はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は「就業規則」をテーマに解説していきたいと思います。
就業規則は、どの中小企業でも策定されているためか、過去10年でほぼ毎年のように顔を出す頻出論点です。作成のルールや記載事項、効力の関係など、知識を整理しておけば確実に得点できる内容ですね。
苦手意識を持たれやすい分野ですが、ひとつずつ意味を理解していけば、決して難しくありません。この記事でも図解を交えながら丁寧に解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
✓ 就業規則とは何か(会社のルールブック)
✓ 作成・届出義務と、記載事項の3分類
✓ 作成手続き・周知と、効力の優先順位
✓ 不利益変更と減給の制限
就業規則とは?
まずは就業規則とは何かを確認しましょう。就業規則とは、一言でいえば会社全体の労働条件に関するルールブックです。労働条件や、職場で守るべきルールを具体的に定めたものですね。
あなたが今お勤めの会社にも、アルバイト先にも、必ずこの就業規則があるはずです。
労働条件を定める形には3つあります。労働協約、就業規則、労働契約ですね。この中で就業規則は、会社が定めて、その職場で働く人全員に一律に適用されるルール、という位置づけになります。

この記事では、就業規則について「作成・届出」「記載事項」「手続・周知」「効力」「制裁」という流れで見ていきます。それでは、具体的な中身に入っていきましょう。
作成・届出義務
まずは作成・届出義務です。就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で作成して、届け出ることが義務づけられています。
ここでポイントになるのが「常時10人以上」という人数です。これは正社員だけでなく、パートやアルバイトも含めた人数で数えます。お店や事業所といった、事業場ごとに数えるという点にも注意ですね。

作成にあたっては、労働条件・職場のルールを文書としてまとめていきます。そして、作成した就業規則は、労働基準監督署長に届け出ます。
ここで覚えておきたいのは、役所の「承認」を待つ必要はなく、「届出」をすればよいという点です。承認をもらう必要はない、ということを覚えておきましょう。
記載事項
続いて、就業規則に何を書くか、記載事項です。必ず記載しなければならないのが、労働時間・賃金・退職に関する事項の3つです。

就業規則の記載事項には3種類がありますので、順を追ってみていきましょう。
まず、必ず書かなければならない「絶対的必要記載事項」です。これは「労働時間・賃金・退職」に関する事項ですね。
なぜこの3つは必ず書かせるのかというと、労働時間・賃金・退職に関する事項は、働くうえで最も揉めやすいためです。だから国が「必ず明文化しなさい」と義務づけて、労使の認識のズレを防いでいるわけですね。
次に「相対的必要記載事項」です。これは、その制度を設けるなら書かなければならないもので、例えば退職手当や制裁などですね。退職手当の制度を作るなら必ず書く、作らないなら書かなくてよい、というイメージです。
最後に「任意的記載事項」です。これは法律では求められていませんが、会社が任意で載せるもので、例えば会社の理念などですね。
ここで間違えやすいのが、「退職に関する事項」は絶対的、「退職手当」は相対的だという点です。実は、退職金がない会社にお勤めの方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは退職金が相対的必要記載事項で、必ず設けなければならないわけではないためですね。
気になった方は、ぜひ一度、ご自身の会社の就業規則を確認してみてください。「退職金は絶対じゃないんだ」と押さえておきましょう。
作成手続・周知
続いて、就業規則を作るときの手続と、周知です。就業規則は、過半数代表の意見を聴いて作り、できあがったら働く人みんなに知らせる、というのが基本の流れになります。

まず、就業規則を作成・変更するときは、その事業場の労働者の過半数を代表する人の意見を聴く必要があります。労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者ですね。
ちなみに労働組合とは、労働者が労働条件の維持・改善のために、自主的につくる団体のことです。会社と交渉して、その結果を労働協約として結ぶ役割を持っています。
手続のポイントは、会社は意見を「聴けばよい」という点です。同意や合意まで得る必要はありません。たとえ反対意見だったとしても、聴いて届け出れば、手続上は有効になります。
そして、作成した就業規則は、先ほどの届出をしたうえで、労働者に周知しなければなりません。周知とは、労働者がいつでも内容を確認できる状態にすることです。見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付、社内システムなどで常時確認できるようにする、このいずれかの方法でよく、必ず配布しなければならないわけではありません。

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効力と不利益変更
続いて、就業規則の効力です。労働条件を定めるものには、強さの順番、つまり優先順位があります。強い順に、法令、労働協約、就業規則、労働契約となります。

それぞれの意味を確認すると、法令は国が定める最低基準で、すべての労働者に強制される、一番強いルールです。労働協約は、労働組合と会社が結ぶ集団的な約束で、就業規則よりも優先順位が高いのですね。
就業規則は、会社が定める職場共通のルール。そして労働契約は、労働者個人と会社が結ぶ、個別の約束ですね。上にいくほど公的で、広く労働者を守る性質が強いので、上が優先されます。
ですので、就業規則は法令や労働協約に反することはできませんし、下位のルールが上位のルールに反する部分は、無効になります。
次に、不利益変更です。これは就業規則を、労働者にとって不利な内容に変更することですね。原則として、労働条件を不利に変えるには、本来は一人ひとりの合意が必要です。

