はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は営業レバレッジをテーマに解説していこうと思います。
営業レバレッジは、企業の利益構造を理解するうえで重要な指標のひとつです。
一方で、一次試験にはそれほど出題されず、説明がないテキストもあるほどです。
ですが、令和7年度の一次試験でバッチリ出題されましたし、二次試験でも比較的問われやすい論点です。
この機会にしっかりと内容を理解して、押さえていただければと思います。
営業レバレッジとは?
今回学習する営業レバレッジとは、売上高の変化に対する営業利益の変化の度合いを表す指標です。
具体的な計算式は、以下の通りです。
$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$
こちらは定義通り、売上高がどれくらい増えたかに応じて、営業利益がどれくらい増えたかということを表していますね。
これにより、たとえば営業レバレッジが1.5と計算できた事業があった時に、仮に売上高が現在より10%増えたら、営業利益は15%増えるということが、簡単に計算できるようになります。
このように営業レバレッジがわかることで、簡単に売上に対する利益の増減が計算できるわけですね。
これは事業計画を立てる上で、非常に便利な数値となります。
また、営業レバレッジは、以下のように変形することができまうす。
$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$=$\frac{限界利益}{営業利益}$
試験ではこちらの計算式を使うことが多いですね。
一見すると同じ内容を表してるとは思えない計算式なので、なぜこのように式変形ができるか、確認してみましょう。
計算式を変形してみよう
先ほどの式変形を確認する前に、まずは営業利益について考えてみたいと思います。
営業利益は様々な表し方がありますが、ここではシンプルに売上高から費用を差し引いたものだと考えてみましょう。
営業利益
= 売上高 – 費用
= 売上高 – (変動費+固定費)
= (売上高 – 変動費) – 固定費
= 限界利益 – 固定費
ポイントは、「売上高-変動費」を「限界利益」に置き換えている点ですね。
限界利益という専門用語はよく出てきますので、この機会に覚えておきましょう。
つまり、営業利益は「限界利益-固定費」として表すことができるわけですね。
この結果を用いて、今度は営業利益の増加額について考えてみましょう。
営業利益の増加額は、「限界利益の増加額-固定費の増加額」で表すことができますね。
営業利益の増加額
= 限界利益の増加額 – 固定費の増加額 (0)
= 限界利益の増加額
=売上高の増加額 × 限界利益率
ポイントは、固定費の増加額はゼロ (0) と見なしている点です。
固定費は販売数量にかかわらず、一定額かかる費用のため、例えば100人の従業員を抱えて、1人あたり給料300万円を支払っているのであれば、この固定費は基本的に増減しません。
ですので、固定費の増加額は常に0であると考えられます。
したがって、営業利益の増加額は限界利益の増加額と等しいわけですね。
そして限界利益の増加額というのは、「売上高の増加額×限界利益率」という形で表すことができます。
この計算式がこの後に続く式変形に利用できますので、先に考え方を解説しました。
さて改めて、営業レバレッジの定義式は$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$で表すことができるのでした。
分子・分母が増加率になっていますので、これを分解して考えてみます。
$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$
=$\frac{営業利益の増加額}{営業利益}$÷$\frac{売上高の増加額}{売上高}$
=$\frac{営業利益の増加率}{営業利益}$×$\frac{売上高}{売上高の増加額}$
=$\frac{売上高の増加額×限界利益率}{営業利益}$×$\frac{売上高}{売上高の増加額}$
=$\frac{売上高×限界利益率}{営業利益}$
=$\frac{限界利益}{営業利益}$
先ほど確認した通り、営業利益の増加額を「売上高の増加額×限界利益率」で表す点がポイントですね。
最終的に、営業レバレッジの計算式は$\frac{限界利益}{営業利益}$で表すことができることが確認できました。
改めて確認すると、式変形前の$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$は営業レバレッジの定義式です。
その後の変形式$\frac{限界利益}{営業利益}$は、営業レバレッジをより簡単に求める際に利用できる計算式となるわけですね。
なかなかこの変形をご自身で行うのは難しいと思いますので、営業レバレッジに関してはこの定義式と便利式の両方をそのままの形で覚えていただければと思います。
営業レバレッジの分析でわかること
では営業レバレッジを分析することで、何がわかるかを確認しておきましょう。
営業レバレッジの計算式から、固定費が大きいと、売上高増加率に対する利益増加率が高いということが言えます。
このことを確認するために、また改めて営業利益の計算式を確認してみましょう。
