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【EVM】PV・EV・ACの違いと、分析指標であるEAC・SPI・CPIの覚え方を解説します!/経営情報システム/中小企業診断士試験対策

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はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。

今回は、プロジェクト管理手法の中から、EVMをテーマに解説していきたいと思います。
お持ちのテキストによっては、EVMSと表記されているかもしれません。

いずれにしても、EACやらACやらEVやらと、よくわからないアルファベットと、そのアルファベットを使った計算式が複数登場する、経営情報システムの中でも、苦手意識を持つ方が非常に多い論点かと思います。

この動画では、考え方を図解して内容をわかりやすく解説した後で、各指標の覚え方まで解説しますので、是非最後までご覧ください。

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EVM (Earned Value Management) とは?

今回学習するEVMとは、プロジェクト全体の進捗を予算・出来高・実コストといった、金銭価値で管理する手法です。

文字だけでは何を言っているか分からないと思いますので、具体的な事例を用いながら説明していきたいと思います。

今、6つの紙コップを使ってタワーを組み立てるという謎のプロジェクトがあったとしましょう。

EVMのプロジェクト例

この紙コップを設置するためには、1個あたり20万円の費用が必要だったとします。
このとき、総費用としては20万円×6個で、120万円になるはずですね。
EVMでは、この完成時の総予算をBadget At Completionの頭文字を取って、BACと表記します。

それでは、横軸に日数、縦軸に費用を取ったグラフで、BACを確認してみましょう。

1日1個の紙コップと組み立てるとしたら、6個すべて設置するには、合計6日間が必要で、その時の費用は120万円となりますので、この点がBACとなりますね。

EVMとは?

このとき、1日1個組み立てるのだとしたら、各日数と費用の関係は、このような直線で表せることになります。
ここで、3日目について着目してみたいと思います。

3日目には、紙コップが3個組み立てられているはずなので、60万円分のコストが発生しているはずですね。
この60万円をEVMではPlaned Valueの頭文字を取って、PV (計画予算) と表記します。
PVはプロジェクト全体のある時点おける、当初見積もっていた予算というわけですね。

ここで、3日目までに実際に組み立てた数は2個だったとしましょう。
紙コップ1個組み立てるために必要な費用は20万円でしたので、20万円×2個で40万円分しか組み立てていない計算になりますね。
EVMでは、この40万円をEarned Valueの頭文字を取って、EV (出来高) と表記します。
計画では3日目までに3個組み立てるはずだったのが、実際は2個でしたので、PVとEVの差を見ることで、20万円分の進捗遅れが発生していることが読み取れますね。

さらに、3日目までに実際に支払ったコストは、80万円だったケースを考えてみたいと思います。
EMVでは、この80万円をActual Costの頭文字を取って、AC (実コスト) と表記します。
3日目時点では2個しか組み立てていないにもかかわらず、実際は80万円のコストがかかっているわけですから、
1個あたりの組み立て費用は20万円ではなく、2倍の40万円がかかっていることがわかります。

以上のようにEVMでは、計画予算に対する出来高や実コストを比較することで、想定通りの日程でプロジェクトが進行しているか、予算通りの費用で進捗しているか、といった分析ができるようになるわけですね。

理想はPV・EV・ACがどの日数でも一致しながらプロジェクトが進行することですが、大抵の場合、そのようなことは起こらないので、プロジェクトマネージャーはこれらの指標を見ながら、適宜、調整を行う必要があるわけです。

SPI (SchedulePerformance Index) とは?

ここからは、EVMで使う具体的な分析指標を見ていきましょう。

まずは、SPIです。
SPIとは、ある時点での計画予算と出来高の比率のことを言います。
具体的な計算式は、EV÷PVとなりますね。

例えば、先のほど図を使うと、3日目時点の計画予算60万円に対して、出来高が40万円分だった場合は、SPIはEV40万円÷PV60万円で、約0.66と計算できるわけですね。

SPIとは?

SPIが1より小さい値になると、計画よりプロジェクトの進行が遅れていると判断できます。

今度は、3日目時点の計画予算60万円に対して、出来高が80万円分だったとしたらどうでしょうか?
SPIはEV80万円÷PV60万円で、約1.33と計算できます。
SPIが1より大きい値になると、計画よりプロジェクトの進行が早いと判断できるわけですね。

PV・EVが何を表しているかを分かった上で、図を描くと、プロジェクトが遅れているか、早く進んでいるか一目瞭然ですが、このようにSPIを計算することでも、進捗度を把握できるというわけです。

CPI (CostPerformance Index) とは?

