はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は「販促的価格政策」をテーマに解説していきたいと思います。
今回解説する用語は、価格戦略に関するキーワードで、特に小売業のマーケティングでよく使われますね。
それぞれ似たような印象を受けがちですが、目的や使い方には明確な違いがあります。
過去問でも出題されたことのあるテーマですので、この機会に整理して覚えていきましょう。
ハイ・ロープライシングとは?
ハイ・ロープライシングとは、特定期間・時間帯などで通常価格より低価格に設定する政策のことを言います。
いわゆるスーパーマーケットなどでよく見かける特売のことで、特定の商品を安くしたり、また元の価格に戻したりを繰り返す価格政策です。

このような価格政策には、短期的には売上拡大が図りやすい、特売目当ての新規顧客の獲得に貢献する、売れ残りを処分できるので、在庫調整が容易といったメリットがあります。
一方で、利益率が下がったり、特売価格に慣れることで通常価格で売れなくなるリスクが発生したり、顧客が安売りの印象を受けると、ブランド価値が毀損されてしまうといったデメリットもあります。
確かに特売をすることで、見かけ上は売上高は増えますが、短期的も長期的にも、本当に自社の利益増加に貢献しているか、慎重に判断する必要がありますね。
エブリデーロープライス政策(EDLP)とは?
続いて、エブリデーロープライス政策です。
頭文字を取って、EDLPと表記されるケースもありますね。
エブリデーロープライス政策は、その名の通り、常に徹底した低価格で販売する政策です。
例えば、ディスカウントスーパーマーケットのオーケーが有名ですね。
このスーパーは、あらゆる商品が低価格に設定されており、特に主婦層から人気を博してます。

このような低価格を実現するためにオーケーでは、特売チラシを廃止したり、原則、各商品を1メーカーに絞ることで大量仕入を実現して仕入れコストを抑えたり、比較的郊外に出店することで固定費を削減したりしているようです。
その他にも、お惣菜は店内調理とすることで中間マージンを削減、清涼飲料水は常温販売することで光熱費を削減するなど、徹底したコスト削減を図ることで、初めてローコスト販売が実現できるわけですね。
以上のような工夫もなしにこの価格戦略を実行すれば、たちまち単に経営として成り立たなくなります。
まさに「安さの裏には理由あり」ということを覚えておきましょう。
ロスリーダー政策とは?
最後に、ロスリーダー政策です。
ロスリーダー政策とは、特定商品を原価以下の低価格で販売し、顧客誘引を図る政策のことを言います。
例えば、卵1パック10円のように、原価を大きく下回る価格で目玉商品を販売して、これを大々的に告知して集客するイメージですね。
この卵を目的に来店したお客さんは、せっかく来たのだからと、卵以外にも食料をついで買いするはずです。

ロスリーダー政策は、このように目玉商品とついで買い購入を合わせて、トータルで黒字化を目指す価格政策となっています。
逆に、目玉商品だけ購入されると、赤字になってしまうリスクもあるということを覚えておきましょう。
過去問を解いてみよう (平成27年度 第28問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
価格政策に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア EDLPを実現するためには、メーカーとの交渉を通じて一定期間の買取り数量を決め、納入価格を引き下げ、価格を固定し、自動発注化や物流合理化などを促進する必要がある。
イ キャプティブ(虜)・プライシングは、同時に使用される必要のある2つの商品のマージンを各々高く設定する価格政策である。
ウ ターゲット・コスティングによる価格決定は、ある製品に要する変動費と固定費の水準をもとにして、そこにマージンを付加する方法である。
エ 日本の小売業では、チラシを用いた特売を活用したロスリーダー方式が採用される場合が多い。その主な狙いは消費者による単品大量購買を喚起することである。
価格政策に関して正しいものを選ぶ問題ですね。
選択肢をひとつずつ見ていきましょう。
✅選択肢ア
これはその通りですね。
選択肢アがこの問題の正解となります。
念のため、他の選択肢も見ておきましょう。
✅選択肢イ
キャプティブ価格では、同時に使用される2つの商品のうち、一方の商品を安く、付属品を高く設定することで、トータルで利益を稼ぐ価格設定手法ですので、誤りです。
例えば、プリンターの本体価格はほとんど利益の出ない価格で販売して、インクは高単価に設定するようなイメージですね。
キャプティブ価格は今回解説できませんでしたが、また機会があれば、解説したいと思います。
✅選択肢ウ
これも誤りです。
ターゲット・コスティングでは、まずは想定市場価格を決定し、そこから自社で得たい利益を確定し、最後にその価格・利益を実現するための原価・製造コストを決定してく手法です。
✅選択肢エ
ロスリーダー政策は、複数商品をついで買いさせて、トータルで黒字化を目指す価格政策ですので、誤りとなりますね。
以上の通り、選択肢アが正解となるわけですが、実際は選択肢アとウで迷って、最終的に選択肢アが採用されるという問題かと思います。
選択肢イとエは確実に選択肢から外しておきたいですね。
間違えてしまった方は、よく復習しておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は販促的価格政策として、ハイ・ロープライシング、エブリデーロープライス政策、ロスリーダー政策の3つの用語を学習しました。

各用語の内容を押さえるとともに、可能であればメリット・デメリットを覚えられると理想的です。
いずれも低価格化を目指す価格政策なので、中小企業にはオススメしにくい内容ですね。
特に診断士二次試験では、いかに高付加価値な商品を提供して、価格競争に巻き込まれないようにするか、という観点がとても重要となりますので、そのような考え方も押さえておきましょう。
はい、というわけでは、今回は販促的価格政策をテーマに解説してみました。
この論点は、近年では企業経営理論だけではなく、運営管理でも出題実績があります。
令和4年度第30問の過去問も興味があれば確認してみてください。
この手の論点は知っているだけで比較的簡単に得点できるので、出題されたら確実に正答できるように準備しておきましょう。
