はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は「デファクトスタンダードとネットワーク外部性」をテーマに解説していこうと思います。
この論点は、技術や製品が市場でどうやって“標準”として定着していくのか、そしてその裏にある「ネットワーク外部性」という仕組みを理解することがポイントになります。
情報技術やプラットフォームビジネスを中心に、近年の試験でも頻出の内容ですので、この機会にしっかりと整理しておきましょう。
技術的な競争優位性を維持する方法
今回学習する内容は、技術的な競争優位性を維持する方法です。
例えば、空飛ぶ車のような製品を開発できたとしましょう。
革新的な技術ですので、この企業は技術的な競争優位性を持っているといえますが、当然、この優位性を維持したいと考えますよね。
競争する方法には様々ありますが、代表的なものとしては、特許の申請や継続的なイノベーション、デファクトスタンダードを確立するといった方法が考えられます。

特許申請については法的な保護を受けることで、他の企業から模倣されることを防ぐ方法ですね。
特許申請する以外にもその技術を隠しておくという方法も考えられます。
例えば、コカ・コーラのレシピは世界中どこにも公開されておらず、その秘伝の味を守り続けている一例となりますね。
継続的なイノベーションについては、技術革新を継続することで単に空飛ぶ車を開発しただけではなく、その製品について継続的に技術革新を行うことで差別化を維持することをいいます。
そして、最後のデファクトスタンダードに関しては、この後詳しく説明していきたいと思います。
いずれにしても、技術的な競争優位性を維持する方法には様々あり、それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるということを覚えていただければと思います。
デファクトスタンダードとは?
それでは本題のデファクトスタンダードです。
デファクトスタンダードとは、事実上の業界標準のことをいいます。
この一言ではイメージがつきにくいと思いますので、具体例を用いながら説明したいと思います。
デファクトスタンダードを理解する上では、デジュールスタンダードを先に確認しておくと分かりやすいですので、まずはデジュールスタンダードを説明したいと思います。
デジュールスタンダードとは、国際的な標準化団体によって公式に制定された規格や仕様のことをいいます。
例えば、Wi-FiやJPEG、Bluetoothなどですね。
こういったものは公式団体によって通信や画像・端子の規格などが定められています。
このように仕様を統一することによって、取引や製品開発の効率化を図っているわけですね。
例えば、使用しているスマートフォンによっての無線規格がバラバラで相互通信できないとなると、ユーザー側も混乱しますし、メーカーとしても余計な機能を開発する必要が出てくるため、コストがかさみます。
そういった非効率を防ぐために規格を統一しているわけですね。
一方で、デファクトスタンダードは、その製品・サービスが広く普及した結果、事実上の標準となった規格や仕様のことをいいます。

例えばOSのWindows、2次元バーコードのQRコード、通話アプリのLINEなどですね。
こういったものは「OSとしてはWindowsを使いなさい」と業界団体が定めたわけではなく、みんなが使っているから選ばれた、という形で広まったものです。
このような製品やサービスが一定以上の普及率に到達すると、その製品に合わせた他の製品やサービスが開発されることで、さらに利便性が向上します。
そんな中で類似サービスが出てくると、ユーザー側が混乱し、かえって不利益を被るケースが発生してしまいます。
そうすると、他の企業が全く入り込む余地がなくなってくるというわけですね。
一度デファクトスタンダードの地位を確立できると、持続的な競争優位を築くことができるというわけです。
ただし、デファクトスタンダードとして確立した製品は、必ずしも最も優れている製品やサービスではないという点には注意しておきましょう。
ネットワーク外部性とは?
最後に、ネットワーク外部性です。
ネットワーク外部性とは、同じプラットフォームや規格に参加する人数が多いほど、効用が高まる現象のことをいいます。
こちらも具体例で確認しましょう。
例えば先ほど説明したLINEについては、みんなが使っているため、インストールしておけば誰とでも通話ができる、ネットワーク外部性が生じている製品だといえます。
これが例えばLINE登録者が世界中で誰もいなかったら、今のLINEと全く同じ機能を有していても、誰もわざわざインストールしたいと思わないですよね。
他の人が使っているからこそ、LINEには価値があるという見方ができるわけです。
こういった性質を持つものはネットワーク外部性があるといいます。