CPIは、ある時点での出来高と実コストの比率のことを言います。
具体的な計算式は、EV÷ACとなりますね。
先ほどはPVだったところが、今度はACとなっています。

グラフを使いながら確認してみると、3日目の出来高が計画通り60万円で、実際に支払ったコストが40万円だった場合、CPIはEV60万円÷AC40万円で、1.5と計算できます。

CPIとは?

CPIが1よりも大きければ、計画以下のコストで進捗していることがわかるわけですね。

一方、出来高が計画通り60万円だったのに対して、実際に支払ったコストが80万円だった場合、CPIはEV60万円÷PV80万円で0.75と計算できます。
CPIが1より小さい場合は、計画以上のコストでプロジェクトが進捗していることがわかります。

以上のように、CPIを計算することで、プロジェクトが計画していた予算よりも高コストで進捗しているかどうかが判断できるわけですね。

EAC (Estimate At Completion) とは?

最後に、EACという指標も確認してみましょう。
EACとは、最終的なコストの見積額のことを言います。

例えば今、完成時総予算が120万円のプロジェクトに対して、3日目時点の出来高は予算通りの60万円、実コストは80万円支払っていたとしましょう。

EACの考え方

出来高よりも支払っているコストが大きいので、このままプロジェクトが進むと、明らかにBACよりも大きなコストが発生してしまいますよね。
このときのコストがいくらなのかを、EACとして求めるわけですね。

EACの計算式は、BAC×$\frac{AC}{EV}$となります。

計算式は中身を理解すると覚えやすいです。
計算式のうち、$\frac{AC}{EV}$の部分は、ACはEVの何倍になっているのか、ということを表しています。

左のグラフの数値を当てはめてみると、EAC=BAC×$\frac{80万円}{60万円}$となって、約1.33と計算できます。

EACの計算

つまり、3日目時点で1.33倍のコストがかかっているのだから、最終コストであるEACも当初予算の1.33倍になるだろうと予測しているわけですね。

当初予算であるBACは120万円でしたので、これを計算すると、EACは約159.6万円と計算できます。

ご覧いただいたように、グラフと計算式の意味するところがわかれば、EACは割と単純な計算であることがわかるかと思います。

ちなみに、市販のテキストではEACの計算式がもっと複雑に表記されているかと思いますが、その計算式を変形すると、この計算式になりますので、こちらの形で覚えていただければと思います。

各指標の覚え方

ここまでややこしいアルファベット表記がいくつか登場しましたので、改めて整理したいと思います。

まず、横軸に日数、縦軸に費用を取ると、プロジェクト完成時の総予算はBAC、ある時点での計画予算はPV、実際の出来高・進捗EV、実際に支払ったコストはACと呼ぶのでしたね。

EVMとは?

本試験の過去問を見ると、どの年度もカッコ書きで表した日本語も表記されていましたので、日本語から各内容が何を表しているかを思い出せる状態にしておけば問題ありません。

難しいのは、SPIとCPIですね。
SPIはEV/PV、CPIはEV/ACで計算される指標です。

CPI・SPIとは?

計算式から、SPIについては、EVは計画値の何倍か、CPIについては、EVはコスト実績の何倍かを計算した指標であると読み取れます。
どちらもEV基準で考えているわけですね。

まずは、どちらの指標もEVが分子に来るということを覚えましょう。

その上で、CPIのCは、ACのCと一致していることに注目します。
CPIのCはACのCと覚えておけば、SPIの方が余ったPVであることを判断しやすいかと思います。

語呂合わせを作って覚えるのも良いですが、ただでさえ情報システムは覚えることが多いので、このように覚えてしまった方が、暗記負荷は少なくて済むかと思います。
参考にしてみてください。

過去問を解いてみよう (平成29年度 第21問)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

システム開発の成功のためには、プロジェクトの予算と実績の差異分析が重要になる。その手法の1つにアーンド・バリュー分析がある。アーンド・バリュー分析では、AC(Actual Cost:コスト実績値)、EV(Earned Value:出来高実績値)、PV(Planned Value:出来高計画値)を用いて、コスト効率指数であるCPI (Cost Performance Index)や、スケジュール効率指数であるSPI(Schedule PerformanceIndex)などを計算する。
CPIとSPIの計算式の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

