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AS曲線(総供給曲線)を図解で徹底解説!古典派・ケインズ派の違いまで丸わかり/経済学・経済政策/中小企業診断士試験対策

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はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回はAS曲線、総供給曲線をテーマに解説していきたいと思います。

この記事でわかること

✓ AS曲線(総供給曲線)の定義と2つの形状
✓ 労働需要曲線・供給曲線と非自発的失業の考え方
✓ 古典派・ケインズ派それぞれのAS曲線導出プロセス
✓ 平成30年度第8問改題の解き方

▶ 動画でサクッと理解する(約15分)

以前、AD曲線について解説しましたが、AS曲線はそのAD曲線と対になる考え方です。AD曲線と並んで、苦手としている方が多い論点ですね。

この記事では、AS曲線の導出プロセスやシフト要因を図解しながら丁寧に解説します。労働市場の基本的な考え方さえ押さえていただければ、そこまで難しいものでもありませんので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

AS曲線とは?

まずAS曲線とは何かを確認しましょう。AS曲線とは、各物価水準において、経済全体でどれだけの財やサービスが供給されるかを示した曲線のことです。

AS曲線は、2つの形状があります。
縦軸に物価、横軸に国民所得をとると、AS曲線は垂直な直線で描けます。これが古典派と呼ばれる考え方に基づくAS曲線ですね。

一方、AS曲線は最初は右肩上がり、その後垂直になる形状もあります。これがケインズ派の考え方ですね。

なぜ形が違うのか、これが今回のメインテーマです。そのカギを握るのが労働市場の考え方ですので、次のセクションで確認していきましょう。

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労働市場:労働需要曲線

AS曲線を理解するには、労働市場の基礎を押さえる必要があります。まずは労働需要曲線から確認していきましょう。

労働需要の観点では、実質賃金率が低いほど、企業はより多くの労働者を雇おうとします

ここで覚えていただきたいのが「実質賃金率」という考え方ですね。実質賃金率とは、名目賃金率を物価水準で割ったものです。

たとえば物価が2倍になれば、名目賃金が変わらなくても、企業からすると実質的には半分のコストで雇えることになる、ということですね。

この物価が上がれば実質賃金は下がる、物価が下がれば実質賃金が上がるという考え方は、この後も重要になってくるので、よく覚えておいてください。

ここで横軸に労働需要量、縦軸に実質賃金率を取ると、労働需要曲線は右下がりの形状になります。実質的な賃金が低いほど、企業はより多くの人を雇おうとするというわけです。

グラフにすると難しく感じられるかもしれませんが、「安く雇えるから、たくさん雇う」という当たり前な話をしているだけです。

労働市場:労働供給曲線

次に労働の供給側を見ていきましょう。供給の観点では、実質賃金が高いほど、働きたい人が増えます

横軸に労働供給量、縦軸に実質賃金率を取ると、労働供給曲線は右上がりの形状になります。実質賃金率が高いほど、働きたいと思う人が増えるという、こちらも当たり前の話をしています。

ここで先ほど説明した労働需要曲線も合わせて表示してみましょう。

二つのグラフが交わっていることが分かりますね。この2つのグラフが交わった労働量を完全雇用量、その時の賃金を均衡実質賃金と呼びます。

ここで2種類の失業がポイントになるので、確認しておきましょう。
まずは自発的失業です。自発的失業とは、現行の賃金では働かないことを自分で選んでいる失業のことです。

もう一方が、非自発的失業ですね。これは現行の賃金で働きたいのに職にありつけない失業のことで、こちらがAS曲線を学習することで重要な考え方となります。

例えば先ほどのグラフで、実質賃金が800万円だったとしましょう。そうすると、需要曲線側の雇用量は300人ですが、供給側は500人が働きたいと考えています。この差の200人分が、働きたくても働けない、いわゆる非自発的失業ということになりますね。

この後学習するケインズ派では非自発的失業が発生すると考え、古典派では発生しないと考えます。これがAS曲線の形状に影響しますので、よく確認しておきましょう。

AS曲線の導出:古典派

それでは、本題のAS曲線について、まず古典派の考え方を確認しましょう。古典派では、物価変動に対して名目賃金は柔軟に変わるため、総供給曲線は垂直になると考えます。

まずは先ほどの労働需要曲線・供給曲線を描き、右側には横軸を国民所得、縦軸を物価としたグラフを描いてみます。そして今、物価が100円で、国民所得が5兆円、均衡実質賃金が500万円で、雇用量が400人だったとします。

