業界分析に使えるファイブフォース分析でチェックすべき35項目
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業界分析に使えるファイブフォース分析でチェックすべき35項目

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企業の利益は企業戦略やビジネスモデルによって決まる一方で、業界全体の構造によっても影響を受けます。

そういった意味で、業界全体を見通し、問題点や競争優位性を見つける作業は、企業分析を行う上で欠かせません。

このような業界分析でよく用いられるのがファイブフォース分析というフレームワークです。
ファイブフォース分析の有用なのは、業界の競争関係を、単純に競合他社の分析だけにとどめていない点です。
代替品や売り手・買い手、新規参入者という要因を含めて、業界分析ができるという意味では、より業界を広く捉えることができ、総合的な分析を行なうことができるでしょう。

しかし、理論的にはわかっていても、実際に分析を行なうと、中身のない分析結果になりやすいというのが、このフレームワークを利用するときの難しさです。
その大きな原因は、ファイブフォース分析で行うべきチェック項目が少なすぎるという点に尽きます。
ファイブフォース分析では5つの競争要因を考えるのですが、5つの競争要因の下にも多くのチェック項目があるのです。

今回はそんなファイブフォース分析でチェックすべき項目を35個にまとめました。
業界分析を行なう際、今回紹介するひとつひとつの項目を漏れなくチェックすることで、よりよい分析結果が得られることでしょう。

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目次

1.ファイブフォース分析とは

ファイブフォース分析はマイケル・ポーターが編み出した分析手法です。

経済学では最適な資源配分を実現するために、完全競争状態を目指します。

 

完全競争状態
ある製品を供給する企業が無数にある状態のこと。
この状態では製品をつくるのに必要な最低限の費用まで、製品の価格が下がるとされています。
つまり、完全競争状態では企業に利益はありません。

 

企業は完全競争状態を望みません。企業の目的は利潤の追求にあるためです。
そこでポーターは、業界の収益に影響を与える要因を5つにまとめあげました。

業界の5つの競争要因

  • 既存企業間の対抗度
  • 新規参入の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力
  • 代替品の脅威

以上の5つが業界の収益に影響の与える要因と考えられています。

ファイブフォース分析では、同業他社だけでなく、部品や原材料の供給業、最終ユーザーや卸売・小売業者などの買い手も、収益をめぐってライバル関係にあると指摘しているのです。

さて、ここまではファイブフォース分析の概要説明です。
普通のフレームワーク解説書などでは、ここまでしか解説されていません。
そのような状態で

たかぴー
あなたの業界を5つの要因で分析してみましょう!

なんて言われても、なにをどうすればよいのか手をこまねいてしまうでしょう。

ファイブフォース分析は、5つの要因を分析するためにチェックすべき項目を掘り下げる必要があるのです。

今回は、そのチェック項目を35項目にわけました。

1-1.ファイブフォース分析でチェックするべき35項目はこれだ!

