一次試験対策

税効果会計とは?試験で問われるポイントに絞って解説します!/財務会計/中小企業診断士試験対策

Pocket

はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。

今回は、税効果会計をテーマに解説したいと思います。

この論点は、テキストを読んでもよく分からず、問題を解いてさらに混乱してしまうという方も多いのではないでしょうか。

実際、本試験でもかなり細かい内容を問われるので、捨て問にされている方も多いかと思います。

そのような中で、今回は診断士試験対策として最低限知っておいてほしい内容をまとめてきましたので、是非最後までご覧いただけばと思います。

YouTube動画でも解説中!

税金計算方法の考え方

まずは法人税の計算方法を確認してみましょう。

税金を算出する上で大切なのは、税引前利益を把握することですね。

この税引前利益に税率を掛けて、税金額が算出されるわけではありません。

税引前利益に各種調整を加えて課税所得というものを計算し、その課税所得に税率をかけて、税金が計算されるという仕組みになっています。

税金計算方法の考え方

ちなみに、こちらの考え方は、会計上の利益から税金を計算する場合で、税法上は、税法上の利益・費用である益金と損金の差額で課税所得が計算されます。

それでは、会計上の利益から課税所得はどのように計算されるかというと、以下のような計算式となっています。

課税所得の計算式

課税所得=税引前利益-益金不算入額+益金算入額+損金不算入額-損金算入額

漢字ばかりで、こんなの見ただけでブラウザバックしたくなりますね。

よく見ると、益金と損金、算入と不算入に分解ができそうです。
益金は税法上の利益のことで、損金は損失のことでしたね。
ですので、益金の算入額は収益として認める、損益の算入額は損失として認めるという意味となります。

損金と益金の整理

逆に不算入は、収益として認めない、損失として認めないということになりますね。

収益として認められると、課税所得が増える方向になりますし、損失として認められると、課税所得は減る方向になりそうですね。
逆に収益として認められなと、課税所得は減る方向になり、損失として認められないと、課税所得は増える方向になります。

まとめると、上図の赤字が増えると課税所得はプラス、青字が増えると課税所得はマイナスになるわけですね。

このように理解すると、課税所得の計算式は、次のように整理できます。

課税所得の計算式

課税所得=税引前利益 + (益金算入額+損金不算入額)-(益金不算入額+損金算入額)

課税所得は、税引前利益に赤字で書いたプラスの影響の項目を足して、青字で書いたマイナスの影響の項目を差し引いて計算できるわけです。

この課税所得を計算してから法人税を計算させる問題は、令和5年度の第6問で出題されていますので、ご自身で確認してみてください。

税効果会計とは?

それでは本題の税効果会計の内容を確認していきましょう。
税効果会計とは、会計上と税法上の利益差によって生じる税費用を調整するための会計処理を言います。
減価償却で具体例を確認してみましょう。

例えば、ある機械設備を取得価額120万円で購入したとしましょう。
このとき、耐用年数は4年、残存価額0円、定額法で処理するとします。
そうすると、年間の減価償却費は120万円÷4年で、30万円と計算できますね。

税効果会計とは?

ところが、税法上では、この設備の耐用年数が6年と定められていたとします。
そうすると、税法上の耐用年数は、120万円÷6年で20万円ということになりますね。

このように、会社会計と税法処理では、費用の計算結果が変わる場合があります
ですので、このような費用の差異を加味して、税金を調整する必要が出てきます。

税効果会計による税金の調整方法

それでは実際に、どのような調整になるのかを確認してみましょう。

左側で会計上の収益・費用・利益を、右側で税法上の益金・損金・課税所得を計算してみようと思います。

税効果会計による税金の調整方法

まず、会計上の利益は100万円-30万円で、70万円だったとしましょう。
一方で、税法上の益金は100万円でしたが、損金が20万円しか認められなかったため、課税所得は80万円だったとします。

ここで、法人税率は30%だったとしますと、法人税はあくまで課税所得をベースに決まりますので、税法上の課税所得80万円×30%で24万円となります。
この法人税額が、そのまま会計上の法人税額に適用されるわけですね。

今のプロセスを見ていただいたらお分かりかと思いますが、当然、会計上の利益70万円×法人税率30%が法人税になるわけではありません。

一方で、会計上では費用として計上していた部分の税額が無視されていることになりますので、このまま計算された税引後利益は、企業の生み出した利益を正しく反映していることにならなくなってしまいます。

そこで、損金として認められなかった10万円×税率30%の3万円を、法人税等調整額として計上して、税引き後利益に、税法上では無視された分の費用を反映させます。
こうすることで、会計上の収益・費用に対応した税引後利益を計算するわけですね。

以上のように、法人税額を調整することを税効果会計と呼んでいるわけですね。

差異の種類

続いて、会計上と税法上で発生する差異の種類を確認してみましょう。

税効果会計で登場する差異には、一時差異と永久差異の2種類があります。

一時差異と永久差異の違い

永久差異とは、会計上と税法上で永遠にその差異が解消されない差異のことを言います。
例えば、会社経費として発生した交際費・接待費が税法上は経費として認められないケースがありますね。
時間が経てば税法上でも経費として認められるものでもありませんので、永久差異に分類されます。
このような永久差異には、税効果会計は適用できません。

一方で、一時差異は、時間が経てば会計上の収益・費用と税法上の益金・損金が一致するタイプの差異です。
減価償却なんかが、イメージしやすいですね。
償却期間を何年にするかだけの違いで、償却費用の総額は会計上でも税法上でも変わりません。

