はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は「セールスミックスとセグメント別業績評価」をテーマに解説していきたいと思います。
この論点は一次試験での出題頻度は高くないですが、二次試験では頻出論点となっています。特に二次試験においては、出題パターンを押さえておくことで得点源にしやすい分野でもあります。
一見すると難しそうに感じるかもしれませんが、基本的な考え方をしっかりと理解すれば、実はシンプルな内容ですので、この記事で一緒に確認していきましょう。
セールスミックスとは?
今回学習するセールスミックスとは、限られた資源の中で最も利益が出る製品・サービスの組み合わせを決める手法のことをいいます。
例えばあるレストランでは、ハンバーグセット、パスタセット、ステーキセットの3つのメニューがランチタイムで提供されていたとしましょう。
そして、各メニューの詳細情報として、以下のような情報が与えられていたとします。

提供価格や1食あたりの原価、月間需要量や1食あたりの調理時間などですね。
このような状況を踏まえた上で、利益が最大になる販売数量の組み合わせを考えるのが、セールスミックスの問題というわけですね。
セールスミックスの概念自体はそこまで難しいものではないのですが、実際に求めてみようとすると、なかなか苦労する方が多いかと思いますので、実際に数値を当てはめながら計算方法を確認していきたいと思います。
最適セールスミックスを求めてみよう
先ほど与えられた表、各メニューの情報に加えて、1か月の総稼働時間は250時間という制約条件が与えられたとして、利益が最大になる販売数量を求めてみたいと思います。

セールスミックスの問題では、まず最初に限界利益を求める必要があります。
限界利益とは、価格から原価(1単位当たり変動費)を差し引いた値ですね。
便宜上、ハンバーグはX、パスタはY、ステーキはZとおいて、各限界利益を求めてみたいと思います。
X:1500円-900円=600円
Y:2000円-1300円=700円
Z:2500円-1600円=900円
単純に提供価格から原価を差し引くだけですので、ハンバーグは600円、パスタは700円、ステーキは900円と求められますね。
ステーキが最も限界利益が高いので、ステーキの販売数量を多くすれば良いかというと、そうではありません。
今回、制約条件として総稼働時間は250時間と設けられているためですね。
ですので、調理時間1分あたりの限界利益で各メニューを評価する必要があります。
求め方としては、各メニューの限界利益を調理時間で割ることで求められますね。
X:600円÷15分=40円
Y:700円÷20分=35円
Z:900円÷30分=30円
ハンバーグは40円、パスタは35円、ステーキは30円と求められます。
ですので、時間効率が良いハンバーグから順に作っていくことで、利益を最大化できそうです。
表には月間の需要量も記載されていますので、これを踏まえると、最大需要量であるハンバーグは400食、パスタは300食を作るべきですね。
そうするとハンバーグにかける調理時間は6,000分、パスタも同じく6,000分と計算ができます。
2つのメニューを作るので、月間12,000分消費することになりますね。

月間の総稼働時間は250時間=15,000分となっていますので、残り3,000分がステーキにかけられる時間となります。
3,000分をステーキの1食あたりの調理時間である30分で割って、ステーキの販売数量は100食と求められます。
以上から、この条件で利益最大化条件は以下の通りです。
X:400食 Y:300食 Z:100食
ハンバーグは400食、パスタは300食、ステーキは100食作るべきだというように求められますね。
このようにセールスミックスの問題では、制約条件を踏まえて利益を最大にする販売数量などを求める必要があります。
ポイントとなるのは、限界利益を求めたうえで、今回は時間が制約条件でしたので、1分あたりの限界利益で評価する必要があった点ですね。
類似問題では、稼働できる人数が制約条件になったりしますので、その場合は1人あたり限界利益などで商品評価を行う必要があります。
この辺りは問題を解きながらパターンに慣れていく必要がありますね。
セグメント別業績評価とは?
続いて、セグメント別業績評価について解説します。
セグメント別業績評価は、企業の事業をいくつかの区分に分け、それぞれの収益性を評価する指標のことをいいます。
例えばある企業で、ファミリーレストランと回転寿司、それから高級レストランを運営していたとします。
そして、これら3つの事業を管理する本社ビルも存在しています。
セグメント別業績評価を行う際は、次の2つの固定費について知っておく必要があります。
1つ目は個別固定費です。
個別固定費は、各事業だけで発生した固定費のことです。
例えば、各店舗で発生した建物の賃料や、雇っているスタッフの人件費等がこれに当たりますね。
2つ目は共通固定費です。
共通固定費は、各事業に共通して発生した固定費のことをいいます。
この場合は、本社ビルの賃料や、本社ビルで働いているスタッフの人件費などが含まれます。
このように、特定の事業だけで使用しているわけではない固定費は、共通固定費に含まれるわけですね。
セグメント別業績を評価してみよう
ここからは、セグメント別業績評価を実際に行ってみたいと思います。
例えばA〜Cの事業に関して、売上高と変動費、それから固定費が、以下のような値となっていたとします。