チェックリスト
まずは一覧でチャック項目をみてみよう。
ファイブフォース分析の5つの競争要因ごとにわけると、次のようになります。

既存企業間の対抗度
  • 競争業者の数
  • 産業の成長率
  • 固定費の額
  • 製品が差別化されているか、またはスイッチングコストがかかるか
  • 生産能力の拡大が小刻みにできるか
  • 多様なバックグラウンドを持つ競争相手がいないか
  • 戦略的な価値の低い業界か
  • 退出障壁が低いか
新規参入の脅威
  • 規模の経済・範囲の経済・経験効果が大きく作用するか
  • 多額の運転資金が必要か
  • 流通チャネルへのアクセスが困難か
  • 製品は高度に差別化されているか
  • 政府の政策に保護・規制されているか
  • 既存企業の経営資源が豊富であるか
  • 産業の成長率
買い手の交渉力
  • 買い手グループの数
  • 自社の製品が標準化されているか
  • 買い手にとってスイッチングコストがかかるか
  • 買い手が後方統合できているか
  • 買い手である卸売業者や小売業者は最終ユーザーの意思決定を左右できるか
  • 売り手の製品の価格が買い手の製品のコストに占める割合
  • 買い手の利益水準
  • 売り手が供給する製品が買い手の製品の品質への影響度
売り手の交渉力
  • 売り手グループの数
  • 売り手の製品が標準化されているか
  • 買い手にとってスイッチングコストがかかるか
  • 売り手が前方統合できているか
  • 買い手が、最終ユーザーの意思決定を左右できるか
  • 売り手にとって、自社が重要な買い手であるか
  • 売り手製品が代替品と競合しているか
  • 売り手製品が買い手製品の品質に大きな差をもたらさないか
代替品の脅威
  • 代替品と考えられるものが少ない
  • 代替品のコストパフォーマンスは急速に向上しない
  • 代替品の業界は高い利益率をあげていない
  • 代替品業界の成長率

 

35項目ともなると、かなりのボリュームですね。
さて、これから基本的にひとつひとつの項目について詳しく解説していきますが、リストを一読して内容が理解できる項目は読み飛ばしてもらっても構いません。

チェック項目の詳しい中身を見ていく前に、このチェックリストの使い方について触れておきます。

1-2.チェックリストの使い方

ファイブフォース分析を行なう際、上にあげたチェック項目に該当する業界かどうかをみていきます。
分析業界に対して悪影響を与えれば+1点づつ加点してきましょう。
点数の合計が高ければ高いほど、その業界では利益が出しにくいといえます。

チェック項目は、5つの競争要因ごとの最高点は次の通りです。

  • 既存企業間の対抗度⇒8点
  • 新規参入の脅威⇒7点
  • 買い手の交渉力⇒8点
  • 売り手の交渉力⇒8点
  • 代替品の脅威⇒4点

合計点数は35点となります。平均の17点を越える業界は利益の上げにくい業界といえそうですね。
また、5つの競争要因の中で極端に点数の低い要因があれば、その業界の強みといえそうです。

このように、チェック項目を利用して5つの競争要因ごとに採点を行い、数値で評価するのが最も望ましいと思います。

それでは、次にチェック項目を詳しく解説していきます。

2.既存企業間の対抗度のチェック項目

既存企業との対抗度とは、業界内の各企業同士の競争の激しさです。
競争が激しくなるほど、企業は値引きを行うことで、顧客を集めようとする傾向にあります。
結果として、企業に利益は残らなくなってしまうのです。

次にあげるチェック項目は、業界の競争の激しさをはかるための質問です。
競争の激しい業界はそれほど魅力的ではありませんね。

2-1.競争企業の数

競争企業の数が多いほど、業界の競争は激しく、利益がでにくいといえます。

経済学において、完全競争状態では売り手企業は無数に存在し、規模や販売量にほとんど差がなく、市場での価格に影響力をおよぼすことはないとされています。競合企業が多数存在し、しかもその市場シェアに差がない場合には、企業間のシェア争いは激しいものになりやすく、結果的に業界全体としての収益性は低くなると予測されるのです。

2-2.市場成長率

市場成長率が低いほど、その業界では利益が出にくいといえます。

成長率の低い市場では、自社の売り上げや利益を伸ばすためにライバル企業の顧客を奪う必要が出てきます。逆に伸び盛りの市場では、ライバル企業間でのシェア争いはそれほど激しくありません。市場成長率の高い業界では、各社とも製品ラインナップの拡充や生産・販売体制の整備に忙しく、競合企業との直接的な競合はあまりないため、業界全体の収益性は高くなると予想できます。