まず、物価が100円から80円に下落した場合、国民所得はどのように変化するか確認してみましょう。

ここで復習ですが、実質賃金率は名目賃金÷物価で計算するのでしたね。ですので、物価が下がると、分母側が小さくなるため、実質賃金は上昇します。実質賃金は625万円で、労働需要は300人、労働供給量は500人となりました。先ほど学習した通り、このままでは非自発的失業が発生してしまいます。

古典派では、この非自発的失業の発生は一瞬の出来事であると考えます。
企業側は実質賃金が上がっているので、給料を下げて費用を削減したいという力が働き、労働者側も、物価が下がっているから給料が下がっても問題なく、企業側の減給を受け入れようとする力が働きます。

その結果、実質賃金は元の水準にまで戻り、雇用量も400人で変わりません。労働量が変わらないため、生産量も変わらず、供給面からみる国民所得も変わらないということになります。

つまり、物価が下がっても国民所得は5兆円から変わらないということになりますね。

物価が120円に上昇した場合も同様です。

今度は分母側が大きくなるので、実質賃金は410万円まで下がり、労働供給量は300人、需要量は500人と、超過需要が発生しています。

ここで労働者側は、「給料が上がらないと働きたくない」と考え、企業側も「給料を上げてでも人を雇いたい」と積極的になります。ここでも結果として、実質賃金・雇用量ともに元の水準に戻る力が働くわけですね。

ですので、物価が上がった場合も労働量は変わらず、供給面からみる国民所得は変わらないということになります。

以上から、総供給曲線・AS曲線は、物価によらず国民所得は一定であるということで、垂直な直線として表されるわけですね。古典派では、物価がどのように変わっても、名目賃金側がそれに連動して変化することで、常に完全雇用が実現し、国民所得は一定になると考えています。

AS曲線の導出:ケインズ派

続いてケインズ派の考え方です。物価下落局面では名目賃金は下げられず、総供給曲線は完全雇用まで右肩上がりになると考えます。

先ほどと同じグラフを用いて確認してみましょう。こちらも同様に、物価が80円に下がったケースから見てみます。そうすると、実質賃金が625万円にまで引き上がり、非自発的失業が発生します。

古典派の考えでは、即座に名目賃金が引き下げられることで、均衡点にまで調整されましたが、ケインズ派では、労働者が賃金の引き下げに強く抵抗すると考えます。

多くの労働者は物価水準を意識して生活していないので、額面上の給料を下げるといきなり言われたら、「去年と同じ賃金をもらわないと働きたくない」という心理が働くわけですね。

結果的に実質賃金は625万円のまま据え置かれますので、企業側は300人までしか雇うことができません。完全雇用状態の400人から減少していますので、その分、生産量が減少してしまいます。供給面から見た国民所得も、5兆円から4兆円に減少するということになります。

一方で物価が100円から120円に上昇した場合はどうでしょうか。

この時は古典派と同じように、もとの実質賃金に戻る力が働きます。労働者側にとっては、額面上の給料である名目賃金が上昇する方向になりますからね。ですので、物価が上がった場合は、雇用量はかわらず、供給面からみた国民所得は5兆円のままになるということになります。

以上から、ケインズ派のAS曲線は、物価が下がる局面では右上がりになり、完全雇用水準に達すると、それ以上は雇用が増えないので、AS曲線はその点から垂直になる、ということになります。

ケインズ派の方が労働者の感情面まで考慮しており、よりリアリティを感じたのではないでしょうか。経済学はなんだか無機質なイメージがありますが、人間の感情を要素として取り入れていて面白いですよね。

AS曲線のシフト要因

それでは最後に、AS曲線のシフト要因を確認しましょう。AS曲線は物価が変わらなくても、コスト低下・生産性向上・人口増加でAS曲線は右シフトします

先ほどと同じような労働需要・供給曲線とAS曲線を描いてみましょう。今、物価が変わらない状態で、コスト削減が実現できたとしましょう。

そうすると企業側には、費用面でゆとりが生まれますので、同じ実質賃金500万円でも、500人まで雇う余裕が生まれます。ですので、労働需要曲線が右方向にシフトします。

