はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。
今回は、損益分岐点と操業停止点をテーマに解説したいと思います。
この動画で解説した内容を全て理解できれば、ミクロ経済における費用関数の論点はマスターしたと言っていいと思います。
過去記事を見てなくても理解できるように解説していきたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
平均費用とは?
まずは前回までの復習です。
横軸に生産量、縦軸に費用を取ると、経済学では、次のような総費用曲線が描かれ、こちらをもとに平均費用を考えます。
例えば生産量が3個のとき、総費用は900円、生産量が10個のときは、総費用が1,000円、
12個のときはは、1,500円とグラフを読み取るのでしたね。
ここで問題です。
このとき、生産量3個のときの平均費用、つまり1個あたりの費用はいくらになるでしょうか?
3個で総額900円なので、1個あたりの費用は900円÷3個で、300円となりますね。
同じように、10個のときは100円、12個のときは125円と計算できます。
以下の吹き出しが平均費用というわけですね。
ちなみに、平均費用は原点から総費用曲線を結んだ直線の傾きで表されます。
傾きが費用や価格を表すのは直感的に理解しにくいところではありますが、ここは数学的にそういうものかと飲み込んでいただければと思います。
さて、ここで先ほど求めた平均費用をグラフで表してみましょう。
同じように横軸に生産量を取りますが、今度は縦軸に平均費用を取ります。
生産量3個のときの平均費用は300円、10個で100円、12個で125円なのでしたね。
これらの点を青線で結ぶと、このようなU字型の曲線を描けます。
これを平均費用曲線と呼ぶのでした。
グラフから、生産量10個の時が最も平均費用は小さくなることが読み取れますね。
ちなみに、平均費用から固定費分を除いた平均可変費用曲線は、上グラフのように緑色の曲線で描けます。
平均費用曲線もほぼ同じ形状となりますが、固定費を除いている分、平均可変費用曲線の方が下方向に位置するのがポイントなのでしたね。
限界費用とは?
ここからは限界費用について確認していきたいと思います。
限界費用とは、生産量が1つ増加したときに発生する追加費用のことを言います。
先ほどとと同じ総費用曲線を使いながら、内容を確認してみましょう。
生産量10個のとき、総費用は1,000円、11個のときは1,200円だったとしましょう。
このとき、生産量を1つ増やしたことによる追加費用は200円です。
ですので、限界費用は200円となるわけですね。
同じように、生産量を12個に増やすと、総費用は1,200円から1,500円に増えているので、限界費用は300円と計算できます。
そこまで難しい話ではないですね。
ここで、限界費用が傾きで表せる点について、説明したいと思います。
生産量10個のとき、生産量を1単位増やすと、費用は200円だけ増加しています。
このとき、この三角形の斜線の傾きが、限界費用と等しくなります。
そして、この限界費用の傾きは、総費用曲線の接線の傾きとも等しくなります。
ですので、生産量10個のときの限界費用は、この赤色の直線の傾きの大きさで表せるわけですね。
なぜ、接線の傾きが限界費用になるのかは、また難しい話になりますので、ここでは結論だけ押さえていただければと思います。
接線の傾きで限界費用の大きさを表すことがわかるようになると、各生産量の限界費用の大きさを比較できるようになります。
たとえば生産量1個の時の接線はこのように描け、生産量3個のときの接線の傾きは、さらに緩やかになります。
生産量10個にまで増えると、接線の傾きはまた大きくなってるので、限界費用は生産量3個と10個の間で最小になると言えそうです。
ここで押さえておいていただきたいのは、少なくとも限界費用が最小になる生産量は、平均費用が最小になる生産量より少ないということです。
先ほど生産量が10個のときに、平均費用が最小になることを確認しましたが、限界費用が最小になるのは、生産量が10個より少ないタイミングであるということですね。
このことを感覚的に理解するために、限界費用が接線の傾きで表されることを解説しました。
本試験でも使えるテクニックとなりますので、ぜひこの機会に覚えておいてください。
限界費用と平均費用の関係
それでは限界費用と平均費用の関係を確認したいと思います。
先ほど、平均費用と平均可変費用は以下のような曲線で描けることを確認しました。
ここに限界費用曲線を描くと、限界費用曲線は平均費用曲線と平均可変費用曲線の最小点を通る曲線として描けます。
これは先ほど説明した通り、限界費用は総費用曲線との接線の傾きであり、平均費用や平均可変費用の最小値も、それぞれ生産量9個・10個における総費用曲線との接線の傾きで一致するためですね。
ここもなぜそうなるのかというより、結論として、このグラフのイメージを絵として覚えてしまった方が楽かと思います。
ご自身で何回かグラフを手書きすると、自然と覚えられるかと思いますので、実践してみてください。
価格と限界費用の関係
本題の損益分岐点の話に入る前に、価格と限界費用の関係も確認したいと思います。
結論、競争企業は、価格と限界費用が等しくなるように生産量を決定します。
この理由を説明するために、価格が100円で、生産量ごとに限界費用が変わるケースで、限界利益を計算した表を作成してみました。
右側のグラフは、限界利益 (価格ー限界費用) を表しています。
限界利益は生産量2個でピークを迎え、その後は下がり続けます。
生産量が6個になる頃には、マイナスの値になっています。
つまり、生産量を5個から増やせば増やすほど、利益は減っていってしまうわけですね。
逆に言えば、生産量5個までは、生産量を増やすほど利益が増えることになりますので、価格が100円のときの最適生産量は5個ということになります。
これはちょうど価格と限界費用が一致するときの生産量となるわけですね。
理由は以上の通りですので、ここでは「価格と限界費用が一致するように生産量が決まる」という結論を覚えていただければと思います。
損益分岐点とは?
