はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は動作研究をテーマに解説したいと思います。
動作研究は、作業を細かく分析してムダを削減し、効率的な作業方法を考える手法です。
なかなかイメージの付きにくい論点かと思いますので、具体例を交えながら説明したいと思います。
この機会にしっかりと理解していきましょう。
IEの体系図
今回学習する動作研究もIE・経営工学に含まれます。
前回までは工程分析を見てきましたが、今回は作業者に着目した動作研究というわけですね。
両手動作分析・サーブリック分析・連合作業分析の3つの手法を今回解説したいと思います。
動作研究とは?
動作研究とは、作業者が行う動作を分析して、最適な作業方法を見つける手法です。
分析対象としては、機械を用いた加工作業、商品の梱包作業、検品作業など、生産現場のあらゆる作業が対象となります。
動作研究では、これらの作業を、動作・作業域・設計の観点で分析し、改善点を洗い出します。

改善施策については、動作経済の原則というものに則って検討すると良いとされていますね。
例えば動作の観点では、両手はできるだけ同時に動かした方が良いですし、配置の観点では、工具は作業者の前に置いた方が、作業がスムーズに進みます。
また、設計の観点では、ハンドルは握りやすく設計したのほうが、余計なタイムロスを防ぐことができます。
このような具合に、作業者がもっと楽に、効率的に作業できる方法を検討するわけですね。
動作経済の原則の各項目は細かい内容なので、ここでは、動作研究は作業者に着目して効率改善を目指しているという大枠だけ押さえていただければと思います。
作業空間について
動作研究を学習するとき、作業空間という概念も意外と重要です。
作業研究とは、作業者が身体を動かすのに必要な作業範囲のことで、正常作業域と最大作業域に分かれます。
例えば、以下のように工場ライン上で作業をしている人について見てみると、正常作業域は上腕を身体に近づけ、前腕を自然な状態で動かした範囲と定義づけられています。
図で表すと、この赤色の部分というわけですね。
一方、最大作業域とは、固定した肩を中心に、手を伸ばしたときの手の届く範囲とされています。
手を伸ばしても良い点が、正常作業域と異なります。
図で表すと、この青色の範囲が最大作業域となります。
見ていただいて分かる通り、背中より後ろ側は作業空間には含まれません。
作業空間は、人が無理せず楽な姿勢で作業できる範囲だという認識を持っておくようにしましょう。
両手動作分析とは?
ここからは、主な分析手法を紹介したいと思います。
まずは両手動作分析ですね。
両手動作分析とは、両手の動きの順序や方法を、記号を用いて動作レベルで分析する手法です。
例えば、コーヒーを淹れるという作業について考えてみたいと思います。
まずはコーヒーミルで豆を挽いて、ドリッパーにお湯を注いでコーヒーを抽出します。
その後、コーヒーカップに注いで完了というわけですね。

両手動作分析では、工程図記号を用いて、両手で行われた動作を分析します。
まず、右手で豆を挽いている間、左手はミルを抑えています。
その後、ドリッパーにコーヒー粉を移動させている間、お湯を注いでいる間は、左手はドリッパーを固定し、最後にカップにコーヒーを注いでいる間はカップの位置を調整していますね。

両手動作分析では、このように左右それぞれの手で、時系列順にどんな動作を行っているか分析します。
今回の場合、左手は全て保持に終始していることがわかりましたね。
分析結果から、改善点を洗い出します。
動作経済の原則に則っとり、左右の手で役割を入れ替える作業を検討してもよいですし、ミルやドリッパーを固定する道具を導入したり、ミルで豆を挽く作業を機械化することでも効率改善を図れそうです。
両手動作分析によって、単純に見える作業でも、細かく動作を分解して分析することで、新たな発見があるわけですね。
サーブリック分析とは?
続いて、サーブリック分析です。
サーブリック分析とは、作業に共通する基本動作を18種類の動素に分解して分析する手法です。
先ほどの両手動作分析の作業をさらに細かく分解して分析するイメージですね。
具体的には、サーブリック分析では、作業を第1分類から第3分類に分類します。
第1分類は仕事を行う上で必要な要素とされていて、組み合す・分解する・使うといった作業系と、手を伸ばす・つかむ・放すといった運搬系の動素があります。

上図の黒で表記した各項目が動素と呼ばれるもので、確かにかなり細かい粒度で分類されていることがわかりますね。
ちなみに、作業系・運搬系といったカテゴリは、理解を助けるために、僕が独自に分類したものです。
第2分類は作業を妨げる要素のことで、前置き・位置決めといった準備系と、探す・選ぶ・考えるといった思考系から構成されています。
製品の加工・運搬というよりは、そのための準備・段取り決めが含まれるイメージですね。
最後の第3類は、作業を行わない要素のことで、保持・休む・避けられる遅れ・避けられない遅れが含まれます。
作業が一切進捗していないときの動素というわけですね。
これらの18種類の動素を覚えるのはさすがに大変ですので、第1分類には作業系・運搬系、第2分類には準備系・思考系、第3類には不動系が含まれるという程度の理解で十分かと思います。
ちなみに、18種類ある動素の中で、価値を生むのは組み合す・分解する・使うの3つの作業だけとされています。
この観点も問われることがあるので、念のため覚えておきましょう。
連合作業分析とは?
最後は連合作業分析です。
連合作業分析とは、人と人、人と機械などの協同作業の効率を高めるための分析手法です。
具体的には、人と機械の作業時間を分析するマンマシンチャートや、複数の作業者の動作時間を分析する組作業分析図などがありますね。
人と機械、人と人といった、複数の組み合わせ作業の最適化を図るというわけですね。
ここでは、出題頻度の高いマンマシンチャートを詳しく見ていきましょう。
マンマシンチャートとは?
マンマシンチャートは、人-機械作業分析表とも呼ばれ、その名の通り、人と機械の連合作業を分析するための図表です。
分析図は、以下のようなイメージですね。

