はいどうも、中小企業診断士のたかぴーです。今回は「AD曲線(総需要曲線)」をテーマに解説していきたいと思います。
AD曲線は、IS-LM分析の次のステップにあたる論点です。IS-LM分析では利子率と国民所得の関係を分析していましたが、今回のAD曲線では、そこに物価という新しい変数が加わります。
「物価が変わると何が起きるのか」というテーマですが、IS-LM分析さえしっかり理解できていれば、そこまで難しいものではありませんので、今回もグラフを用いながら丁寧に解説したいと思います。ぜひこの記事を最後まで読んでいただければと思います。
✓ AD曲線の定義と特徴
✓ なぜAD曲線は右肩下がりなのか
✓ 政府支出とAD曲線の関係
✓ 過去問の解き方
AD曲線とは
今回解説するAD曲線とは、国民所得と物価の関係を表す曲線です。横軸に国民所得を、縦軸に物価を取ると、曲線は右肩下がりの形で描くことができます。

物価が下がれば下がるほど、国民所得は上がっていくという関係です。今回は、なぜこのような右肩下がりの曲線として描くことができるのか、その考え方を解説していきたいと思います。
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なぜAD曲線は右肩下がりなのか?
AD曲線を理解するためには、前回までに学習したIS-LM曲線の内容が理解できている必要があります。簡単に内容を確認してみましょう。
横軸に貨幣需要と貨幣供給を、縦軸に利子率を取ると、貨幣需要曲線は右肩下がりの直線として描くことができ、貨幣供給曲線は垂直な直線で描くことができるのでしたね。

一方で、横軸に国民所得を、縦軸に利子率を取ると、LM曲線は右肩上がりの直線として、IS曲線は右肩下がりの直線として描くことができるのでした。ここで、貨幣供給と貨幣需要の均衡点が2兆円だったとします。
貨幣供給と貨幣需要の均衡点の利子率とIS-LM曲線の均衡点の利子率は等しくなるので、どちらも利子率は4%だったとしましょう。そして、その時の国民所得は10兆円だったとします。
ここで、AD曲線は横軸が国民所得、縦軸が物価で考えるのでした。IS-LM曲線は国民所得10兆円で均衡しているので、今の物価が1,000円だとすると、物価と国民所得はこの点で表すことができるわけですね。

ここまで見てきたように、物価・利子率・国民所得がそれぞれ均衡していることが分かるかと思います。
さて、ここで、実質貨幣供給量が4兆円に増加したことを考えてみましょう。貨幣供給量は名目貨幣供給量を物価で割ったもので表しているのでした。実質貨幣供給量が増えたということは、分母側のP、つまり物価が下落したことを意味しています。
実質貨幣供給量 = 名目貨幣供給量(M) ÷ 物価(P)
→ 物価Pが下落すると、実質貨幣供給量は増加する
前回までの復習となりますが、貨幣供給量が増えると、LM曲線が右方向にシフトするのでしたね。そうすると利子率が3%にまで下がり、国民所得が15兆円まで増えていることが読み取れます。
この時、物価は1,000円から500円に下落しているとしましょう。そうすると物価と国民所得の関係で言うと、物価が500円で国民所得が15兆円なので、この点の位置となるわけですね。
この2つの点を結ぶと右肩下がりのAD曲線として描くことができました。

以上見てきた通り、物価が下がると実質貨幣供給量が増えます。実質貨幣供給量が増えると国民所得が増えるわけですね。したがって、物価が下がると国民所得が増えるので、AD曲線は右肩下がりとして描くことができるということになるわけですね。

過去問データブックで1次試験は何点取れる?
令和7年の本試験で実際に検証してみました
検証結果を読む →政府支出とAD曲線の関係
AD曲線が右肩下がりになる理由がわかったところで、政府支出とAD曲線の関係を見ていきましょう。今IS-LM曲線が以下のような形で描けたとします。そして国民所得が10兆円で物価が1,000円だったとします。そうするとAD曲線は、以下のような曲線で描けますね。

ここで、政府支出が増加したことを考えてみます。政府支出が増加すると、IS曲線が右方向にシフトするのでしたね。IS曲線が右方向にシフトすると、LM曲線との交点も変わるので、国民所得が15兆円まで増えました。
この時、物価は1,000円のまま変わらないので、AD曲線がそのまま右方向にシフトすることになります。

以上の通り、政府支出が増えると国民所得が増えます。物価は変わらないので、AD曲線は右方向にシフトすることになります。
ポイントは、政府支出が増えると、IS曲線が右方向にシフトして国民所得は増えるということ、そのとき、物価は変わらないということですね。IS-LM曲線がきちんと理解できている方にとってはそう難しい内容ではないことが分かるかと思います。
過去問を解いてみよう
それではここまでの内容を過去問を解いて復習してみましょう。
平成30年度 第8問(改題)
下図は、総需要曲線(AD)を描いている。この図に基づいて、総需要曲線(AD)の傾きに関する記述として、最も適切なものを選べ。
a 物価の上昇に伴う実質貨幣供給の減少は、実質利子率の上昇による実質投資支出の減少を通じて総需要を縮小させる。ここから、ADは右下がりになる。
b 物価の上昇に伴う実質貨幣供給の増加は、実質利子率の低下による実質投資支出の減少を通じて総需要を縮小させる。ここから、ADは右下がりになる。
AD曲線の傾きに関して正しいものを選ぶ問題ですね。選択肢を見てみると、物価の上昇に伴って、実質貨幣供給量がどのように変化するか、そして利子率・総需要がどのように変化するかについて問われています。
改めて、先ほどのグラフで確認をしてみましょう。今回の問題は、実質貨幣供給量が物価の上昇に対して、どのような影響を受けるかということを考えているので、先ほどと逆のことを考えればいいわけですね。
今、実質貨幣供給量が4兆円、利子率が3%、物価が500円だったとします。ここで実質貨幣供給量が2兆円になったとしましょう。実質貨幣供給量はMをPで割ったもので表されるので、物価が上がったということになるわけですね。
そうするとLM曲線が左方向にシフトすることになります。
この時、利子率は4%にまで上昇していることがわかりますね。物価は500円から1,000円に上昇しましたので、物価と国民所得の関係はこの位置となります。これを線で結ぶとAD曲線は右肩下がりになりますね。
以上見てきた通り、物価が上がると実質貨幣供給量は減ります。実質貨幣供給量が減ると利子率が上がって、国民所得は減ることになります。ですので、物価が上がると国民所得は減るという関係となり、AD曲線は右肩下がりになるわけですね。
先ほどの内容を踏まえて改めて選択肢を見てみると、選択肢aが正解となりますね。物価が上昇すると実質利子率が上昇して投資支出を減少させます。これが結果として総需要を減少させて国民所得を減らすことになりますので、AD曲線は右肩下がりになるわけですね。
AD曲線の導出過程をしっかりと理解していないと、正解を選ぶのが難しい問題であることがわかるかと思います。AD曲線は右肩下がり、という結論だけではなく、導出過程もよく復習していただければと思います。
まとめ
今回はAD曲線について解説をしました。

AD曲線は国民所得と物価の関係を表す曲線なのでしたね。横軸に国民所得、縦軸に物価を取ると、AD曲線は右肩下がりの直線として描けるのでした。この導出過程についてはしっかりと復習しておいていただければと思います。
そして、AD曲線は政府支出が増加すると右方向にシフトするのでしたね。シフト条件についてはまずここだけ押さえていただければと思います。ただし、導出過程についてもしっかりと理解しておくようにしましょう。
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