市場の成長期、成熟期にかんする特徴は、製品ライフサイクルの成長期、成熟期の記事にまとめられています。
気になる方はチェックしてみてください。

関連記事⇒成長期の販売戦略成熟期の販売戦略

2-3.固定費の額

固定費が多額な業界は、利益がでにくい傾向にあります。

固定費は万が一、工場などの操業を停止しても発生します。固定費が大きい業界では、たとえ赤字だっても過去の投資を少しでもキャッシュとして回収しようとするため企業が存在します。その企業が一度価格を下げられてしまうと、他の企業も価格を下げざるをえません。なぜなら、競合他社も高い固定費を支払わなければならず、少しでもキャッシュが欲しいからです。
結果的に、価格はどんどん下がっていき、業界の利益は出にくいものとなってしまうのです。

2-4.製品が差別化されているか、またはスイッチングコストがかかるか

差別化がされておらず、また、スイッチングコストもかからない業界は利益がでません。

差別化された製品を購入している顧客は、たとえライバル企業が提供している製品の価格が低下したとしても、乗り換えることを考えません。なぜならその顧客は、価格以外の基準で製品の購入を決定しているからです。
同様に、ある企業の製品からライバル企業へと乗り換える際に、顧客側に何らかの費用が発生する場合には、他社の顧客を引きつけることが難しくなり、激しい競争状態にはなりにくいのです。

スイッチングコストの詳しい説明は、次の記事がわかりやすくまとめられています。

関連記事⇒3種類のスイッチングコストをまとめて解説

2-5.生産の拡大が小刻みにできるか

生産の拡大を柔軟にできない業界は、利益がでにくいです。

もし市場全体の需要が変化した場合に、生産量を柔軟に対応できなければ、価格で需要を調整するしかありません。もし需要が少なくなれば値上げを行い、需要が大きくなれば値上げで対応することとなります。
理論的には、このような対応が望ましいのですが、現実にそうはいきません。激しい価格変動は消費者の不信感を招き、ブランド力を引き下げてしまいます。結果的に需要が変化しても企業は値段を据え置きするしかありません。
つまり、需要が減少すれば生産過剰となり、需要が増加すれば機会ロスが生じるのです。
このように、生産量を小刻みに調整できない業界は、利益を出しにくいのです。

2-6.多様なバックグラウンドを持つ競争相手がいるか

多様なバックグランドを持つ競争相手がいる場合は、利益がでにくくなる傾向にあります。

多様なバックグラウンドの競争相手が存在すると、異なるビジネス慣行を他業界から持ち込んで、異質な競争行動をとる場合があります。プレーヤーの中には、業界が提供する製品を低価格で販売しようとする場合があるのです。

2-7.戦略的な価値の低い業界か

戦略的な価値の高い業界では、利益がでにくいです。

戦略的な価値とは、自社の経営ビジョンに沿った事業や、将来的に自社のビジネスの核となる技術を磨くことができる事業だった場合に、戦略的な価値が高いと判断します。

業界の事業が企業にとって戦略上の価値が低い事業である場合、収益低下時には撤退の決断を下しやすいです。逆に、戦略上の価値が高い事業であれば、収益を犠牲にしてでも事業の継続・シェアの拡大などを目指す企業が存在するため、競争が激しくなるのです。
特にどの企業にとっても戦略的な価値が高い事業であれば、業界の収益は低くなるのです。

2-8.退出障壁が低いか

業界から撤退する際の障壁が大きければ、業界の収益は低くなります。

すでに当該業界に参入している企業が業界から撤退するのに、様々な障壁を乗り越えなければならない場合があります。
具体的には工場などの資産の売却、既存顧客のフォロー対応などが挙げられます。交通や電力などの社会インフラ関係の業界であれば、社会的責任という理由で撤退できないでしょう。
簡単に業界から撤退できない場合、たとえ収益が下がっても事業を継続し続けなければならなくなるのです。

3.新規参入の脅威のチェック項目

新規参入企業が増えるほど、業界の競争は激しくなります。何度も話している通り、業界の競争が激しくなると、利益は少なくなっていきますよね?
新規参入企業が少ないほど、業界にとっては望ましいのです。
それでは、業界への参入を妨げる要因をひとつひとつ見ていきましょう。

