はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は経済学から「費用関数(費用曲線)」をテーマに解説していきたいと思います。
費用関数は、グラフの傾きの読み取りが直感的に分かりにくく、初学者の方がつまずきやすい論点の一つです。この記事では、収入曲線とのアナロジーを使って「グラフの傾き=何を表すのか」を丁寧に解説しますので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
✓ 総費用曲線・固定費用曲線・可変費用曲線の形状と関係
✓ 平均費用・平均可変費用を「直線の傾き」で読み取る方法
✓ 平均費用が最小になる条件(接点で求める)と平成30年度第19問の解法
費用曲線(費用関数)で知りたいことは何か?
中小企業診断士試験で出題される費用関数は、縦軸に費用、横軸に生産量を取りグラフで表すと以下のような曲線となります。このグラフは総費用曲線と呼ばれます。

この総費用曲線を分析する目的は、1個あたりの費用(=平均費用)が最小となる条件を見つけることにあります。企業活動を行う上で、より少ない費用で生産を行うことは重要なテーマですので、グラフを用いながらこの問題を考えていきましょう。
総費用曲線は、固定費用曲線と可変費用曲線を組み合わせて作られるグラフなので、このあたりから詳しく解説していこうと思います。
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固定費用曲線と可変費用曲線の形状
まず固定費について解説します。固定費とは、生産量に関わらず一定で発生する費用のことです。具体例としては、建物や機械などの生産設備、人件費などがあります。グラフで描くと以下のようになります。

これは、生産量がゼロの時も一定額の費用が発生し、その後生産がいくら行われても発生する費用は変わらないことを表しています。
一方で、可変費用とは、生産量に応じて発生する費用のことです。具体的には、原材料費や外注費などがあります。グラフで表すと以下のようになります。

固定費と異なり、生産量がゼロの時は費用が発生せず、その後生産量が増えるごとに費用も増加していきます。これらのグラフを組み合わせたものが、先ほどお見せした総費用曲線となります。

縦軸の切片の大きさがちょうど固定費となっていて、固定費の分だけ可変費用曲線を上方向にスライドさせた形となっています。
このように描かれる総費用曲線ですが、問題は平均費用を最小化する条件でしたよね。この問題を解決するために、まずはグラフの傾きについて説明したいと思います。

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検証結果を読む →収入曲線の形状(グラフの傾きを理解する)
グラフの傾きを理解するためには、収入曲線から入るとわかりやすいです。収入とは企業の売り上げのことで、「価格×生産量」で表されると考えてください。なお、正しい経済学では価格は常に一定と考えます。
この前提で、縦軸に収入を、横軸に生産量を取ると、収入曲線は原点を通る右肩上がりの直線で描くことができます。ここでは理解しやすいように、グラフに数字を入れてみました。

この時、1個あたりの価格について考えてみましょう。計算するまでもなく答えられそうですが、真面目に計算してみますと、300円÷3個=100円となります。もちろん200円÷2個でも、100円÷1個でも答えは同じですね。
ここで大切なのは、グラフの縦軸の値を横軸の値で割り返しているということです。

なぜ重要なのかというと、グラフの縦軸の値を横軸の値で割り返すということは、数学的にはグラフの傾きを求めていることになるためです。つまり、図の中で黄色で表したグラフの傾きが「価格」を示すということになります。
平均費用の求め方
続いて、総費用曲線の平均費用について考えてみましょう。具体的に計算できるように、グラフに数字を加えてみました。

それぞれについて平均費用を計算してみましょう。
・生産量100個の場合:1,000円 ÷ 100個 = 10円
・生産量500個の場合:1,100円 ÷ 500個 = 2.2円
・生産量600個の場合:1,400円 ÷ 600個 = 約2.3円
ここで平均費用の求め方を一般化するために、計算式に注目してみましょう。グラフの縦軸の値を横軸で割り返していることが分かるかと思います。これは先ほどの収入曲線で価格を求める時と同じ計算式ですよね。
つまり、平均費用は「原点から総費用曲線上の点に向けて引いた直線の傾き」で表すことができそうです。グラフで表すとこんな感じですね。

この赤・黄色・緑で表した直線の傾きが平均費用を表しています。グラフの傾きの大小を比較してみますと、黄色の傾きが最も小さいので、この中では500個の生産量の時が平均費用が最も小さいと言えそうです。計算した結果も2.2円が最も小さな数字ですので、間違ってなさそうですね。
以上から、平均費用は原点からの直線の傾きで大小を比較できることがわかります。
平均費用の最小化条件
それでは問題の平均費用の最小化条件について考えていきましょう。先ほど説明した通り、原点からの直線の傾きが平均費用を表しているので、この傾きが最も小さくなる生産量を考えると良さそうです。

まず生産量がゼロの場合ですが、グラフの傾きは90度となり、直感的にもこの時が平均費用が最も大きくなりそうです。その後、生産量を増やすたびに直線を引いてみますと、グラフの傾きが徐々に小さくなっていくことがわかります。そして、ある生産量の時にグラフの傾きが最も小さくなりました。
その後、生産量をさらに増やしてもグラフの傾きは大きくなるため、平均費用も増加していると読み取ることができます。したがって、この生産量がこの総費用曲線における平均費用が最少となる生産量だと言えそうです。

