はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は、消費関数をテーマに解説していこうと思います。
消費関数は、マクロ経済学の基本的な概念の一つで、消費と所得の関係を示すものです。
マクロ経済では、総需要は消費と投資、それから政府支出で構成されると考えますが、そのうちの一つである消費にスポットライトを当てた論点というわけですね。
診断士試験でも頻出論点のひとつですので、この機会にしっかりと理解しておきましょう。
消費関数とは?
今回学習するケインズ型消費関数とは、今期の消費は今期の所得に依存するという考え方です。
具体的な計算式は次の通りですね。
今期の消費 = 限界消費性向 × 所得 + 独立消費
今期の消費は、限界消費性向×所得+独立消費と考えます。
見たことのない単語が出てきましたので、内容を確認しましょう。
限界消費性向とは、所得のうち消費に回す割合のことを言います。
例えば限界消費性向が80%なら、所得の80%を消費に回し、残り20%は貯蓄に回すようなイメージとなりますね。
続いて、独立消費とは所得とは関係なく行われる消費のことです。
トイレットペーパーなど、生活に必要な最低限の消費のことを指します。
改めて計算式を見てみると、今期の消費は、所得から消費に回す割合を掛け合わせたものに、独立消費を足し合わせたものであると考えるわけですね。
消費量は、所得の範囲内で行われる消費と、所得に関わらず一定にかかる固定的な消費分の合計だと考えるということです。
ちなみに、限界消費性向は0から1の間を取ります。
所得の範囲を超えた消費は行わないと考えているわけですね。
計算式に数値を当てはめてみよう
では、先ほどの計算式に具体的な数字を当てはめて考えてみましょう。
今、限界消費性向は90%、今期の所得は500万円、独立消費は30万円だったとします。
そうすると、計算結果は以下の通りとなります。
今期の消費 = 限界消費性向90% × 所得500万円 + 独立消費30万円
= 450万円 + 30万円
= 480万円
つまり、500万円のうち480万円が消費に回り、残りの20万円が貯蓄に回るというわけですね。
意味が分かれば、それほど難しいものではないことが理解できたかと思います。
消費関数のグラフ
続いて、消費関数をグラフで表してみましょう。
今期の消費の計算式はこのように表されましたが、経済学では、これを英単語の頭文字をとったアルファベットに置き換えて表します。

横軸に所得、縦軸に消費量をとって消費関数を表すと、以下のような右肩上がりの直線になります。
重要なのは、このグラフの読み取り方ですね。

まず、グラフの切片は独立消費を表しています。
所得がゼロになると、計算式の中で独立消費しか残らなくなるので、わかりやすいですね。
それから、限界消費性向はグラフの傾きとして表されます。
グラフの傾きは、所得が1単位増えたときに、消費がどれだけ増えるかを示しています。
計算式から読み取れる通り、所得が1単位増えると、消費は限界消費性向であるcの分だけ増加するので、グラフの傾きは限界消費性向を表していると言えるわけですね。
試験対策上、重要な観点ですので覚えておきましょう。
また、先ほどの計算通り、所得500万円のときの消費量は480万円でした。
このとき、平均消費額はいくらになるでしょうか?
計算式としては、480万円 ÷ 500万円 = 0.96万円となりますね。
つまり、所得1万円に対して、9,600円のペースで消費しているということになるわけですね。
消費関数の論点では、この平均消費額を、平均消費性向と言いますが、この平均消費性向は、消費関数と原点を結んだ直線の傾きとして表されます。

少し紛らわしいですが、消費関数のグラフの傾きが限界消費性向であるのに対して、原点からの直線の傾きが平均消費性向であるということを、覚えておきましょう。
この論点は、消費関数が表している計算式の意味と、このグラフの読み取りさえできれば十分です。
定額税の影響分析
次に、定額税が導入されたときのグラフへの影響を確認してみましょう。
税金がかかると、今期の消費の計算式は、以下の通りとなります。
今期の消費 = 限界消費性向 × (所得 – 税金) + 独立消費
例えば、皆さんの給料も源泉徴収という形で、税金が天引きされた後に手取りが決まり、その手取りの範囲で消費を決めているかと思います。
それと同じようなイメージで、まずは所得から税金を引いてから、限界消費性向を掛けていると覚えておきましょう。
こちらも、グラフで確認してみましょう。

定額税が導入されると、消費関数のグラフは、限界消費性向×税金の分だけ下方向にシフトします。
税金を払って手取りが減ったため、全体的に消費量が少なくなるわけですね。
これは、限界消費性向×税金分だけシフトする理由は、所得ゼロのときについて考えてみると分かりやすいです。
通常の消費関数の切片は独立消費 C0 でした。
これに対して、定額税がある場合の計算式に所得0を当てはめると、切片の値は C0 − 限界消費性向 × 税金 となります。
ですので、この差分である限界消費性向×税金の分だけ、消費関数のグラフは下方へシフトするというわけですね。
この税金の影響も、今後の応用論点を理解していく上で重要な考え方ですので、この機会にしっかりと覚えておきましょう。
過去問を解いてみよう (令和6年度 第5問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみたいと思います。
下図は、ケインズ型消費関数を直線ABによって描いている。この図に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 可処分所得が大きいほど限界消費性向が小さくなるので、
高所得者ほど所得に占める消費額の割合が小さくなる。b 可処分所得が増加するとき、限界消費性向は一定であるが、
平均消費性向は小さくなる。c この消費関数の傾きは、1 よりも大きい。
〔解答群〕
ア a:正 b:正 c:誤
イ a:正 b:誤 c:誤
ウ a:誤 b:正 c:正
エ a:誤 b:正 c:誤
オ a:誤 b:誤 c:正
消費関数についての正誤判定の問題ですね。
選択肢を一つ一つ見ていきましょう。
✅選択肢a
限界消費性向は直線ABの傾きとして表されました。
この傾きは常に一定ですので、限界消費性向は一定であると考えられます。
ですので、選択肢aは誤りであるといえますね。
✅選択肢b
「所得が増加するとき限界消費性向は一定である」とありますが、これは先ほど確認した通り正しいですね。
また、「平均消費性向は小さくなる」とありますが、平均消費性向は直線ABと原点を結ぶ直線の傾きとして表されるのでした。
この傾きは所得が大きくなればなるほど小さくなりますので、「所得が増加すれば平均消費性向は小さくなる」という記述は正しいですね。
✅選択肢
消費関数の傾きは限界消費性向はなのでしたね。
そして限界消費性向は0から1の間の値を取るので、1よりも大きいということはありません。
したがって、選択肢cは誤りとなります。
以上から、正解は選択肢エということになりますね。
消費関数のグラフの読み取りさえできれば解ける問題ですので、ぜひ正答しておきたい問題でした。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は消費関数について学習しました。
今期の消費は限界消費性向×所得+独立消費として表されるのでしたね。
限界消費性向は所得に対して消費に回す割合、それから独立消費は生活のために必要な最低限の消費を表しているのでした。
消費関数をグラフで表すと、以下のような形となるのでした。

グラフの切片は独立消費を表し、消費関数の傾きは限界消費性向を表します。
それから、原点から消費関数を結ぶ直線の傾きは平均消費性向として表されるのでしたね。
計算式の意味とグラフの読み取りさえできれば、この論点はバッチリかと思います。
はい、というわけで今回は消費関数をテーマに解説しました。
今後、マクロ経済における総需要と総供給の関係などを解説していきますので、今回の内容はその基礎の基礎となります。
しっかりと内容を押さえておきましょう。