ここでは共通固定費は各事業の売上高に比例して按分しているとします。
そうすると営業利益を計算してみると、A事業は70万円、B事業は130万円、C事業は-20万円と計算ができました。
C事業は赤字となっていますので、この事業から撤退した方が企業全体としての利益は大きくなりそうです。
果たして、本当にそうなのでしょうか?
ここで登場するのが「貢献利益」という考え方です。
貢献利益とは、各事業がどれだけ利益に貢献しているかを示す指標です。
具体的には、売上高から変動費と個別固定費を差し引いて求めます。
先ほどの例で、売上高と変動費、個別固定費はそれぞれ以下のような形となっていますよね。

売上高から変動費、個別固定費を差し引くと、貢献利益はA事業は200万円、B事業は250万円、C事業は100万円と求められます。
営業利益は赤字であったC事業であっても、貢献利益はプラス100万円となっていますので、C事業はしっかりと利益に貢献しているということがわかりますね。
では最初の表の何が問題だったかというと、共通固定費の按分の仕方が問題であったわけです。
先ほどは売上高に比例して按分していましたが、先ほど求めた貢献利益に比例して共通固定費を割り振ってみると、A事業は130万円、B事業は164万円、C事業は65万円となります。

そして営業利益をここから求めてみると、A事業は70万円、B事業は86万円、C事業はプラス35万円となり、しっかりとC事業も利益に貢献しているということが読み取れます。
以上のように、各事業の営業利益だけで評価してしまうと、共通固定費の割り振り方によって事業から撤退すべきかどうかという結論が変わってしまいます。
ですので、セグメント別の業績評価を行う際には、貢献利益の大小で評価をした方が、より適切と考えることができます。
この考え方は一次試験・二次試験ともに重要な考え方となりますので、しっかりと覚えておくようにしましょう。
過去問を解いてみよう (平成24年度 第9問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
セグメントとしての事業部が各事業部に共通的に発生する固定費を回収し、さらに利益を獲得することに貢献する度合を示す利益額として最も適切なものはどれか。
ア 売上高 - 売上原価
イ 売上高 - 変動費
ウ 売上高 - 変動費 - 管理可能固定費
エ 売上高 - 変動費 - 個別固定費
貢献利益に関する問題ですね。
貢献利益は、売上高から変動費、それから個別固定費を差し引いて求めるものでしたので、
選択肢エがこの問題の正解となります。
セグメント別業績評価の基本的な考え方さえわかれば、簡単に正解できるサービス問題でしたので、ぜひ得点しておきたい問題でした。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回はセールスミックスとセグメント別業績評価について学習しました。
セールスミックスとは、制約条件の中で利益を最大化する販売数量などを求める手法でしたね。
セールスミックスで重要なのは、まず限界利益を求めることです。限界利益は価格−原価(1単位あたり変動費)で求められるのでしたね。
その上で、時間あたりや一人あたりの限界利益を求めて評価したり、制約条件を守りながら、数量ごとの総利益を比較して、利益最大化条件を考えるのでしたね。
一方、セグメント別業績評価は、事業ごとの収益性を評価する手法でした。
具体的には、貢献利益で事業を評価するのでしたね。
貢献利益の計算式としては、売上高から変動費と個別固定費を差し引いて求めます。
営業利益で業績評価しようとすると、共通固定費の割り振り方次第で評価が変わってしまうので、必ず、貢献利益で評価するように心がけましょう。
はい、というわけで、今回はセールスミックスとセグメント別業績評価について解説しました。
どちらも冒頭で述べたように、二次試験で問われる可能性のある論点ですので、この論点は二次試験の過去問を用いて復習しておくと、一次試験対策との親和性もあるので効率的です。
一次試験の勉強に余裕があるという方は、ぜひ今の時期からチャレンジしてみてください。