はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は「外部効果」について解説していこうと思います。
外部効果というのは、経済活動を行う際に、意図せず第三者に影響を与えてしまう現象のことを言います。
こういった外部効果に対しては、政府の介入が必要になるケースも多く、試験でもよく問われる論点のひとつです。
今回はグラフ問題にフォーカスを当てて解説したいと思いますので、この記事で一緒にマスターしていきましょう。
外部効果とは?
今回学習する外部効果とは、ある経済主体の行動が、他の主体に市場を通さず影響を与えることをいいます。
言葉だけだと何を言っているのかよくわからないと思うので、具体例で説明したいと思います。
例えば、ワクチンを接種したときに、予防接種していない人までその病気にかからずに済んだというケースですね。
このようなケースを正の外部効果、または外部経済といいます。
この場合、このワクチン接種に関する取引を行ったのは、ワクチンを接種した人とワクチンを打ってあげた病院側ですよね。
それにもかかわらず、世の中的に感染者数が減り、ワクチンを打っていない人も、感染していれば本来支払うはずだった治療費等が浮くことになります。
このようにその取引とは全く関係のないところで、経済的な便益を受ける人がいることを「正の外部効果」というわけですね。
一方で、負の外部効果=外部不経済というものも存在します。
例えば、工場から有害物質が流れ出て、周辺住民に健康被害が出たようなケースですね。
このケースでは、製品を製造している工場とその商品の販売先が取引をしたとなりますが、その取引とは全く関係のない周辺住民が健康被害を受けてしまい、その治療のためなどで余計なコストを支払うことになります。
こういったものを外部不経済と呼ぶわけですね。
つまり、ある経済取引において需要者側と供給者側がいたときに、それとは全く関係のないところで余計なコストや経済的な便益が発生することを外部効果というわけです。
ここからは、この外部不経済がどれくらい経済全体に対して影響を与えるのかということを、グラフを用いながら確認してみたいと思います。
外部効果が発生しない場合の取引
まず外部効果が全く発生していないときの取引状況を復習してみましょう。
横軸に需要量と供給量、縦軸に価格を取ると、需要曲線と供給曲線は以下のように描かれます。

需要と供給が一致するときの価格を均衡価格、その時の需要量・供給量を均衡取引量というのでしたね。
今、均衡価格が1000円、均衡取引量が100個だったとします。
そうすると均衡価格よりも上側の領域を消費者余剰、下側を生産者余剰と呼ぶのでしたね。
この辺の内容は過去の動画で解説していますので、よくわからなかったという方は以下の記事をチェックしてみてください。
外部不経済の分析
それでは、先ほど確認した内容が外部不経済の発生によって、どのように変わるのかを確認したいと思います。
結論から言うと、外部不経済が発生すると社会的余剰が失われ、死荷重が発生することになります。
先ほどのグラフで確認してみましょう。

外部効果が発生するときの供給曲線は私的限界費用線と呼ばれています。
これは政府が全く市場に介入せずに、自由に生産を行わせた場合の供給曲線となりますね。
そして、外部効果を考慮した社会的に望ましい供給曲線を、社会的限界費用線と置きます。
このとき、社会的限界費用線と私的限界費用線の差分を外部費用単価と呼びます。
さて、市場に供給を任せた場合の生産者余剰・消費者余剰は先ほど確認した通り、赤・青で塗り潰した領域となりますね。
そして、外部不経済が発生している時、外部費用単価と取引量100個を掛け合わせた面積分、社会全体から余剰が失われていると考えることができます。
つまり、この黒で塗りつぶした領域が外部費用となり、この取引とは全く関係のないところで発生した余計なコストだと捉えられるわけですね。

冒頭の例だと、工場から流れ出た汚染物質による健康被害において、第三者が支払った治療費を外部費用だと考えるとイメージしやすいと思います。
この領域は消費者余剰と生産者余剰と被っていますが、以下の黒三角形で塗りつぶした面積分が、生産者余剰・消費者余剰とも被っていない部分となり、ここが死荷重となります。

