一次試験対策

【イノベーションの分類】持続的&破壊的イノベーションの違いを徹底解説!/企業経営理論/中小企業診断士試験対策

イノベーション_アイキャッチ
Pocket

はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。

今回はイノベーションをテーマに解説していきたいと思います。
イノベーションは企業の成長に欠かせない概念であり、試験でも頻出のテーマです。
特に、イノベーションにはいくつかのタイプがありますので、試験対策上はその分類ごとの特徴を正しく理解しておくことが重要です。

この記事を通じて、各イノベーションの考え方をしっかり整理していきましょう。

YouTube動画でも解説中!

イノベーションとは?

まずはイノベーションの基本概念について説明します。
イノベーションとは、かつて技術革新と訳されていましたが、現在では企業に新たな利益をもたらすあらゆる変革のことを指しています。

アメリカの経済学者であるシュンペーターは、イノベーションとは「新結合」の創出であると述べています。

イノベーションとは?

具体的には、新製品の開発、新市場の開拓、新生産プロセスの導入、新しい原材料・資源の変革、ビジネスモデルや組織の変革とされていますね。

イノベーションは利益をもたらす変革とされているため、売り上げを拡大するための製品拡大や新市場の開拓、そしてコスト削減のための生産プロセスや原材料等の変革もイノベーションに含まれるというわけですね。

ちなみに新製品の開発についてはプロダクトイノベーション生産プロセスの変革についてはプロセスイノベーションという言い方をしますので、念のためこの用語も覚えておきましょう。

今回はこういった形でさまざまなイノベーションの種類を見ていきたいと思います。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

続いて持続的イノベーションと破壊的イノベーションです。

持続的イノベーションとは、既存市場の製品や技術を改良・発展させるタイプのイノベーションです。

例えば、横軸に時間をとって縦軸に性能を取ると、一般的に技術革新は以下のようなS字カーブを描きながら進展していくとされていますね。

持続的イノベーションとは?

このようにある市場の製品性能が改善されていくようなタイプのイノベーションを、持続的イノベーションと言います。

これに対し、破壊的イノベーションは従来とは異なる価値基準をもたらすイノベーションと定義されています。
先ほどの図に加えると、以下のような形ですね。

破壊的イノベーションとは?

ご覧の通り、破壊的イノベーションが登場した当初は、それまで既存市場で利用されていた技術に比べると低性能であることが多いです。
その代わりに手軽さや軽量化など、新しい価値基準をもたらしているので、従来の市場とは全く異なる市場で受け入れられるわけですね。

例えるなら、デジタルカメラとスマートフォンの関係がこれに当たるかと思います。
スマートフォンも登場した当時は、デジタルカメラと比べるとカメラの画質性能は劣っていましたが、デジタルカメラにはない機能や、その手軽さから携帯電話として市場に受け入れられましたね。

破壊的イノベーションの怖いところは、当初性能で劣っていても、その技術の中で持続的イノベーションが繰り返される点です。

図を見ても、破壊的イノベーションも時間が進むにつれ、持続的イノベーションが繰り返され、性能が向上していくことがわかるかと思います。
そして、いつか顧客が要求している性能水準を超えると、既存市場の顧客が一気に破壊的イノベーションの製品を受け入れるようになります。

当初のスマホは、カメラとしての性能は大したものではありませんでしたが、今ではカメラとしてスマートフォンを買う人がいるほど画質が向上しましたよね。
そのせいで、デジタルカメラ市場は縮小傾向が続いていると聞いています。
このような破壊的イノベーションには、従来市場とは異なる小規模な市場から受け入れられ始め、その市場は、従来市場よりも低利益率であることが多いです。

このような事情から、従来市場のプレイヤーである大手企業はなかなか破壊的イノベーションを自ら起こすことは難しく、やがて市場から駆逐されてしまうという理論が「イノベーションのジレンマ」と言われています。
この破壊的イノベーションはあらゆる業界で起こり得るとされています。

テレビ番組に対するこのYouTubeも、ある意味で破壊的イノベーションといえます。
YouTubeも黎明期の頃は、数分程度のくだらないとされている動画が多かったですからね。
それが今やテレビ放送に匹敵するほどのプラットフォームにまで成長しました。
こういった形で、自分の身近に破壊的イノベーションが隠れていないか探してみるのも面白いかもしれませんね。

クローズドイノベーションとオープンイノベーション

続いてクローズドイノベーションとオープンイノベーションです。
クローズドイノベーションとは、企業内部の技術・リソースを活用したイノベーションです。
例えば、ハードウェアとしてのiPhoneがクローズドイノベーションの例となりますね。

クローズドイノベーションとは?

