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【成長戦略】製品=市場マトリックスと多角化を徹底解説します!/企業経営理論/中小企業診断士試験対策

製品=市場マトリックス_アイキャッチ
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はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は「製品=市場マトリックスと多角化」というテーマで解説していきたいと思います。

この論点は、企業の成長戦略を理解するうえで非常に重要な内容になります。
試験で問われる際は、そこまで難易度が高くないことが多いので、しっかりと押さえて、確実に得点源にできるよう備えておきましょう。

二次試験でも問われたことのある論点でもありますので、ぜひ最後までご覧ください。

製品=市場マトリックス(アンゾフの成長ベクトル)とは?

今回学習する製品=市場マトリックスとは、企業の成長戦略を4つに分類したフレームワークです。

別名、アンゾフの成長ベクトルとも言いますので、まさに企業がさらなる売上拡大を目指したいときに、これからご紹介するフレームワークが使えるわけですね。

製品・市場マトリックスは、縦軸に市場、横軸に製品を取り、さらにそれぞれを既存と新規で区分します。

製品=マトリックスとは?

既存の製品・市場で売上拡大を図る戦略は市場浸透戦略といいます。
この戦略の場合、企業は広告や販促活動を強化することで、まだ取り切れていない市場シェアの拡大を図ります。
単に自社の製品・サービスの認知が足りていない場合には、有効な戦略かもしれませんね。

続いて、新規市場に既存製品を投入する戦略は新市場開拓戦略といいます。
これは高年層で受け入れていた製品・サービスを若年層にも提供してみたり、海外市場を開拓するようなイメージですね。
特に新しく製品を開発する必要がないというメリットがある一方で、ターゲットとなる市場に受け入れられるか不透明という意味では、ややリスクのある戦略となります。

続いて、新製品を既存市場に投入する戦略は新製品開発戦略といいます。
これは既存のカップ麺購入者に新しくカップ飯を開発して提供するイメージですね。
ターゲットは既存顧客なので、ニーズをヒアリングしながら新商品を開発できるというメリットがある一方で、
どうしても開発費や、発売後の広告・販促費がかかってしまうデメリットもあります。

最後に、新市場に新製品を投入する戦略は多角化戦略といいます。
例えば、IT企業が飲食業界に進出するイメージですね。
当然、市場ニーズも不透明で、コストもかかる戦略ですので、ご紹介した戦略の中では最もハイリスクな戦略となります。

市場浸透戦略は最も低リスクですが、そのうち売上高の成長には限界が来ます。
そうすると、次の打ち手としては新市場を開拓するか、新製品を開発するか、はたまた多角化に乗り出すかということをリスク・リターンを加味しながら検討する必要があるわけですね。

中小企業診断士としても、売上高を拡大したいという相談はよく受けますが、頭の中でこのフレームワークを描きながら助言できるようにしたいですね。

多角化の動機

先ほど、多角化が最もハイリスクと説明しましたが、それでも企業が多角化戦略を進めるのには理由があります。

多角化の動機

一つ目は組織スラックが充実しているためです。
組織スラックとは、余裕資源のことで、具体的には余剰資金や余剰人材がある場合には、
これらを新事業に活用することで、資源の効率化を図りたいわけですね。
なかなか中小企業で資源が余っているということはないので、贅沢は多角化理由と言えますね。

続いて、新事業の機会の発見です。
平たく言えば、儲かりそうな市場・事業を見つけたから参入したいというわけですね。
ある程度の勝算が見込めて、それにコストに見合うだけのリターンがあるのであれば、積極的に投資したいところです。

続いて、リスク分散です。
いかに既存事業が好調だとしても、永久に安泰とは限りません。
本業とは別の収益の柱を築くことで、会社として立ちいかなくなるリスクを低減することができます。
ちなみに、このように複数事業を展開することでリスク分散が図れることを、ポートフォリオ効果といいます。

最後に、シナジーの追求です。
自社の技術・ノウハウを活用して新分野で競争優位を築け、さらに既存事業にも好影響を与えるのであれば、企業は積極的に多角化を志向します。

ちなみに、既存事業と関連がある事業に参入することを関連多角化、全く関係のない事業に参入することを無関連多角化といいますが、リスク分散効果が高まるのは無関連多角化をした時で、シナジーの生み出しやすいのは関連多角化した時だと言われています。

また、基本的に多角化で成功しやすいのは関連多角化をした場合といわれているので、試験対策としてだけではなく、ビジネス常識としても覚えておいていただければと思います。

