はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は工程分析をテーマに解説しようと思います。
この論点では工程図記号の読み取りがよく出題されますが、覚え方を含めて内容を解説します。
運搬分析を除いた各分析手法も一通り解説したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
IE(Industrial Engineering)とは?
まずは工程分析が含まれる、IEについて確認してみましょう。
IEとは作業研究のことで、作業工程や作業の方法を分析して、生産性を向上する手法全体のことを指します。
例えば属人的で非効率な作業があったときに、この内容を分析して、作業の効率化を図り、生産性を向上させるようなイメージですね。
ここでは、工場作業を効率化するための手法全体を指すんだという、大まかなイメージを持っていただければよいかと思います。
IEの体系図
IEは方法研究と作業測定と分かれており、方法研究は工程分析と動作研究、作業測定は稼働分析と時間研究に分かれています。
今回が学習する工程分析は、さらに単純工程分析、詳細工程分析、配置・流れ分析に分類されます。
今回解説する工程分析は、赤枠の範囲となりますね。
試験対策上は体系図そのものを覚えるより、各工程分析手法の内容を知っておくほうが重要です。
細かい内容はこのあと解説しますので、ここでは一口にIEと言っても、様々な観点があるんだということを知っておいていただければと思います。
工程図記号とは?
工程分析の論点では、工程図記号が読めることが重要です。
工程図記号とは、工程の過程を表す記号です。
例えば加工は○、貯蔵は▽、数量検査は□といったように、工程の様子を記号で表します。
この記号の読み取りが試験で問われますので、ここでは覚え方をお伝えしたいと思います。
運搬は矢印で出題されたら問題ないかと思いますが、出題者からすると、加工と似ている小さい丸の方が出題しやすいですね。
運搬を平仮名で書いて、「ぱ」の小さい丸が運搬を表していると覚えておきましょう。
貯蔵と滞留については、計画通りにモノが停滞している場合は貯蔵、計画に反して停滞している場合は滞留に分類されてます。
貯蔵は「ろうと」でペットボトルに液体を貯めている様子で覚えると良さそうです。
ろうとを記号であらわした結果、逆三角形になったと覚えておきましょう。
続いて滞留は、英語で表すとDelayです。
Delayの「D」が滞留を表すと覚えておきましょう。
数量検査は、口数で数えると覚えておくと良さそうです。
部品や製品の数を、1口、2口、3口…と数えているイメージですね。
漢字の口が□で表されていると覚えておきましょう。
最後の品質検査のダイヤは、ダイヤモンドを表していると覚えておきましょう。
「ダイヤは品質、ダイヤは品質」と繰り返し唱えて覚えてください。
以上の覚えた方のうち、ご自身で使えそうなものだけ採用いただければと思います。
工程図記号には、復号記号というものもあります。
このような形で、数量検査と品質検査の記号を組み合わせるようなイメージですね。
この場合、品質検査を行いながら数量検査も行うという意味になります。
ちなみに、外側が主になる要素となりますね。
この複合記号も問われるケースがありますので、覚えておいてください。
単純工程分析とは?
ここからは工程分析の具体的な手法を確認していきたいと思います。
まず、単純工程分析とは、製品が完成するまでの作業と検査を時系列で分析することを言います。
例えばある野菜カット工場では、このような工程が採用されていたとします。
まずは野菜の受入検査をして、洗浄・カット加工・袋詰めを行った後に、検査をして出荷するイメージですね。
このような作業と検査の順序を表した図を、単純工程分析図と言います。
ライン生産では単純に材料が左から右に流れながら加工と検査が行われるので、分析もシンプルな内容となりますね。
客観的に作業工程が把握できるので、どの位置にどのような設備が必要なのか、検討しやすくなります。
以上のように、ここからいくつかの分析手法を紹介しますが、名称と分析の何となくのイメージを紐づけて覚えていただければと思います。
詳細工程分析とは?
詳細分析では単純工程分析に加えて、運搬や停滞の様子も分析します。
具体的な手法には製品工程分析と作業者工程分析の2種類があって、製品工程分析はモノを中心に分析を行います。
例えば、野菜カット工場の場合、以下のような工程図を描くことができます。
検査、運搬後に一度貯蔵を行い、その後作業台へ運搬して加工し、品質検査をするという流れを取ります。
どの作業にどれくらいの時間を要しているかも合わせて記載されているので、時間をかけている作業を可視化しやすいですね。
一方、作業者工程分析は人を中心に分析します。
人を軸に工程図を描くと、以下のように表されます。
指示表を取って作業場に移動を、材料を取って台車に載せた後、材料を移動し、加工するというイメージですね。
製品が中心か作業者が中心かの違いですので、名称と内容を紐づけて覚えやすいですね。
流れ線図とは?
流れ線図はレイアウト図に工程図記号を記入して、工程の位置関係を把握できる図のことです。
例えば、以下のようなイメージですね。
入出庫で数量検査をした後、材料倉庫で一度貯蔵され、作業台で加工され、検査室で品質検査が行われた後、完成品倉庫で貯蔵される様子が読み取れます。
このように実際のレイアウトに作業内容を落とし込むことで、例えばモノの流れが逆行してムダが発生していないかを確認できるようになるわけですね。
多品種工程分析とは?
多品種工程分析とは、工程経路図を作成し、工程経路が似ている製品を分析することを言います。
例えばある工場では、製品A~Cの3つの製品を生産していたとしましょう。
製品Aは、切断・旋削(せんさく)をした後、穴あけ・熱処理・研削をして、完成となります。
一方製品Bは、旋削と突切り (つっきり) だけで完成することがわかりますね。
最後の製品Cは、切断・突切りの後、旋削に戻ってから、穴あけ・熱処理・研削をしていることがわかります。
このように、多品種工程分析では、どの製品がどのような工程順序を辿るのかを把握できる上に、製品Aと製品Cの最後の工程に着目してみると、穴あけ・熱処理・研削という流れが共通していることがわかりますね。
このような工程の流れが一致している部分に関しては専用ラインを用意して、それ以外の部分は機能別レイアウトを採用することで、効率化が図れそうです。
以上のように、多品種工程分析では、「多品種」とあるように、複数の製品の工程を同時に分析するわけですね。
フロムツーチャートとは?
フロムツーチャートとは、生産ラインの前工程と後工程間の総運搬距離・重量・運搬回数などを表した図表のことを言います。
図としては以下のように表されますね。
図の縦方向が前工程で、横方向が後工程となります。
フロムツーチャートでは、例えば工程Aから工程Bに合計30kgのモノが5m運ばれていて、工程Bから工程Cには合計20kgのモノが10m運ばれている、といったことが読み取ることができます。
それ以外の工程でもどこからどこに、どれくらい量と距離で運ばれているのかを把握できるわけですね。
ここで着目してほしいのが、A→Bの工程やB→Cの工程では、明らかに他の工程と比べて大きな重量を長距離移動させていることが分かります。
当然重たいものを移動させるのは大変ですから、工程A・Bと工程B・Cはそれぞれ近くに配置すべきだということが判断できますね。
このように、物の流れを把握することで、レイアウトの検討に生かします。
以上、ここまで工程分析の手法を見てきましたが、単純工程分析や多品種工程分析、フロムツーチャートはP-Q分析の記事でも解説していますので、合わせて確認いただくと、より理解が深まるかもしれません。
過去問を解いてみよう (平成26年度 第14問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
工程分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 工程図記号における基本図記号は、4つの要素工程(加工、運搬、停滞、検査)を示すために用いられる。
イ 工程分析における工程図は、生産対象物に変化を与える要素工程のレイアウトを示すために用いられる。
ウ 作業者と製品の流れを同時に分析するために、作業者工程分析を用いる。
エ 要素工程の複数の機能または状態を示すために、基本図記号を並べて用いる。
工程分析に関する問題ですね。
✅選択肢イ
停滞や検査など、変化を与えない要素工程も含まれるので誤りですね。
✅選択肢ウ
作業者工程分析は、あくまで作業者を中心に分析する手法で、製品の流れは製品工程分析で行うのでした。
✅選択肢エ
複合図はこのように基本図記号を重ねて表示するので、誤りとなりますね。
以上、基本図記号は4つの要素工程を示すために用いられるとする、選択肢アが正解となるわけですね。
記号自体は、停滞は貯蔵と滞留、検査は数量検査と品質検査を含めると6つあるので、やや悩ましく感じれられたかもしれませんが、消去法的にも正解を炙りだしたい問題でした。
過去問を解いてみよう (平成29年度 第6問)
今回はもう1問解いてみましょう。
右表は、ある職場で製品Aに関する工程分析を行った結果から得られた各工程分析記号の出現回数を示している。この分析結果に関するa〜cの記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 加工の割合は約53.6%である。
b 数量検査の出現回数は1である。
c 滞留の出現回数は3である。
(解答群)
ア a:正 b:正 c:誤
イ a:正 b:誤 c:正
ウ a:誤 b:正 c:誤
エ a:誤 b:誤 c:正
工程図記号の読み取り問題ですね。
まず、各工程図の意味は以下の通りとなります。
これさえわかっていれば、あとはa~cの内容を検討するだけですね。
✅選択肢a
加工は全28回のうち7回しかないので、7÷28で25%となり、誤りとなります。
✅選択肢b
実際に表を見てみると、数量検査は1回だけですね。
数量は1口、2口と数えるので、□で表されると覚えておくと良いのでした。
✅選択肢c
表を見ると出現回数は0回ですね。
滞留と貯蔵の読み取り方さえ間違えなければ大丈夫です。
ちなみに滞留はDelayのD、貯蔵はろうとの▽で覚えておくと良いのでしたね。
以上から、選択肢ウがこの問題の正解となります。
このように工程図記号の読み取りも出題されますので、確実に覚えておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回学習した工程分析では、図を使って作業のムダをなくし、生産性を向上させます。
IEの体系図は以下のように表されますが、今回は工程分析に限定して解説しました。
まずは単純工程分析から始め、製品工程分析や作業者工程分分析で詳細を分析し、その後、配置・流れ分析である流れ線図、多品種工程分析、フロムツーチャートなどで、実際のレイアウトなどと合わせながら改善点を見つけていく、といったイメージを持っておくと良いでしょう。
各工程分析の手法はだいたいのイメージを掴んでおく程度で良いですが、工程図記号をしっかりと読み取れることが重要です。
覚え方も紹介しましたので、記事を参考に、頭に叩き込みましょう。
というわけで、今回は工程分析をテーマに解説してみました。
細かい内容まで覚えようとすると、運営管理だけでも覚えることが多くてパンクしてしまうかと思いますので、ぜひ過去問で出題される範囲を優先的に覚えて、メリハリを付けながら学習していただければと思います。
次回は、今回解説できなかった運搬分析をテーマにするつもりですので、そちらの内容も楽しみにお待ちください。