他にもPayPayについては、どこのお店でも使えるからアプリをインストールして現金代わりに使おうとします。
これも、もし導入している店がほとんどなければ使える場面がありませんので、なかなかユーザー側にとってもお店側にとっても魅力がありません。
消費者のスマホに入っていないのであれば、お店側も導入するメリットがなくなりますから、導入企業も少なくなるわけですね。
PayPayの運営会社は、キャッシュレス決済サービスのこういった性質を早くから理解していたので、サービス立ち上げ初期は、とにかく手数料無料でどんどん導入店舗を増やしていった経緯がありますね。
最後はみなさんがYouTubeです。
こちらも投稿者が多いから視聴者が増え、再生数が伸びやすいので投稿がさらに増えるという好循環が生まれています。
これもネットワーク外部性が生じている一例といえるでしょう。
例えば投稿数が数本しかないYouTubeは誰も見ないですよね。
こういった性質があることを理解しているので、YouTubeはクリエイターに対してかなり優しいプラットフォームだといえますね。
このようなネットワーク外部性をうまく生かすことで、利用者数を拡大すると、その利用者数による効用の高さが競争優位性となり、いずれデファクトスタンダードになるといった傾向があります。
今からLINEに代わる通話アプリが出てきたり、ニコニコ動画がYouTubeより見られるようになる未来はなかなか考えにくいですよね。
以上のように、ネットワーク外部性とデファクトスタンダードには密接な関係があるということは覚えておくと良いでしょう。
過去問を解いてみよう (令和2年度 第13問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。
デファクト・スタンダードやネットワーク外部性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア デファクト・スタンダードの確立には、ISOのような国際的な標準化機関が重要な役割を果たすことから、
これらの機関での調整や協議を進めることが、デファクト・スタンダードの獲得に向けた中心的な方策となる。イ デファクト・スタンダードは、パーソナルコンピュータやスマートフォンのOS(基本ソフト)のようなソフトウェアにおいて重要な役割を果たすものであり、情報技術が関わらない領域では生じない。
ウ デファクト・スタンダードは製品市場における顧客の選択を通じて確立するために、競合する製品や規格の中で、基本性能が最も高いものが、デファクト・スタンダードとしての地位を獲得する。
エ 当該製品のユーザー数の増加に伴って、当該製品において補完財の多様性が増大したり価格が低下したりすることで得られる便益は、ネットワーク外部性の直接的効果と呼ばれ、間接的効果と区分される。
オ ネットワーク外部性を利用して競争優位を獲得するためには、ユーザー数を競合する製品や規格よりも早期に増やすことが、有効な方策となる。
デファクトスタンダードとネットワーク外部性に関して正しいものを選ぶ問題ですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
✅選択肢ア
これは誤りですね。
このような公的な標準化機関が定めるのは、デジュールスタンダードでした。
✅選択肢イ
ウィキペディアで調べてみると、「ラインメタル120mm戦車砲」というものが、西側諸国のほとんどの主力戦車に採用されていたようです。
このように、何も情報技術が関わる分野だけでデファクトスタンダードが誕生するわけではないので、選択肢イも誤りとなります。
✅選択肢ウ
これも誤りですね。
例えばかつてのVHSとベータマックスのような「ビデオ戦争」においては、ベータマックスの方が性能自体は優れていると言われていましたが、デファクトスタンダードになったのはVHSの方でした。
このように、製品自体の性能や品質以外でも、販売戦略やその他の要因によってデファクトスタンダードの地位が決まるケースもありますので、選択肢ウも誤りとなります。
✅選択肢エ
これも誤りです。
補完財が増えるといった便益は「間接的効果」と呼ばれますので、説明が逆ですね。
したがって選択肢エも誤りとなります。
✅選択肢オ
ネットワーク外部性を利用して競争優位を獲得するためには、ユーザー数を競合する製品や規格よりも早期に増やすことが有効な方策となるとありますが、これはそのまま正しい記述です。
したがって、この問題の正解は選択肢オとなります。
以上のように、この年度では、デファクトスタンダードとネットワーク外部性について、直接問われました。
中にはプラットフォーム戦略について問われた年度もありますが、問われている本質はネットワーク外部性についてです。
他の年度の過去問を解いて、しっかりと理解を深めておいてくださいね。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回学習した内容は、技術的な競争優位性を維持する方法でしたね。
その代表例としては、特許や継続的なイノベーション、デファクトスタンダードの確立がありました。

デファクトスタンダードは、事実上の業界標準のことでしたね。
そしてデファクトスタンダードは、ネットワーク外部性が発揮される製品やサービスと相性が良いという特徴がありました。
ネットワーク外部性とは、利用者が増えるほど価値が上がる性質のことでしたね。
この構造を理解しておくと、試験問題にも対応しやすくなるかと思います。
はい、というわけで、今回はデファクトスタンダードとネットワーク外部性について解説をしました。
ネットワーク外部性が強く働く製品やサービスにおいては、とにかく利用者数の拡大が重要です。
その競争に打ち勝つことができれば、市場をほぼ独占できるような構造になりますので、極めて大きなビジネスチャンスとなります。
ただし、診断士として支援する中小企業にとっては、それ相応のコストがかかり、大企業と真正面から競争することになりますので、簡単に参入をおすすめできるものではありません。
とはいえ、市場分析や競争戦略を考える際にも非常に役立つ概念ですので、ぜひ診断士合格後も覚えておいていただきたい考え方です。
もちろん試験問題で出てきたら、この記事をご覧の皆さんは確実に得点につなげてくださいね。

