は、モノが動く状態と、停止している状態の2種類があります。
その中で移動、取り扱い、加工、停滞に分かれているわけですね。
加工と停滞は、前回学習した工程図記号と同じですね。
移動と取り扱いの記号まで覚えられると理想的ですが、やや細かいので優先度を落としてしまって構いません。
続いて、台記号には以下のような種類があります。
こちらはそれぞれの記号が、その状態をほぼそのまま表しているので、直観的にわかりやすいですね。
左より右に記載してある記号の方が、モノの移動は効率的になります。
とはいえ、台記号も暗記に時間を費やすのではなく、何となく各記号のイメージを持っておく程度に留めておいて良いかと思います。
さて、記号の内容がわかった上で、先ほどの運搬工程図を見てみましょう。
基本記号と台記号を組み合わせて表現されていることがわかりますね。
例えば、組立台の記号では、コンベアから持ち上げていると読み取れますし、検査台の記号では、床の上で停滞していることが分かります。
このように運搬工程分析では、工程ごとに、モノがどのように運ばれているかが一目で分かるわけですね。
運搬活性分析とは?
続いて運搬活性分析です。
運搬活性分析では、モノの移動のしやすさを分析します。
具体的には、置かれているモノを移動するための手間を、活性示数という数値で評価します。
例えば表の一番上の、床にバラ置きされたものは、移動されるために、まとめて、起こして、持ち上げて、持っていく必要があるとしましょう。
この場合、活性示数は0です。
一方、一番下の動いているコンベア上のものは、移動させるために一切手間を加える必要がありません。
この場合、活性示数は5です。
つまり、活性示数は既に省かれている手間の数を示し、値が大きいほど移動しやすい状態であると読み取れます。
値が小さいほど、手間がないように見えますので、注意して読み取るようにしましょう。
運搬活性分析では、平均活性示数という指標も使われるようです。
活性示数の合計を、停滞状態の数で割り返して求めます。
先ほどの表の例の場合、平均活性示数は活性示数の合計を停滞数の5で割り返して、2と求められるわけですね。
平均活性示数は値が大きいほど、工程全体としてモノが移動しやすい状態と見なすことができます。
空運搬分析とは?
続いて空運搬分析です。
空運搬分析では、モノを持たずに移動している距離を分析します。
例えば製品を工場から倉庫に置くために20m移動した後、台車を戻しに30m移動したとします。
帰りの30mについては、モノを全く移動するので非効率です。
帰りの移動でも何か運ぶことで空運搬を防いだり、空運搬の距離そのものを短くすることで、効率改善ができそうです。
このような空運搬がどの程度発生しているかを評価する指標として、空運搬係数というものがあります。
空移動距離をモノの移動距離で割り返して求めます。
左の例の場合、空移動距離の30m÷モノの移動距離20mで1.5と求められますね。
空運搬が全くないと、空運搬係数は0になりますので、この係数は0に近づくほど良いということになりますね。
以上、ここまでが運搬分析の具体的な手法の紹介でした。
マテハンの原則
最後にマテハンの原則というものも、出題実績がありますので説明します。
マテハンの原則とは、モノを効率的に運搬するための原則をいいます。
※マテハンとは「マテリアルハンドリング」の略で、運搬作業全般を指した言葉です。
マテハンの原則は数多くの原則がありますので、ここではその一部を紹介したい思います。
1つ目は活性荷物の原則ですね。
モノを動かしやすい状態に保ちましょうという原則です。
例えば引っ越し前に荷物が散乱した状態にするのではなく、きちんと段ボールに入れて運びやすい状態にするイメージですね。
先ほど学習した活性示数を高める活動全般を指します。
2つ目はユニット化の原則です。
モノをまとめて、運搬回数を減らしましょうという原則です。
例えば、使い終わった段ボールを畳まずに運ぼうとすると1つずつ運ぶことになりますが、紐で縛ってひとつにまとめることで、1回で運ぶことができます。
3つ目は継ぎ目の原則です。
移動の終点から次の始点の間の移動で、ムダな手間を省きましょうという原則です。
例えば、ひとつの生産工程が終わるたびに台車で製品を移動させるのではなく、複数の生産工程をラインで繋いでしまって、モノを移動させながら加工するようなイメージですね。
こうすることで、生産工程間を移動する際のムダな手間を省けます。
4つ目は自重軽減の原則です。
これは運搬具の自重を減らしましょうという原則です。
例えば10㎏の台車を5kgの台車に変えるようなイメージですね。
運搬具が軽ければ、それだけ労働者の負担も軽減できますし、移動時間も短縮できるというわけですね。
マテハンの原則は、原則の名称を暗記しようとするのではなく、問題の選択肢の内容が、確かに運搬の手間を省くことに繋がるかを判断できるようになるだけで十分かと思います。
過去問を解いてみよう (平成29年度 第13問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
工場内でのマテリアルハンドリングに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 運搬活性示数は、置かれている物品を運び出すために必要となる取り扱いの手間の数を示している。
イ 運搬管理の改善には、レイアウトの改善、運搬方法の改善、運搬制度の改善がある。
ウ 運搬工程分析では、モノの運搬活動を「移動」と「取り扱い」の2つの観点から分析する。
エ 平均活性示数は、停滞工程の活性示数の合計を停滞工程数で除した値として求められる。
工場内での運搬に関して、不適切なものを選ぶ問題ですね。
答えは選択肢アで、運搬活性示数は既に省略されている手間の数を表しますので、誤りとなります。
省かれた手間の数が多いだけ、数値が増えていくのでしたね。
他の選択肢は正しい記述ですので、念のため確認しておいてください。
過去問を解いてみよう (平成26年度 第20問)
今回はもう1問見てみたいと思います。
マテリアルハンドリングを合理化するための原則に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 原材料の運搬量や運搬回数を削減するために、必要量以上の原材料を製造ラインに払い出さないようにした。これは「自重軽減の原則」にかなう改善である。
イ 工場の床面とトラックの荷台の高さを揃えることで、フォークリフトを使ってトラックから直接原材料を搬入できるようにした。これは「継ぎ目の原則」にかなう改善である。
ウ 作業者が個別に運搬を行ってきた複数種類の原材料を、運搬用パレットを準備してフォークリフトで一度に運べるようにした。これは「ユニット化の原則」にかなう改善である。
エ 倉庫の床に直接置いていた製品をパレット上で保管するようにした。これは「活性荷物の原則」にかなう改善である。
マテハンの原則に関して、不適切なものを選ぶ問題ですね。
正解は選択肢アで、自重の原則は運搬具そのものの重量を減らす原則でしたね。
他の選択肢は正しい記述となります。
マテハンの原則は、名称がそのまま改善の内容を表しているので、正誤判定しやすいかと思います。
ここに記載されている具体例と紐付けながら、イメージを持っておくようにしましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回学習した運搬分析は、付加価値を生まない運搬作業を分析して、効率化を図るための活動でした。
具体的には、運搬工程分析・運搬活性分析・空運搬分析の3つを解説しました。
名称を聞いたら、内容を思い出せるようによく復習しましょう。
また、最後にマテハンの原則も紹介しました。
記事で紹介した以外にも様々な原則がありますので、興味がある方はしらべてみてください。
はい、というわけで、今回は運搬分析をテーマに解説してみました。
これで工程分析の論点は全て解説したことになりますね。
今後は動作研究・作業測定の論点も解説していきたいと思いますので、楽しみにお待ちください。