この製品は、基本的にはAppleが自社で開発した製品と言えるかと思います。
このような形のイノベーションは外部企業に頼らないので、機密情報を保持することが容易で、そのため独自技術の競争優位性を確保することができるというメリットがあります。

一方、オープンイノベーションは、企業外部の技術・リソースを活用したイノベーションです。
例えば、iPhoneのアプリストアであるApp Storeがこれに当たりますね。

オープンイノベーションとは?

App Storeを通じて提供されるアプリケーションそのものは、多くの外部企業または個人が開発して提供しているものです。
Appleが自社ですべてのアプリを開発するよりも、短期間・低コストで開発ができる上、自社にない技術、ノウハウ、アイデアなどを活用できるというメリットがあります。

一方、オープンイノベーションのデメリットとしては、機密情報の保持が困難である点や、技術や開発プラットフォームを外部に開放する必要があるため、自社のみで競争優位性を維持することが難しくなる場合があります。

オープンイノベーションとクローズドイノベーションのメリット・デメリットを踏まえて、どのような研究開発戦略を取るのかが非常に重要な観点となるわけですね。

ヘンダーソンとクラークのイノベーション分析の枠組み

最後に、ヘンダーソンとクラークによるイノベーション分析の枠組みについて確認してみましょう。

こちらの考え方は、イノベーションをコア技術(中核技術)と製品構成要素間のつながり(製品アーキテクチャ)の観点で分類するものです。

イノベーション分析の枠組み

中核技術が強化され、製品アーキテクチャが変わらないタイプのイノベーションは「インクリメンタルイノベーション」と言われています。
例えば、デジタルカメラの画質向上などがこれに当たります。

一方、中核技術が新しいものに置き換わり、製品アーキテクチャが変わらないものは「モジュラーイノベーション」と言われています。
例えば、蛍光灯の電球がLEDに変わるようなイノベーションですね。
製品の構造自体は変わりませんが、内部の技術が異なるものに置き換わっています。

そして、中核技術が変わらずに、製品アーキテクチャが変わるものは「アーキテクチュラルイノベーション」と呼ばれています。
例えば、デスクトップパソコンが主流だった時代にノートパソコンが登場するようなイメージですね。
中で使用されている中核技術は全く変わらずに、製品アーキテクチャを全く異なるものにすることで、新しい価値を生み出すタイプのイノベーションとなります。

最後に、中核技術も製品アーキテクチャも全く異なるものにするタイプのイノベーションは「ラディカルイノベーション」と呼ばれています。
これは、例えばガラケーが主流だった時代にスマートフォンが登場するようなものですね。
製品設計が異なっている上に、中で使用されている技術も全く新しいものとなっています。

このイノベーションの枠組みは、やや細かい論点ではありますが、過去問で出題されたことがありますので、念のため解説をしておきました。
余裕がある方は覚えていただければと思います。

過去問を解いてみよう (令和4年度 第9問)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

C.M.クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』(The Innovator’s Dilemma)に関する
記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a 破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品の性能の方が
持続的技術を利用した製品の性能よりも低い。

b 破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品市場の方が
持続的技術が対象とする製品市場よりも小規模である。

c 破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品の方が
持続的技術を利用した製品よりも利益率が低い。

〔解答群〕
ア a:正  b:正  c:正
イ a:正  b:誤  c:正
ウ a:誤  b:正  c:誤
エ a:誤  b:誤  c:正
オ a:誤  b:誤  c:誤


イノベーションのジレンマに関する記述として正誤判定をする問題ですね。
選択肢を一つ一つ見ていきましょう。

✅選択肢a
これはその通りでしたね。
先ほど説明で使用した図で改めて確認してみると、持続的イノベーションが登場した当初は低性能であることが多いのでした。

✅選択肢b
こちらもその通りでしたね。
破壊的イノベーションが受け入れられる市場は小規模であることが多い傾向にあります。

✅選択肢c
こちらもその通りです。
性能が低く、市場規模も小さく、そして利益率も低いために、既存市場のメインプレイヤーである大手企業は、破壊的技術に対応できないことがイノベーションのジレンマなのでしたね。

