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【経営分析】安全性の指標を初学者向けにわかりやすく解説!/財務会計/中小企業診断士

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はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は、経営分析で用いる安全性の指標をテーマに解説したいと思います。

まずは財務諸表を読めるようになりたいというモチベーションで、診断士の勉強を始めた方も多いかと思います。

一方で、テキストに記載されている指標の多さに面を食らってしまいますよね。
とはいえ、経営分析の各種指標は二次試験まで問われる、超重要論点です。

今回は初学者の方にもわかりやすく解説できればと思いますので、是非最後までご覧ください。

YouTube動画でも解説中!

安全性の指標とは?

今回学習する安全性の指標とは、貸借対照表を利用して、倒産リスクや支払い能力の分析を行うための指標です。

財務・会計で主に扱う財務諸表は、貸借対照表と損益計算書の2つがありますが、安全性の指標計算は、基本的に貸借対照表のみを利用します。

貸借対照表と損益計算書

ちなみに、損益計算書だけ利用するのが収益性の指標、BS/PL両方を使うのが効率性の指標ですね。

貸借対照表の右側は銀行からの借り入れを表す負債と、株主の出資金やこれまで稼いできた利益の蓄積を表す純資産に分かれていて、この2つを足し合わせて総資本と呼び、資金の調達元を表します。

一方左側は、調達した資金の使い道を表しています。
現金のまま残している場合もあれば、在庫や機械、建物など購入に充てている場合もありますね。

今回は、この貸借対照表の各科目をもう少し詳しく説明したいと思います。

貸借対照表の科目

貸借対照表の主な科目には、次のような内容があります。

貸借対照表の科目

項目が多くて、覚えるのが大変そうですよね。
それぞれの内容をザックリと知るだけで、そこまで難しい話をしているわけではないことが分かるかと思います。

ここでは資産は流動資産と固定資産に、負債は流動負債と固定負債に分けられるということだけ知っていただければと思います。

流動資産とは?

流動資産とは、現金もしくは比較的短期に現金化できる資産です。
貸借対照表でいうと、左上の項目ですね。

流動資産の表示位置

各科目の内容を、ザックリと確認していきましょう。

流動資産の科目

現預金は、現金そのものですね。
預金も口座から即座に引き落とせるので、会計上は現金の一部と考えます。

受取手形は後日、銀行で現金化できるチケットのようなものです。
取引先から受け取った領収書のような紙を金融機関に持っていくと、指定の金額を受け取ることができる仕組みとなっています。

売掛金は後日の支払いを約束されているお金です。
例えば支払いは来月末ですが、売上自体は今月計上する時に、
売掛金としてその金額を帳簿に記入します。

有価証券は、企業で保有している株式ですね。
投資目的で保有している場合もあれば、単に取引先との付き合いとして保有している場合もあります。

未収入金は、売掛金以外で支払いを待っている状態のお金です。
売掛金は本業にかかわる範囲での支払い待ちのお金で、それ以外は未収入金としています。

短期貸付金は、その名の通り貸し付けたお金ですね。
棚卸資産は、商品在庫を指します。

以上の内容は、比較的短期間、具体的にはおおよそ1年以内で現金化できるので、流動資産に分類できます。

固定資産とは?

固定資産は、現金化に時間を要する資産です。
貸借対照表でいうと、左下の項目ですね。

固定資産の表示位置

固定資産には、土地・建物・機械・長期貸付金などがあります。

固定負債の科目

例えば土地や建物は、売りたいと思っても、なかなか買い手がすぐに見つかるものではありませんよね。
現金に変えるには1年以上かかるような項目は固定資産に分類されます。

以上、資産の項目を見てきましたが、調達したお金が様々な項目に形を変えていることがイメージできたかと思います。
各項目ザックリとしたイメージと、現金化するのにかかる時間で流動・固定で分かれているという程度の理解で十分です。

流動負債とは?

