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自然独占と二部料金制とは?死荷重を防ぐための各種規制を解説します!/経済学/中小企業診断士試験対策

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はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。

今回は自然独占と二部料金制をテーマに解説していきたいと思います。

ここまで解説してきた内容を理解していれば、そう難しくもない論点ですので、この記事をご覧になることで余剰分析の良い復習になるかと思います。
よろしくお願いします。

YouTube動画でも解説中!

独占による死荷重

まずは独占による死荷重の考え方を復習しておきましょう。

市場が独占状態になることで社会的余剰が失われ、死荷重が発生することになります。
独占市場における需要曲線と限界費用曲線、限界収入曲線派のように以下のように描けるのでしたね。

独占による死荷重

独占企業の利潤最大化条件は、限界収入=限界費用となる生産量ですので、限界収入曲線と限界費用曲線の交点である3個で、生産量が定まることになります。

そのときの価格は限界収入曲線との交点ではなく、需要曲線との交点である250円となるのでしたね。

余剰については、消費者余剰が需要曲線と価格の間の領域、生産者余剰は供給曲線と価格の間の領域で決まり、黒三角形で表した部分が、独占による死荷重として読み取れるのでした。

この辺りがよく分からないという方は、過去の記事を見返してから、戻ってきていただければと思います。

独占による死荷重_サムネイル
【余剰分析】独占により生じる死荷重の導き方を解説します!_経済学_中小企業診断士試験対策 はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は独占による死荷重をテーマに解説していきたいと思います。独占禁止法なんて法律がありますが...

費用逓減産業における自然独占

それでは、今回の本題である自然独占について見ていきましょう。

自然独占とは、固定費が莫大なために、実現可能な需要量の間では平均費用が下がり続け、結果的に独占状態になった市場を言います。
このような自然独占は電気・ガス・通信などといった業界で起こりやすいと言われていますね。

それではグラフを描いて、内容を確認してみましょう。

限界費用価格規制とは?

自然独占の企業では、平均費用曲線が右肩下がりです。
平均費用が右肩下がりなので、生産量を一つ増やすことで発生する追加的な費用である限界費用曲線も右肩下がりとなります。
グラフの形状が多少変わっただけで、独占であることには変わりませんので、黒三角で表したように死荷重は発生します。

ちなみに、なぜ平均費用が逓減すると独占になってしまうかというと、規模の経済を働かせる限り平均費用が下がるので、大量生産へのインセンティブが働きやすい点、複数企業で競争するよりも1社だけで生産した方が効率的という点が挙げられるそうです。
この辺りは、そんなものかと聞き流していただいて構いません。

いずれにしても死荷重は生じていますので、政府としては何かしらの対策が必要となりますね。

限界費用価格規制とは?

まずは死荷重を解消させるための手段の1つ目として、限界費用価格規制を紹介します。
限界費用価格規制とは、価格を限界費用になる水準に規制することを言います。

先ほどの自然独占市場のグラフで内容を確認してみましょう。
ちなみに今回は電力会社の事例としてご確認いただければと思います。

限界費用価格規制とは?

価格を限界費用に規制するということは、需要曲線と限界費用曲線の交点である、1,000円に価格が決まるということですね。

このとき、供給世帯数は1,000世帯だったとしましょう。

需要曲線と供給曲線の交点で価格と供給量が決まっているので、この規制を行ったときには死荷重が発生しないことが読み取れます。

一方で、この企業の収入は、価格1,000円×供給世帯数の1,000世帯なので、青で塗り潰した領域となりますね。
費用は平均費用1,500円×供給世帯数の1,000世帯で決まるので、緑で塗りつぶした領域となります。

明らかに費用が収入を上回っているので、限界費用価格規制が行われてしまうと、企業は赤字を垂れ流すことになります。
ですので、補助金を交付する等の手段で政府が赤字を補填してあげる必要があります。

ちなみに、収入・費用の確認は、この後も出てきますので、注意深く見ていてください。

平均費用価格規制とは?

続いて平均費用価格規制です。
平均費用価格規制とは、価格が平均費用となる水準に規制することを言います。
こちらもグラフで内容を確認してみましょう。

平均費用価格規制とは?

価格を平均費用に規制するということは、需要曲線と平均費用曲線の交点である2,300円に価格が決まるということですね。

このとき、供給世帯数は500世帯だったとします。

先ほどと同じように収入と費用を確認してみると、価格も平均費用も2,300円で一致しているので、青で塗りつぶしたように、収入と費用が全く同じ金額となります。
先ほどの赤字問題は解消されているようですね。

一方で、黒三角形で表したように、死荷重は発生しています。

確かに、独占企業が自分たちで限界収入=限界費用となるような供給量とするよりは、供給量が増え、その分死荷重も減っていますが、完全に無くすことはできていないわけですね。

以上のように、二つの規制方法を見てきたのですが、どちらにも問題があります。
これを解決するのが二部料金制というわけですね。

二部料金制とは?