というわけで、すべての選択肢が正しいため、この問題の正解は選択肢アとなります。
なかなか全て正しいという選択肢を選ぶことには勇気がいるかと思いますが、正しく理解をして、自信を持って正解を選べるようにしておきたいですね。

過去問を解いてみよう (平成28年度 第4問設問1)

今回はもう1問解いてみましょう。

「オープン・イノベーションにはメリット」があることに関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア オープン・イノベーションは、企業外部の経営資源の探索プロセスにおいて、内部での商品開発に対する競争圧力が強くなり、組織の活性化につながる。

イ オープン・イノベーションは、企業内部の優れた人材に限らず、企業外部の優秀な人材と共同で新商品開発を進めればよく、内部での開発コストの低減が期待できる。

ウ オープン・イノベーションは、研究開発から事業化・収益化までのすべてのプロセスを企業内部で行う手法の延長上に位置付けられるが、企業内部の経営資源の見直しに左右されずに進捗する。

エ オープン・イノベーションは、一般的により高い専門性をもつ企業との連携などによって新商品開発プロセスのスピードアップにつながる。


今度はイノベーションに関する記述として「不適切なもの」を選ぶ問題です。

選択肢を一つずつ見ていきましょう。

✅選択肢ア
オープン・イノベーションは企業外部の技術・リソースを活用して研究開発を行うものでしたね。
当然、企業外部の技術を活用するということは、既に自社で抱えている開発部の社員にとってはプレッシャーになり得ます。彼らにもプライドがありますからね。
外部の企業にも負けないように、自社で良い製品を作ろうと奮闘して、結果的に組織の活性化につながるということは十分に考えられますので、選択肢アは正しい記述となりますね。

✅選択肢イ
こちらは正しい記述ですね。
まさにオープン・イノベーションのメリットを説明した文章です。

✅選択肢ウ
これは間違っていますね。
オープン・イノベーションは外部技術やリソースを活用するタイプのイノベーションでしたので、企業内部で行うものの延長線上ではありません。
したがって、選択肢ウがこの問題の正解となりますね。

✅選択肢エ
これは、まさにオープン・イノベーションのメリットであるといえます。

こちらもイノベーションがどういったものかを正しく理解していれば、簡単に正解できる問題だったかと思います。間違えてしまった方は、よく復習しておきましょう。

まとめ

それでは最後にまとめです。

今回は、さまざまなタイプのイノベーションの種類を紹介しました。

持続的イノベーションは、既存市場の製品・技術を改良・発展させるイノベーションです。

一方で、破壊的イノベーションは従来とは異なる価値基準をもたらすイノベーションで、
具体的には手軽さや軽量化などの価値基準をもたらし、初期段階においては既存の技術よりも性能が劣ることが多いのでしたね。
また、初期段階においては従来市場とは異なる小規模市場で受け入れられ、かつ利益率も低いというのが特徴でした。

また、オープンイノベーションとクローズドイノベーションについても解説しました。
オープンイノベーションは企業外部のリソースを活用し、クローズドイノベーションは企業内部のリソースを活用するものでしたね。
こちらは、名称とそれぞれの内容を紐付けやすいかと思います。

最後に、イノベーション分析の枠組みについても説明をしました。
こちらはやや細かい論点ではありますが、ここで紹介した事例と紐付けながらイメージをつかんでいただければと思います。
過去問については平成29年度の第11問で出題されていますので、興味がある方はぜひ挑戦してみてください。

はい、というわけで今回はイノベーションをテーマに解説をしてみました。

個人的には、破壊的イノベーションに関する論点は、大学で所属していたゼミの課題図書で『イノベーションのジレンマ』を読んだので、非常に思い出深い論点です。

理論のレンズを通すことで、世の中の少し先が見えるようになるというクリステンセン教授の言葉通り、破壊的イノベーションの理論を知ることで、今世の中で起こっていることや、これから起こりそうなことについてある程度予見できるようになるのが面白いですね。

興味がある方はぜひ原著も読んでみていただければと思います。

Pocket

ABOUT ME
たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA