本ページでは、たかぴーのオリジナル事例文①事例Ⅰの解答解説を行っています。
手元に与件文・解答例がある前提で記事を記載しておりますので、まだ購入してない方は下記リンクよりお買い求めください。
第1問
“現在の”強み・弱みを問われている。A社は1990年代以降、アジア諸国からの輸入品との競争激化をきっかけに、現社長が1995年に就任し、改革を行い、業績が回復している。
このことから、少なくとも1995年以降のA社の強み・弱みを書き出すべきだと読み取れる。
・強みについて
A社は革靴とスポーツシューズ事業を行っているが、両部門に共通しているのが製靴技術力と、その技術力生かした高品質製品である。
また、革靴部門ではアフターサービス、スポーツシューズ部門では独自計測システムによるサービスが、いずれも顧客満足度向上に寄与している。
スポーツシューズは一定の認知を獲得しているものの、大手スポーツ企業に勝ち切れているとは言えないので、回答の優先度は下がる。
A社の強みについて、高い通気性・クッション性等の具体的な機能を記載した方もいるかもしれない。もちろん加点可能性はあるが、できればより根本的な強みである”技術力”を書き出したい。
・弱みについて
A社が現在抱えている問題点のうち、事例Ⅰは人事・組織の事例なので、その観点で書き出したい。
情報連携不足・情報共有がされてない、技術継承ができてない、部門長らの引退後の体制に対する不安、サスティナビリティへのノウハウ不足が主な問題点として挙げられる。
なお、スポーツシューズの市場シェア拡大への苦戦は加点可能性が低い。A社売上高の30%を構成しており、A社の経営リスク分散に寄与しているためだ。売上構成比がさらに低かったり、赤字が続いてるようであれば、弱みとなる可能性がある。
第2問
・狙いについて
第1問で述べた通り、A社は1995年以降に経営改革を行っている。
その具体的な内容は、差別化集中戦略だ。
高品質・快適性に優れた製品を生み出し (差別化)、高所得者層をターゲットに販売している(集中)。
差別化集中という用語が出てこなくとも、上記内容が具体的に書けていても加点されるものと思われる。
また、”狙い” という問われ方がやや難しい。手段・戦略・結果、のどれを聞いているか不明確なためだ。
模範解答では、技術力の活用 (手段) → 差別化集中・高付加価値製品販売 (戦略) → 売上拡大・収益性改善 (結果) を全て記載している。
・利点・欠点について
改めて多角化戦略のメリット・デメリットを確認しておいてほしい。
教科書的なメリットのうち、新たな収益源の確保、経営リスク分散はA社にも当てはまる内容であり、優先的に書きたい。
また、経営資源の分散は与件文に明記されていたので、こちらも確実に得点に繋げたいところ。
第3問
・問題点について
ケイパビリティとは「企業全体の組織的な能力」、属人化とは「特定の業務・作業が特定の担当者に依存していること」である。
つまり、A社の「強みが特定の個人に依存している」要因を問われていると考えてよい。
与件文には、「各部門で培った技術やノウハウ~の共有は行われず、各担当者が自身の業務に情報を利用するに留まっている」 との記載があり、まさに強みである技術力が個人に依存している。
なお、部門長の存在は、確かにA社の成長に欠かせないものではあるが、彼らの活躍が現在のA社を決定づけたとは言えない (組織的な強み=ケイパビリティとは言えない) ため、彼らの後継者育成が出来てない点は、得点可能性が低い。
・改善策について
事業部制組織が採用され、いわゆるセクショナリズムが発生している状態と言える。
この場合の対応策を記載すればよい。
一般的には、定例会議、経営層からの方針伝達、部門間の人事交流、プロジェクトチーム等の横断的組織の編成、IT化等が有効とされている。
上記のうち、A社に実現可能性あり、かつ有効と思われるものを優先的に記載したい。
第4問
・課題について
サステナビリティについての記載は与件文の終盤にある。
「生産プロセスの変更には一定のコスト増加が伴うため、価格競争力の低下が懸念」「ノウハウの獲得が喫緊の課題」とあるので、これらの対応が課題である。
・対応策
ノウハウを獲得する施策は与件文に根拠が乏しいので、一般論で良いものと思われる。
ただし、中小企業であるA社が採用し得る施策を記載したい。逆に言うと、大学との連携・大手企業との協業等は、与件文に根拠がないので、実現可能性が低く、加点可能性も低い。
価格競争力の低下に対しては、これまでのA社の強みとしてきた高付加価値路線で対応したい。
中小企業であるA社がコスト増の分、利ざやを削るのは経営悪化に繋がる。また、過去の成功体験 (高付加価値化による黒字化) もあるため、実現可能性が高いと考えられる。
第5問
「長期的」かつ「人事戦略」がポイントである。
A社の問題点 (弱み) は技術承継が出来てない点、次代部門長の育成が出来ていない点である。
このままでも短期的には問題がないが、ベテラン技術者や部門長が引退すると、A社の競争力低下に繋がる可能性がある。
技術承継に対しては、教育の実施・標準化が、部門長育成は権限委譲とマネジメントスキル教育がオーソドックスな対応策であるので、記憶しておきたい。
その結果として、A社の強みが維持・強化されることは効果として記載しておきたい。