はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は「生産計画と生産統制」をテーマに解説していこうと思います。
生産計画を立てても、それを実際に実行していく仕組みがなければ意味がありませんので、生産計画と生産統制はセットで理解していただく必要があります。
また、この論点は二次試験にも関連する重要なテーマです。
今回の内容を押さえることで、生産管理の全体像がつかみやすくなると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
生産計画とは?
まずは生産計画ですね。
運営管理における生産計画とは、生産量や生産時期に関する計画のことをいいます。
この生産計画には大きく分けると2種類があって、まず期間による分類があります。
期間による分類には、大日程計画、中日程計画、小日程計画の3つがありますね。
大日程計画はおおよそ6ヶ月から2年間の計画のことで、どの工場でどの製品をどれぐらい作るかを決めていきます。
中日程計画は1ヶ月から3ヶ月単位での計画のことで、各月の生産量や生産数量や人員のシフト計画などを作成していきます。
最後の小日程計画は1日から10日間程度の計画のことで、生産順序や作業者・機械稼働の割り当てなどを行います。
大日程計画から小日程計画に進むにつれて、どんどん粒度が細かくなっていくようなイメージですね。
生産計画に限らず、スケジュールを立てるときは、まずは大まかな全体のスケジュールを組んでから徐々に細かくしていくと良いとされていますよね。
続いて、生産計画は対象による分類です。
日程計画と材料計画、工数計画の3つですね。
日程計画では、いつどの順序で生産をするかを決めていきます。
例えば今月製品A、来月製品Bを作るといった計画を作成するイメージですね。
材料計画では必要な資材・材料の数量や手配時期を決めていきます。
具体的には部品Xを来週までに1000個用意するといったことを決めるようなイメージですね。
最後の工数計画では必要な作業時間や設備稼働などを決めていきます。
例えば日中は10名、夜間は7名、そして月末は少し多めの15名を用意するといったイメージですね。
もちろんこれらの計画はどれか1つだけ作ればいいというものではなく、日程計画に沿って材料計画・工数計画が決まっていくように、相互に関係しています。
なお、生産計画の具体的なスケジューリング方法として、フローショップスケジューリングのジョンソン法やPERTなどが用いられますね。
また二次試験では「生産計画の短サイクル化」といった用語がよく用いられます。
生産計画の短サイクル化とは、生産計画の立案・修正の間隔を短くすることをいいます。
一次試験で問われることはほとんどありませんが、二次試験の学習を行うと急に出てくる言い回しとなりますので、この機会に解説をしておきました。
生産統制とは?
続いて生産統制です。
生産統制とは、生産計画通りに実施できるように進捗状況を把握し、計画との差異があればそれを解消することをいいます。
生産統制の中身としては3つありまして、まずは進捗管理ですね。
こちらは日々の生産の進み具合を管理します。
日程計画通りに生産できているのかを確認し、納期遵守を徹底していくようなイメージとなりますね。
続いて現品管理です。
こちらは材料・製品の場所や数量・状態を管理していきます。
材料計画と実際の数量に差がないのか、そしてもし欠品や破損などによって不足があれば補充していくようなイメージとなりますね。
最後は余力管理です。
こちらは人や機械の能力と負荷を管理していきます。
工数計画に対して負荷が高すぎないか、そしてもし負荷が高すぎれば人員の補充や外注などを使い是正していくことになります。
このように生産統制では、時間軸の観点や、モノ・人の観点で生産計画通りに進捗しているのかを管理していくわけですね。
生産計画と生産統制の関係
最後に生産計画と生産統制の関係を確認しましょう。
生産計画も生産統制も、それぞれ時間・モノ・機械という観点で計画と管理を行います。

時間軸の観点では、日程計画と進捗管理がそれぞれ対応し、モノの観点では、材料計画と現品管理が対応し、機械の観点では、工数計画と余力管理がそれぞれ対応しています。
それぞれの中身がわかっていれば、対応関係については理解しやすいかと思います。
例えば本試験の選択肢で、人や機械に対して極端な負荷がかかっていることが余力管理の結果明らかになった場合に、材料計画を見直すといった記述があれば、すぐに間違いであることに気づけると思います。
この対応関係も念のため頭に入れておいていただければと思います。
過去問を解いてみよう (平成28年度 第11問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
工数計画およびそれに対応した余力管理に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 各職場・各作業者について手持仕事量と現有生産能力とを調査し、これらを比較対照したうえで手順計画によって再スケジュールをする。