3-1.規模の経済・範囲の経済・経験効果が強く作用するか

規模の経済・範囲の経済・経験効果があまり働かない業界は、新規参入企業が多くなります。

規模の経済とは、生産性が大きくなると単位当たりコストが低下する現象です。規模の経済経済性が強く作用する業界の場合、既存企業はすでに十分に大きな生産規模に達しているはずなので、新規参入した直後の企業が既存企業に匹敵するだけの生産量を確保することは難しく、新規参入企業は既存企業に比べてコスト上、不利な立場になりやすいのです。このコスト水準の違いが、潜在的な新規参入企業にとって克服しなければならない参入障壁となります。

範囲の経済が作用している場合は、取扱製品の範囲を拡大させることで、コスト上のメリットが享受できます。一般に、新規参入企業の製品取扱範囲は、既存企業と比べるとせまくなりがちなため、範囲の経済は参入障壁を高める要因になります。

また、経験効果とは経験量に相当する累積生産量が倍増するごとに、単位当たりコストが一定の比率で低下するという現象です。経験効果は、新規参入企業にとってコスト上の不利益の原因となります。

まとめると、規模の経済・範囲の経済・経験効果が働いていると、既存の企業に価格競争力が生まれるため、新規参入を妨げるのです。

関連記事⇒規模の経済・範囲の経済・経験効果 それぞれの違い

3-2.多額な運転資金が必要か

多額な運転資金が必要なければ、容易にその業界へ参入できることになります。

大規模な運転資金が必要な業界では事業リスクが高くなり、新規参入が抑制されやすいです。これは、前述の規模の経済に類似した要因ですが、ここでは製造段階以外での運転資金について考えています。例えばローンやリースなどの金融でビジネスを展開する際は、たくさんのお金をもっておかなければなりませんよね?このような業界は新規参入しにくい業界といえるのです。

3-3.流通チャネルへのアクセスが困難か

流通チャネルへのアクセスが容易であれば、新規参入が促進されてしまいます。

製品によっては、流通チャネルが固定的でアクセスが難しい場合があります。部品メーカーと完成品メーカーがガッチリと手を組み、他企業との取引をいっさい許さないという慣行が広く浸透している業界であれば、新規参入は難しいといえるでしょう。

3-4.製品は高度に差別化されているか

製品が業界内でほとんど差別化されていなければ、新規企業にとって参入しやすいでしょう。

差別化された製品を購入している顧客を誘引することは、既存企業がライバル企業から顧客を奪う場合でも、新規参入企業が既存企業から顧客を奪う場合でも、同じように難しいのです。そのため既存企業の製品が差別化されている場合、新規参入企業は不利な戦いを強いられるのです。

3-5.政府の政策で保護・規制されているか

政府の政策や法律で保護・規制されていると、新規参入は厳しくなります。

電気、ガス、水道、放送、通信、輸送、医療などのライフラインにかかわる産業に対しては、国民生活を脅かさないようにするために様々な制約が課されています。こうした規制業種に新規に参入していくのは容易ではありません。

なお、近年では電力販売の自由化が行われ、電気事業に100社以上が参入しました。電気はもともと差別化されている製品ではないため、政府の規制が解除されると、これほどまでに新規参入が増えるのですね。

3-6.既存企業の経営資源が豊富であるか

経営資源とは、ヒト・モノ・カネ・情報のことです。
このような経営資源が既存企業に乏しければ、新規参入により既存企業を駆逐するチャンスと捉えられるでしょう。

既存企業が豊富な経営資源、特に投資資金を保有する場合、新規参入業者に対して激しい反撃をしかけてくる可能性が高まります。反対に、既存企業が資源に乏しい場合には、反撃を行いたくても資源制約から実行不可能になることもあります。