ア CPI = AC/EV  SPI = EV/PV
イ CPI = EV/AC  SPI = EV/PV
ウ CPI = EV/PV  SPI = AC/EV
エ CPI = EV/PV  SPI = EV/AC

中小企業診断士試験 経営情報システム 平成29年度 第21問


問題文にゴチャゴチャと色々書いてますが、要はCPIとSPIの計算式を選ぶ問題ですね。

先ほど解説した通り、SPIとCPIの計算式はこちらの通りでしたね。
まずは両指数ともEV基準で考えているので、分子側には両方ともEVが来るのでした。
ですので、選択肢アとウは分子にACが来る計算式が含まれているので、誤りと判断できます。

CPI・SPIとは?

分子に必ずEVが来ると知っているだけで、選択肢イかエの2択に絞れるわけですね。
その上で、CPIのCはACのCでしたので、CPIの計算式にACが含まれている選択肢イが、この問題の正解となります。

計算式さえ知っていれば、簡単に正解できる問題でしたね。

過去問を解いてみよう (平成30年度 第22問)

今回はもう1問解いてみましょう。

A社では、BAC(Budget at Completion:完成時総予算)が1,200 万円の情報システム開発プロジェクトが進行中である。昨日進捗を把握したところ、AC(Actual Cost:コスト実績値)が800万円、EV(Earned Value:出来高実績値)が600万円となっていた。このままのコスト効率でプロジェクトが進んでいくと、完成した時にどれくらいのコストがかかると予想できるか。最も適切なものを選べ。

ア 1,200 万円
イ 1,400 万円
ウ 1,600 万円
エ 1,800 万円

中小企業診断士試験 経営情報システム 平成29年度 第21問


完成した時のコスト、つまりEACを求める問題ですね。
EACの計算式は、次のように表されるのでした。

EACの計算式

EAC = BAC × $\frac{AC}{EV}$

ACはEVの何倍なのかを考えている点がポイントなのでしたね。
今度は分母側にEVが来ているので、覚えずづらく感じるかもしれませんが、先ほど解説したようなりグラフを描きながら理解すると、納得しやすいかと思います。

さて、計算式に問題文の数値を当てはめると、次のように計算できます。

経営情報システム_過去問_平成30年度 第22問

1,200万円と分母の600万円が約分できますね。
計算すると、2×800万円となりますので、EACは1,600万と計算できますね。
以上から、答えは選択肢ウとなります。

こちらも計算式さえ知っていれば、簡単に解ける問題でした。

万が一、計算式を忘れたとしても、EACを求める際の考え方さえ理解していれば、その場で計算式をひねり出すことも、出来なくもありません。
ぜひ、考え方を含めて復習いただければと思います。

まとめ

今回は、EVMで用いられる各用語をグラフを使いながら解説しました。

BACとPVが計画値であること、EVがプロジェクトの進捗状況、ACが実際に支払ったコストを表すということを、ご自身で一度はグラフを描きながらご理解いただければと思います。

EVM_まとめ

その上で、SPIとCPIの2つの指数を解説しましたね。
正直、実務上はグラフさえ描けば進捗状況が読み取れるので、こんな指数を計算する必要もない気もするのですが、本試験での出題実績があるので覚えるしかありません。

必ずEVが分子にくること、CPIのCはACのCだということを覚えればバッチリなのでしたね。

また、SPIやCPIが1より小さいとき・大きいときに、どのようなことを表すかについては、グラフを描きながら判断すると、事故が少なくて済むかと思います。

また、今回はEACという指標も解説しました。

EACの計算

EACは最終的なコストの見積額のことで、ある時点でのACがEVの何倍であるのかを計算して、その倍数を完成時総予算のBACに掛けることで求めるのでしたね。
こちらも考え方がわかれば、そこまで難しいものではないかと思います。

はい、というわけで、今回はプロジェクト管理手法のEVMをテーマに解説してみました。

この論点は令和4年度・令和5年度と連続で出題されています。
わかりにくい上に覚えづらいので、ちゃんと勉強してない人を落とすためには、作問者としては使い勝手の良い論点なのだと思います。

この動画をご覧の皆さんは、そんな作問者の期待を良い意味で裏切ってくださいね。

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ABOUT ME
たかぴー
自己紹介:中小企業診断士の会社員。 YouTubeチャンネル 「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」を運営中。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com

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