先ほど、「営業利益=限界利益-固定費」で表すことができると説明しました。
この式から固定費を左辺に持っていくと、「限界利益=営業利益+固定費」で表すことができますね。
このことを念頭に置き、先ほどの営業レバレッジ計算式を確認してみましょう。
$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$
=$\frac{限界利益}{営業利益}$
=$\frac{営業利益+固定費}{営業利益}$
売上高の増加率分の営業利益の増加率は、営業利益分の限界利益で表すことができました。
そして限界利益は営業利益+固定費で表すことができるので、さらに変形をすると、営業レバレッジは$\frac{営業利益+固定費}{営業利益}$で表すことができるということがわかります。
分母分子に営業利益が含まれていますので、結局営業レバレッジを大きくするには、固定費が大きくなる必要があるということが読み取れるかと思います。
以上の内容を踏まえて、ここまで学習した内容をつなげて考えてみましょう。
営業レバレッジが大きいと、売上高増加に対する利益増加率が大きいということが言えるのでしたね。
そして営業レバレッジは固定費が大きくなるほど大きくなるので、固定費が大きいと営業レバレッジも大きくなり、売上高の増加に対する利益増加率も高いということが言えるわけです。
・営業レバレッジが大きいと売上増に対する利益増加率が大きい
・営業レバレッジは固定費が大きいほど大きくなる
→ 固定費が大きいと、売上増に対する利益増加率が高い
ただし、営業レバレッジが大きいと、売上高が下がった途端に一気に利益率も下がるということが言えますので、まさにハイリスク・ハイリターンなビジネスになるというわけです。
例えば鉄道会社や航空会社、テレビの放送局などは莫大な設備投資が必要で、固定費の割合も大きいビジネスとなりますが、そのような業種は一度利益が損益分岐点を超えると、それからは莫大な利益を生み出せます。
しかし逆に、少しでも売上高が下がってしまうと、一気に利益率が下がる特性があると言えるわけですね。
過去問を解いてみよう(令和7年度 第13問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
営業レバレッジ(オペレーティング・レバレッジ)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 営業レバレッジが低い企業は、営業レバレッジが高い企業に比べて、売上高が減少しても利益が減少しにくい状態であるといえる。イ 営業レバレッジの状況は、営業利益と当期純利益から把握できる。
ウ 営業レバレッジは、一般的に、製造業の企業よりも小売業の企業の方が高くなる傾向にある。
エ 営業レバレッジは、固定費を削減して変動費を増やすことによって高めることができる。
営業レバレッジについて、正しい選択ものを選ぶ問題ですね。
✅選択肢ア
営業レバレッジは、売上高の変化に対する営業利益の変化の度合いを表す指標です。
営業レバレッジが高いほど、売上高が増加すると営業利益も大きく増加します。
ですので、逆に営業レバレッジが低い企業は売上高が減少しても利益の減少が比較的少なくて済む、ということになります。
よって、この選択肢は正しい内容となりますね。
✅選択肢イ
営業レバレッジは当期純利益ではなく、限界利益と営業利益で求めることができるのでした。
したがって、この選択肢イは誤りですね。
✅選択肢ウ
営業レバレッジは、固定費が大きくなるほど、大きくなるのでした。
そして固定費が高い傾向にあるのは、工場や機械設備などを必要とする製造業の方ですね。
したがって、製造業の方が営業レバレッジは大きくなる傾向にありますので、この選択肢ウは誤りです。
✅選択肢エ
固定費は大きいほど営業レバレッジは大きくなるので、その固定費を削減すれば営業レバレッジは小さくなります。
したがって、この選択肢エも誤りです。
営業レバレッジはどのようにして計算できるか、そして、営業レバレッジと固定費の関係など、営業レバレッジの特徴を多面的に問われた問題でした。
二次試験に向けた良い予習になると思いますので、ぜひこの問題はマスターしておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回学習したように、営業レバレッジとは売上高の変化に対する営業利益の変化の度合いを表す指標でした。

計算式としては$\frac{営業利益の増加率}{売上高の増加率}$が定義式で、変形すると$\frac{限界利益}{営業利益}$として表すことができましたね。
そして限界利益は「営業利益+固定費」で表すことができました。
以上のことから、営業レバレッジは固定費が大きいほど大きくなり、そのため固定費が大きい企業は、少し売上高が増加すると、大きく利益率が増加する一方で、売上高が下がると一気に利益率が下がるというリスクを抱えた利益構造であるということが言えるのでしたね。
はい、というわけで、今回は営業レバレッジについて解説しました。
計算式ばかりで面白みがない内容に感じられたかもしれませんが、特に二次試験では重要な論点です。
二次試験では、具体的に営業レバレッジを計算して、その結果から何が言えるのかを分析する問題も出題されます。
実際に過去問を解きながら、そういった問題にも対応できるように訓練していただければと思います。
