はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は「共同発明と職務発明」をテーマに解説していきたいと思います。
✓ 共同発明・特許権の共有における同意要否ルール
✓ 職務発明の2要件と自由発明との違い
✓ 勤務規則の有無で変わる権利帰属の判定
✓ 平成25年度第7問・令和6年度第17問の解き方
この2つは特許権の中でも比較的簡単な論点ではありますが、特許権自体覚えることが多くて、どうしても抜け落ちてしまいがちです。ですが、試験で出題されたら確実に得点したい論点なので、丁寧に押さえていきましょう。
また、本記事の内容は、前回解説した専用実施権・通常実施権の知識が前提となりますので、まだご覧になっていない方は、先にそちらの記事もチェックしていただければと思います。
共同発明とは?
まず共同発明ですが、これは複数の人が共同して完成させた発明のことです。
例えば、複数の企業が共同でプロジェクトチームを組んで、ある発明をしたとしましょう。

この場合、特許を受ける権利はチームの構成員全員の共有となります。そして、特許出願は必ず共同で行わなければなりません。共有者の1人が勝手に単独で出願することはできないということですね。
続いて、特許権が共有になった場合のルールを表で確認しましょう。

まず、特許発明の自己実施、つまり共有者が自分で特許発明を使うことは、自由にできます。自分がかかわった特許発明を自分のために使う場合は、基本的に自由というわけです。
ただし、先ほどのケースのように社外メンバーとの共同発明の場合は、その会社の貢献度やパワーバランスなども関係してくるでしょうから、契約で別段の定めをすることで、他の共有者の同意を求めることもできます。ここはしっかりと原則と例外を分けて覚えておきましょう。
また、持分の放棄も同様に自由です。特許を受ける権利を放棄すると、他の共同発明者からすると、その特許権をより強く独占できるようになるので、特に同意を求めなくとも良いということになります。
一方で、持分の譲渡、専用実施権の設定、通常実施権の許諾、質権の設定については、いずれも他の共有者の同意が必要です。これらは第三者を新たに巻き込む行為ですので、他の共有者の利益に大きく影響するということで、同意が必要とされているわけですね。
なお、共同発明だけでなく、特許を受ける権利を共有した場合も、原則として同じルールが適用されます。ただし、その場合、質権を設定できないという違いがある点だけ注意してください。

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職務発明とは?
続いて、職務発明です。職務発明とは、従業者等がした発明のうち、会社の業務範囲に含まれ、かつ、現在または過去の職務に属する発明のことです。

例えばある従業員が先進的な発明をした場合、その会社の業務に含まれている発明で、その従業員の今までの仕事内容に含まれていれば職務発明と見なされるわけです。
逆に、どちらか一方でも欠けていれば、それは「自由発明」となります。
例えば、個人的な趣味で発明した場合は、そもそも会社の業務とは関係ありませんよね。また、自身のこれまで所属していたものと全く異なる部署・事業部で役立つような発明をした場合は、会社の業務範囲には含まれるかもしれませんが、自分の職務には属しません。こういったケースは自由発明に該当するということになります。
試験では現在だけでなく、「過去の職務」も含まれるかどうかが問われることがありますので、しっかり押さえておきましょう。
さて、職務発明が成り立つ場合、即座にその権利が会社のものになるわけではありません。それでは、特許を受ける権利は従業員に帰属するのでしょうか。ポイントは、勤務規則にあらかじめ定めがあるかどうかで変わります。

まず、勤務規則等にあらかじめ定めがある場合は、特許を受ける権利はその発生時から使用者、つまり会社側に帰属します。
この場合、従業員は「相当の利益」を受ける権利を得ることができます。相当の利益の具体的な金額は法律で決まっているわけではなく、あくまで使用者と従業者の間の協議によって決められるようです。
もしこの記事をお読みの方で特許発明をしたのに、会社から一切報いを受けてない方がいれば、会社にこの記事を見せて交渉を始めましょう。なお、相当の利益というのは、金銭だけでなく、ストックオプションなどの経済的利益も含まれるようです。
一方、あらかじめの定めがない場合は、特許を受ける権利は発明をした従業員に帰属します。この場合、使用者は「無償の通常実施権」を受ける権利を得ることになります。