ここまでの内容が理解できれば、損益分岐点もわかるようになります。
損益分岐点とは、利益がゼロとなるような価格と生産量のことを言います。
先ほどまで利用していたグラフで、損益分岐点を確認してみましょう。
例えば今、価格が150円に設定されたとします。
先ほど説明した通り、価格と限界費用が一致するように生産量が決まるので、生産量は限界費用曲線によって12個になるわけですね。
また、生産量が12個のときの平均費用は、平均費用曲線から120円となります。
さて、ここで一度、総収入と総費用を確認してみましょう。
総収入は価格150円×12個で求められます。
一方で総費用は、平均費用120円×12で求められますので、この青色で表した面積になりますね。
ですので、価格150円のときの利益は、黄色から青色を差し引いた面積となるわけです。
損益分岐点は利益がゼロとなる価格と生産量ですので、この黄色で表した利益が無くなる箇所を探すとよいということになりますね。
結論を言うと、損益分岐点は限界費用曲線と平均費用曲線の交点になります。
価格は限界費用曲線から100円、平均費用も平均費用曲線から100円で一致していることが読み取れますね。
この時の総収入は、価格100円×生産量10個で、総費用も平均費用100円×生産量10個で、ちょうど面積が一致します。
利益はゼロとなりますので、やはり限界費用曲線と平均費用曲線の交点が、損益分岐点となるわけですね。
損益分岐点より価格・生産量を増えると企業の利益はプラスとなり、逆に減らすと赤字になります。
総収入・総費用を読み取り方も重要ですので、改めて確認しておいてください。
操業停止点とは?
続いて、操業停止点です。
操業停止点は、生産自体をやめてしまう価格と生産量のことです。
今度は平均可変費用曲線も加えて、確認してみましょう。
今、価格が90円だったとすると、生産量は限界費用曲線との交点で9個と決まります。
ですので、生産量が9個の時の平均費用は95円、平均可変費用は80円となりますね。
ここで、このときの固定費を確認してみたいと思います。
固定費は総費用から総可変費用の差分で求められるのでした。
総費用は平均費用95円×生産量9個で、以下の青色の面積、総可変費用は平均可変費用80円×生産量9個で、緑色の面積となりますので、この差分が固定費ということになりますね。
一方、この時の総収入は、価格90円×生産量9個で、以下の黄色の面積となります。
総費用より総収入の方が少ないので、このとき、この企業は赤字となりますが、ここで着目してほしいのが、収入で赤で囲った部分の固定費を回収できている点です。
確かに赤字ではありますが、全く生産をしなければ、固定費分が丸々赤字になるところ、9個生産することで、赤字幅を削減していると読み取ることができます。
別の見方をすると、生産していても固定費の一部ですら回収できないのであれば、工場の操業を止めてしまった方がよいということになりますね。
結論を言うと、操業停止点は、平均可変費用と限界費用曲線の交点となります。
これまでと同じ手順で、固定費と収入を確認すると、まず総費用は以下の青色の面積、総可変費用は緑色の面積となります。
この差分が固定費となるのでしたね。
一方、総収入は、総可変費用と全く同じ黄色の面積で表されます。
収入によって、可変費用は賄われますが、固定費は全く回収できていません。
これ以上、価格・生産量が減ると、可変費用すら回収できなくなりますので、企業は工場を止めて、赤字幅を固定費分に限定した方がよいということになりますね。
以上が、損益分岐点と操業停止点の考え方です。
ぜひ、グラフの意味を理解しながら、内容を覚えていただければと思います。
過去問を解いてみよう(令和元年度 第16問)
それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみたいと思います。
短期の完全競争市場における、価格と最適生産の関係を考える。下図には、限界費用曲線MC、平均費用曲線AC、平均可変費用曲線AVC が描かれている。この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
ア 価格がP1とP2の間に与えられると、固定費用はすべて損失になる。
イ 価格がP1より低い場合、操業を停止することで損失を固定費用のみに抑えることができる。
ウ 価格がP2より高い場合、総費用が総収入を上回る。
エ 平均固定費用は、生産量の増加に応じて上昇する。
平均費用曲線のグラフを読み取る問題ですね。
✅選択肢ア
価格がP1とP2の間に与えられると、固定費は全て損失になる、とありますが、
平均可変費用曲線の最小値であるP1より高い価格である限り、固定費は一部回収できるので、誤りです。
✅選択肢イ
これはその通りでしたね。
P1より価格が低くなると、可変費用すら回収できなくなるのでした。
✅選択肢ウ
価格がP2より高い場合、総費用が総収入を上回る、とありますが、総収入が総費用を上回るの間違いですね。
E2が損益分岐点で、これより価格が高くなると、企業は利益を生み出せるのでした。
✅選択肢エ
ややトリッキーな選択肢ですが、固定費はどんなときでも一定ですので、誤りとなりますね。
選択肢イがこの問題の正解となります。
今回の内容が理解できれば、全く難しくない問題だと分かるかと思います。
この程度のレベルの問題は、確実に正解を選べるようにしたいですね。
まとめ
それでは最後にまとめです。
今回は、平均費用曲線と限界費用曲線の関係を確認した後で、限界費用曲線と平均費用曲線の交点が損益分岐点、限界費用曲線と平均可変費用曲線の交点が操業停止点であることを解説しました。
これらに加えて、試験対策上は、図から総費用・総収入・固定費を読み取れるようになることも重要です。
改めて、ご自身でグラフを描きながら、内容を理解するようにしてください。
というわけで、今回は損益分岐点と操業停止点をテーマに解説してみました。
費用関数の論点は、例年そこまで難しい内容を問われることもないので、出題されたらほぼ確実に得点に繋げたい論点です。
この機会によく復習して、ぜひ得意論点にしてくださいね。