ここで、平均費用が最小となる時の赤色の直線は、総費用曲線にちょうど触れている線、つまり接線であることがわかります。この時、2つのグラフが触れている点を数学的には接点といいますが、この接点の生産量で平均費用が最少となることが分かりました。
言い換えると、平均費用の最小化条件は「原点から引いた直線が総費用曲線に接する点(接点)の生産量」であるということができます。
平均可変費用の求め方
続いて、平均可変費用についても考えてみましょう。グラフが総費用曲線ではなく可変費用曲線になっている点にご注意ください。

ただ、考え方自体は総費用曲線の場合と同様で、可変費用曲線に対して原点から引いた直線の傾きが平均可変費用となります。
一方、総費用曲線から平均可変費用を求めるときは少し注意が必要です。総費用曲線は、可変費用曲線を固定費の分だけ上方向にスライドさせたグラフでした。

この分を加味して、総費用曲線から平均可変費用を求める場合は、グラフの切片から総費用曲線に対して引いた直線の傾きが平均可変費用となります。
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費用関数の重要論点まとめ
それでは、ここまで解説した内容を改めて振り返ってみましょう。
① 総費用曲線と原点を結んだ直線の傾き=平均費用
② 総費用曲線と切片を結んだ直線の傾き=平均可変費用
③ グラフが可変費用曲線の場合は原点と結んだ直線の傾き=平均可変費用
④ 総費用曲線と原点を結んだ接線の生産量で平均費用は最小(平均可変費用の最小化条件も接点)
続いて、これらの知識を使って実際の過去問題を解いてみたいと思います。
過去問を解いてみよう(平成30年度 第19問)
平成30年度の第19問で費用関数の問題が出題されました。
下図は、生産量と費用の関係を表したものである。ここでは、ある生産要素の投入は変化するが、他の生産要素の投入は変化しない、つまり少なくとも1つは固定的なインプットが存在する短期の費用関数を考える。この図に関する記述として最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 原点Oと点Pを結んだ線の傾きによって、平均費用が求まる。
b 総費用曲線を見ると、点Dから点Eまでは費用逓増型、点Eから右は費用逓減型となっている。
c (本記事では省略)
d 平均費用が最小になる生産量より、平均可変費用が最小になる生産量の方が少ない。
ちょっと問題文だけ見ると難しく思えますが、4択はグラフから読み取れることから素直に答えれば良いだけなので、丁寧に対処します。
✅ 選択肢a:原点Oと点Pを結んだ線の傾きによって平均費用が求まる
→ 実際に点Pを見てみると、可変費用曲線上の点であることがわかります。この場合、原点Oと点Pを結んだ線の傾きによって求まるのは「平均可変費用」なので、選択肢aは誤りです。
✅ 選択肢b:総費用曲線が点Eを境目に費用逓増型→費用逓減型に切り替わる
→ 費用逓増とは増加する費用がだんだん大きくなっていくこと、費用逓減とは増加する費用がだんだん小さくなっていくことを表します。逓増・逓減は経済学でよく出てくる言葉なのでこの機会に覚えておきましょう。
平均費用が最小となるのは原点Oから引いた総費用曲線との接点である点Eの生産量でしたね。なので点Eまでは平均費用がだんだん小さくなり、点Eを超えると平均費用はだんだん大きくなる、というのが正しい記述で、選択肢bも誤りです。
✅ 選択肢d:平均費用が最小になる生産量より、平均可変費用が最小になる生産量の方が少ない
→ 平均費用が最少となる生産量は先ほど説明した通り点Eの生産量です。一方で、平均可変費用が最少となる生産量は点Pの生産量となりますね。
この2つを比べてみると、確かに点Pの生産量の方が少ないので、選択肢dは正しいと判断できます。
この問題は費用関数の問題でもオーソドックスな問題でした。図の読み取り方を理解していれば割と簡単に解くことができるので、こういった問題はぜひ正答したいですね。
まとめ
それでは本日の内容をまとめておきましょう。
費用関数(費用曲線)の論点は、「グラフのどこから引いた直線の傾きが、何の費用を表すのか」をマスターすれば一気に得点源にできます。
① 総費用曲線+原点から引いた直線の傾き → 平均費用
② 総費用曲線+切片から引いた直線の傾き → 平均可変費用
③ 可変費用曲線+原点から引いた直線の傾き → 平均可変費用
そして、平均費用・平均可変費用が最小となる生産量は、いずれも「接点」の生産量です。接点までは平均費用がだんだん小さくなり(費用逓減)、接点を超えると平均費用はだんだん大きくなる(費用逓増)、という性質も合わせて押さえておきましょう。
「グラフの傾き=価格(収入曲線の場合)」「グラフの傾き=平均費用(総費用曲線の場合)」というアナロジーで、数学的な意味(縦軸÷横軸=傾き)を1度自分の中で腹落ちさせてしまえば、本試験での得点が安定するはずです。
それではまた次回お会いしましょう。
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