ただし例外として、変更後の内容をきちんと周知し、その変更が合理的だと認められる場合には、合意がなくても変更が認められます。「一切できない」わけではない、という点に注意しましょう。
制裁(減給の制限)
最後に、制裁、特に減給の制限について見ておきましょう。結論からお伝えすると、減給には上限があって、1回の減給は「1日分の給料の半額」まで、合計でも「月給の10分の1」までと決められています。

それでは、その中身を順に見ていきましょう。まず、1回の減給額は、平均賃金1日分の半額までとされています。これは1つの違反につき、給料1日分の半分を超えて引いてはいけない、ということです。なぜ上限があるのかというと、減給は労働者の生活に直接響くので、行き過ぎを防ぐためですね。
そして、総額は、一賃金支払期、通常1か月の賃金総額の10分の1までです。複数の違反が重なっても、その月の給料の1割を超えて引いてはいけない、ということですね。「半額」と「10分の1」、この2つの数字を押さえておきましょう。
ちなみに、この制裁に関する項目は、先ほどの相対的必要記載事項にあたります。会社が減給などの懲戒を行うには、あらかじめ就業規則に、その種類と程度を定めておく必要があるわけですね。ルールに書いていない罰は科せない、ということになります。
過去問を解いてみよう(令和6年度 第27問)
就業規則に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 使用者は、就業規則において1日の労働時間について「8時間勤務とする」と定めた場合であっても、その事業場における具体的な始業及び終業の時刻並びに休憩時間について規定しなければならない。
イ 使用者は、新規に会社を設立し初めて就業規則を定めることになった場合は、その内容に関して、全労働者の過半数の同意を得なければならない。
ウ 使用者は、同一事業場において一部の労働者にのみ適用される「パートタイム就業規則」を変更する際には、当該事業場に労働組合がない場合には、全労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要はない。
エ 使用者は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、当該変更が諸事情を考慮して合理的なものであると判断されたとしても、労働者と合意しなければ、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更することは一切できない。
それでは選択肢を1つずつ確認していきましょう。
選択肢ア:「8時間勤務とする」と労働時間の長さを定めても、具体的な始業・終業の時刻や休憩時間は規定しなければならない、とあります。始業・終業の時刻や休憩時間は絶対的必要記載事項でしたので、これは正しい記述です。
選択肢イ:新規に就業規則を定める場合に、全労働者の過半数の同意を得なければならない、とありますが、これは誤りです。必要なのは同意ではなく、過半数代表の意見を聴くこと、同意までは不要でした。
選択肢ウ:一部の労働者にのみ適用されるパートタイム就業規則の変更で、労働組合がなければ意見を聴く必要はない、とありますが、これも誤りです。一部の労働者に適用される就業規則の変更でも、事業場の過半数代表の意見を聴く必要があります。
選択肢エ:周知し、合理的と判断されても、合意しなければ不利益変更は一切できない、とありますが、これも誤りです。周知と合理性があれば、合意がなくても不利益変更が認められる場合があります。
よって、選択肢アがこの問題の正解となります。就業規則の基本がひと通り問われた良問でしたね。ここまで学習した内容で確実に正答できる問題ですので、間違えた方は、しっかり復習しておきましょう。
まとめ
それでは最後にまとめです。今回は就業規則について学習しました。就業規則は、会社全体の労働条件に関するルールブックなのでしたね。

作成義務は、常時10人以上の事業場で作成し、労働基準監督署長へ届け出るのでしたね。承認ではなく、届出でOKでした。記載事項は、必ず書く絶対的記載事項と、相対的記載事項、任意的記載事項の3つに分かれていました。
作成手続は、意見聴取が必要で、同意までは不要。そして、全員への周知が必要でしたね。効力は、法令、労働協約、就業規則、労働契約の順に強く、不利益変更は、周知と合理性があれば認められるのでした。制裁の減給は、1回は半額まで、総額は10分の1まで、という上限があるのでしたね。
就業規則は、暗記しようとすると細かく感じますが、「なぜそうなっているのか」という理由とセットで理解すると、忘れにくくなります。理由は、Webで調べても、ご自身なりのこじつけでも構いません。自分の覚えやすいロジックを見つけていただければと思います。
就業規則は、実際に会社を経営したり、人事労務に関わる際にも必ず出てくる、とても実務的なテーマです。診断士試験でもほぼ毎年と言っていいほど出てくる論点なので、今回の内容は確実に押さえて、本試験に臨んでいただければと思います。
ぜひ過去問とこの記事を相互に確認しながら、理解を深めていただければと思います。
それでは今回の記事はここまでとしたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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