多角化による戦略的効果

最後に多角化による戦略的効果を確認します。
多角化をすることで、次の3つの効果が得られる可能性があります。

一つ目はシナジー・相乗効果ですね。

多角化による戦略的効果:シナジー

シナジーとは、直接的な相互作用で売上アップやコスト削減につながることを言います。
例えば、資格の学校TACがTAC出版として中小企業診断士向けの教材を販売していますが、
これはTACブランドの信頼性向上という意味で、両事業に好影響を及ぼしています。

2つ目は相補効果です。

多角化による戦略的効果:相補効果

相補効果とは、互いを補う関係で、会社として売上向上を目指せます。
例えば冬にはスキー場、夏はキャンプ場として施設を提供することで、
サービスを提供できない時期に売上を確保できるので、会社全体としては売上拡大に繋がります。

最後は範囲の経済性です。

多角化による戦略的効果:範囲の経済性

範囲の経済性とは、経営資源の活用で効率が上がることをいいます。
例えば液晶テレビを作っている会社が、その技術を生かしてデジタルサイネージやパソコン、スマホの液晶を製造するイメージですね。
このように既にある経営資源を有効活用することで、事業運営を効率化することができます。

多角化を検討する際は、以上の効果を考慮に入れながら参入する事業を決めていきたいですね。

過去問を解いてみよう (令和3年度 第1問)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

多角化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 企業における多角化の程度と収益性の関係は、
  その企業が保有する経営資源にかかわらず、外部環境によって決定される。

イ 情報的経営資源は、複数の事業で共有するとその価値が低下するため、
  多角化の推進力にはならない。

ウ 多角化の動機の1つとして、社内に存在する未利用資源の活用があげられる。

エ 多角化は規模の経済を利用するために行われる。


多角化に関して正しい記述を選ぶ問題ですね。

選択肢ア
これは誤りですね。
その企業が持っている技術力やノウハウといった経営資源も多角化の程度に影響を与えます。

選択肢イ
これも誤りですね。
技術・ノウハウ等の情報的経営資源は、複数事業に共有したところで、その価値が低下するものではありません。

選択肢ウ
これはその通りですね。
多角化を進める理由として、組織スラックの充実がありましたので、選択肢ウがこの問題の正解となります。

選択肢エ
多角化は規模の経済を進めるために行われるものではないので誤りです。
多角化を進めると、経営資源は分散してしまうので、規模の経済は働きにくい性質がありますね。
範囲の経済性やシナジー、相補効果を利用するとしていたら、正解になる選択肢でした。

というわけで、選択肢ウがこの問題の正解です。

以上、多角化に関して基本的な内容を知っていれば難なく正解できる問題でしたね。
難しい日本語を使って惑わせてくる問題も出題されることがありますが、基本的に聞いていることは同じなので、自信を持って正答できるように、よく復習しておきましょう。

まとめ

それでは最後にまとめです。
今回は企業の成長戦略のフレームワークである製品=市場マトリックス、アンゾフの成長ベクトルを解説しました。

製品=市場マトリックス_まとめ

成長戦略を新規製品・既存製品、既存市場・既存市場の4つに分類するのでしたね。
市場浸透戦略が最も低リスクですので、この戦略で売上拡大余地があるのであれば、優先的に取り組むべきかと思います。
新規市場開拓・新製品開発となるとややリスクが高くなり、新分野の進出となる多角化戦略が最もハイリスクとなります。
リソースに限りのある中小企業に多角化を提案するのは、慎重に考えた方が良いですね。

それでも多角化を進めるのには理由があります。
組織スラックの充実、新事業機会の発見、リスク分散、シナジーや相補効果・範囲の経済性の発揮などがあるのでした。

特に二次試験では事業領域が偏っていると経営リスクが高い一方で、多角化をしすぎてしまうと経営資源が分散して経営効率が悪化する、といった観点が問われますので、この機会に覚えておきましょう。

はい、というわけで、製品=市場マトリックスをテーマに解説してみました。

ちょうど先日、経営診断先の中小企業から、中長期的に売上拡大するための方向性について相談に乗って欲しい、という依頼を受けたので、このフレームワークは考えを整理する上で役立ちました。

実際には、各戦略を実行するにあたって、どのようなことに留意しながら、何をどう進めるべきか、具体的に提案する必要があるので、そこまでできるようになると、診断士としてもやりがいを感じますね。

ぜひ、診断士試験対策というだけでなく、実務でも使いこなせるように意識していただければと思います。

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たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

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