関連記事⇒経営資源と最適な資源配分について

3-7.産業の成長率

産業の成長率が高いと、新規参入企業にとってその業界は魅力的に感じられるでしょう。

市場の成長率が低いと、限られたパイを奪い合うことになり、競争が激化しやすいです。逆に市場の成長率が高ければ、新規参入企業でも顧客を多く獲得するチャンスがあると考えられるでしょう。
産業の成長率が高ければ、利益を目的とした多くの企業が参入してくるのです。

これは「既存企業での対抗度」の市場成長率とトレードオフの関係にありますね。市場の成長率が高ければ、既存企業との競争は緩やかになる反面、新規参入企業は増加します。逆に、市場成長率が低ければ、既存企業との競争は激化し、新規参入企業は減っていくのです。

4.買い手の交渉力のチェック項目

製品の購入者である買い手の交渉力が高い場合、値引きなどの要望にも応えなければならないでしょう。
買い手の交渉力が高ければ高いほど、企業は利益を買うことが難しくなっていくのです。
企業が利益の出すためには、買い手の交渉力が低いほうが望ましいでしょう。
それでは、買い手の交渉力を高める要因をみていきましょう。

4-1.買い手グループの数

買い手グループが多いほど、買い手の交渉力が高まります。

買い手の数が増えると、数を背景にした交渉上のパワーが強くなる。最終消費財のように買い手が多数で分散している場合と、産業材のように買い手が少数でなおかつ買い手ごとの購入量が大きい場合を比べると、後者の方が価格交渉力が強く値引き要求が通りやすくなります。
また、特定の買い手との取引量が、自社の売上高に大きな比率を占めている場合、その買い手との取引停止は売り手側にとって非常に大きなダメージとなります。

4-2.自社の製品が標準化されているか

自社の製品が標準化(コモディティ化)している場合、他社と差別化されていません。
このような場合、買い手である顧客にとってはどこから購入しても大きな違いにならないため、買い手の交渉力は高まります。

コモディティ製品の場合、品物自体に違いがないなら、一番安いもので構わないと考えられやすく、売り手が高いマージンを設定することは困難になります。逆に差別化された製品・サービスの場合、価格が多少高くてもそれが欲しいと考える顧客を相手にするので、収益の確保が容易になります。

関連記事⇒コモディティ化の意味と、脱却する方法

4-3.買い手にとってスイッチングコストがかかるか

買い手にとってスイッチングコストがかかると、買い手の交渉力が低くなります。

ある製品・サービスから他のモノに変更した場合、様々なコストが発生することがあります。金銭的コスト・物理的コスト・心理的コストと3種類のコストが発生しますが、これらのコストが発生するために、顧客はなかなか他製品に移ることができないのです。
このような状態では、買い手の交渉力が低いとみなすことができますね。

4-4.買い手である卸売業者や小売店が最終ユーザーの意思決定を左右できるか

買い手が卸売業者や小売店であった場合、彼らが最終ユーザーの購入の意思決定をできるのであれば、交渉力が高いといえます。

多機能携帯電話端末のように複雑な商品、あるいはペットボトルの緑茶飲料のように顧客が強いブランド選好を持たないコモディティ製品については、最終消費者の購入意思決定に対して、小売業者や卸売業者がかなりの程度影響を与えられます。どれがよいかわからない、あるいはどれでも構わないという最終顧客に対して、販売員がこの製品はこの点が特に優れているという情報を提供したり、値引きやサービスの対象に指定することで、売り上げが伸びる場合がある。こうした場合、メーカーは流通業者に売ってもらう立場になり、販売価格を引き下げたり、値引き販売の為のリベートを支払ったりする必要がでてくるのです。

4-5.売り手の製品の価格が買い手の製品コストに占める割合

仕入れ先である売り手の部品価格が、自社の販売価格に占める割合として大きいとき、買い手の交渉力は高くなります。

たとえばPC製造におけるマイクロプロセッサのように、他の部品に比べて高額なためコスト構成比が高い部品について、値下げ交渉に成功すると製品コストは大幅に低下します。マイクロプロセッサの仕入れ価格が全体のコスト構成のうち60%を占めていたとして、購入価格の10%の引き下げに成功すれば、製造原価は一機に6%低下することになります。コスト構成比が低い他の部品で、これに相当する原価削減効果を得ようとすると、かなり難しいのです。