二部料金制とは、消費量に応じて変わらない基本料金と、消費量に応じて課金する従量料金の両方を徴収する料金体系です。

こちらもグラフを描いて確認してみます。
先ほどまでと違って、限界費用曲線が水平である点に注意してください。

二部料金制とは?

限界費用曲線は生産量を1単位増やすごとに発生する、追加的な費用を表していました。
限界費用が一定だということは、この限界費用曲線は平均可変費用とも見なすことができます。

この限界費用曲線が水平なら、平均可変費用曲線と見なせるという考え方は結構重要なので、覚えておいてください。

さて、このとき限界費用と需要料金の交点の価格の1,000円を従量料金として徴収したとします。
こうすることで、可変費用分は賄うことはできますね。

一方、平均費用と可変費用の差分は固定費を表しているので、この部分を基本料金として徴収します。
つまり、可変費用は従量料金、固定費は基本料金でそれぞれ回収を試みるという料金設定なわけですね。

こうすることで、限界費用価格規制で問題となった赤字を発生させることがなく、また、平均費用価格規制で問題となった死荷重も発生させることがありません。

まさに両者の良いとこ取りができる料金制度というわけですね。
確かに現実世界でも、電力会社や通信会社などではこのような料金体系になっていますが、このような背景があったわけですね。

ちなみに、ここで解説した可変費用や固定費の考え方がよくわからなかったという方は、記事の動画で解説していますので、概要欄からチェックしてみてください。

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過去問を解いてみよう (平成25年度 第17問)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

下図は、平均費用が逓減局面にある財市場で企業Zによる自然独占が発生している状況を示している。この図に関する記述として最も適切なものを下記の解答群から選べ。

経済学_過去問_平成25年度 第17問

ア 企業Zが独占企業として振る舞う場合、
  四角形ACFHが独占的利潤の大きさを意味する。

イ 企業Zに対して政府が限界費用価格形成原理を課す場合、
   三角形CAD に相当する死重損失が発生する。

ウ 企業Zに対して政府が限界費用価格形成原理を課す場合、
   四角形DBGHに相当する損失が発生する。

エ 企業Zに対して政府が平均費用価格形成原理を課す場合、
   当該財の生産量はI となる。


自然独占におけるグラフの読み取り問題ですね。

選択肢ア
独占企業の場合は、限界収入と限界費用が一致する点で、生産量が決まるのでしたね。
ですので、生産数量はJ、その時の価格はFとなります。
利潤は四角形ACFHとする選択肢アは誤りとなります。

選択肢イ
限界費用価格規制をした場合、限界費用と需要曲線の交点で価格が決まるので、価格はH、数量はKとなりますね。
市場均衡価格と等しくなりますので、このとき死荷重は発生しません。
選択肢イは誤りとなります。

選択肢ウ
先ほど確認した通り、限界費用価格規制をすると、価格はH、数量はKとなります。
このときの収入は価格×数量で、四角形OKDHとなります。
また、一方で平均費用はHよりも大きいので、四角形HDBGが損失となりますね。
まさに四角形DBGHが損失となりますので、選択肢ウがこの問題の正解となりますね。

選択肢エ
平均費用価格規制を行った場合、生産量はIとなるとあります。
平均費用価格規制をした場合、平均費用と需要曲線の交点で価格と数量が決まります。
数量はIとKの間となりますので、選択肢エは誤りとなりますね。

この論点は、需要曲線や限界収入・限界費用、そして平均費用がそれぞれ何を表しているかを正しく理解して、素直にグラフを読み取ることができれば、難なく正解を選ぶことができます。

グラフの線が多くて取っつきにくく感じるかもしれませんが、落ち着いて問題に当たるようにしましょう。

まとめ

それでは最後にまとめです。
今回は自然独占における各種規制を学習しました。

自然独占と二部料金制_まとめ

まずは限界価格規制ですね。
こちらは価格を限界費用とする規制で、死荷重は発生しない代わりに、独占企業では赤字が発生するため、何かしらの方法で赤字を補填する必要があるのでしたね。

もう一つは平均価格規制です。
こちらは価格を平均費用とする規制で、赤字は発生しない代わりに、死荷重が発生するのが問題となるのでした。

これらの長所を生かした方法として、二部料金制を説明しました。
固定費は基本料金で徴収して、変動費は従量料金で補うという料金体系です。

いずれにしてもこの論点はグラフの読み取りが重要です。
収入は価格×数量、費用は平均費用×数量で表される点を改めて確認しておいてください。


はい、というわけで今回は自然独占について学習しました。
これまで僕の経済学の動画を見てきた方にとっては、何ら難しくない論点だったかと思います。

本試験で出題されたら、確実に正解をもぎ取ってくださいね。

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たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

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