はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は、組織構造をテーマに解説したいと思います。
この論点は二次試験でも問われることがあるので、重要です。
一度学習したという方も、改めて、各組織構造の基本的な特徴を振り返ってみましょう。
もちろん、初めて学習する方にもわかりやすく解説したいと思いますので、よろしくお願いします。
3つの組織構造
まずは今回解説する3つの組織構造を見ていきましょう。
機能別組織はトップである経営者の下に、特定の業務単位で分かれた部門がぶら下がっているという構造です。
メーカーであれば、製品を生産する製造部、製品を販売する営業部、人材管理や経理、総務などを担当する管理部などに分かれるイメージですね。
一方、事業部別組織では、特定の事業単位で部門が分かれます。
事業部は、例えば家電メーカーの場合、パソコン、テレビ、カメラなどの製品ごとに分かれる場合もあれば、東北事業部、関東事業部、関西事業部といったように、地域ごとに分かれる場合もあります。
いずれにしても、事業部の中に製造・営業といった各機能が設置されているのが特徴ですね。
最後のマトリックス組織は、業務と事業の2軸で部門が分かれています。
ある組織に所属しているメンバーは、製造部門であると同時に、A事業部にも所属しているということになります。
機能別組織と事業部別組織の両方の概念を併せ持つイメージですね。
これら3つの組織構造の特徴をこれから見ていきますが、どれが優れているというものではなく、経営環境や経営戦略に合わせて柔軟に変える必要があります。
ですので、それぞれの特徴を知り、適切な組織構造を選択することが大切なわけですね。
機能別組織とは?
それでは機能別組織の特徴から見ていきたいと思います。
機能別組織は、業務の機能別に部門を分けた組織構造なのでした。
機能別組織のメリット
機能別組織のメリットは主に3つあります。
まずは、専門性を高めやすいということですね。
営業部に所属した社員は、営業のスキルを磨き上げて、いずれはトップセールスマンへと成長するでしょう。
このように、専門性を身に付けることで、その職務について、効率的に生産できたり、付加価値を生み出すことができるようになります。
ちなみに、このことを「専門化の原則」と言います。
メリットの2つ目は、規模の経済性を追求しやすいということです。
これは共同仕入がイメージしやすいですね。
事業部別組織の場合は、各事業部別に製造部が分かれていて、その部門ごとに仕入れを行いますが、機能別組織の場合は、会社の中で製造部がひとつしかないので、異なる製品であっても、共通部品があれば一括で仕入れることができます。
その分コストが安くなるイメージですね。
最後に、大局的な意思決定がしやすいというメリットもあります。
権限がトップに集中しているため、会社全体の方向性を示しやすいわけですね。
以上のように、機能別組織は安定した環境下で、効率的に会社運営するには適した組織構造であるのが特徴ですね。
機能別組織のデメリット
一方で、機能別組織にはデメリットもあります。
一つ目は、意思決定が遅れる場合がある点ですね。
権限がトップに集中しているということは、それだけトップの負担が大きいことを意味します。
全部門の意見を取り入れて意思決定しようとすると、どうしてもスピードが落ちてしまうわけですね。
また、利益責任の在り処が不明確であるという点もあります。
例えばある製品が売れなかったとき、それは営業の責任なのか、商品企画側の責任なのかが不明確になります。
あるいは、営業部門は売上にしか関心がなく、製造部はコストにばかり目がいってしまう、ということが起こりやすいのが、機能別組織の特徴ですね。
最後に、次期経営者の育成が困難ということもあります。
基本的にはその部門のプロフェッショナルを志向してくわけですから、製造部門のトップが、経営のプロにはならないというわけです。
以上のように、機能別組織はトップの負担が大きくなりがちな組織構造であると言えますね。
事業部別組織とは?
続いて、事業部別組織です。
事業部別組織は、製品や地域などで区分した事業ごとに部門を分けた組織なのでした。
事業部別組織のメリット
事業別組織のメリットは主に3つあります。
1つ目は意思決定が早いことです。
各事業部に権限を与え、事業部単位で意思決定ができるため、経営者が会社全体を見る必要があった機能別組織と比較すると、意思決定が早いという特徴があるわけですね。
続いて、事業部別組織は利益責任の所在が明確です。
事業部ごとにどれだけ売上があって、費用が発生しているのかが計算しやすいので、どの事業部がどれだけ利益を生み出しているのかが把握できます。
これにより各事業部を競争させて評価に反映することで、良い意味で切磋琢磨させ、企業全体の成長に繋げるようなことができるわけですね。
最後に、次期経営者の育成がしやすいという特徴もあります。
事業部ごとに製造・営業などの機能を抱えていますので、各部門長は小さな会社の経営者的な役回りとなります。
まさに企業経営と違いマネジメントスキルが身に付きますので、次期経営者として育成しやすくなるというわけですね。
以上のように、事業部別組織は機能別組織の欠点を補うことができる組織形態であることが、お分かりいただけたかと思います。
事業部別組織のデメリット
そんな事業部別組織にも、デメリットがあります。
まずは、事業部ごとに機能が重複しているので非効率である点ですね。
特に設備やシステムは重複してしまいがちです。
例えば、顧客管理システムひとつ取ってみても、A事業部とB事業部で全く同じものを別々に導入している、なんてことが起こってしまうことがあります。
続いて、セクショナリズムの発生ですね。
セクショナリズムとは、自部門の利益を優先し、他部門に対して非協力的になることを言います。
よく言えば、お互い切磋琢磨する関係にありますが、自分の利益にならないものには協力しないような関係とも言えるわけですね。
最後に、短期的な判断になりやすい傾向にあります。
自分の事業部の利益を優先するあまり、会社全体の利益に繋がるような中長期的な意思決定をしにくくなるというわけですね。
以上のように、事業部別にも、機能別にもそれぞれメリット・デメリットがありますので、自分の会社により合った組織形態を選び、デメリットをなるべく防ぐために、どんなことに留意する必要があるかを考えることは、企業経営する上でとても大切な考え方となります。
マトリックス組織とは?