4-6.買い手の利益水準が高いか

買い手が高利益の企業、あるいは富裕層であった場合、買い手の交渉力は低くなります。

部品の購買コストは最終製品の利益に直結するため、利益水準の低いメーカーは購買コスト削減に必死に取り組みます。逆に、利益水準の高いメーカーの場合、購買コストに敏感でないケースが見受けられます。
また、消費財であっても、富裕層は価格に対してそれほど敏感ではないことが知られているのです。

4-7.売り手が供給する製品が買い手の製品の品質に大きな差をもたらすか

仕入れ先である売り手の製品・部品が、顧客満足度に大きくかかわる場合、買い手の交渉力は高くなります。

たとえば、PCの性能は搭載しているマイクロプロセッサと基本ソフト(OS)に大きく左右されます。PC業界ではウィンテルともよばれる、マイクロソフト社のウィンドウズとインテルのマイクロプロセッサの組み合わせが事実上の業界標準となっていますね。最終ユーザーがウィンドウズが使えなければ購入しないというのであれば、ウィンドウズ以外のOSを採用することは難しく、PCメーカーのマイクロソフトに対する交渉力は弱くなります。同様に、搭載するマイクロプロセッサの性能によって、PC全体の性能が決定的に変わってくるため、インテルに対する価格交渉力も低くなるのです。

5.売り手の交渉力のチェック項目

売り手とは、自社の製品・サービスを提供する上で、必要な部品等を調達する仕入れ先などがこれにあたります。
売り手の交渉力が高くなると、部品などを高く売りつけられるので、業界の利益は低くなってしまいます。
企業が利益の出すためには、売り手の交渉力が低いほうが望ましいでしょう。

なお、売り手にとっての自社との関係は、自社にとっての買い手の関係と同様です。
したがって、前述した買い手交渉力を決定する各要因は、関係を逆転させると、そのまま売り手の交渉力を決定する要因になります。そのため、ここでは各要因についての説明を省略します。

6.代替品の脅威のチェック項目

代替品とは、自社製品・サービスが満たしている顧客ニーズを、それとは異なるアプローチで満たす製品・サービスでです。
自動車にとって、公共のバスや電車、新幹線や飛行機などはすべて代替品にあたります。

優れた代替品が登場すると、業界の存続が危ぶまれますので、代替品の脅威は小さい方が望ましいのです。
それでは、代替品の脅威となる要因をみてきましょう。

6-1.代替品と考えられるものが少ないか

代替品となりえるものが少なければ、業界の収益性が低下する可能性が低くなります。

ただし、現実で何を代替品とみなすかは簡単な問題ではありません。
たとえば映画鑑賞と遊園地は代替関係にあるといえるでしょうか?
たしかに「娯楽」「デートの行き先」としては競合関係にありますが、それぞれで得られる楽しさは全く異なるものに感じられます。
このように、突き詰めて考えると、どこまでを代替とみなすのかは難しい問題なのです。

6-2.代替品のコストパフォーマンスは急速に向上しているか

代替品のコストパフォーマンスが大きく向上しているのであれば、代替品の脅威は大きくなります。

コストパフォーマンスを大きくするには、代替品の価格が下がるか、機能・性能が向上するかのどちらかが考えられます。
たとえば、近年政府より実施された、高速道路無料化という制度は、自動車の長距離移動に関するコストパフォーマンスを大きく引き上げました。
利用者は高速道路料金を支払わず、ガソリン代だけでどこへでも移動できるようになったのです。
結果として、政策が施行されている間、新幹線の利用客が大きく減ったのは言うまでもありません。