過去記事でも解説しましたが、死荷重とは社会的に無駄になってしまう損失部分のことです。
死荷重が発生しているので、外部不経済が発生すると、社会的総余剰は縮小してしまうというわけですね。
ここで政府が規制をするなどして、供給量を70個までに減らすことができれば、生産者余剰・消費者余剰を最適化させ、死荷重を発生させずに済みますので、社会的な総余剰は増えることになります。
この辺の外部効果の是正方法に関しては、また次の機会に解説しようと思いますが、まずは各余剰と外部費用、死荷重を正しく読み取れるようにしておきましょう。
過去問を解いてみよう (令和7年度 第17問)
それではここまでの内容を過去問で復習してみましょう。
工場排水が自然環境と近隣住民の生活に悪影響を与えるような、生産活動に負の外部性が伴う場合の
市場均衡を考える。下図には、需要曲線D、、私的限界費用曲線S0、社会的限界費用曲線S1が描かれている。
市場均衡は点Hで与えられ、均衡価格はP、均衡取引限界費量はQである。また、社会的な最適点は点Eである。
この図に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。a 市場均衡の下での生産者余剰は、三角形PBHである。
b 市場均衡の下での外部費用は、四角形EFHGである。
c 市場均衡の下で生じる厚生上の損失は、三角形EHGである。
d 最適点が達成された場合の社会的余剰は、三角形ACEである。
〔解答群〕
ア a:正 b:正 c:正 d:誤
イ a:正 b:正 c:誤 d:誤
ウ a:正 b:誤 c:正 d:正
エ a:誤 b:正 c:誤 d:正
オ a:誤 b:誤 c:正 d:誤
外部不経済が発生したときに、グラフから読み取れる内容を正誤判断する問題ですね。
✅選択肢a
市場均衡を表しているのは需要曲線Dと私的限界費用線S0の交点となりますね。
ですので、均衡価格はP、均衡取引量はQとなり、生産者余剰は△PBHとなりますので、この選択肢は正しい記述となりますね。
✅選択肢b
外部費用に関しては、外部費用単価CBと均衡取引量Qの掛け算で表されます。外部費用は四角形CBHGとなりますので、この選択肢は誤りです。
✅選択肢c
厚生上の損失というのは死荷重のことを言っていますね。
死荷重は外部費用のうち、生産者余剰・消費者余剰と被っていない領域となります。死荷重は△EHGで表されますので、この選択肢は正しい記述となりますね。
✅選択肢d
最適点が達成されたときの生産量は、需要曲線Dと社会的限界費用曲線S1との交点となりますので、社会的余剰はこの三角形で囲まれた領域、△ACEとなります。
ですのでこの選択肢は正しい記述となります。
以上から、選択肢ウがこの問題の正解となりますね。
外部不経済が発生したときの各余剰について細かく分析する内容ではありましたが、この内容さえ理解できていれば、どのようなグラフ問題が出ても対応できるかと思いますので、しっかりと復習していただければと思います。
まとめ
それでは最後にまとめます。
今回は外部効果について学習しました。
外部効果とは、ある経済主体の行動が他の主体に市場を通さず影響を与えることをいいました。
そして、今回は外部不経済が発生するときのグラフの読み取り方を中心に学習しましたね。

市場に取引を任せた場合の供給曲線を私的限界費用線と呼ぶのでしたね。
また、外部不経済が発生しているときの社会的に望ましい供給曲線は社会的限界費用線と呼び、私的限界費用線との差分と均衡取引量を掛け算した面積が、外部不経済が発生したときの外部費用と捉えられるのでした。
そして、生産者余剰・消費者余剰とも被っていない領域が死荷重、つまり厚生上の損失と捉えることができましたね。
このグラフの読み取り方は、過去何度か出題実績がありますので、実際に問題を解きながら確認していただければと思います。
はい、というわけで、今回は外部効果をテーマに解説しました。
試験では、この外部不経済をどのように抑えるかという点も出題実績があります。
記事の途中でもコメントしましたが、また次の機会に解説できればと思いますので、そちらも楽しみにお待ちいただければと思います。