流動負債は、短期で支払う必要がある負債のことです。
貸借対照表でいうと、右上の項目ですね。

流動負債の表示位置

軽く内容を見ていきましょう。

流動負債の科目

支払い手形は、後日、銀行を通した支払いを約束したチケットです。
受取手形の逆ですね。

買掛金は、後日、支払いを約束したお金です。
銀行を通さない企業間での約束という点で、支払手形とは異なります。
こちらは売掛金の逆という理解で問題ありません。

短期借入金は、銀行にすぐ返す必要のある借金とお考え下さい。

未払金は、買掛金以外で支払いを約束したお金です。
買掛金は本業にかかわる項目に、未払い金はその他の項目に利用します。

負債というと、借金のイメージが強いかと思いますが、企業活動においては、それ以外にも支払いを約束している項目が複数あることをご理解いただけたかと思います。

固定負債とは?

固定負債は、長期で支払う必要がある負債です。
貸借対照表でいうと、負債のうち、下側の項目ですね。

固定負債の表示位置

固定負債には、主に長期借入金と社債があります。
長期借入金は金融機関からの融資、社債は企業が直接投資家から借り入れた借金という理解で問題ありません。

以上、負債の内容を見てきましたが、すぐに返す借金と、比較的ゆっくり返す借金があるというとを覚えていただければと思います。

純資産とは?

純資産は、誰かに返済する義務のない資本です。
貸借対照表でいうと、右下の項目ですね。

純資産の表示位置

代表的なのは資本金ですね。
資本金は事業の元手となるお金で、起業する際に創業者が会社に入れたお金とお考え下さい。

純資産の科目

一方、利益剰余金はこれまで企業が稼いできた利益です。
利益は株主に配当金として配られますが、一部は会社に残して、利益剰余金に計上されます。
儲かっている会社であれば、純資産の大半が利益剰余金となります。

最後の自己株式は自社で保有している自社株式です。
これは貸借対照表マイナスの値として表示されます。

以上が純資産の項目のザックリとした説明です。
純資産については、配当金の分配可能額と準備金の積み立てルールという記事で、詳細を解説していますので、さらに詳しく知りたいという方はチェックしてみてください。

分配可能額_サムネイル
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短期安全性の指標

ここからは本題である安全性の指標を解説したいと思います。
まずは短期の安全性ですね。

流動負債をすぐに現金化できる資産で返済できるかを分析する指標です。
貸借対照表でいうと、左上と右上の項目を使うイメージですね。

短期安全性の利用科目

代表的なものに、流動比率があります。

流動比率とは?

こちらは、流動資産を流動負債で割り返して計算します。
流動資産と流動負債のどちらが多いかを見る指標で、100%を超えると安全性が高いと判断できます。
要は、借金より現金が多いので、その気になればすぐに全額返すことができることを表します。

その他に、当座資産という指標もあります。

当座比率とは?

こちらは分子側が流動資産から当座資産に変わっています。
当座資産は、流動資産から商品在庫を表す棚卸資産を差し引いたものです。
結局、商品は売れなければ現金に換えることができませんので、流動資産からこの分を差し引くことで、支払い能力をより厳しく評価することができるわけですね。

流動負債は短期的に返済する必要がある負債で、流動資産はすぐに現金にすることができる資産であることを理解していれば、計算式自体に違和感はないかと思います。
分母・分子の関係だけ気を付けて覚えるようにしましょう。

長期安全性の指標

続いて長期の安全性の指標です。
固定資産をどれだけ自社の資本で購入しているかを分析する指標です。
貸借対照表の左下と右下の項目を使うイメージですね。

長期安全性の利用科目

代表的なものに固定比率があります。

固定比率とは?

固定比率は、固定資産を自己資本、つまり純資産で割り返して求めます。
この指標は100%を下回ると安全とみなせます。

すぐに現金化できない固定資産を、全く借金に頼らず購入していると見なせるので、その分、財務状況が良好だと判断できるわけですね。

長期安全性の指標には、固定長期適合率というものもあります。
こちらは分母側に固定負債を加えたものですね。

固定長期適合率とは?