イ 工数計画において、仕事量や生産能力を算定するためには、一般的に作業時間や作業量が用いられる。
ウ 工数計画において求めた工程別の仕事量と日程計画で計画された納期までに完了する工程別の仕事量とを比較することを並行的に進めていき、生産能力の過不足の状況を把握する。
エ 余力がマイナスになった場合に、就業時間の延長、作業員の増員、外注の利用、機械・設備の増強などの対策をとる。
工数計画と余力管理に関するものとして不適切なものを選ぶ問題ですね。
それでは選択肢を見ていきましょう。
✅選択肢ア
この記述は誤りです。
手順計画ではなく、工数計画によって再スケジュールする、が正しい記述となりますね。
ちなみに、手順計画とはその名の通り、どのような順序で作業を行うかを計画していくこととなりますね。
もちろん作業手順を最適化することで作業が効率化して、負荷が解消することも考えられなくはないですが、基本的に余力管理で負荷が高いことが明らかになった場合は、人員の補充や外注を行うことで負荷を下げていくことになります。
他の選択肢については正しい内容でしたね。
なお、選択肢エでは、「余力がマイナスになる」という表現がありますが、これは負荷が高いということになりますので、選択肢にあるように、就業時間の延長や作業員の増員、外注の利用、機械設備の増強等は、まさに正しい対策となるわけですね。
この問題は言い回しが難しいため、正解を選ぶのはやや難しい問題だったかと思います。
過去問を解いてみよう (令和3年度 第13問)
続いてもう1問解いてみましょう。
現品管理の活動に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 原材料の品質を保持するため、置き場の環境改善を徹底した。
b 仕掛品量の適正かつ迅速な把握のため、RFIDを導入した。
c 仕掛在庫を減らすため、運搬ロットサイズを小さくした。
d 在庫量の適正化を図るため、発注方式の変更を検討した。
〔解答群〕
ア a:正 b:正 c:誤 d:誤
イ a:正 b:正 c:誤 d:正
ウ a:正 b:誤 c:正 d:正
エ a:正 b:誤 c:正 d:誤
オ a:誤 b:正 c:正 d:正
今回は現品管理に関する問題でしたね。
現品管理とは、材料や製品の場所や数量・状態を管理することを言うのでした。
その上で選択肢をひとつずつ見ていきましょう。
✅選択肢a
これはその通りですね。
現品管理では原材料の品質までも管理します。
もし取り扱っている材料が食料品などの場合は、材料が腐ったりしてしまえば欠品を起こしてしまうためですね。
✅選択肢b
これも正しい記述となります。
RFIDはICタグに情報を記録し、リーダーを使って非接触で読み取る仕組みです。
バーコードの進化版のようなイメージですね。
RFIDを用いることで在庫量を素早く把握できることになりますので、まさに現品管理の活動として正しい内容となります。
✅選択肢c
この活動は在庫管理に当たりますので誤りとなります。
✅選択肢d
こちらも在庫管理の活動となりますね。
現品管理と在庫管理は何が違うのか疑問に思われるかもしれません。
在庫管理は在庫量の最適化を図る活動のことをいいます。
この時、そもそも計画していた在庫量が適切でない場合は、計画そのものの見直しも図っていくことになります。
現品管理はあくまで計画した内容通りであるかどうかを確認するものですが、在庫管理は生産統制の枠を超え、計画そのものの見直しまで含めた概念となります。
ですので、選択肢cとdは誤りということになるわけですね。
以上から、選択肢アがこの問題の正解となります。
この問題も、現品管理と在庫管理の違いを理解しておかなければならないため、難易度は高かったかと思います。
とはいえ、同じような観点で問われる可能性もありますので、この記事をご覧の方は、類似問題が出た時にも対応できるように、解説した内容を覚えていただければと思います。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は生産計画と生産統制について解説しました。
それぞれの対応関係は以下の通りでしたね。

この他、生産計画では大日程計画・中日程計画・小日程計画という期間による分類もあるということ、それから二次試験用に短サイクル化という概念についても解説しましたので、これらの考え方についても覚えておいていただければと思います。
はい、というわけで、今回は生産計画と生産統制をテーマに解説をしてみました。
生産活動にかかわらず、何をするにおいても計画をしっかりと立て、その進捗状況を確認し、必要に応じて修正していくというのは、非常に重要なアプローチとなります。
試験勉強においても、運営管理という1科目の学習をいつまでに終わらせるのか、そして学習の中身として、テキストの読み込みや過去問演習をいつまでにやるのかといった計画を立て、その進捗状況を日次・週次で確認していくというアプローチは極めて有効になります。
皆さんもぜひ大日程計画から小日程計画までを立てながら、学習に励んでくださいね。