6-3.代替品の業界は高い利益率

代替品の業界が高い利益率を誇っている場合は、代替品の脅威が大きくなります。

代替品を提供している業界の利益率が高い場合には、そこでの収益を原資にして、代替品の普及促進のための大規模なキャンペーンを展開したり、販売促進費を大量に投入して、低価格販売を行ったりすることができます。逆に、代替品を供給している業界の利益率が低い場合には、自社が提供する製品・サービスと代替品との激しい競争が起こりにくく、業界の潜在的収益性が悪化することは考えにくいのです。

6-4.代替品の業界の市場成長率

代替品の業界の市場成長率が高い場合にも、代替品の脅威が大きくなります。

一般的に、市場成長率が高ければ、代替品を提供している業界の利益率は高くなり、製品の品質も向上していきます。また、製品の普及が拡大するにつれ、価格も下がっていくことでしょう。
結果として、先に挙げたコストパフォーマンスの向上や、利益率の向上を助け、代替品の脅威を高めることになるのです。

 7.ファイブフォース分析に関する注意事項

最後に、ファイブフォース分析を行なう際の注意点について触れておきます。
フレームワークを利用する際は、注意点・問題点を認識していないと、ひとりよがりな分析となってしまいます。
メリット・デメリットを踏まえた上で行われる分析は、よりよい成果を生み出すことでしょう。

7-1.注意点①主観的評価になってしまう

ファイブフォース分析では、各項目の評価、5つの要因ごとの評価、そして総合評価の各段階で、主観的な評価を行っています。

たとえば、既存企業の対抗度を左右する要因の一つである、業界の成長率について考えてみると、市場規模のデータが入手できれば、市場成長率は客観的な数字として算出できます。しかし、その数字に対する評価は分析者によって異なっている可能性がありますよね。市場成長率10%を高いとみるか、低いとみるかは、人によって異なるのです。

ファイフォース分析では主観的な評価や重みづけが必要とされているため、まったく同一の客観的事実に基づいても、分析結果が異なってくる可能性が高いのです。そのため、分析結果のみに注目していると、戦略上の判断を誤るリスクが高まることを十分に認識する必要があります。

したがって、ファイブフォース分析は、分析結果を重視するのではなく、業界で成功をおさめるためにはどの要因が重要であるかを判断するための分析手法としてとらえるべきなのです。

7-2.分析単位の設定で分析結果が変わる

ファイブフォース分析では、業界の分析単位の設定単位によって、分析結果が異なります。
分析の単位としては、時間的単位と事業的単位の2種類があります。

時間的単位とは、分析対象を刻々と経過していく時の中で、どの時点の競争状況を分析するのか、ということです。
変化の激しい近年では、今日の競争状況が、明日まで続くという保証はありません。ファイブフォース分析は、時間経過を意識せずに、ある一時点での競争状態を分析しているので、今の分析結果と翌年の分析結果では大きな違いがでることが予測されるのです。

事業的単位とは、どの製品までをひとつの業界とみなすのか、ということです。
たとえば、近年のデジタルカメラ市場はコンパクト型と一眼レフ型とに大きく分類されています。分析対象となる業界として、コンパクトのみを選んだ場合と、コンパクトと一眼レフの双方を含んだ市場全体を分析単位に設定した場合では、分析の結果は大きく異なることが予測されるのです。

分析対象の業界はどのように定義され、どこまでがその業界に含まれるかについても、ファイブフォース分析にあたって、十分に注意が払っておく必要があります。

 まとめ

いかがでしたでしょうか?

ファイブフォース分析は、理論的には単純なようにみえますが、本気で取りかかるとかなり骨の折れる作業となりますね。
しかし、真面目にひとつの業界の分析をかけると、業界の中でうまく立ち回れている企業と、そうではない企業がみえてくることでしょう。

また、勤務先の会社が属している業界を分析する場合には、自社がどこに力を入れていくべきなのか、判断できるようになるかもしれませんね。

いずれにしても、ファイブフォース分析を行なう際は、注意点にも配慮すると、分析結果だけにとらわれない、柔軟な経営判断が大切なのかもしれません。

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