理想は固定負債を自己資本だけで賄うことですが、少なくとも支払いがゆっくりな固定負債で賄うことができているかを見ることができます。
固定長期適合率が100%以下でないと、固定資産の一部を流動資産で賄っていることになりますので、財務状況としては黄色信号となります。

2つの指標を比べると、固定比率の方が自己資本だけでより厳しく長期の支払い能力を評価しているということになりますね。

短期・長期の指標ともに、このように貸借対照表を右に90度回転させて、分子側に資産の項目が来ると覚えれば、忘れにくいかと思います。

長期安全性の指標の覚え方

資本構成の指標

最後に、資本構成の指標です。
全資本のうち、借金がどれくらいを占めているかを分析する指標です。
貸借対照表でいうと、右側の項目だけを使うイメージですね。

資本構成の指標の利用科目

代表的なものに、自己資本比率があります。

自己資本比率とは?

自己資本を総資本で割り返して求めます。
総資本は、負債と純資産の合計ですね。
企業の全資本のうち、自己資本がどれくらいの割合を占めているかを分析します。

一般的に、50%以上で良好で、少なくとも30%は確保したいと言われていますね。
財務状況を分析する際に利用する、最もベーシックな指標で、自己資本比率が高いほど、倒産リスクは低いと見なすことができます。

一方、負債比率という指標もあります。

負債比率とは?

こちらは負債を自己資本で割り返してもとめます。
負債と自己資本のどちらが多いかを判断する指標で、当然、100%を超えたくないという指標となります。

ただし、評価してる内容は自己資本比率と同じなので、実務上、利用する機会は少ないです。
試験対策上、念のため計算式だけは覚えておいてください。
貸借対照表の上が分子、下が分母としておけば覚えやすいかと思います。

以上、ここまでが安全性の各種指標でした。
安全性の指標は、企業が借りている負債をきちんと返すだけの支払い能力が残されているかを、様々な観点で分析していることがお分かりいただけたかと思います。

過去問を解いてみよう (平成25年度 第5問設問2)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

次に示す財務諸表に基づいて、以下の設問に答えよ(単位:千円)。

(設問2)安全性の動向に関する説明として最も適切なものはどれか。
 流動比率:悪化 固定長期適合率:悪化 負債比率:改善
イ 流動比率:悪化 固定長期適合率:改善 負債比率:改善
ウ 流動比率:改善 固定長期適合率:悪化 負債比率:改善
エ 流動比率:改善 固定長期適合率:改善 負債比率:悪化


今回学習した各種指標を計算して、改善・悪化を判定する問題ですね。

まずは流動比率ですが、流動資産と流動負債を利用するのでしたね。
計算すると、X1年度が218%、X2年度が193%となりました。
資産が多いほど良好となりますので、流動比率は悪化していると見なせますね。

続いて固定長期適合率です。
固定長期適合率は、固定資産を自己資本と固定負債の合計で計算するのでした。
計算すると、X1年度が83%、X2年度は86%となりました。
固定長期適合率は、100%を下回るほど良好となりますので、悪化していると見なせますね。

最後に負債比率です。
負債比率は、負債と自己資本で計算できるのでした。
計算すると、X1年度が51%、X2年度41%です。
負債が少ないほど良好となりますので、負債比率は改善していると見なせますね。

以上の内容から、選択肢アがこの問題の正解となります。

この企業は負債自体は減らせているものの、固定負債の返済に流動資産も充てているために、短期・長期の安全性が低下しているわけですね。
各指標の値が高いと改善と見なせるのか、悪化と見なせるのかも重要ですので、改めて確認いただければと思います。

まとめ

今回は安全性の指標を確認しました。

安全性の指標は、貸借対照表を利用して、企業の倒産リスクや支払い能力の分析を行う指標です。

安全性の指標_まとめ

学習した指標は、短期・長期の安全性指標と、資本構成の指標がありましたね。
貸借対照表で使っている項目の位置と各計算式をセットで覚えることをお勧めします。
計算している内容の意味合いも理解していると、単なる丸暗記に頼らず覚えられるかと思います。
参考にしてみてください。

というわけで、今回は財務分析から短期の安全性の指標を解説しました。

僕自身、本業で取引先の信用調査のために財務諸表を取り寄せることがありますが、財務諸表が読めると、経理部との会話がスムーズになったことが実感できます。

ぜひこの機会に得意論点にしていただければと思います。

なお、動画で解説した各科目の内容は、ザックリとした説明ですので、その点はご了承くださいね。

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たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

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