過去問データブックで1次試験は何点取れる?
令和7年の本試験で実際に検証してみました
検証結果を読む →過去問を解いてみよう(平成25年度 第7問)
それでは、ここまでの内容を過去問で復習してみましょう。
特許を受ける権利に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 特許出願がなされなければ、発明者に特許を受ける権利が発生しない。
イ 特許を受ける権利が共有に係る場合、他の共有者の同意を得ずに、自己の持分について譲渡することができる。
ウ 特許を受ける権利は、譲渡により移転することができる。
エ 特許を受ける権利は、抵当権の目的とすることができる。
特許を受ける権利に関する問題ですね。選択肢をひとつずつ見ていきましょう。
選択肢ア「特許出願がなされなければ、発明者に特許を受ける権利が発生しない」とありますが、これは誤りです。特許を受ける権利は発明をした時点で発生するもので、出願の有無とは関係ありません。
選択肢イ「共有に係る場合、他の共有者の同意を得ずに、自己の持分について譲渡することができる」とあります。先ほど確認した通り、共同発明や権利を共有している場合は、持分の譲渡には他の共有者の同意が必要ですので、これも誤りですね。
選択肢ウ「特許を受ける権利は、譲渡により移転することができる」とあります。これはその通りですね。特許を受ける権利は他の第三者に売り渡すことができます。
選択肢エ「抵当権の目的とすることができる」とあります。特許権などの知的財産権には抵当権を設定できませんので、これも誤りです。
以上から、答えは選択肢ウがこの問題の正解ということになります。
選択肢エだけやや悩ましく感じたかもしれません。本試験ではこのように、自信を持って全ての選択肢を正確に正誤判定できないケースがほとんどです。だからこそ、勉強した内容はしっかりと覚えて、正解選択肢を自信をもって選べるようにしましょう。
過去問を解いてみよう(令和6年度 第17問)
今回はもう1問解いてみましょう。職務発明に関する問題ですね。
職務発明に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 職務発明について、特に定めがなければ、その発生時から使用者に原始的に帰属する。
イ 業務範囲に属する発明であれば、職務発明に該当する。
ウ 相当の利益は金銭で直接支払われる必要があり、ストックオプションの付与により相当の利益を与えることはできない。
エ 職務発明について、相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する指針が公表されている。
選択肢ア「職務発明について、特に定めがなければ、その発生時から使用者に原始的に帰属する」とあります。先ほど解説した通り、定めがなければ権利は従業員に帰属しますので、誤りです。これは典型的なひっかけ選択肢ですね。
選択肢イ「業務範囲に属する発明であれば、職務発明に該当する」とあります。職務発明の要件は業務範囲だけでなく、「現在または過去の職務に属する」という条件も必要です。条件が1つ足りていませんので、これも誤りです。両方の条件を満たして初めて職務発明になる点がポイントですね。
選択肢ウ「相当の利益は金銭で直接支払われる必要があり、ストックオプションの付与により相当の利益を与えることはできない」とあります。相当の利益は金銭に限定されず、ストックオプション等でもよいとされていますので、これも誤りです。
選択肢エ「職務発明について、相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する指針が公表されている」とあります。相当の利益の具体的な金額は両者の協議によって決まりますが、これには当然ながら国のガイドラインがありますので、正しい記述ですね。
以上から、答えは選択肢エがこの問題の正解ということになります。
職務発明の基本的な理解があれば、選択肢ア、イの誤りは確実に見抜けるかと思います。選択肢ウはやや細かい内容なので、判断に迷うかもしれないですね。
ただ、選択肢エについて、もし国が何もガイドラインを示していなければ、力の強い会社側が自由に”相当の利益”を定められることになりますよね。そうなると、せっかく頑張って従業員が発明したのに、何の報いも得られないということになりかねません。そんな事態にならないためにも、ガイドラインは作成されているはずだと考えて、選択肢エを選びたい問題でした。
まとめ
それでは最後にまとめです。今回は共同発明と職務発明について解説しました。

共同発明・特許権の共有については、共同出願が必須であること、自己実施と持分の放棄は自由で、それ以外は他の共有者の同意が必要であること、そして特許を受ける権利の共有にも同じルールが適用されることを押さえておきましょう。かなり細かい論点として、特許を受ける権利は質権の設定は不可であることをグレーで記載しています。
職務発明については、業務範囲と現在または過去の職務という2つの条件を満たす必要があること、原則は発明者である従業者に帰属し、勤務規則等であらかじめ定めがあれば使用者に帰属させることも可能であること、そして定めがない場合、使用者は無償の通常実施権を、定めがあれば従業者は相当の利益を受ける権利をそれぞれ得るということを覚えておいていただければと思います。
特に職務発明は直近10年で4回出題されている、頻出論点です。内容はそこまで難しいものではないので、他の年度の過去問を解いて、バッチリ理解して本番に臨んでいただければと思います。
それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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