左側が作業者・右側が機会を表していて、始業の朝8:30からお昼ごろまでの作業内容が記載されています。
図の中身を見てみると、10:30頃から作業者は手待ち、12:30頃から機械は停止してしまっていることがわかります。
このような手待ち・停止は生産現場ではムダな時間となりますので、できるだけ排除していきたいです。
そこで、手待ちだった時間に成型機Bの段取り作業を行い、その後早めに休憩することにしたとしましょう。
そうすると、作業者の手待ちがなくなっただけでなく、もともと休憩していた時間に、次の加工を始めるための段取り作業ができるようになりました。
このように、マンマシンチャートでは作業者・機械のムダを可視化して、改善点を見つけることができるわけですね。
そこまで難しいことをやっているわけではないので、ぜひ図の読み取り方も含めて、内容を理解するようにしましょう。
過去問を解いてみよう (平成24年度 第16問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
連合作業分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 連合作業分析では、作業を単独作業、連合作業、連続作業の3つに分類して作業分析を実施する。
イ 連合作業分析では、作業を要素動作の単位に分割して分析を実施する。
ウ 連合作業分析は、配置人員を検討する際に利用できる。
エ 連合作業分析は、複数の素材を組み合わせて製品を製造するプロセスを分析するための手法である。
連合作業分析について答える問題ですね。
✅選択肢ア
これは誤りですね。
単独作業・連合作業を分析しますが、連続する作業を分析するのが目的ではありません。
自信を持って×にするのには、やや悩ましい選択肢です。
✅選択肢イ
これは両手動作分析の説明ですので誤りです。
✅選択肢ウ
連合作業分析は、配置人員を検討する際に利用できるとあります。
これはその通りですね。
連合作業分析の組作業分析では、人同士の作業を分析するので、結果的に配置人員の最適化が検討さることもありますね。
✅選択肢エ
連合作業分析は、人と人、人と機械の関連作業を分析するのが連合作業分析となりますので、誤りです。
というわけで、選択肢ウがこの問題の正解となります。
ちょっと自信を持って正解を選ぶのは難しかったかもしれませんが、表現に惑わされずに、しっかり正解できるようにしたいですね。
過去問を解いてみよう (令和3年度 第18問)
今回はもう1問解いてみましょう。
ある部品の検査工程では、部品のふたを取り外して中身の配線に異常がないかをチェックする作業をしている。この工程のレイアウトを下図に、作業手順①~④を図の右に示している。この作業をサーブリッグ分析した結果を下表に示す。この分析結果から得られる判断に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【作業手順】
①部品箱から1個部品を取り出す。
②ふたを取り外し、異常がないかを検査する。
③ふたを本体に付ける。
④異常があったら不合格品箱へ、異常がなかったら合格品箱に入れる。
ア 最初に改善すべきは、第1類に分類される「保持」と「手待ち」である。イ 左手の動作要素5から12に保持があるので、両手作業が可能な保持具を導入する。
ウ 部品箱、合格品箱、不合格品箱の配置を見ると、すべて正常作業域に配置されているため、レイアウトは改善しなくてよい。
エ 右手の分析結果より、仕事をするうえで必要な動作要素は8つである。
今度はサーブリック分析に関する問題ですね。
選択肢をひとつずつ見ていきましょう。
✅選択肢ア
保持と手持ちが第1類に分類されるとありますので、誤りですね。
保持・手持ちは第3類でした。
✅選択肢イ
左手の動素要素5から12に保持があるので、両手作業がかのうな保持具を導入するとあります。
図を読み取ってみると、確かに5~12は保持となっていますし、ここに保持具を導入することで、右手で行っていた作業を左手でも行うことで、効率改善の可能性があります。
というわけで、選択肢イが正解となりますね。
✅選択肢ウ
合格箱・不合格箱は全て正常作業域に配置されているありますが、背中側は作業空間外になりますので、誤りです。
✅選択肢エ
仕事をするうえで必要な動作要素は8つとありますが、しっかりと数えてみると、7つとなりますので、誤りです。
第1類に分水されるのは、作業系と運搬系が含まれるので、改めて確認しておきましょう。
というわけで、サーブリック分析の図表の読み取り問題も出題されることがありますので、細かい動素すべてを覚える必要はありませんが、ある程度分類できるように対策しておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回はIEの中でも、動作研究の中身を解説しました。

両手動作分析では、その名の通り、両方の手の動きを工程図記号を用いて分析し、サーブリック分析ではさらに細かく、18種類の動素に分解して分析しました。
サーブリック分析では、価値を生む動素が、組み合す、分解する、使うの3つに限定される点も、確認しておいてください。
それから、連合作業分析として、組作業分析表とマンマシンチャートを見てみましたね。
図の読み取りが二次試験で出題されることもあるので、この機会にしっかりとマスターしておきましょう。
はい、というわけで、今回は動作研究をテーマに解説してみました。
この辺りの論点は、なかなか生産現場に関わっていないと、つかみどころがなく感じられてしまいますが、学んでいることはそんなに難しいことではありません。
普段はデスクワーク中心の方でも、正常作業域や両手動作分析を意識しながら仕事するというのも、記憶の定着には良いかもしれませんね。
ぜひ、実践してみてください。