同じ実質賃金でも雇用量が増えましたので、たとえ物価が同じでも、供給面からみた国民所得も6兆円にまで増えました。ですので、AS曲線も全体的に右方向にシフトすることになります。

これは生産性が向上した時も同様です。労働人口が増えた際は労働供給曲線が右方向にシフトしますが、結果的にAS曲線が右方向にシフトするのは同じですね。

この辺りは、どうして右方向にシフトするのか、メカニズムまで合わせて理解することで忘れにくいかと思います。

過去問を解いてみよう(平成30年度 第8問 改題)

それではここまでの内容を、過去問を解いて復習してみましょう。

総供給曲線(AS)の傾きに関する記述として、最も適切なものはどれか。

総供給曲線の傾きに関する記述として、最も適切なものを選ぶ問題ですね。

まずは選択肢cです。「物価の上昇に伴う実質賃金率の低下は、労働需要の増加による生産量の増加を通じて総供給を拡大させる。ここから、ASは右上がりになる」とあります。

今回の解説を振り返りましょう。物価が上昇すると実質賃金は低下するのでした。そして、実質賃金が低下すると、企業の雇用コストが下がるため労働需要が増加します。雇用が増えれば生産量が増え、総供給が拡大しますね。ただし、物価が増えた場合は、完全雇用にまで調整する力が働き、AS曲線は垂直になるのでした。
したがってAS曲線は右上がりになるという記述は保留にしたいところです。

続いて、選択肢dです。「物価の上昇に伴う実質賃金率の上昇は、労働需要の縮小による生産量の増加を通じて総供給を拡大させる。ここから、ASは右上がりになる」とあります。

こちらは2つの点で誤りがあります。まず物価が上昇したとき、実質賃金は「上昇」ではなく「低下」します。そしてもし仮に実質賃金が上昇したのであれば、雇用コストが高まって労働需要は縮小し、総供給が「縮小」することになります。
したがって、選択肢dは誤りということになります。

というわけで、選択肢dが明らかに誤りなので、今回の正解は選択肢cということになりますね。

ケインズ派の完全雇用への調整については、タイムラグが発生するため、確かに雇用量が調整されるまでは労働需要が増え、生産量が上がるため、AS曲線が右上がりになります。ちょっとした応用問題ではありましたが、選択肢dが明らかに誤りだということに気づき、消去法的に正解を選びたい問題でした。

まとめ

それでは最後にまとめです。今回はAS曲線について学習しました。

AS曲線は各物価水準での総供給を示す曲線で、古典派では垂直、ケインズ派では完全雇用まで右上がりになるのでした。

形状の違いのカギは、名目賃金の動き方の違いでしたね。
古典派では名目賃金が物価に合わせて上下両方向に即座に動きます。結果的に、AS曲線は垂直になるのでした。

一方ケインズ派では、名目賃金に下方硬直性があり、物価が下がっても賃金はなかなか下がらない、という前提の違いがあるわけです。この違いから、非自発的失業が発生し、ケインズ派のAS曲線が右上がりになります。

今回の内容は丸暗記するのではなく、物価が変わったときに実質賃金と雇用がどう変わり、その結果として総供給がどう変わるか、その流れを自分の言葉で説明できるようになることが大切です。ぜひ図を描きながら何度も確認してみてください。

グラフの導出プロセスをしっかり押さえていただければ、応用問題にも対応できるようになりますので、ぜひ今回の内容を定着させておきましょう。

それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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たかぴー
自己紹介:中小企業診断士。 一次試験は全科目60点超の合計512点という高得点で突破、二次試験は2回連続で合計で240点以上を達成して合格。 合格後は、本業のデータ分析スキルを生かした過去問研究、法人営業経験を生かしたわかりやすい解説で受験者支援を実施中。 チャンネル登録者1.5万人超の「たかぴーの中小企業診断士試験 攻略チャンネル」では、二次試験と中小企業経営・政策も解説。 趣味:ジム・筋トレ、旅行、YouTube、ブログ 連絡先:takapi.channel@gmail.com