最後にマトリックス組織です。
マトリックス組織は、機能別と事業部別の両方の利点を狙った組織構造です。
改めて組織図を見てみると、縦軸に機能別の部門が、横軸には事業部が並んでいますね。
社員は、それぞれの部門がクロスする点に所属することになりますので、製造部門の中でも、A事業部・B事業部に所属する者もいれば、A事業部の中で、製造部門・営業部門・管理部門のそれぞれを持つことにあります。
このようなマトリックス組織のメリットは、範囲の経済性を追求できる点にあります。
範囲の経済性とは、設備・技術・人員の共有により、資源活用が効率化することでした。
事業部別組織で説明した、顧客管理システムの重複利用みたいなことが起こりにくいわけですね。
また、事業部別組織に機能別の横ぐしが入ることで、情報共有が迅速化するというメリットもあります。
一方で、事業部・機能別部門それぞれに上司がいることになりますので、どちらの指示に従えばよいのか、混乱が生じやすいというデメリットもあります。
このような構造を、ワンマンツーボスシステムと言いますね。
マトリックス組織は、各部門長で綿密な連携や方針のすり合わせが求められる組織形態と言えそうです。
マトリックス組織の事例
あまり聞き馴染みのないマトリックス組織ですが、実際にオリンパスという会社で採用されている組織形態となります。
オリンパスでは、技術開発・製造・販売・品質の各機能部門を持ちながら、医療系事業や映像事業・科学事業などの事業部門も存在しているようです。
こちらの資料からは、各事業ユニットには事業戦略の策定と利益責任を持たせ、機能部門には各機能の強化・経営資源配分の最適化をミッションとして持たせているようですね。
資料が少し古く、今のオリンパスの組織図はまた変わっているようですが、テキストそのままの形を採用している事例として紹介させていただきました。
過去問を解いてみよう(平成28年 第12問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
機能別組織、事業部制組織、マトリックス組織の特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 機能別組織は部門間で緊密な調整が必要な場合に有効であるが、安定した環境のもとで官僚制的な組織になるという短所がある。
イ 事業部制組織が有効に機能するためには、トップマネジメントが業務的意思決定から解放され、戦略的意思決定と管理的意思決定に専念できるようにする必要がある。
ウ 事業部制組織は複数の製品―市場分野を持つ企業が、範囲の経済を実現するのに適しているが、規模の経済を追求することは難しい。
エ マトリックス組織は変化の速い環境で部門間の相互依存が高い場合に有効であるが、コンフリクトや曖昧さを許容する組織文化を持たないと効果的に機能しにくい。
オ マトリックス組織を効果的に管理するためには、人の部下に対して、機能マネジャーとプロダクトマネジャーが同じ権限を持っていなければならない。
今回解説した3つの組織構造について答える問題ですね。
✅選択肢ア
これは誤りですね。
各部門で縦割りの関係になってしまうので、むしろ緊密な調整がやりにくい組織形態です。
✅選択肢イ
これも誤りです。
管理的意思決定はミドル層が担う役割とされています。
事業部別組織が機能するには、トップが戦略的意思決定だけに専念できるようにする必要がある、が正しい記述となりますね。
✅選択肢ウ
これも誤りですね。
事業部別組織は機能の重複があるので、むしろ効率が悪いのでした。
✅選択肢エ
これは正しい記述です。
情報共有が迅速化することで、環境変化への適応も素早くできる一方で、異なる上司からの指示を受けることから、ある程度の衝突は許容する文化があることが求められます。
✅選択肢オ
誤りです。
各部門長は同等の権限を持っている必要がありますが、権限の内容まで同じである必要はありません。ちょっと言葉遊びのように感じられる選択肢ですが、確実に除外しましょう。
以上、選択肢エがこの問題の正解となりますね。
少なくとも消去法で正解を選びたい問題でした。間違えてしまった方は、改めて各組織の特徴を復習しておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は機能別・事業部別・マトリックス組織の3つの特徴を確認しました。
それぞれのメリット・デメリットをまとめていますので、上の画像に記載されている内容は最低でも覚えるようにしましょう。
また、どの組織構造が優れているというわけではなく、経営環境や経営戦略に合わせて柔軟に選択する必要があるのでしたね。
はい、というわけで、今回は組織構造をテーマに解説してみました。
まずはご自身が所属する会社がどの組織構造に該当するかを確認して、
今回説明したメリット・デメリットに当てはまるかを考えてみるところから始めると、比較的覚えやすいかと思います。
参考にしてみてください。