一時差異は、将来加算一時差異と、将来減算一時差異の2種類があります。

将来加算一時差異は、将来の課税所得を増加させるものと定義されています。
課税所得が増えると、法人税も増えますので、将来の法人税が増えるものと理解して差し支えないと思います。

将来加算一時差異が発生した場合は、繰越税金負債を計上して、法人税額を調整します。
将来の法人税が増えるので、その分を負債として計上しておく、と覚えておくと良いでしょう。

一方で、将来減算一時差異は、将来の課税所得を減少させるものです。
発生したら、繰越税金資産を計上します。将来加算一時差異の逆と覚えておくと良いでしょう。

永久差異が発生したら税効果会計は適用されない、一時差異が発生したら繰越税金負債・資産を計上して税効果会計を適用する、ということを覚えておいていただければと思います。

繰越税金資産の計算例

それでは繰越税金資産の計算方法を、先ほどの減価償却の例で確認してみましょう。

会計上では年間の減価償却費は30万円としていましたが、税法上は20万円までしか認めていません。

繰越税金資産の計算例

つまり、30万円と20万円の差額10万円分が、損金として認められない、損金不算入額というわけですね。

繰越税金資産を計算する際は、この損金不算入額10万円に税率を掛けて計算します。
以上の計算も本試験での出題実績がありますので、確認しておいてください。

永久差異・一時差異の主な具体例と覚え方

最後に、差異の具体例とその覚え方を確認したいと思います。

税効果会計における差異には、一時差異・永久差異の2種類があったのでしたね。

将来加算一時差異には、圧縮記帳の損金算入額、将来減算一時差異には、減価償却費の超過額や引当金の繰入超過額などがあり、永久差異には、受取配当金の益金不算入額や交際費・罰科金の損金不算入額などがあります。

正直、全ての項目を丸暗記するのは現実的ではないので、判断方法を解説したと思います。
全てのケースに当てはまるわけではないのですが、一時差異は社外への現金流出入がないもの、永久差異は社外の現金流出入が発生するものと整理すると良いかと思います。

一時差異と永久差異の具体例と覚え方

永久差異の項目の、受取配当金や交際費は実際に現金のやり取りが発生するものですよね。

そして、将来加算と将来減算の区別は、税法上の損金に算入された金額は将来加算一時差異、税法上の損金に算入されなかった金額は将来減算一時差異になると覚えておくとよいでしょう。

この整理をしておけば、少なくとも診断士試験で出題される内容には概ね対応できるかと思ます。

参考にしてみてください。

過去問を解いてみよう (平成29年度 第6問)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

税効果会計に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 受取配当金のうち益金に算入されない金額は、繰延税金負債を増加させる。

イ 交際費のうち損金に算入されない金額は、繰延税金資産を増加させる。

ウ 税法の損金算入限度額を超える貸倒引当金繰入額は、繰延税金資産を減少させる。

エ 税法の損金算入限度額を超える減価償却費は、繰延税金資産を増加させる。


税効果会計について、正しい記述を選ぶ問題ですね。 

✅選択肢ア・イ
どちらも受取配当金・交際費に関する選択肢で、これらは現金流出を発生させる項目ですので、永久差異に分類されますね。
永久差異には税効果会計は適用されないので、両方とも誤りであると判断できます。

✅選択肢ウ
損金算入限度額を超える貸倒引当金繰入額というのは、損金として認められなかった金額、つまり損金不算入額になりますね。
損金不算入額は将来減算一時差異に分類され、繰越税金資産を増加させるのでした。
ですので、選択肢ウは誤りとなりますね。

✅選択肢エ
損金算入限度額を超える減価償却費は、選択肢ウと同じく、損金不算入額となりますので、繰越税金資産を増加させます。
ですので、選択肢エがこの問題の正解となりますね。

この問題は、一時差異と永久差異の区別と、仕訳の方法について問われました。

この動画で解説した内容を理解していれば解ける問題ではありますが、隅々までしっかりと理解する必要があるので、やはり難易度は高いですね。

捨て問にするのも一つの手だとは思うので、過去問に全く歯が立たないという方は、検討してみてください。

まとめ

それでは最後にまとめです。

今回学習した税効果効果とは、会計上と税法上の利益差によって生じる税費用を調整するための会計処理なのでした。

会計上と税法上の差異には、一時差異と永久差異があり、税効果会計が適用されるのは、一時差異だけなのでしたね。

また、各項目がどの差異に分類されるのかについては、現金の流出入が発生していれば永久差異、そうでなければ一時差異で、会計上に損金として認められなければ将来減算一時差異となるのでした。

税効果会計_まとめ

仕訳をするときは、損金不算入額×税率分を繰越税金資産として計上するのでしたね。

試験対策上、覚えていただきたいのは、将来減算一時差異と永久差異の区別です。
将来加算一時差異については、優先度が落ちますので、覚えることが多くて大変と感じた方は、赤で囲った内容を優先的に覚えていただければと思います。

はい、というわけで、今回は税効果会計について学習しました。

これまでいくつかの論点解説をしてきましたが、正直、トップクラスに解説が難しい論点でしたね。
この記事で、一人でも多く税効果会計を攻略できた方がいらっしゃれば、僕も嬉しい限りです。

Pocket

ABOUT ME
たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA