はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は、令和2年度の二次筆記試験・事例Ⅰの過去問について、解説していきたいと思います。
事例Ⅰは、組織・人事をテーマにした事例です。今回のA社は、温泉地にある老舗の蔵元(造り酒屋)で、買収による事業承継や、グループ経営を見据えた人事制度がポイントになる事例でした。まだ問題を解いていないという方は、ぜひ一度ご自身で解いてから読み進めていただくと、より理解が深まるかと思います。
A社の事業概要
まずは、A社がどのような会社なのかを確認していきましょう。A社は、もともと造り酒屋として酒造事業を営んできた、200年以上続く老舗の蔵元です。
資本金は2,000万円、売上は約5億円で、そのうち約2億円が昔ながらの酒造事業、残りの約3億円がレストランと土産物店の売上です。現在の当主は、40代前半の若いA社長ですね。
実は、江戸時代から続くこのA社は、もともと現在のA社長とは全く血縁関係のない旧家によって営まれていました。しかし、2000年代になって日本酒の国内消費量が大幅に減少し、A社の売上も半分近くまで落ち込んでしまいます。後継者もいなかったことから、旧家の当主は廃業を考えるようになっていました。
そこで登場するのが、地元の有力実業家であるA社長の祖父です。祖父は飲食業を皮切りに事業を広げ、地元の旅館を全国的に有名な高級旅館へと育て上げた実業家で、複数のグループ企業を経営しています。この祖父がA社を友好的に買収し、首都圏の金融機関に勤めていた孫(A社長)を呼び戻して、老舗酒造店の立て直しに取り組ませたわけですね。
その後、A社はインバウンドの追い風に乗り、旅館などグループ企業からの営業支援も受けながら、順調に売上を伸ばしていきました。そして将来、A社長は祖父が築いた企業グループ全体の総帥となっていく立場にあります。このA社とグループ企業との関係を読み取れるかどうかで、取り組みやすさが変わってくる事例でしたね。

SWOT分析と課題の把握
それでは、いつも通りSWOT分析でA社を整理してみましょう。まずは強みと弱みです。
A社の強みは、200年以上続いた老舗のブランド力、旅館などグループ会社の協力体制、そして執行役員の営業力だと読み取れます。一方で弱みは、人事管理が伝統的な家族主義的で、祖父の勘と経験をベースとした前近代的なものである点ですね。いつもの事例と比べると、強み・弱みともに抜き出せる項目は少なめです。

続いて、機会・脅威と課題の抽出です。機会はインバウンド需要の増加、脅威は2000年代からの日本酒の国内消費量の大幅な減少ですね。この状況を受けて、A社は土産物店やレストラン事業を始めて収益源を増やしていったというわけです。
そして課題としては、企業グループ全体のバランスを考えた人事制度の整備が挙げられます。ご覧の通り、今回はSWOT分析として抜き出せる項目が少ないので、いつも多くの項目から解答を組み立てている方は、少しやりにくさを感じたかもしれませんね。

それでは、以上のSWOT分析を踏まえながら、ここから各設問を順番に解説していきます。



